
産業廃棄物の排出事業者および処理業者の双方とも「行政への定期報告(年次報告)」が必要になります。
提出先は都道府県および政令市等、提出期限は毎年6月30日。産業廃棄物に関係する行政への定期報告は以下のとおりです。
排出事業者 | マニフェスト交付等状況報告書 多量排出事業者による処理計画書及び実施状況報告書 |
---|---|
処理業者 | 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)運搬実績報告書 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)処分実績報告書 |
マニフェスト交付等状況報告書については、マニフェストを交付した全ての事業者が対象となります。罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)もあるので注意が必要です。
ただし電子マニフェスト交付分については不要なので、全てのマニフェストを電子マニフェストで交付していれば報告自体が不要です。
こちらについては、以前のコラムに記載していますので、詳しくは下の記事をご覧ください。
マニフェストを交付することになった時点で、処理業者に相談するなどして、行政への定期報告への対応も考慮しておくことが望ましいと言えます。電子マニフェストに対応している業者を選定するのが良いでしょう。
今回のコラムでは「産業廃棄物処理業の実績報告」と「多量排出事業者による処理計画書及び実施状況報告書」について記載します。
目次
産業廃棄物処理業の実績報告
産業廃棄物処理業者も「産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)運搬実績報告書」「産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)処分実績報告書」を毎年6月30日までに都道府県政令市等に提出する必要があります。
排出事業者が提出する「マニフェスト交付等状況報告」は、廃棄物処理法第12条の3第7項に基づいており、2019年度からは基本的に書式が統一されています。
※参考:環境省「産業廃棄物管理票交付等状況報告書等の様式の統一等について」
これに対して、「産業廃棄物処理業の実績報告」は、都道府県‧政令市の条例等に基づいており、都道府県‧政令市ごとに報告書の様式が異なるので、必ず該当する都道府県‧政令市等に確認する必要があります。
また、「マニフェスト交付等状況報告書」は、電子マニフェスト交付分についてはJWセンターが報告するため不要ですが、「産業廃棄物処理業の実績報告」には含める必要があります。
整理すると以下のとおりです。
提出者 | 書式の統一 | 電子マニフェスト交付分 | |
---|---|---|---|
マニフェスト交付等状況報告書 | 排出事業者 | ○ | 不要 |
産業廃棄物処理業の実績報告 | 処理業者 | × | 必要 |
行政への定期報告については委託量が少ない場合はマニフェスト伝票から集計して作成することも可能ですが、一定量を複数業者に委託している場合は非常に煩雑な事務作業になります。
産業廃棄物の種類及び委託先ごとに枚数と数量を集計する必要があり、数量は重量換算してトンで報告する必要があります。
排出事業者が「マニフェスト交付等状況報告書」を作成するにあたり、処理業者のほうでサポートしている実態が少なからずあるように思いますので、マニフェストの電子化を進めると処理業者も効率化につながります。
また、処理業者が処理実績報告書を作成する場合に、JWNETから過去に廃棄物処理法施行規則で定められていた様式に合わせて情報をダウンロードして、処理実績報告書の元データとして活用することが出来ます。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「行政報告システムの概要」

多量排出事業者による処理計画書及び実施状況報告書
多量排出事業者においては、廃棄物処理法第12条9に基づき、産業廃棄物の処理計画及びその実施状況を報告する必要があります。
これらはインターネットで公表するものとされており、事業者の自主的な廃棄物の減量化への取組等が促進されることが期待されています。
多量排出事業者とは
多量排出事業者とは、(普通)産業廃棄物の前年度の発生量が年間1,000トン以上 又は (PCB廃棄物以外の)特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50トン以上である事業場を設置している事業者です。中間処理業者は含みません。
事業場数にして全体の1%弱が対象ですが、発生量の60%以上がカバーされることになります。
発生量とは
発生量とは、一般的には廃棄物の処理として何らの操作も加えない時点での量を指します。従って自ら直接再生利用した量や自ら中間処理した量も含みます。生産工程の中で減量操作等の工程を経て発生する場合はその時点での量となります。委託量とは異なりますので、汚泥を脱水している場合など注意が必要です。
作成単位(該当するかどうかの判断)
作成単位は、製造業等の場合は事業場ごとです。(同一区域内に無人施設等の複数の関連施設を設置している場合は含める)
建設業等の場合は、区域内の作業所を統括的に管理している支店等ごとです。
電子マニフェストの使用義務
当該年度の前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が50トン以上の事業場を設置する事業者が、当該事業場から生ずる特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を他人に委託する場合に限り、電子マニフェスト使用義務の対象となります。
特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量を例にまとめると下表のようになります。
2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
---|---|---|---|---|---|
発生量 | 45t | 55t | 60t | 65t | 45t |
多量排出事業者 | 該当 | 該当 | 該当 | ||
当年度処理計画 | 必要 2021計画 |
必要 2022計画 |
必要 2023計画 |
||
前年度実績報告 | 必要 2021実績 |
必要 2022実績 |
|||
電子マニフェスト | 義務 | 義務 |
この例だと2025年度には電子マニフェストは義務でなくなります。しかしながら一旦電子化したものを紙に戻すことは実際には考えにくいと思われます。
また、2022年度に特別管理産業廃棄物を電子化するタイミングで(普通)産業廃棄物も電子化することが効率的だと思われます。
ちなみに電子マニフェストの義務対象者が正当な理由なく紙マニフェストを交付した場合は罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の対象となります。
処理計画および実施状況の報告
処理計画と実施報告書は、産業廃棄物と特別管理産業廃棄物で別の書式が用意されています。
計画書には共通で以下のことを記載します。
- 「排出の抑制」や「分別」に関する事項
- 自ら行う「再生利用」「中間処理」「埋立処分」に関する事項
- 処理の委託に関する事項
「優良認定処理業者」「再生利用業者」「認定熱回収業者」「認定熱回収業者以外の熱回収を行う業者」に分けて把握する必要があります。優良認定処理業者と認定熱回収業者は定義が明確ですが、他はあいまいです。
優良認定業者や熱回収業者が選ばれることを後押ししているのです。今後は再生利用やCCUS(二酸化炭素の有効利用や貯留)についても認定制度が出てくるかもしれません。
特別管理産業廃棄物処理計画書には以下のことを記載します。
- 「電子情報処理組織の使用」に関する事項
前年度の特別管理産業廃棄物の排出量(PCB廃棄物を除く)と電子マニフェストへの取組等を記載
上記排出量が50t以上の場合、翌年度から電子マニフェスト使用義務の対象となります
電子マニフェスト使用義務の対象については拡大していくものと思われます。2022年度から大阪市が発注する工事で発生する廃棄物について義務化され、2023年度からは大阪府が排出事業者となる産業廃棄物処理委託及び大阪府が発注する工事について義務化されています。
今後他の都道府県に拡大するかどうか注目されます。
※参考:大阪府「電子マニフェストについて」
実績報告書には、計画書における目標値と計画の実施状況としての実績値を記載します。実施状況の報告は産業廃棄物の種類ごと作成する必要があります。
ちなみに処理計画や実施状況を報告せず、又は虚偽の報告をした場合、20万円以下の過料が課されます。
実績値の報告様式(第2面)

※引用:環境省「多量排出事業者による産業廃棄物処理計画及び産業廃棄物処理計画実施状況報告策定マニュアル(第3版)」
その他の行政への定期報告
東京都の場合独自の制度として、産業廃棄物の適正処理に向けた「報告‧公表制度」があります。
報告対象者
(1)処理業者(約850社)
産業廃棄物収集運搬業者(積替‧保管施設を有する者)
産業廃棄物処分業者
(2)排出事業者(一定規模以上の排出事業者 約1,050社)
その他の行政への定期報告
建設業(資本金3億円超)
製造業(従業員数300人以上の工場)
病院
感染性産業廃棄物または特定有害産業廃棄物を排出する大学や研究所等
報告頻度
特定排出事業者については年1回、収集運搬業‧処分業については年2回
全国的に見ると他にも自治体独自の制度があるのかもしれません。
もちろん「温対法」「省エネ法」に基づく報告もありますし、企業独自に作成する「統合報告書(企業統治や社会的責任(CSR)、知的財産などの非財務情報)」の作成も一部の企業では必要でしょう。
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