廃棄物該当性の判断基準を解説!リサイクル法、有価物、下取りなどについても

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環境汚染の防止や生活環境の保全のため、廃棄物の処理方法に関しては各種法令により厳しく定められています。
しかし、そもそも廃棄物と判断される基準とはなんでしょうか?
廃棄物該当性の判断については、様々な要素を総合的に勘案した上で行うものとされています。
今回のコラムでは廃棄物該当性の判断基準についてまとめてみました。有価物としての売却やリサイクル法の適用などについて考えている方は、是非参考にしてみてください。

廃棄物該当性の判断 – 行政処分の指針

廃棄物該当性については総合的な勘案の上で判断するとされていますが、具体的にはどのような基準があるのでしょうか。以下は、令和3年4月に環境省より出された行政処分の指針に関しての通知を要約したものです。

◆廃棄物該当性の判断について(要約)
(ア)物の性状
利用可能な品質で、生活環境の保全上の支障が発生しないものであること
(イ)排出の状況
排出が計画的なものであり、適切な保管や品質管理がなされていること
(ウ)通常の取扱い形態
製品としての市場があり、通常は廃棄物として処理されていないこと
(エ)取引価値の有無
有償での譲渡がされており、客観的に見て取引に経済的合理性があること
(オ)占有者の意思
占有者に適切に利用もしくは他人に有償譲渡する意思があり、放置や処分の意思がないこと。
ただし上記(ア)~(エ)の判断基準に照らし合わせた結果、廃棄物の脱法的な処理を目的としたものと判断される場合には、占有者の主張と関係なく廃棄物に該当するものと判断される。

参照:令和3年4月14日 環循規発第2104141号「行政処分の指針について」

その物が廃棄物に該当するかどうかは、世間一般から見て価値がある物かどうかが大きな判断基準となると言えます。
したがって(オ)に記載されている通り、法の規制を逃れる目的で有償譲渡を行ったり、「これは(自分にとっては)有価物である」と占有者が主張したとしても、総合的に勘案した結果、そうと認められない場合は廃棄物として扱われます。


DXE株式会社資料DL

廃棄物該当性がないと判断される例

有価物

排出事業者にとって不要となった物でも、その物自体にまだ価値が残っている場合は、廃棄物ではなく価値のある物=「有価物」として扱うことができます。
廃棄物として処理するか、有価物として扱うかはその物の状態や排出された状況、引取価値の有無や占有者の意思などを照らし合わせて総合的に判断されますが、大きな目安としては「有価物を売却した代金と運搬費を相殺しても、排出側に収入があるか否か」が判断の基準となります。

売却代金 > 運搬費 → 有価物(廃棄物処理法の対象外)
売却代金 ≦ 運搬費 → 廃棄物(廃棄物処理法の対象)

もし有償で売却したとしても、その金額が運搬費を下回っているケースは「逆有償」(手元マイナス)と呼ばれ、原則として廃棄物処理法の適用を受けることになります。
たとえば低価格のスクラップなどが相場の影響で「逆有償」になった場合は、売却先への引き渡しが終わり有価物になるまでの間は「廃棄物」として扱わなければなりません。通常の廃棄物の委託と同様にマニフェストの作成が必要となり、処理業者は廃棄物処理業の許可が必要になります。

一方、上記のような金額での判断基準が当てはまらないケースもあります。
最も顕著な例として「ペットの死体」があげられます。ペットの死体は基本的に有価での売却は出来ませんが、飼い主にとっては非常に大切で価値のある物になります。
このような宗教的・社会的慣習等により埋葬や供養が行われる物については、社会通念上、廃棄物に該当しないとされています。その逆に、埋葬や供養の対象としない動物の死体は「一般廃棄物」に該当し、さらに畜産農業に係る物に関しては「産業廃棄物」となります。

このように、廃棄物か有価物かの判断は様々な状況を加味した上で複合的に行われます。

参照:環境省(旧厚生省)環計第七八号「動物霊園事業に係る廃棄物の定義等について」

リサイクル法の対象品目

循環型社会の形成を推進する今日においては、廃棄物か有価物かにかかわらず、不要となった物に関してできる限りリユース・リサイクルをすることが推奨されています。
そのために制定された、各種リサイクル法の対象品目に該当する物に関しては、条件を満たすことで廃棄物該当性がないと判断される場合があります。

リサイクル法は1995年に制定された「容器包装リサイクル法」を初めとして、「建設リサイクル法」「食品リサイクル法」など様々な種類があり、それぞれに専用の回収スキームが存在します。

そのうち「家電リサイクル法」の対象の廃家電4品目に関しては、その商品を購入した小売店や市区町村等に直接回収を依頼する場合に限り、廃棄物該当性がないと判断されます。
ただし、引き渡し場所に運ぶために別の収集運搬業者を挟む場合、その間は廃棄物として取り扱う必要があるため注意が必要です。

法律 対象 回収方法
家電リサイクル法 家電4品目
・エアコン
・テレビ
・冷蔵庫・冷凍庫
・洗濯機・衣類乾燥機
※業務用に設計されているもの、天井などに埋め込まれているエアコンは除く
小売店(購入したお店や廃棄家電と入替えをする新品を購入したお店)が窓口となって回収
※通常の産業廃棄物として処分することも可能だが、適切な処理が出来る事業者に委託する必要がある。

リサイクル法対象外であっても衣類や廃プラスチック・廃食用油などは同様の動きがあり、今後もリユース・リサイクルは様々な品目で進んでいくものと思われます。

参照:環境省「日本の廃棄物処理の歴史と現状」
参照:東京都環境局「自動車リサイクル法について」

下取りサービスの利用

下取りとは、それまで使っていた古い商品を店側が買い取り、顧客はその分を新しい商品の購入資金にあてることができるというサービスです。
この下取りの際に古い商品を運搬することについて、かねてより環境省は「収集運搬業の許可が不要である」旨を通知しており、令和2年3月に通知された「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて」においても同様としています。
よって事業所から排出された産業廃棄物であっても、下取りの条件を満たせば廃棄物の該当性はないと判断されます。

新しい製品を販売する際に商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り、収集運搬する下取り行為については、産業廃棄物収集運搬業の許可は不要であること。

参照:環循規発第2003301号「産業廃棄物処理業及び特別管理産業廃棄物処理業並びに産業廃棄物処理施設の許可事務等の取扱いについて」


家電等においてよく行われている商習慣ですが、正しく運用することでリサイクルの推進につながるシステムですので、うまく活用するとよいでしょう。

産業廃棄物処理業許可が免除されるケース

廃棄物該当性の判断基準には当てはまるものの、産業廃棄物ではなく一般廃棄物として処理できるケースも存在します。あわせて確認していきましょう。

事業系一般廃棄物、併せ産廃

事業系一般廃棄物や「併せ産廃」と呼ばれるものについては、たとえ事業活動により生じた廃棄物であっても一般廃棄物として処理されます。
また、大規模災害時においては、災害廃棄物は基本的に一般廃棄物として処理されるため、産業廃棄物とはみなされません。

内容
事業系一般廃棄物 事業活動により生じた廃棄物であっても「紙くず」「木くず」「繊維くず」「動植物系残さ」などは業種等が限定されており、事務所やコンビニなどから発生した場合は事業系一般廃棄物となり、一般廃棄物として処理される。
併せ産廃 担当する自治体が認めた場合に限り、産業廃棄物であっても一般廃棄物と一緒に処理することが許されています。 これを通称「併(あわ)せ産廃」制度といいます。あくまで中小企業等への対策として、各自治体ごとに基準を定めて実施している制度のため、あらかじめ地元の市区町村等の実施状況を確認することが望ましいでしょう。

専ら物、その他制度の対象品目

下表に該当するものは産業廃棄物の処理に関する特例が適用され、許可が免除されており、マニフェストも一部不要とされています。いずれのケースも契約書については免除されません。
委託するにあたり、該当する業者であることを「認定証」等で確認する必要があります。また、マニフェストが不要とされる場合でも、何らかの手段で適正処理されたことを確認することが望ましいと言えます。

制度 内容 契約書 マニフェスト
専ら物 専ら再生利用(リサイクル)を目的とする者に対する配慮
古紙(紙くず)、くず鉄、空きビン類、古繊維(繊維くず)
必要
広域認定制度 「拡大生産者責任」の考え方から、メーカーが主導となりその製品の処理を広域的に行う制度 必要
再生利用認定制度 生活環境の保全上支障なく再生利用できる者が、環境大臣から認定を受けることができる制度
廃プラスチック類、ゴムタイヤ、建設無機汚泥、金属含有物等(セメント会社や鉄鋼会社が認定を取得)
必要
無害化処理認定制度 有害性のある廃棄物を高度な技術を有する者が、環境大臣から認定を受けることができる制度
石綿を含む廃棄物、PCB廃棄物の中でも低濃度のもの
必要 必要
自主回収・再資源化事業計画の認定 プラスチック資源循環法に定める自主回収・再資源化事業計画の認定を受ける制度 必要 必要

おわりに

廃棄物処理およびリサイクル関連の法令は複雑でわかりにくいですね。運用する上では、環境省等から発信される通知まで理解しておく必要があります。
そもそも複雑な実態に合わせる必要があるのに加え、ここ数十年で廃棄物に対する考え方も大きく変わりました。また、持続可能社会に向けた変革が求められる中、これからも大きく変わっていくものと思われます。
これからも有益な情報をお届け出来れば幸いです。


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