
産業廃棄物の処理方法は廃棄物処理法によって明確に定められており、事業活動に伴い生じた廃棄物は、事業者が責任を持って処理しなくてはなりません。
産業廃棄物の処理方法が適切でないと、法律違反に問われて刑事事件に発展する場合もあります。廃棄物処理法では、どのようなケースで罪に問われるのでしょうか。本記事では廃棄物処理法に違反して逮捕に至った事例と、廃棄物処理法違反の主な罰則について解説します。
廃棄物処理法6つの違反事例
廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)は 、廃棄物の処理方法や手続きなどを定めた法律です。廃棄物の排出抑制および適正な分別・保管・収集・運搬・再生・処分などにより、生活環境の保全と公衆衛生の向上を図ることを目的としています。(※)廃棄物処理法に違反すると、罰金や懲役刑などの罰則を受ける可能性があります。ここでは過去の具体的な事例を見ていきましょう。
※出典:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」(入手日付2023-08-04)
事例①焼却禁止違反(不法焼却)
2020年から2021年にかけて長野県の原野に 金属くずなどを埋めて投棄した上、廃棄物の木くずを焼却したとして、東京都で電気自動車(EV)の開発などを手がける会社代表の男が逮捕されました。容疑者は自動車の国際ラリーにも出場経験があるとのことで、補助金の利用や土地開発などに関する相談を開発拠点のある静岡県袋井市に持ちかけたこともあったそうです。
※出典:日刊自動車新聞 電子版「タジマモーターコーポレーションの田嶋伸博会長、廃棄物処理法違反容疑で逮捕」(2022-12-07)(入手日付2023-12-12)
廃棄物の野外焼却は 、構造基準を満たした焼却炉での焼却を除き、原則廃棄物処理法で禁止されています。野外焼却は焼却温度が低いため、燃やすものによってはダイオキシンなどの有害物質が発生し、人の健康や自然環境に深刻な影響を与えるためです。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第16条の2)」(入手日付2023-08-04)
事例②委託基準違反・受託禁止違反
2020年には豊島区の職員ら24人が 、業務で不要となったソファやエアコン、ピアノ、卓球台などの産業廃棄物形116点の処理を無許可の下請け業者に委託したとして、警視庁に書類送検されました。書類送検されたのは豊島区の職員として働く28~69歳の男女で、都から許可を得ていない建設会社など7社に処理を委託した疑いがもたれています。職員らは「処理の仕方が分からなかった」「違法だとは思わなかった」などと供述しているそうです。
※出典:産経新聞「豊島区課長ら24人書類送検 無許可業者に産廃処理委託疑い」(2020-02-22)(入手日付2023-08-04)
無許可の下請け業者に産業廃棄物の処理を委託するのは、廃棄物処理法の「委託基準」違反に該当します。委託基準とは 排出事業者が産業廃棄物の処理を業者へ委託する際に、守るべき委託方法や手続きを指します。委託基準の中でも特に重要なのが「処理業者と事前に書面で委託契約を締結する」ことと、「処理を委託する種類の産業廃棄物を取り扱い可能な業者へ委託する」ことです。これに従わなかった場合、委託した排出事業者だけでなく産業廃棄物の処分を請け負った業者も受託禁止違反に 問われます。
※出典:e-Gov法令検索 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第6条の2の6・第14条の15)」(入手日付2023-08-04)
事例③産業廃棄物保管基準違反
2018年に大阪府豊中市に建設予定だった私立小学校「瑞穂の国記念小学院」で、学校法人森友学園が建設予定地の地中から掘り出されたごみを埋め戻した疑いがあるとして、豊中市が廃棄物処理法に基づき、用地造成を担当した業者に聞き取りと現地調査を実施しました。業者側は市に対し「2016年2月頃に始めた、くい打ち工事で廃棄物の混ざった土が出た」「建築工事を優先するため、3月頃から廃棄物が混じった土を用地内に仮置きした」などと説明しているそうです。
※出典:ハフポスト . (2017-02-28). 「森友学園の「ごみ埋め戻し」疑惑、豊中市が調査⇒「廃棄物処理法の保管基準に違反」と判明」 (入手日付2023-08-04)
廃棄物処理法は、 「産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(産業廃棄物保管基準)に従い、生活環境の保全上支障のないように産業廃棄物を保管しなければならない」と定めています。産業廃棄物が混ざった土を埋め戻すのは、廃棄物処理法の保管基準違反に当たる可能性があります。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第12条の2)」(入手日付2023-07-03)
事例④逆有償取引による委託基準違反
2014年、大手鉄鋼メーカーが 群馬県の工場から出た鉄鋼スラグを業者に販売する際、運搬費などの名目で販売価格を上回る代金を支払っていたことが分かりました。群馬県はこの取引が廃棄物処理法違反に当たるとみて渋川工場に立ち入り検査をしました。
産業廃棄物をリサイクル商品として販売する際、引き取り先に支払う代金が、本来の金額を上回る取引のことを「逆有償取引」といいます。県は大手鉄鋼メーカーの行った逆有償取引が廃棄物処理法違反に該当する可能性があるとして調査を進めています。
※出典:日本経済新聞「大同特殊鋼工場に立ち入り 群馬県、廃棄物処理法違反か」 (2014-01-28)(入手日付2023-08-04)
排出側が処理側に有価でごみを売却した有償償却の場合、ごみは有価物と見なされるため、本来は廃棄物処理法の対象にはなりません。しかし「逆有償」 なら廃棄物として扱われます。廃棄物であれば当然、廃棄物処理法の対象です。その場合、収集運搬委託契約・処分委託契約の締結や管理票(マニフェスト)が必要となります。知らずに委託契約の締結や管理票なしに処理を委託した場合、委託基準違反と見なされてペナルティが科せられます。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第6条の2の6・第14条の15)」(入手日付2023-08-04)
事例⑤再委託禁止違反・虚偽記載
長崎県の産業廃棄物処理会社 Aが、延べ158回にわたり52の排出事業者から1年2カ月の間、廃棄物処理法で禁じられている再委託基準に違反して「収集した廃棄物を処分せずに自社を排出事業者として他の産廃処分業者に処分を委託」していたことが分かりました。県はA社に対して90日間の産業廃棄物収集運搬業・処分業の全業務を停止するよう命じています。
またA社は、自社で処分していないにもかかわらず、マニフェストに自社で処分が終了したと虚偽記載するなど、廃棄物処理法の管理票虚偽記載に該当する行為をしていたことも判明しています。
※出典:LogisticsToday. 「産廃業者に事業停止命令、他社への再委託と虚偽記載」(2018-12月06日)(入手日付2023-08-04)
再委託とは 排出事業者と委託契約を結んだ処理業者が、受託した廃棄物の処理を自社以外の処理業者に委託することです。再委託すると廃棄物処理の責任の所在が不明確になり、不適正処理を引き起こしやすくなるとして、廃棄物処理法第7条第14項で再委託を原則として禁止しています。
虚偽記載とはマニフェストに実際の廃棄内容と異なる内容を記載することです。虚偽記載は廃棄物処理法第12条の3の1(産業廃棄物管理票)・第12条の4(虚偽管理票の交付等の禁止)に違反します。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条の14・第12条の3の1・第12条の4)」(入手日付2023-08-04)
事例⑥無確認輸出
2009年10月、貿易会社Bが 、ミャンマー向け貨物の輸出申告をしました。その貨物のうち、使用済み冷蔵庫45台について近畿地方環境事務所が報告の徴収などを実施したところ、B社が廃品回収業者から処理費用を受領(逆有償)して引き取った後、野外保管の上、特段の処理をせずに輸出しようとしていたことが判明したそうです。
使用済み冷蔵庫45台は、廃棄物処理法第2条第1項に規定する廃棄物に該当します。廃棄物の輸出に当たっては、廃棄物処理法第10条第1項および第15条の4の7第1項に定める手続き(環境大臣の確認)が必要です。その手続きを経ずして輸出しようとしたとして、環境省は廃棄物の無確認輸出未遂の疑いでB社を大阪府八尾警察署に告発しました。
※出典:近畿地方環境事務所. 「【お知らせ】廃棄物処理法違反に問われていた祝氏貿易株式会社の有罪が確定」(入手日付2023-08-04)
廃棄物の輸出については、 かつてルールが明確ではありませんでした。しかし、有害物質を含む廃棄物が開発途上国に輸出され、環境を汚染していると問題となったことがきっかけで、廃棄物の輸出入の原則禁止に向けて廃棄物処理法を改正、新たに同法第2条の2として「国内処理の原則」を規定しました。また国内処理原則の例外として、同法第15条の4の7で廃棄物を輸出する際には、環境大臣の確認を受けなければならないと規定しています。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第2条の2・第15条の4の7)」(入手日付2023-08-04)

廃棄物処理法を違反した際の主な罰則
廃棄物処理法に違反した場合 、重い罰則が科せられます。例えば、法人に対する罰金では最大3億円の罰金を科すと第32条の1で規定されています。日本の法律で3億円もの罰金を科すものはあまり他に例がありません。ではどのような違反にどの程度の罰則が科せられるのでしょうか。ここでは違反別に廃棄物処理法の罰則を紹介します。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第32条の1)」(入手日付2023-08-04)
無許可営業
無許可営業とは 、都道府県や政令市の許可を得ずに廃棄物の収集・運搬・処分することです。無許可で廃棄物処理業を営業した場合、廃棄物処理法第25条1項1号の定めに従い、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。
また法人の代表者や従業員が、法人の業務として無許可営業した場合には、廃棄物処理法第32条1号によって罰金の上限が3億円以下に引き上げられます。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条の1・第32条の1)」(入手日付2023-08-04)
事業範囲の無許可変更
事業範囲とは 収集運搬業の場合、「積替え保管の有無および取り扱う産業廃棄物の種類」を指し、処分業の場合は「処理の方法」と「取り扱う産業廃棄物の種類」のことを指します。
例えば、収集運搬業者が、「それまでやっていなかった積替保管を新たに行う」、「今まで取り扱っていなかった種類の産業廃棄物を新たに取り扱う」などの場合は「変更許可」を得なければなりません。変更許可証をもらう前に実施してしまうと「無許可変更」となります。
無許可変更した場合や不正な手段で許可を受けた場合、廃棄物処理法第25条により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されます。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条)」(入手日付2023-08-04)
委託基準違反・受託禁止違反
委託基準違反は 処理を委託する排出事業者が対象、受託禁止違反は委託される処分業者・収集運搬業者が対象です。
排出事業者が産業廃棄物を都道府県・政令市の許可を持たない業者に運ばせた場合、委託基準違反に該当します。その際は廃棄物処理法第25条の6により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されます。同様に受託した処分業者・収集運搬業社も処罰の対象です。
また産業廃棄物の収集運搬の許可を持つ業者であっても、委託契約書を作成せずに産業廃棄物の収集・運搬を委託した場合も委託基準違反に該当します。この場合は廃棄物処理法第26条により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方のペナルティが科されます。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条の6・第26条)」(入手日付2023-08-04)
無確認輸出
無確認輸出とは、 環境大臣の確認を受けずに、一般廃棄物または産業廃棄物を海外に輸出することです。無許可輸出をしたものは、廃棄物処理法第25条の12により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されます。無確認輸出は未遂でも罪に問われます。
※出典:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条の12)」(入手日付2023-08-04)
不法投棄・焼却禁止違反
廃棄物の不法投棄や不法焼却 、またそれらを目的とした収集運搬は、廃棄物処理法第16条で禁止されています。違反すると廃棄物処理法第25条の1の14に従い、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条の1の14)」(入手日付2023-08-04)
再委託禁止違反
排出事業者と当初に 委託契約を結んだ処理業者が、廃棄物の処理を他の処理業者に委託をする「再委託」は、廃棄物処理法第7条の14で原則禁止されています。例外的に再委託が認められるのは「再委託基準」を満たしている場合のみです。
再委託禁止違反をした場合、廃棄物処理法第26条の1の1により、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
無許可業者に再委託するなどの悪質なケースでは、廃棄物処理法第25条の1の6により、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科せられます。この罰は受託した無許可業者も同じです。( 廃棄物処理法第14条の1)
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第7条の14・第26条の1の1・第25条の1の6・第14条の1)」(入手日付2023-08-04)
産業廃棄物管理票(マニフェスト)交付義務違反・記載義務違反・虚偽記載
排出事業者が 産業廃棄物の収集運搬・処分を業者に委託して、産業廃棄物を引き渡す際、次のいずれかに該当したときには、廃棄物処理法第27条の2により、1年以下の懲役または100万円以下の罰金を科されます。
● マニフェストを交付しなかったとき(排出管理票交付義務違反)
● 記載すべき事項を記載せずマニフェストを交付したとき(記載義務違反)
● 虚偽の記載をしてマニフェストを交付したとき(虚偽記載)
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第27条の2)」(入手日付2023-08-04)
管理票保存義務違反
マニフェストは5年間の保存が義務付けられています。管理マニフェストの交付・回付・送付をしたら、それぞれの伝票の送付日もしくは送付を受けた日から5年間の保存が必要です。
例えば、マニフェストの紛失を放置した場合、事業者は保管義務違反に問われます。保管義務違反の罰則は、廃棄物処理法第27条の2によって1年以下の懲役または100万円以下の罰金です。
保管義務違反の他にも、マニフェストにかかる義務を実施しない排出事業者および処理業者には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。
※出典:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第27条の2)」(入手日付2023-08-04)
マニフェストの業務負担やストレスを大幅軽減するならDXE Station
「紙の保存や行政報告から解放されたい」しかしながら「JWNETの操作は自信がない」という排出事業者のみなさん、また、そういったお客様をお持ちの収運会社のみなさん。
収運会社にDXEサービスを使って代行起票頂くことが最善の方法だと思います。
DXEシステムは関係者すべての業務効率化につながります。また、産廃業務に精通したスタッフがサポートします。

収運業者のお客様向け

収運・処分業者のお客様向け

収運業者と処分業者をワークフローでつなぐ
クラウドで収集運搬から
処分完了までの業務を一元化!
搬入予定の確認や、
二次マニフェストの
紐づけが簡単に!