
CCSは発電や企業活動で排出されたCO2を回収・貯留して再利用を目指す技術です。地球温暖化対策が世界共通の課題に挙げられる中、従来の排出量削減に加えた新たな対策として注目され始めています。
大気中のCO2を分離・回収するDACCS、バイオマス資源からCO2を回収・貯留するBECCSなどの手法があります。この記事ではCCSが重要となった背景や主な方法、再利用を促進するCCUSについて説明します。
目次
二酸化炭素(CO2)の回収技術が重要視されたきっかけ
地球温暖化対策は国際社会の一員となる全ての国が意識すべき基本的なルールの一つです。近年、CO2の削減を目指すだけでなく、回収・再利用する動きが活発化しています。
まずはCO2の排出量の削減が求められる背景について解説します。

パリ協定の発効
CO2の回収が重視され始めたのは、気候変動に関する国際的な枠組みである「パリ協定」の批准が関係しています。2015年のCOP21(気候変動枠組条約締約国会議)にて採択されたもので、規模や発展状況に関わらず、全ての国が遵守すべきルールの一つです。
パリ協定では「産業革命以前と比較して平均気温の上昇を2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」「早急に温室効果ガスの排出量をピークアウトし、吸収量と均衡を図るようになること」が決まりました。
批准国はCO2の削減と、次項で詳しく解説するカーボンニュートラルの実現に向けて、国を挙げた施策の推進を迫られています。
※参考:環境省「環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第1部第2章第2節 パリ協定を踏まえた我が国の気候変動への取組」(参照 2024-09-26)
カーボンニュートラル宣言
カーボンニュートラル宣言とは2020年10月に当時の菅内閣総理大臣が所信表明演説で出した発言で、平たくいえば、2050年のカーボンニュートラルな社会の実現を誓った内容です。
地球温暖化を招くCO2は極力排出しないことが求められますが、産業活動の継続が前提となると、排出量の完全ゼロ化は現実的ではありません。従って排出量と吸収量・除去量を差し引きして、CO2の総量実質ゼロを目指すカーボンニュートラルの推進が重要になるのです。
すでに水力や地熱などの再生可能エネルギーを使用した発電方法の推進をはじめ、さまざまな対策が実行に移されています。
二酸化炭素(CO2)を回収するCCSとは?
CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)はCO2の回収や貯留技術を指す言葉です。大気中のCO2を除去し、海底や地中に貯留することが可能になれば、地球温暖化対策に大きく貢献します。
上記のように排出量をできる限りゼロに近づける他、空気中のCO2を吸収して総量を減らす「ネガティブエミッション」に取り組む動きが出始めています。
方法は大きく自然プロセスを人為的に加速させるアプローチと、工学的プロセスの推進に分かれ、前者は植林によるCO2の吸収、CO2を含む岩石を粉砕・散布して自然風化を促進させる活動が代表的です。
ここでは後者の工学的アプローチの主な手法である「DACCS」と「BECCS」について解説します。
DACCS
DACCSは空気中のCO2を分離・回収する技術の総称を表すDACと、取り出した後に貯留するCCSを合わせた言葉です。化学吸着法や化学吸収法、膜分離法、深冷分離法などの手法が存在し、共通する特徴は設備や機器の設置面積が小さく、場所を取らずに済むことです。
DAC技術の先進的な存在である欧米諸国では研究開発や実証実験の動きが活発で、一般企業で事業化に成功した事例も出始めています。後を追うように日本でも技術の浸透・普及に取り組んでおり、今後の目覚ましい発展が期待される領域となっています。
BECCS
BECCSはバイオマス発電とCCSを組み合わせた技術の総称です。
バイオマス発電とは、バイオマス燃料を使った発電方法のこと。植物は光合成の際に大気中からCO2を取り込むため、バイオマス発電の燃焼時にCO2を排出しても、ライフサイクル全体で考えると排出量は実質ゼロとみなすことができます。その上で、燃焼時に排出したCO2を回収すれば、大気中のCO2を削減したと考えることが可能です。
BECCSは画期的な手法として注目され始めていますが、プラントの建設が必要な点や、CO2の除去コストがかかる点などが課題としてあげられます。
二酸化炭素(CO2)を回収する3つの手法
大気中からCO2を回収するDACCS関連の技術は開発が活発で、実用化も進んでいます。特に高圧・高濃度のCO2を含むガスの場合、比較的容易な抽出が可能なため、液化天然ガスの精製プラントや石炭火力発電施設で商用化が普及し始めました。
ここでは、二酸化炭素を回収する主要な3つの技術の仕組みや課題について解説します。
化学吸収法(アミン吸収法)
化学吸収法は吸収液に浸してCO2を吸収する方法です。化合物のアミンを水溶液にして使う場合があることから、アミン吸収法とも呼ばれます。
化学反応を起こして吸収液にCO2を吸収させ、水溶液を加熱することでCO2を分離・回収します。吸収液にはアルカノールアミンの他、炭酸カリウムを含有したアルカリ塩水溶液やアンモニア水溶液も使われます。
化学反応を活用して純度が高いCO2を取り出せるため、無駄なく効率的な抽出が可能な方法です。化学吸収法は1長い歴史があり、天然ガスや水素をはじめ、幅広い実績を持ちます。
一方で加熱に伴うコストが多大になりやすいこと、腐食性を持つ触媒を使用した場合、プラントの腐敗が進むことが問題視されています。
物理吸着法
物理吸着法は吸着剤の圧力や温度差を利用して、CO2を分離・回収する方法です。一般的には活性炭やゼオライトにガスを噴射してCO2を吸着させます。
高圧かつ低温の環境で吸着液を使うことでCO2を吸収してから、減圧の実施、あるいは大気圧環境に移動後、高温にしてCO2を分離・回収します。常温下で温度を変えずに吸着材を加熱させて取り出すことも可能です。
物理吸着法は圧力エネルギーを活用してCO2を吸収可能なため、化学吸収法と比較して、分離時のエネルギーが少なくて済む傾向があります。しかし、吸着・脱着の工程に時間を要するため、迅速なサイクルの実現に適した吸着剤の開発が課題とされています。
膜分離法
膜分離法はCO2を透過できる膜に通過することで分離・回収する方法です。
ガスの圧力差により透過を促進するため、比較的小さなエネルギーで効率的にCO2を抽出できます。
大規模なプラントを設置する必要なく、簡単な設備で済むことが利点です。ただし、ろ過技術の側面から、高濃度のCO2を抽出できない点が課題です。
二酸化炭素(CO2)の回収技術によってもたらされること
CO2の回収技術がもたらすのは地球環境の保全にとどまらず、新たなビジネスモデルの創出も促進します。具体的にはクレジット(排出権)取引が一つの収入源になると見られています。
今までも、各企業に課されるCO2の削減目標に応じた取引は行われていました。従来は過剰な排出削減に成功した企業が、未達に終わった企業とクレジットを売買する方法が取られていました。CO2の回収技術が実用化した場合、中長期的な需要が期待できます。
なぜなら脱炭素化の進展によって発電設備が減少し、企業が独自にエネルギー削減に取り組む必要性が薄れたとしても、マイナスを目指すDACならば完全にはニーズが落ちないと考えられるためです。
またCO2を排出しない燃料が登場し、新たなビジネスモデルの構築を呼び込むと期待されています。例えば水素と炭素から人工的に精製可能な二酸化炭素含有量ゼロの資源「Eフュール」は昨今、世界的にも注目を集めています。
回収した二酸化炭素(CO2)の利用・貯蓄をするCCUSとは?
回収したCO2を地中や海底に閉じ込めても、単に貯留するだけでは資源の再利用にはつながりません。分離・回収した二酸化炭素をエネルギー資源として活用するCCUSの実施が求められます。
CO2のリサイクルが進めば、大気中の有害物質を抑制しながら、素材や燃料の有効な活用が可能です。以下では、回収したCO2にはどのような使い道があるか解説します。
化学品
CO2はさまざまな化学品として生まれ変わります。ウレタンやDVDに使われるポリカーボネート、多用途に転用できるポリプロピレンやポリエチレンなどへの活用が考えられます。
分離・貯留したCO2はプラスチック製品の新たな原料にも代替可能です。私たちの身の回りを取り巻くプラスチックは石油由来のナフサが主たる原料です。
植物や動物から精製したバイオマスナフサに取って代われば、原料の枯渇の心配がなくなるため、化学関連の企業は積極的にバイオマスの活用法を模索しています。
燃料
再生可能エネルギーの一種として生物由来のバイオマス燃料に利用することも可能です。メタノールやエタノール、ディーゼルなどはCO2由来の燃料としてよく使われており、回収したCO2を再利用する際の有力な選択肢です。
他にも、CO2内に存在する微細菌類はディーゼル燃料やジェット機の燃料に使えます。
鉱物
CO2は、コンクリート製品やコンクリート建造物の原料に使用できる場合があります。コンクリートの原料となるセメントの製造過程では石灰石を用いるため、大量のCO2の発生が避けられません。
CCUSでは抽出したCO2をコンクリート材の内部に吸着し、大気中への流出を防ぐ技術が登場しています。新たな原料の生成時だけでなく、解体ガラや未使用の戻りコンクリートから生成した再生材にも封じ込めることが可能です。
その他
他にも海洋生物や海藻類にCO2を取り込ませて海中に滞留させるブルーカーボンや、人口光合成も使い道の一つです。地上の森林が自らの機能でCO2を吸収することをグリーンカーボンと呼びますが、ブルーカーボンは同様の行為を海中で実現します。
人口光合成とは、触媒を用いて二酸化炭素と水、日光から再生可能エネルギーや別の原料を生成することです。自然資源とリサイクル資源のみでエコなエネルギー循環をもたらす仕組みのため、脱炭素化の促進に寄与すると見られる技術です。
CCSとCCUSの問題点
CCSやCCUSの普及を阻害する課題は、製造設備のコストならびに貯留可能な地層が見つかりにくいことです。一度地下に密閉しても、地理的に浅い場所であれば地上に漏れ出すリスクがあります。安全面の懸念から埋め込み地は厳選する必要があり、条件を満たすエリアは限られることが難点です。
CO2の再利用は国際的・社会的にニーズが高いとはいえ、上記の問題を解決しなければ参入する企業は増えず、地球温暖化対策への効果の発現は難しくなるでしょう。
電子マニフェストの導入ならDXE Station
収集運搬業者・処分業者の方で「排出事業者がマニフェスト登録をなかなかしてくれない……」や「マニフェスト起票時のミスが多い……」といった悩みを持つご担当者の方はいませんか?
DXE Stationでは、登録に不慣れな排出事業者に代わって、収集運搬業者がマニフェストの起票を行える代行起票をはじめ、便利な機能を多数そろえています。
また、かんたん受注登録機能で、廃棄物に関するすべての受注をクラウドで一元管理することが可能です。
「排出事業者に登録を催促するのはもうイヤ……」、「紙マニフェストから解放されたい!」という方の「産廃業務のDX化」をDXE株式会社が支援します。

収運業者のお客様向け

収運・処分業者のお客様向け

収運業者と処分業者をワークフローでつなぐ
クラウドで収集運搬から
処分完了までの業務を一元化!
搬入予定の確認や、
二次マニフェストの
紐づけが簡単に!