
繊維くずは特定の業種から排出された場合は産業廃棄物、それ以外の場合は一般廃棄物になるため、分類や処理方法がやや複雑です。適切に処理するためには、繊維くずの概要はもちろん、具体的な処理方法などを正確に把握しておくことが欠かせません。
そこで本記事では、繊維くずの概要や排出される場所と種類、処理方法などを網羅的に解説します。繊維くずの処理にお困りの方は、ぜひ参考にしてください。
繊維くずとは?
産業廃棄物の繊維くずとは、繊維製品の製造業を除く繊維工業や建設業などから排出される廃棄物です。詳しくは後述しますが、木綿くず・レーヨンくず・布くず・羊毛くず・じゅうたん・PCB(ポリ塩化ビフェニル)が染み込んだ天然繊維くずなどが該当します。
環境省が公表した資料「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」によると、令和4年度の繊維くずの排出量は89千トンです。そのうち、52千トンが(57.8%)再生利用、25千トン(28.2%)が減量化、13千トン(14.0%)が最終処分されています(※)。
繊維くずは、産業廃棄物に分類されるため、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に基づき適切に処理しなければなりません。また、PCB(ポリ塩化ビフェニル)が染み込んだ天然繊維くずは、特別管理産業廃棄物(特定有害産業廃棄物)に分類され、さらに厳しい処理基準が設定されている点に注意してください。
なお産業廃棄物以外の繊維くずは、一般廃棄物として処理できます。
※参考:環境省「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)」 p93(入手日付2024-07-04)
繊維くずが排出される場所と種類
産業廃棄物に分類される繊維くずが排出される場所と種類は、以下の表の通りです。
発生場所 | 繊維くずの種類 |
---|---|
建設現場 | 糸くず・木綿くず・羊毛くず・麻くずなど |
繊維・紡績工場 | ロープ・布くず・畳・じゅうたんなど (衣類生産により生じる橋切れは一般廃棄物) |
発生場所を問わない | PCB(ポリ塩化ビフェニル)が染み込んだ天然繊維くずなど |
建設現場や繊維・紡績工場から排出される繊維くずの中には、ナイロンなどの合成繊維が含まれる場合があります。これらは繊維くずではなく、「廃プラスチック類」という別の種類の産業廃棄物に分類され、処理方法が異なるため注意してください。天然繊維と合成繊維の両方を含む製品を処理する際は、適切な処理方法を確認するために収集運搬・処理業者や地方自治体に相談してみるのがよいでしょう。
繊維くずの処理方法
繊維くずの処理方法は、大きく分けて「リサイクル」と「焼却・埋め立て」の2つです。それぞれの方法を詳しく見ていきましょう。
リサイクルする
環境省が公表した資料「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」によると、令和4年度の繊維くずの再生利用量は全体の58%です。これは汚泥(7%)・廃アルカリ(20%)・廃酸(29%)・動物の死体(38%)・廃油(45%)に次ぐ低さとなっています(※)。
繊維くずのリサイクル方法には、主に以下が挙げられます。
- マテリアルリサイクル
- ケミカルリサイクル
- サーマルリサイクル
- ウエスとしてリサイクル
- 反毛としてリサイクル
- 衣類としてリサイクル
- 動物の敷きわらとしてリサイクル
それぞれのリサイクル方法の概要や特徴などを解説します。
※参考:環境省「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版) 」p34(入手日付2024-07-04).
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクル(Material Recycle:材料リサイクル)とは、廃棄物を新たな製品・商品の原材料にするリサイクル方法です。収集した廃棄物を、適切に処理した上で、生産・製造プロセスへと戻します。
マテリアルリサイクルのメリットは、資源を効率的に利用でき、環境負荷を大幅に軽減できる点です。一方で、リサイクルの質を高めるためには徹底した分別が必要になる点や、繰り返し再利用すると品質が落ちる点には注意しましょう。
詳しくは後述しますが、繊維くずの場合、反毛としてリサイクルする方法と、衣類としてリサイクルする方法があります。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクル(Chemical Recycle:化学的再生法)とは、廃棄物を化学的に処理した後に、元の製品や他の製品の原材料などを再生するリサイクル手法です。先述したマテリアルリサイクルと異なり、ケミカルリサイクルでは化学構造が変わるため、再生された資源が以前とは異なる用途に使用される場合もあります。
ポリエステルを含む化学繊維は、ケミカルリサイクルにより分解され、新たな原材料に使用されます。
ケミカルリサイクルのメリットは、混合物や汚染があってもリサイクルできる点や、二酸化炭素の排出量・天然資源の使用量の削減につながる点です。一方で、同じ種類の繊維製品を大量に集めなければならないため、効率的な回収システムを確立させる必要があります。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクル(Thermal Recycle:熱回収)とは、廃棄物を燃焼させる際に発生する熱エネルギーを回収するリサイクル手法です。主に廃プラスチック類をリサイクルする際に用いられる手法ですが、繊維くずのリサイクルにも適用されます。繊維くずの場合は、金属などを取り除いた後に、他の廃棄物と混合して固形燃料として利用されるのが一般的です。
この固形燃料はRPF燃料(Refuse Paper and Plastic Fuel)と呼ばれるもので、繊維くず以外にも、マテリアルリサイクルが困難な古紙や廃プラスチック類などが含まれています。製紙・鉄鋼・石灰製造などさまざまな業種で利用できる他、熱量をコントロールしやすいため工場での作業を効率的かつ安定的に実施できる点がメリットです。また、ごみの排出量を減らし、資源の効率的な利用を促進できます。
ウエスとしてリサイクル
ウエスとしてのリサイクルは、マテリアルリサイクルに含まれます。
ウエスとは、使用済みの衣類や布製品などを切断し、清掃や機械のメンテナンスに使用する布にしたものです。「廃棄物」「ごみ」を意味する英語「Waste(ウェイスト)」が語源となっています。
反毛としてリサイクル
反毛としてのリサイクルも、マテリアルリサイクルの一種です。
反毛とは、廃棄された繊維製品や不要となった衣類を回収した後、針状の機器で織りをほどき、繊維製品を毛羽立たせて元の綿または網状の単繊維に再生したものを指します。具体的には、糸くずやぼろ布、裁断くず、古着などを反毛機や割糸機で処理し、再び繊維原料として活用します。
衣類としてリサイクル
繊維くずは衣類としてのリサイクルも可能です。その際は、クリーニングなど適切な処理を施した後に、中古衣類として再利用します。
動物の敷きわらとしてリサイクル
動物の敷きわらは、牛や豚などの家畜の寝床に利用されるものです。畜舎の防寒材に適しており、天然素材であるため使用後は土に還り、栄養豊富な土壌を育みます。
繊維くずのうち、植物由来の天然素材である、い草からできた畳は、動物の敷きわらに再利用できます。
焼却・埋め立て処理する
全ての繊維くずがリサイクルされるわけではなく、それ以外のものは焼却・埋め立て処理がされます。
有害物質や有機物の濃度が、埋立判定基準を満たしている場合、繊維くずが埋め立てられるのは管理型最終処分場です。管理型最終処分場では、廃棄物の分解や有害物質の溶出によるガス・汚水の発生・流出を防止するため、貯留構造物・遮水設備・集水設備・ガス排除設備などが設置されています。
有害物質が埋立判定基準値を超えた場合は、遮断型最終処分場で埋め立てられます。水分との接触を防止する覆蓋施設、腐食防止加工が施された水密性鉄筋コンクリート容器により、有害物質を完全に隔離する構造です。
PCBを含んだものは遮断型最終処分場でも埋め立てできず、低濃度の場合、まずは無害化処理を実施する必要があります。環境大臣が個別に認定する無害化処理認定事業者、もしくは都道府県知事(一部では市長)からPCB廃棄物に関わる特別管理産業廃棄物の処分業許可を得た事業者のいずれかに依頼しなければならないので、取得しているかは事前にチェックしましょう。
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