
事業活動によって排出される産業廃棄物は分別や減量化などの中間処理がなされたのち、最終処分されます。この最終処分を行う場所が、産業廃棄物最終処分場です。廃棄物を多く排出する企業の場合、どのように廃棄物が処分されるのかを理解しておくことも大切です。
そこで本記事では、産業廃棄物最終処分場の分類や特徴などをまとめました。産業廃棄物処分場への理解を深めましょう。
目次
産業廃棄物最終処分場とは?

産業廃棄物最終処分場とは、基本的に中間処理によって減量化された産業廃棄物を埋め立てる施設を指します。中間処理とは、粉砕や破砕、リサイクル可能なものの分別、脱水や焼却などの処理を施すことです。
産業廃棄物最終処分場は、ただ単に埋め立てを行う施設ではありません。汚水や廃棄物の外部流出、ネズミや害虫の発生を防ぎ、環境に配慮して安全に埋め立てられる設備を整えていることが重要です。詳しくは後述しますが、埋め立てられる産業廃棄物により、大きく「安定型最終処分場」「遮断型最終処分場」「管理型最終処分場」の3つに分けられます。
環境省の公表した令和4年度の「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」によれば、直接最終処分されたのは4,400千トン(1.2%)、中間処理後最終処分量は4,346千トン(1.2%)です。
※参考:環境省「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)」 p33 ,(入手日付2024-08-02)


産業廃棄物最終処分場が多くある場所
産業廃棄物最終処分場は全国各地にありますが、その多くは一般的に都市部から離れた地域や山間部など生活圏から離れた場所に設置されています。これらの地域が選ばれるのは、広大な土地が確保しやすいことはもちろん、近隣住民から理解を得る難しさが絡んでいます。
新規で最終処分場を設置するには住民の合意が必要です。最終処分場は、汚水や地下水の汚染、廃棄物の飛散や流出、ガスの発生、害獣・害虫の発生を防ぐための設備や構造が整えられていますが、ネガティブなイメージを持たれがちなので地域住民の同意を得ることは容易ではありません。そのため産業廃棄物最終処分場は、都市部から離れたアクセスが悪い地域に設けられています。
ただ、将来的な跡地の利用計画に基づき、生活圏に近い沿岸地域に最終処分場が設けられるケースもあります。
産業廃棄物最終処分場の分類

産業廃棄物最終処分場は、安定型・遮断型・管理型の3つに分類されます。
安定型最終処分場
安定型最終処分場では、有害物・有機物が付着しておらず、雨水にさらされても性状が安定している安定型産業廃棄物を埋め立てます。安定型産業廃棄物は、以下の通りです。
● 廃プラスチック類
● ゴムくず
● 金属くず
● コンクリートくず
● ガラスくず・がれき類・陶磁器くず
● 環境大臣が指定する上記に準ずるもの
上記の産業廃棄物は、有害なガスや汚水が発生する心配が少ないため、汚染を防ぐための遮水工や浸透水集排水設備の設置が義務付けられていない点が特徴です。
しかし、他の産業廃棄物が混入しないよう、展開検査が義務付けられています。また地滑り防止工や沈下防止工、耐力構造、腐食防止措置、排水設備、浸透水採取設備の設置が必要です。維持管理基準では囲い、立て札、水質検査、点検・検査記録、展開検査、浸透水検査、土砂での覆いなどの対応が求められます。
遮断型最終処分場
遮断型最終処分場とは、埋め立て判定基準に適合していない産業廃棄物を埋め立てる最終処分場です。環境汚染や生活環境への影響を考慮し、3つの処分場の中でも最も厳格な構造基準や維持基準が設定されています。遮断型最終処分場で埋め立てられる産業廃棄物の一覧は、以下の通りです。
● 有害な燃え殻
● ばいじん
● 汚泥
● 鉱さい
● 重金属
● その他有害な化学物質が基準値以上に含まれているもの 最終処分場の構造基準
一般的な構造基準に加えて、「鉄筋コンクリート製で厚さ35cm以上もしくはそれと同等の遮断効力を持つこと」「一区画が面積50㎡以下、もしくは容量250㎥以下」などの要件が定められています。
管理型最終処分場
管理型最終処分場では、安定型産業廃棄物に該当しないものの、遮断型最終処分場で処分する必要がない産業廃棄物が処分されます。具体的な産業廃棄物の一覧は、以下の通りです。
● 燃え殻
● 汚泥
● 紙くず
● 木くず
● 繊維くず
● 動植物性残さ
● 動物のふん尿・死体
● 鉱さい
● ばいじん
動植物性残さやふん尿などの有機物、金属が溶け出した汚濁物質による保有水・ガスの発生を考慮し、遮断型最終処分場ほど厳格ではありませんが、安定型よりは厳格な基準が設けられている点が特徴です。
最終処分場の設置状況
それぞれの最終処分場の概要や役割を理解したところで、設置状況を詳しく見ていきましょう。
最終処分場の種類 | 施設許可件数 (令和4年4月1日時点) |
令和3年度分 | ||
---|---|---|---|---|
新規施設許可件数 | 変更許可件数 | 廃止届出件数 | ||
遮蔽型処分場 | 22 | 0 | 0 | 0 |
安定型処分場 | 931 | 6 | 9 | 15 |
管理型処分場 | 615 | 5 | 6 | 13 |
最終処分場 計 | 1,568 | 11 | 15 | 28 |
より厳格な構造基準や維持管理が必要となる遮断型最終処分場は、設置許可件数・新規施設許可件数が極端に少ないのが現状です。一方で安定型・管理型最終処分場は毎年一定の新規許可取得があります。
最終処分場のひっ迫についてあまり議論されなくなったのは、最終処分量の大幅な減少により残余年数が大きく延びているためです。環境省の最新データによれば、産業廃棄物の残余年数は19.7年にまで延びています。
※参考:環境省(入手日付2024-08-02)
※参考:環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和3年度実績等)について」(入手日付2024-08-02)
産業廃棄物最終処分場についてよくある質問
ここからは、産業廃棄物最終処分場に関する以下の3つの質問に回答します。
● 産業廃棄物最終処分とは?
● 産業廃棄物最終処分場はどこにある?
● 産業廃棄物の最終処分の方法は?
それぞれ詳しく見ていきましょう。
産業廃棄物最終処分とは?
「最終処分」とは、廃棄物の最終的な処理を指し、廃棄物が環境に与える影響を最小限に抑えるための一連の処理工程を含みます。運搬・収集、中間処理(破砕・粉砕・リサイクル・リユースなど)のプロセスを経た後、実施されます。
最終処分の目的は、主に以下の3つです。
● 安定化
● 無機化
● 無害化
安定化とは、廃棄物を物理的・化学的に安定した状態にするプロセスです。廃棄物を自然環境において反応しやすい状態から、反応しにくい状態に変えることで、長期間にわたって安全に管理できるようにします。安定化により、有害物質の溶出やガスの発生を防ぎ、環境への影響を抑えることが可能です。
無機化とは、廃棄物中の有機物を除去し、無機物に変えることです。酸素がない嫌気的環境下における微生物反応により無機化が進みます。有機物は分解過程で有害ガスや浸出液が生じますが、無機化によりこれを防げます。
無害化とは、廃棄物中の有害物質を無害な状態に変えることです。石綿(アスベスト)を含む廃棄物や微量PCB汚染廃家電機器など、特に人体や環境に有害な物質は厳格に処理されます。
産業廃棄物最終処分場はどこにある?
産業廃棄物最終処分場は、全国各地の山間部や臨海部に設置されるのが一般的です。その多くは生活圏から遠い場所にあります。これは、環境への影響を最小限に抑えるためです。
しかし、跡地の利用を予定している場合は、生活圏からそれほど離れていない臨海地域に設置されることもあります。
産業廃棄物の最終処分の方法は?
産業廃棄物の最終処分方法は、主に地中への埋め立てか、海洋投棄です。
地中への埋め立ては、産業廃棄物の種類や性質に応じて先述した安定型最終処分場・遮断型最終処分場・管理型最終処分場のいずれかに運搬され、廃棄物を腐敗させずに安全な状態で管理し、周囲の環境保護を考慮して処分されます。
海洋投棄は環境への影響が特に大きく、現在は国際的に厳しく規制されている処分方法です。ロンドン条約(廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約)、海防法(海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律)、廃棄物処理法を制度化して海洋への廃棄物投棄を管理しています。以下が海洋投棄に求められる条件です。
● 当該廃棄物が法律上定められた海洋投入可能品目に該当すること
● その品目ごとに定められた判定基準を満たすこと
● 法律上定められた排出海域で排出方法を遵守して排出すること
● 処理業許可を受けた処理業者が、排出船登録をした船で排出すること
産業廃棄物最終処分場についてのまとめ
産業廃棄物最終処分場は、環境と人体への影響を最小限に抑え、安全に廃棄物を処理するための施設です。廃棄物の種類や性状に応じて、安定型最終処分場・遮断型最終処分場・管理型最終処分場のいずれかに運搬され処分されます。
最終処分場の多くは、都市部から離れた地域や山間部など生活圏から離れた場所に設置されています。新規設置には、構造条件を満たした上で近隣住民の理解を得ることが重要です。より厳格な基準が設けられる遮断型最終処分場は、設置許可件数・新規施設許可件数が極端に少なくなっています。
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