
20種類ある産業廃棄物の一つに分類される動植物性残さ (どうしょくぶつせいざんさ)。
動植物を原料とする廃棄物は、排出する業種によって産業廃棄物として扱うか一般廃棄物として扱うかが異なるため、注意が必要です。
本記事では動植物性残さの概要や、産業廃棄物としての処理が必要な業種、処理方法などを紹介します。事業で動物や魚、野菜などを扱う事業者の方はぜひ参考にしてください。
目次
動植物性残さとは
動植物性残さとは特定の業種の製造工程から排出された、動植物を原料として使用した固形状廃棄物のことです。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第二条の四で、動植物性残さは以下のように定義されています。
食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物– e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」 |
施行令第二条の四の文末に「固形状の不要物」とあるように、産業廃棄物に該当する動植物性残さは、あくまで固形状の廃棄物に限られます。液状や泥状で排出されたものは動植物性残さに該当しません。
例えば、動物の血液は液状なので廃酸・廃アルカリに分類されます。その他の液状の動植物性廃棄物も、その性質に従って廃油や汚泥など、別の産業廃棄物として扱われます。
動植物を原料とした固形状廃棄物とは、具体的に以下のようなものです。動物性残さと植物性残さに分けて主なものを紹介しましょう。
動物性残さ | 動物の肉、魚・獣の骨や皮、内蔵などのあら、ボイルかす、うらごしかす、缶づめ・瓶づめの不良品、乳製品精製残さ、卵殻、貝殻、羽毛など |
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植物性残さ | 野菜くず、大豆かす、コーヒーかす、ビールかす、茶かす、酒かす、果実の皮・種子、油かす、醤油かず、あめかす、のりかす、醸造かす、発酵かす、薬草かすなど |
動植物性残さは有機物で腐敗しやすいものも多いため、正しく保管して早めに処理しなければなりません。放置すると悪臭や害虫が発生する恐れもあるため、事業所内での保管が難しい場合は、産業廃棄物の処理業者に管理を依頼してください。

動植物性残さを産業廃棄物として処理する必要のある業種
動植物性の固形状態の不要物であっても、全てが産業廃棄物ではありません。
産業廃棄物は全部で20種類に分類されますが、以下のように「あらゆる事業活動に伴うもの」と「特定の事業活動に伴うもの」に分けられます。
あらゆる事業活動に伴うもの | (1)燃え殻(2)汚泥(3)廃油(4)廃酸(5)廃アルカリ(6)廃プラスチック類(7)ゴムくず(8)金属くず(9)ガラスくずおよび陶磁器くず(10)鉱さい(11)コンクリートの破片等(12)ばいじん |
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特定の事業活動に伴うもの | (13)紙くず(14)木くず(15)繊維くず(16)動植物性残さ(17)動物系固形不要物(18)動物ふん(19)動物死体 |
その他 | (20)以上の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの |
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター「産廃知識 廃棄物の分類と産業廃棄物の種類等」(入手日付2024-02-15)
動植物性残さは「特定の事業活動に伴って排出」された場合に限って、産業廃棄物に該当します。動植物性残さを産業廃棄物として処理する必要のある特定の事業活動とは、以下の3つのことです。
- 食品製造業:原料から調理・加工して食品を製造する業者
- 香料製造業:天然香料や合成香料または調合香料を製造する業者
- 医薬品製造業:各種の医薬品を製造する事業者
この3業種に限定されているのは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第二条の四の条文で「食料品製造業、医薬品製造業又は香料製造業において原料として使用した動物又は植物に係る固形状の不要物」と規定されているためです。
食品製造業・香料製造業・医薬製造業以外から排出された動植物性残さは、事業系一般廃棄物とみなされます。この3つ以外の業種から排出された場合、原則として食品残さなどの生ゴミ全般となり、事業系一般廃棄物として処理しなければなりません。
例えば、レストランやカフェなどでも、上記のような動物の肉や魚の内蔵、骨、野菜くず、コーヒーかすがゴミとして出ることはあります。しかし、レストランやカフェなどの飲食店は廃物処理法が指定する特定の事業活動に当たらないため、排出された生ゴミは産業廃棄物に該当しません。
動植物性残さは排出された場所によって、処分方法が異なるので注意してください。
また動植物性残さと似た言葉に「動物系固形不要物」があります。動物系固形状廃棄物とは「と畜場」で処理した獣畜や「食鳥処理場」で処理した食鳥にかかる固形状の不要物のことです。
※参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(入手日付2024-02-15)
動植物性残さの排出量・再生利用率
環境省が2023年に発表した「産業廃棄物排出・処理状況調査報告書」によると、2021年に排出された動植物性残さは速報値で231万7,000トンでした。2020年の実績値と比較すると6万トン減少しています。
231万7,000トンという数字だけを見ると膨大な量に思えますが、産業廃棄物全体の0.6%の排出量に過ぎません。また動植物性残さの65%が再生利用されており、埋立などで最終処分された動植物性残さは2%となっています。
産業廃棄物全体の再生利用率は53%であるため、動植物性残さは比較的再生利用率の高い産業廃棄物といえるでしょう。
※参考:環境省環境再生・資源循環局廃棄物規制課「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」(入手日付2024-02-15)
動植物性残さの処理方法
前項で紹介したように動植物性残さは65%が再生利用(リサイクル)されており、33%が焼却・熱分解などの処理によって減量化され、残りの2%が最終処分されています。ここからは動植物性残さがリサイクルできる場合とリサイクルできない場合、ぞれぞれの具体的な処理方法を紹介していきましょう。
リサイクルできる場合
動植物性残さの中には、もともと人が飲食する食品などが原料となっているものが大半のため、廃棄物の成分を活かした再生利用が可能です。再利用の方法としては飼料化、肥料化、メタン発酵などがあります。それぞれの再生利用法を詳しく見ていきましょう。
肥料化する
肥料は土地を肥やして植物の育ちを良くするために使用されるものです。窒素・リン酸・カリウムなど、植物が必要とする栄養分を直接散布したり、化学的変化によって土壌を改良したりする際に使用されます。
窒素・リン酸・カリウムなどを含む動植物性残さである場合、水分を取り除いた上で微生物に分解・発酵させると、農地などの土壌を活性化させる高品質な肥料としてリサイクル可能です。
肥料化は技術的なハードルが比較的低く、コストも抑えられる傾向にあります。また堆肥化は地域循環型社会の実現にも貢献するエコロジーな取り組みといえます。
飼料化する
飼料とは家畜(牛、豚、にわとりなど)の食べ物のことです。たんぱく質を多く含む動植物性残さを利用すると高品質な家畜の餌として再利用できます。動植物性残さから製造した飼料は、エコフィードとも呼ばれます。
エコフィードとは環境の「エコ」と飼料を意味する「フィード」を合わせた言葉で、食品廃棄物を利用して製造された家畜用飼料のことです。エコフィードは畜産農家からの需要が多くあります。
動植物性残さを家畜にリサイクルすると、産業廃棄物の排出量を減らせるだけではありません。家畜の飼料にかかる費用も減らせるため、農家にとっては経営上のメリットもある有益なリサイクル方法です。
エコフィードの活用は資源の有効利用のみならず、飼料自給率の向上なども図れる重要な取り組みといえるでしょう。
メタン発酵させる
メタン発酵とは動植物性残さなどの有機物を無酸素状態で微生物に分解させ、メタンを主成分とするバイオガスを発生させるシステムのことです。
バイオガスは太陽光発電や風力発電などと違い、天候や時間に左右されず、24時間365日にわたって稼働させることが可能な再生エネルギーとして注目されています。
またバイオガスは発熱量が高く、発電設備の燃料などとして活用が可能です。 メタンガスは化石燃料に比べると温室効果ガスの排出量が少ないため、地球温暖化対策に有効です。
また動植物性残さを発酵させる槽内に残った消化液は、病原菌を含まない安全な肥料(液肥)として二次利用が可能なため、無駄なく活用できます。
リサイクルできない場合
動植物性残さはリサイクルすると、処理コストを抑えられるだけでなく、温室効果ガスの排出を削減できるため環境にも配慮できます。
しかし、動植物性残さの中にはリサイクルに適していない状態の廃棄物もあります。ここからはリサイクルできない場合の処分方法を紹介していきましょう。
焼却処分する
リサイクルできない動植物性残さの多くは、脱水・乾燥などの安定化処理をしてから焼却場で燃やして処分されます。焼却は大量の動植物性残さを処分する場合に用いられることが多く、残さを灰に変えられます。
委託先の焼却施設が動植物性残さの焼却に対応していることや、委託する量を処理できる能力があるかどうかを確認してください。
埋立処分する
埋立は動植物性残さを地中に埋める最終処分方法です。自分で事業所の敷地内などに埋めると違法となるため、許可を得た業者に埋立処分を委託しなければなりません。
動植物性残さを埋立処分できるのは、管理型最終処分場です。管理型最終処分場とは動植物性残さだけでなく、廃油やばいじん、汚泥や鉱さい、紙くずや木くずなどを埋立処分する施設で、地中の廃棄物に汚染された雨水などが周辺の土壌や地下水に影響を与えないよう対策が整えられています。
動植物性残さがどうしてもリサイクルできない場合、埋立て処分や焼却処分せざるを得ません。しかし、より精密な分類などでなるべく再生利用するのが望ましいでしょう。
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