
産業廃棄物はマニフェスト制度にのっとり処分しなければなりません。マニフェスト制度で用いるのが、マニフェスト伝票(産業廃棄物管理票)です。
マニフェスト伝票には保管義務をはじめとして、守るべきルールがいくつもあります。
本記事では、マニフェストとはどのようなものなのか、マニフェスト伝票の書き方などについて詳しく解説します。
目次
マニフェストとは

マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、産業廃棄物が適切に処理されたかを確かめる書類です。産業廃棄物の排出事業者は、産業廃棄物を収集運搬業者や処分業者に引き渡す際に、同時にマニフェストを交付します(紙の場合)。詳しくは後述しますが、発行媒体は電子と紙の2つです。
マニフェストには、主に以下の項目などを記載します。
- 交付年月日
- 産業廃棄物の種類と数量
- 排出された事業場
- 排出事業者名・運搬業者名・処分業者名
紙・電子マニフェストでは運用方式や一次マニフェストの発行タイミング、義務・ルールなど詳細な部分は異なるものの、基本的な仕組みは共通しています。次章からは、マニフェスト制度の詳細や交付が必要ない場合を詳しく見ていきましょう。
マニフェスト制度の詳細
マニフェスト制度は、産業廃棄物の適正な処理を確認するため、排出事業者・収集運搬業者・処分業者に報告義務を課しています。
制度導入以前は、不法投棄の発生時に排出事業者の責任が曖昧でしたが、1993年に特別管理産業廃棄物から開始され、1998年には全ての産業廃棄物が対象となり、2001年には排出事業者に対する責任がさらに強くなり、中間処理後の最終処分の確認も義務化されました。排出事業者はマニフェストの交付と年次報告も義務付けられています。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「措置命令と罰則」,(入手日付2024-09-05).

マニフェストの交付が必要ない場合
産業廃棄物を処理する際は、基本的にマニフェストの発行が義務付けられています。しかし全てのケースでマニフェスト交付が必要なわけではありません。以下のケースなどに該当する場合は、マニフェストの発行が不要です。
- 国・都道府県・市区町村へ処理を委託する場合
- 都道府県知事から指示を受けた業者に委託する場合
- 再生利用認定制度や広域認定制度によって環境大臣の認定を受けた業者に認定品目である産業廃棄物処理を委託する場合
- 再生利用に関係する都道府県知事の指定を受けた業者に、指定品目である産業廃棄物の処理を委託する場合
- 産業廃棄物を輸出するための運搬を行う業者に、日本から相手国までの運搬を委託する場合
- 海洋汚染防止法によって許可を受けた廃油処理事業を行う業者に、外国船舶で発生した廃油の処理を委託する場合
- 専ら物の処分業者に専ら物の処理を委託する場合
専ら物とは、廃棄物の中でも再生利用を目的としたものです。以下のものが該当します。
- 古紙
- 金属くず
- 空きビン類
- 古繊維
また、再生利用認定制度、広域認定制度の認定品目は以下が該当します。
- 再生利用認定制度:廃ゴムタイヤ、廃プラスチック類、金属含有廃棄物、汚泥
- 広域認定制度:通常の運搬方法で腐敗・揮発せず、生活環境に影響を与えないものや、排出事業者もしくは委託先が適切に処理できるもの
マニフェスト運用の流れ
マニフェスト運用は、紙タイプ・電子タイプの両方で流れが共通している部分があるので、詳しく見ていきましょう。
マニフェストは種類や行き先ごとに作成します。最初に、排出事業者から収集運搬業者に廃棄物を引き渡す際にマニフェストを交付します。その後、収集運搬業者から処分業者へと、廃棄物とともにマニフェストも流れ、それぞれの工程が完了した際に、運搬終了報告や処分終了報告が実施されます。
上記が共通の流れですが、紙マニフェストと電子マニフェストでは、異なる部分もあるので以下で簡単に解説します。
紙マニフェストの流れ

紙マニフェストを用いる場合、排出事業者は7枚の複写式伝票を記入してA票を保管し、残りを収集運搬業者へ引き渡します。
収集運搬業者は伝票と廃棄物を処分業者に引き渡し、処分業者は必要事項を記入してB1・B2票を返します。収集運搬業者はB1票を控えとして保管し、B2票を排出事業者に返送します。
処分完了後、処分業者はC1票を控えとして保管し、C2票を収集運搬業者へ送付します。D票とE票が排出事業者に送付され、最終処分の完了を確認したら、処分手続きは完了です。
電子マニフェストの流れ

電子マニフェストを利用する場合、まずは排出事業者がJWNETにマニフェスト情報を登録します。収集運搬業者と処分業者はそれぞれ、運搬、処分完了後に終了報告を行います。
紙マニフェストと異なり、伝票を保管する必要がなく、自治体への産業廃棄物管理票交付等状況報告も不要となる点が特徴です。
マニフェストの書き方(A票)
マニフェスト伝票のなかでも記載すべき項目が多いのがA票です。A票は排出事業者が保管する伝票で、次の項目を記載します。
- 交付年月日:マニフェスト伝票を交付した年月日を記載する
- 交付番号欄:公益社団法人全国産業廃棄物連合会、建設六団体副産物対策協議会が発行した伝票には記載済み
- 整理番号欄:排出事業者が伝票整理のために任意で番号を記載
- 交付担当者欄:交付担当者の氏名を記載(押印は任意)
- 排出事業者欄:排出事業者の名称や住所などを記載
- 排出事業場欄:産業廃棄物を排出する場所の名称や所在地・電話番号を記載
- 産業廃棄物欄:処分を委託する廃棄物の種類や数量などを記載
- 中間処理産業廃棄物欄:二次マニフェスト時に使用、再委託する場合は大元の廃棄物のマニフェスト交付者氏名もしくは名称と交付番号を記載
- 最終処分の場所欄:最終処分される処分場の名称、所在地、電話番号などを記載。もしくは委託契約書記載をチェック
- 備考・通信欄:運搬、処分時の注意事項を記載
- 運搬先の事業場欄:運搬先の名称や所在地を記載
- 照合確認欄:B2、D、E票が返送された際に年月日を記載
- 運搬受託者欄:収集運搬業者の名称・住所などを記載
- 処分受託者欄:処分業者の名称・住所などを記載
- 運搬の受託欄:廃棄物を受領した際に運搬担当者が会社名を記載
これらの項目に記載ミスや記載漏れがあった場合、マニフェスト伝票を修正する必要があります。修正の発生によって産業廃棄物の処分が滞ってしまう可能性があるため、注意して記載するようにしましょう。
マニフェストの種類
かつては紙マニフェストが主流でしたが、現在では電子マニフェストも用いられるようになっています。それぞれの概要や特徴を詳しく見ていきましょう。
紙マニフェスト
マニフェスト制度開始時から使われている紙マニフェストは、通常A・B1・B2・C1・C2・D・E7枚の複写式で、事業者ごとに必要な項目を記入し、保管します。
伝票を購入すればすぐに導入できるため、産業廃棄物の排出頻度が低い事業者であれば問題ないケースもあります。しかし排出量が多い場合、それに伴い紙マニフェストの記載量・保管量が多くなるので、手間とコストがかかる点には注意が必要です。
電子マニフェスト
排出事業者・収集運搬業者・処分業者のそれぞれが、インターネット上でマニフェスト情報の登録・交付などを行えるのが、電子マニフェストです。
電子マニフェストは1998年に導入され、2020年以降、PCB廃棄物を除く年間50トン以上の特別管理産業廃棄物を扱う事業所での使用が義務付けられています。
従来の紙ベースのマニフェストと比較して、手続きをオンラインで完結させられるため書類の管理作業や保管スペースを大幅に削減できます。
電子マニフェストを利用するには、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が運営するJWNETへの加入が必要です。また、収集運搬業者・処分業者だけでなく、排出事業者の加入も必須条件となっています。
DXE株式会社が提供している「DXE Station」であれば、排出事業者に負担を掛けることなく、収集運搬業者が起点となり電子化を推進することが可能です。紙から電子への移行に難航している方は、ぜひ導入をご検討ください。

※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「目的」 ,(入手日付2024-09-05).
※参考:環境省「特別管理産業廃棄物を多量に排出する事業者のみなさまへ」,(入手日付2024-09-05).
電子マニフェストと紙マニフェストの違い
電子マニフェストと紙マニフェストの主な違いは、以下の票の通りです。
比較項目 | 電子マニフェスト | 紙マニフェスト |
---|---|---|
運用方法 | ・JWNETを通じてオンライン上で管理される ・交付、確認、報告などをシステム上で実行可能 |
・7枚または8枚の複写式伝票を使用 ・各段階で手書きにて記載し、伝票を交付する |
一次マニフェスト登録のタイミング | ・産業廃棄物の引き渡しから3日以内に登録する | ・産業廃棄物の引き渡しと同時にマニフェストを発行する |
ルール・義務 | ・排出事業者、収集運搬業者、処分業者の三者がJWNETに登録する必要がある | ・保管義務と報告義務がある ・返却期限がある |
メリット | ・書類管理の手間を大幅に削減できる ・報告や確認をリアルタイムで行える |
・気軽に導入できる ・電子システムに不慣れでも扱いやすい |
デメリット | ・電子マニフェストの操作に慣れる必要がある ・導入コストがかかる |
・紙媒体で保管する以上、記載ミス、紛失リスクがある ・排出量が多いと、マニフェストの管理に工数がかかる |
電子マニフェストと紙マニフェストは、運用方法が大きく異なります。電子マニフェストはJWNETを通じてオンライン上で管理でき、交付・確認・報告などをシステム上で実行できます。
一方、紙マニフェストは複写式伝票を使用し、各事業者に引き渡されていく点が両者の違いです。一次マニフェスト登録のタイミングも異なり、電子マニフェストの場合は産業廃棄物の引き渡しから3日以内、紙マニフェストの場合は引き渡しと同時に発行します。
また、メリット・デメリットの点でも大きな違いが見られます。
電子マニフェストのメリットは、書類管理の手間を削減でき報告や確認をリアルタイムで行える、ペーパーレス化を推進できるなどです。操作に慣れる必要があったり、導入コストがかかったりする点はデメリットとなります。
一方の紙マニフェストのメリットは、導入しやすく電子システムに不慣れな場合でも扱いやすい点です。ただし、書類の記入や保管に手間がかかり、紛失・記載ミスのリスクが高い点がデメリットとなります。
マニフェストに関する注意点
マニフェストに関しては、「返却期限・保管期限がある」「報告義務に反する場合は罰則がある」などの点には注意してください。
返却期限・保管期限がある
紙マニフェストの場合、返却期限がある点には注意しましょう。
マニフェストが交付されてからB2票とD票は90日以内、E票は180日以内に返却する必要があり、それぞれの伝票ごとに返却期限と返却先は異なります。B2票とD票は収集運搬業者から排出事業者に返送され、E票は処分業者から排出事業者へ返送される伝票です。収集運搬、処分完了後10日以内に返送しなければならない点も把握しておきましょう。
また紙マニフェストを利用する場合は、保管期限もあります。交付日もしくは受け取った日を起点に、5年間の保管が法律で義務付けられています。この義務を怠ると、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。法令に基づき、保管期間をしっかりと守りましょう。
なお電子マニフェストを利用した場合は、これらの返却期限や保管期限などはなく、効率的にマニフェスト関連の業務を進められます。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「措置命令と罰則」(入手日付2024-09-05).
報告義務に反する場合は罰則がある
紙マニフェストの場合、排出事業者は前年度のマニフェストの交付状況をまとめた「産業廃棄物管理票交付等状況報告」を自治体に提出する必要があります。以下に挙げる内容などを記載します。
- 排出事業者の名称・所在地・連絡先
- 排出事業場で行われる業種
- マニフェストを交付した産業廃棄物の種類・排出量
- マニフェストの交付枚数
- 収集運搬業者・処分業者の名称
- 運搬先・処分場所の住所
この報告義務は、廃棄物処理法第十二条第三第七項で定められています。そのため、産業廃棄物管理票交付等状況報告書の提出を怠ると、管轄する行政から勧告を受けます。勧告に従わない場合、その事実が公表されるので、注意しましょう。
勧告にも従わない場合、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」,(入手日付2024-09-05)
マニフェストについてよくある質問
マニフェストについてよくある質問として、以下が挙げられます。
- マニフェストとはなにか?
- マニフェストの報告義務対象者は?
それぞれを理解した上で、マニフェストを運用していきましょう。
マニフェストとはなにか?
マニフェストとは産業廃棄物を処分する際に用いられる伝票です。産業廃棄物を処分する際に用いられるマニフェスト伝票によって、排出事業者は産業廃棄物が正しく処分されているかを確認可能です。
マニフェスト伝票は排出事業者が産業廃棄物の引き渡しと同時に、収集運搬業者、処分業者に交付します。
収集運搬業者、処分業者はそれぞれの作業が完了したら適応するマニフェスト伝票を排出事業者に返送します。
マニフェストの報告義務対象者は?
マニフェストの報告義務対象者は、産業廃棄物の排出事業者です。報告義務対象者である排出事業者は、自治体にマニフェストの交付状況を報告する役割があります。
前年度の4月1日から3月31日までに交付したマニフェスト伝票を、毎年6月30日までに排出事業場を管轄する自治体に報告する必要があります。
収集運搬業者や処分業者は関係ある?
原則として、収集運搬業者、処分業者にはマニフェストの報告義務はありません。しかし自分たちが産業廃棄物の排出事業者となった場合は、排出事業者として、マニフェストの報告義務が発生します。例えば処分業者であれば中間処理業者として、2次マニフェストを交付した際は、毎年6月30日までに自治体に報告しなければなりません。
以上のように収運業者や処分業者はマニフェストの交付状況について廃棄物処理法上の報告義務はありません。しかしながら都道府県等の自治体が要綱等により、収集運搬または処分に関する実績報告を求めています。
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