炭素税とは?導入する目的からメリット・デメリット、諸外国・国内の現状まで解説!

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2050年までに実現を目指すとされているカーボンニュートラル(二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させ、全体の排出量をゼロにすること)に向けて、国内ではさまざまな取り組みが実施されています。そのうちの一つが、カーボンプライシングの一種である炭素税です。

炭素税のワード自体は聞いたことがあるものの、その具体的な内容や税率、税金の仕組み、用途などの詳細を理解できていない人も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、炭素税の概要や混同されがちな地球温暖化対策税との違い、導入する目的、メリット・デメリットをご紹介します。記事後半では、炭素税の使い道や、諸外国・国内の現状まで網羅的に解説するので、炭素税への知識や理解を深めたい方はぜひ参考にしてください。

炭素税とは?

炭素税とは、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料の利用に対し、排出されたCO2(二酸化炭素)の量に応じて企業や個人に課される税金です。炭素税の導入により、脱炭素化に取り組むインセンティブが付与されたり、技術・イノベーションの発展や普及が促進されたりする効果が期待されています。

日本では2012年より段階的に導入が進んでおり、二酸化炭素排出量の削減や企業間の競争力強化、消費者の問題意識の向上などさまざまな効果が期待されています。

なお炭素税は、カーボンプライシングの一種です。カーボンプライシングとは、地球温暖化対策の一貫として、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出に対して価格をつける政策手法を指します。政府が実施するカーボンプライシングには、炭素税以外にも、排出量取引制度やエネルギー課税、証書・クレジット制度、FIT賦課金などが挙げられます。

※参考:環境省「地球温暖化対策のための税の導入」 ,(入手日付2024-05-06).

地球温暖化対策税との違い

地球温暖化対策税と炭素税は、明確に異なるものではありません。排出される炭素に対して課税をするのがいわゆる炭素税であり、それが日本では「地球温暖化対策税(正式名称:地球温暖化対策のための税)」という名称で導入されています。

炭素税は世界各国で導入されており、国によって名称や税率、課税となる対象などは様々です。

炭素税の課税金額

日本の炭素税の課税金額は、化石燃料ごとの二酸化炭素排出量の原単位を用いて、それぞれの税負担が排出量1トン当たり289円に等しくなるよう設定されています。

各燃料の単位量(キロリットル又はトン)当たりの税額は、2024年時点で石油は760円/kl・ガスは780円/t・石炭は670円/tです。

2012年の導入当初は現在の税率より低く、急激な負担増加を防ぐ目的で徐々に引き上げられ、3年半かけて2016年に当初予定していた最終税率にまで引き上げられました。

出典:環境省「地球温暖化対策のための税の導入」

導入された初年度の税収は391億円、最終税率にまで引き上げられた平年度以降(2016年以降)は2,623億円が見込まれています。この税収は、省エネルギー対策・再生可能エネルギー普及・化石燃料のクリーン化などに活用されます。具体的には、リチウムイオン電池をはじめとする低炭素技術集約産業の国内誘致や省エネ設備導入の推進などです。

※参考:環境省「地球温暖化対策のための税の導入」 ,(入手日付2024-05-06).


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炭素税を導入する目的

炭素税を導入する主な目的は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量を削減し、地球温暖化対策を促進することです。具体的にどの程度の効果が見込めるのか、環境省が公表しているので見ていきましょう。

炭素税の導入により地球温暖化対策を進めると、2020年において、1990年比で価格効果・財源効果を合わせたエネルギー起源の二酸化炭素削減効果は、0.5〜2.2%(約600万万〜約2400千万トンの二酸化炭素削減)です。

また炭素税には、二酸化炭素排出量削減だけでなく、企業や消費者への行動変容を促す効果があるともされています。企業にとっては、税率が設定されていることで一貫した価格・コストの指標を把握できるため、脱炭素化に向けたインセンティブが働く他、投資の予測がしやすくなる効果も期待できます。家計負担も一定数増加するため、消費者の地球温暖化に対する問題意識を高めることにもつながります。

炭素税は何に使われる?

炭素税は、カーボンニュートラルを実現するための手段の一つとして導入が検討されています。そのため、用途もそれを促進するものへと活用されます。

例えば、供給サイドに対する投資やイノベーションの促進、脱炭素事業創出支援、低炭素・脱炭素技術の開発支援などです。需要サイドの構造転換にも活用でき、脱炭素技術の普及や消費の促進などが挙げられます。

ここでは環境保護に関する用途を述べましたが、海外諸国では法人税・所得税の引き下げや、社会保険料の負担軽減、交通インフラの整備、教育資金などにも用いられています。

炭素税を導入するメリット

炭素税を導入するメリットには、以下が挙げられます。

  • 地球温暖化の阻止につながる
  • 省エネ製品の開発に拍車がかかる
  • 環境問題などに使う財源が増える

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

地球温暖化の阻止につながる

炭素税を導入すると、地球温暖化の阻止につながります。

二酸化炭素排出に伴い課税されるため、これらの製品・サービスの価格が上昇します。これにより企業や消費者は、できるだけ環境に優しい製品・サービスを使うように行動変容を起こすため、地球温暖化防止に対する取り組みを促進できるでしょう。

省エネ製品の開発に拍車がかかる

エアコンや冷蔵庫などの電化製品は近年、利便性を向上させつつも、エネルギー消費が少ない製品の開発が進んでいます。炭素税を導入すれば、さらに省エネ製品の開発に拍車をかけることが可能です。

炭素税の導入により、増税分が製品の価格に上乗せされるため、消費者はより二酸化炭素排出量が少なく環境に優しい製品を利用するインセンティブが高まります。この市場動向は、製品を供給する側に対して、より環境に優しい製品の開発に向けた企業努力を促進するでしょう。

環境問題などに使う財源が増える

環境問題に活用できる財源が増える点も、炭素税導入のメリットです。地球温暖化の阻止や気候変動に対する問題への政策に活用できます。その他、再生可能エネルギーの開発や普及、研究にも役立てられます。

なお、炭素税を活用できるのは環境問題の解決のみではありません。先述した通り、国内におけるさまざまな問題を解決するために用いられており、スイスでは基礎医療保険の負担軽減に活用され、カナダでは低所得者層への税控除・還付措置などが取られたりしています。

炭素税を導入するデメリット

炭素税の導入には、メリットばかりではありません。炭素税への理解を深めるためには、デメリットも押さえておく必要があります。

炭素税導入によるデメリットは「一部業界にとっては負担が増える」「国民の税金負担が増える」の2つです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

一部業界にとっては負担が増える

炭素税の導入により、一部の業界にとっては負担が増えることになります。特に化石燃料を大量に使用する、化学業界や鉄鋼業界にとっては大きなダメージとなることが予想されます。炭素税によるコスト増加が他企業と比較して著しい場合は、より大きな負担となるでしょう。規制を強めると、炭素税を導入していない国に活動拠点を移す「産業の空洞化」が起こる可能性もあります。

また、日本全体の国際競争力の低下も懸念されており、こうした影響も踏まえた枠組みや仕組みの構築が急務です。

国民の税金負担が増える

炭素税の導入は、国民の税金負担も増加させます。特に日常出費に占める生活必需品の支出割合の多い低所得者層ほど、その負担は大きくなるでしょう。

炭素税による税収を再分配するなど、負担を軽減する取り組みや対策が必要です。

炭素税を導入している諸外国の現状

日本以外にも、世界的に見て炭素税を導入している国はいくつかあります。ここからは、炭素税を取り入れているフィンランド・スウェーデン・デンマーク・アイルランドなどの北欧諸国の現状を詳しく見ていきましょう。

フィンランド

フィンランド

フィンランドは、1990年に世界に先駆けて炭素税を導入した国で、暖房用燃料や輸送用燃料消費が課税対象となっています。

税率は2020年8月時点で、暖房用燃料に対しては二酸化炭素排出量1トン当たり53EUR(約9,124円)、輸送量燃料に対しては77EUR(約13,255円)です。

二酸化炭素量が排出される場合でも、石油精製プロセスや航空機・船舶輸送、発電に使用される燃料は免税されています。また、バイオエネルギーを含むものはその含有割合に応じて減税され、莫大なエネルギーを利用するエネルギー集約型産業に対しては還付措置が取られます。

※円換算額:2024年6月時点
※参考:環境省「炭素税について」 p53,(入手日付2024-05-07).

スウェーデン

スウェーデン

スウェーデンは、1991年に炭素税を導入しています。フィンランドと同様に、暖房用燃料や輸送用燃料消費が課税対象で、2021年時点の税率は二酸化炭素排出量1トン当たり1,200SEK(約18,139円)です。

欧州排出量取引制度(EU-ETS)対象企業や発電用燃料に対しては、免税されています。導入当初は産業部門に軽減税率が適用されていましたが、2018年に一本化されました。

※円換算額:2024年6月時点
※参考:環境省「炭素税について」 p54,(入手日付2024-05-07).

デンマーク

デンマーク

デンマークは1992年に、石炭・石油などの化石燃料や廃棄物の消費に対して、炭素税を導入しました。2021年時点の税率は、二酸化炭素排出量1トン当たり178.5DKK(約4,119円)です。

導入当初は産業用燃料に対して、大幅な軽減税率を適用していましたが、徐々に値上げを行い2010年には税率を統一しています。それ以降の税率の引き上げに関しては、インフレ率に応じて設定されます。

欧州排出量取引制度(EU-ETS)対象企業や発電用燃料、バイオエネルギーは免税対象です。

※円換算額:2024年6月時点
※参考:環境省「炭素税について」 p56,(入手日付2024-05-07).

アイルランド

アイルランド

各国の炭素税導入のきっかけは「二酸化炭素の排出量削減」が主な目的ですが、アイルランドは異なります。リーマンショック後の経済危機を脱するために、法人税・所得税以外の財源確保を目的として、2010年に石油・天然ガスを対象に炭素税を導入し、その後2013年からは石炭も課税対象となりました。

2020年10月以降の税率は、二酸化炭素排出量1トン当たり33.5EUR(約5,766円)で、2030年までに、100EUR(約17,212円)にまで引き上げることを発表しています。欧州排出量取引制度(EU-ETS)対象企業や発電用燃料、化学、冶金・鉱物製造工程に使用される燃料などは、免税対象です。

※円換算額:2024年6月時点
※参考:環境省「炭素税について」 p58,(入手日付2024-05-07).

日本の炭素税の今後は?

日本の炭素税(地球温暖化対策税)の税率は、二酸化炭素排出量1トン当たり289円で、導入の進んでいる欧州諸国に比べると10分の1にも満たない低い税率となっています。

2023年に設立されたGX推進法に伴い、2028年からは化石燃料の輸入業者に課される賦課金、2033年からは排出量取引の導入が予定されており、今後も脱炭素に向けた政策は増えていくと考えられます。

エネルギーコスト増加による企業利益の圧迫や国際競争力の低下、国民の税負担の増加などの問題を解決しながら、いかにカーボンニュートラルへの歩みを進めていくかが今後の議論のテーマとなるでしょう。

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