
他人の産業廃棄物を処理(収集運搬および処分)するためには、産業廃棄物処理業の許可が必要になります。
「専ら物」や「広域認定制度」などの例外については別のコラムで記載することとし、今回は、許可の種類、取得するための手続き、取得状況等について確認したいと思います。
目次
産業廃棄物収集運搬とは
産業廃棄物収集運搬の詳細を見ていく前に、まずは産業廃棄物の概要を把握しておきましょう。
産業廃棄物とは、事業活動によって生じる廃棄物のうち、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)で定義されている20種類の廃棄物の総称です。具体的には以下が挙げられます。
【あらゆる事業活動に伴うもの】
- 燃え殻
- 汚泥
- 廃油
- 廃酸
- 廃アルカリ
- 廃プラスチック類
- ゴムくず
- 金属くず
- ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず
- 鉱さい
- がれき類
- ばいじん
【業種等が限定されるもの】
- 紙くず
- 木くず
- 繊維くず
- 動植物性残さ
- 動物系固形不要物
- 動物のふん尿
- 動物の死体
上記の産業廃棄物を処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの(コンクリート固形化物など)も産業廃棄物です。第13号廃棄物とも呼ばれます。
産業廃棄物収集運搬とは、その名の通り産業廃棄物を収集運搬することです。都道府県知事の許可を得た「産業廃棄物収集運搬業者」のみが、法律上産業廃棄物の収集運搬を行えます。
産業廃棄物収集運搬の許可について

産業廃棄物収集運搬の許可とは、産業廃棄物を適切に収集し、指定された処理施設まで安全に運搬するために必要な許可です。この許可は、事業活動から発生する廃棄物を収集運搬する際に、法令に基づいて行われるものであり、無許可で行うことは禁じられています。
産業廃棄物収集運搬の許可を得るには、以下の条件を満たしていることが必須です。
- 日本産業廃棄物処理振興センターが実施する講習会の受講と修了証を取得すること
- 事業を安定して継続するための十分な財務基盤(経理的基礎)を有していること
- 法的要件を満たし、適切に整備された事業計画を備えていること
- 反社会的勢力や未復権の破産者など、欠格条項に該当しないこと
- 廃棄物が漏えいや飛散するリスクがないような安全な運搬設備を有していること
上記の条件を満たした上で、各都道府県知事に申請します。注意すべきなのは、都道府県をまたいで廃棄物を収集運搬する場合、各都道府県知事からの許可が必要となる点です。例えば、東京都で収集した産業廃棄物を埼玉県へ運搬する際は、東京都と埼玉県の両方から許可を得ます。
収集運搬許可の申請書類は、都道府県の公式ホームページからダウンロードするか、都道府県庁で直接もらうかなどして手に入れることができます。申請書に加えて事業計画の概要や運搬設備の写真、誓約書、会社の登記簿謄本など多くの書類が必要となるので申請と同時に集めておきましょう。
なお、申請し始めてすぐに許可を得られるわけではなく、講習会の受講期間を含めるとおよそ半年くらいかかるので注意してください。
許可の種類
産業廃棄物の収集運搬に関しては、産業廃棄物収集運搬業許可と特別管理産業廃棄物収集運搬業許可の2つがあります。
産業廃棄物収集運搬業許可は、産業廃棄物を収集し、指定された処分施設まで運搬するために必要な許可です。収集・運搬のみを行う場合は、積み下ろしを行う区域の許可が必要ですが、通過する区域の許可は必要ありません。ただし、積替えや保管を行う場合は、その区域の積替えまたは保管を含む許可が必要です。
爆発性・感染性・毒性が特に高く、人体や環境に多大な影響を与える恐れのある特別管理産業廃棄物を収集運搬する場合は、別途特別管理産業廃棄物の収集運搬の許可が必要となります。
許可権者
産業廃棄物収集運搬の許可権者は、都道府県および政令市です。収集・運搬(積替保管なし)の場合は、都道府県の許可を取得した後、その都道府県内で回収し、同じ都道府県内の処理施設もしくは保管施設まで運べます。処分施設や積替保管施設が政令市内にある場合、その施設の許可は政令市から取得する必要がありますが、政令市外の場合は都道府県の許可が必要です。
従って都道府県全域で収集し、政令市にある自社施設に運搬する場合、都道府県と政令市の両方から収集運搬業許可が必要となります。
許可申請の種類
許可申請の種類は、主に以下の3つです。
新規許可申請 | 都道府県内で初めて事業を行う場合や新たに法人を設立した場合など |
---|---|
更新許可申請 | 許可期限日以降も事業を継続する場合など |
変更許可申請 | 取り扱う産業廃棄物の種類を追加、もしくは限定を解除する場合、新たに積替え、もしくは保管する場合 |
許可の有効期限は5年間ですが、優良認定を受けると7年に延長されます。
許可証には有効期間に加えて「事業の範囲」「事業の用に供する施設」「許可の条件」などが記載されています。事業の範囲に変更がある場合は、基本的に変更許可の申請が必要です。
※参考:公益財団法人 産業廃棄物処理事業振興財団「処理業者向け情報」(入手日付2024-08-10).
許可の要件

ここでは、産業廃棄物収集運搬の許可の要件である以下の5つを詳しく見ていきましょう。
- 欠格事由に該当しないこと
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請に関する講習会を修了すること
- 経理的基礎の要件
- 運搬施設の要件
- 事業計画の要件
欠格事由に該当しないこと
欠格事由とは、法律や規制により特定の資格や要件を取得する際、その取得を制限するための要件や条件を指します。
法人の場合は役員や株主が、個人事業の場合は事業主が下記に該当する場合、許可を受けることができません。
- 成年被後見人・被保佐人・破産者で復権を得ない者
- 禁錮以上の刑を受け、5年を経過していない者
- 廃棄物処理法等の法律に違反し、罰金以上の刑の処罰を受け5年を経過しない者
- 暴力団員の構成員である者
許可後に欠格事由に該当することが判明した場合は、許可が取り消される可能性があります。
※参考:群馬県「欠格要件について」 ,(入手日付2024-08-10)
産業廃棄物収集運搬業許可申請に関する講習会を修了すること
産業廃棄物の収集運搬業を適切に行うためには、申請者自身が必要な知識と能力を有していることが求められます。法人の場合は代表者、個人の場合は個人事業主が、日本産業廃棄物処理センターの講習会を修了することが必須です。
講習会は、自宅や会社で講義動画を視聴し、後日会場で試験を受けるオンライン方式と、会場で講義を受けてその場で試験を行う対面方式の2つがあります。試験に合格したら、修了証が交付されます。
経理的基礎の要件
産業廃棄物の収集運搬業を的確かつ、継続的に行うことができる経理的基礎を有していることも、取得要件の一つです。これには倒産や経営難などにより、産業廃棄物が処理されずに放置されることを防ぐ目的があります。
具体的には、自己資本比率、直近3年間の当期純利益、そして税金の納付状況などを考慮して総合的に判断されます。
運搬施設の要件
運搬施設とは、産業廃棄物を運搬する車両や容器のことです。以下の要件を満たしている必要があります。
- 産業廃棄物が飛散・流出・悪臭が漏れる恐れのない車両であること
- 申請者と車検証上の所有者が一致していること
- 運搬容器等の運搬施設を有していること
- 継続的に運搬施設の使用権限を有していること
- 感染性産業廃棄物を収集運搬する場合は、密閉されていること、冷蔵庫などにより廃棄物の腐敗防止の対策が取られていることなど
事業計画の要件
事業計画の要件には、計画がその通りに実行され、法令に従っていること、さらに、業務量に応じた設備や人員が適切に配置されていることが含まれます。具体的な要件は以下を参考にしてください。
- 排出事業者から確実に委託を受け、かつその種類や性状を把握できること
- 産業廃棄物の性状に適した運搬施設を備えていること
- 搬入先が産業廃棄物を適正処理できること
- 業務量に応じた収集運搬施設が整備されていること
- 業務遂行体制が適切に構築されていること
申請手続きの流れ
ここからは、産業廃棄物収集運搬許可の申請手続きの流れを解説します。
まずは申請前に、自社もしくは個人が欠格事由に該当しないことを確認しましょう。欠格事由に該当する場合は、そもそも許可を得ることができません。
問題ないことを確認したら、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」を受講します。ここで修了証を取得することが、収集運搬の許可を得るための条件です。
続いて、各都道府県庁の窓口やホームページで取得した申請書類に必要事項を記入し、書類を作成します。産業廃棄物収集運搬業許可申請書や事業計画の概要、事業の開始に要する資金の総額およびその資金の調達方法などの書類が必要です。
申請後は審査を得て、許可証が交付されます。
なお、具体的な申請手続きは都道府県や政令市により異なることもあるので、詳細は直接お問い合わせするか公式ホームページを確認してください。
申請の手引
東京都環境局:産業廃棄物収集運搬業許可申請の手引
※必ず申請する都道府県等のものを入手して確認して下さい。
申請手数料
収集運搬業の場合、産業廃棄物・特別管理産業廃棄物とも新規許可申請の申請手数料は81,000円です。
産業廃棄物と特別管理産業廃棄物の申請を同時に行う場合は162,000円が必要になります。
審査期間
審査の標準処理期間(許可証交付までの期間)は、東京都の場合、申請書受理後 60 日となっています。
このように講習会の受講や申請書類の準備と審査で、許可証の交付まで半年はかかると考えたほうが良いと思います。
もちろん複数の都道府県等で許可を取得する場合は、同じ手続きを並行して進める必要があります。進捗状況や指摘事項の内容については、都道府県等によってかなり異なることが一般的です。
許可が不要なケース
産業廃棄物収集運搬は、自社で産業廃棄物の収集運搬を行う場合と専ら物など再生利用目的の産業廃棄物を収集運搬する場合は許可が不要です。それぞれどのようなケースなのかを詳しく見ていきましょう。
自社で産業廃棄物の収集運搬を行う場合
産業廃棄物の収集運搬許可は、排出事業者から委託されて産業廃棄物の収集運搬を行う際に必要となる許可です。そのため、自社で産業廃棄物の収集運搬を行う場合、許可は必要ありません。処分先の施設や業者まで運搬するケースや、産業廃棄物を自社の施設間で移動させるケースなどが該当します。
原則許可は不要ですが、満たすべき基準はいくつかあるので把握しておきましょう。
自社で収集運搬する場合でも、産業廃棄物の飛散・流出や悪臭・騒音・振動が生じないよう対策が必要です。石綿(アスベスト)が含まれる場合は、他の廃棄物と区別しましょう。
また、車両の表示義務もあります。「産業廃棄物収集運搬車」と「会社名」は車両の両側に分かりやすい色とサイズで表示するようにしましょう。
加えて、以下の内容を記載した書類を携帯する必要もあります。
- 氏名または名称および住所
- 運搬する産業廃棄物の種類および量
- 運搬する産業廃棄物を積載した日
- 積載した事業場、運搬先の事業場の名称、所在地および連絡先
こうした基準が守られていない場合は、行政から改善命令が下されます。
専ら物など再生利用目的の産業廃棄物を収集運搬する場合
専ら物とは、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物または一般廃棄物の総称です。古紙類やくず鉄、空きびん類、古繊維などが該当します。
専ら物はリサイクルが主な目的であるため、専ら業者(専ら物を専門に取り扱う収集運搬・処分業者)などは、産業廃棄物の収集運搬の許可は免除されます。
収集運搬業の許可の状況
産業廃棄物処理業のうち収集運搬業の許可件数は2022年4月時点で243,237件となっています。
2021年度の新規許可件数は14,647件となっており、許可件数は増加傾向にあります。
内訳を見ると、産業廃棄物収集運搬業(積替なし)が大半を占めています。
許可件数なので業者数ではありませんが、新規許可を取得する業者がかなり多いことがわかります。
環境省:産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況について
許可件数 2022/4/1現在 |
新規許可件数 2021年度 |
|
---|---|---|
産業廃棄物 | 221,462 | 13,665 |
積替あり | 8,752 | 180 |
積替なし | 212,710 | 13,485 |
特別管理産業廃棄物 | 21,775 | 982 |
積替あり | 1,224 | 25 |
積替なし | 20,551 | 957 |
合計 | 243,237 | 14,647 |
処分業の許可の状況
処分業の許可件数は2022年4月時点で24,058件となっています。
2021年度の新規許可件数は249件となっており、こちらも許可件数は増加傾向にあります。
内訳を見ると、産業廃棄物処分業(中間処分のみ)が大半を占めています。
特別管理産業廃棄物の中間処分や最終処分は、許可取得のハードルが非常に高いため、新規許可件数は限定的な数字となっています。
許可件数 2022/4/1現在 |
新規許可件数 2021年度 |
|
---|---|---|
産業廃棄物 | 13,279 | 235 |
中間処分のみ | 12,504 | 228 |
最終処分のみ | 270 | 6 |
中間+最終 | 505 | 1 |
特別管理産業廃棄物 | 779 | 14 |
中間処分のみ | 692 | 12 |
最終処分のみ | 61 | 2 |
中間+最終 | 26 | 0 |
合計 | 24,058 | 249 |
環境省:産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況について
最後に
いかがでしたでしょうか。許可の取得には多少時間はかかりますが、既に建設業や運送業を行っている方が新たに産業廃棄物の収集運搬業を始めるケースは比較的多く、それほどハードルは高くないのではないでしょうか。
また、産業廃棄物処理業界はマニフェスト管理や契約に伴う事務量が多く発生します。DXE Stationは排出事業者・処理業者双方の事務を効率化し、事業の拡大にも貢献できるシステムです。また、産廃業務に精通したスタッフがサポートします。新たに廃棄物処理業を始める際には是非ともご検討下さい。

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