アスベストの処理方法と手順を紹介!

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アスベストは建物の建材の一部に使用されてきた天然鉱物で、健康への影響から現在では使用が禁止になっています。しかし古い建築物の中にはいまだアスベストが残っている可能性があり、撤去作業の際には細心の注意が必要です。

アスベストは通常の廃棄物とは異なる処理が求められるため、事業者は処理工程や手順を理解しておきましょう。今回はアスベスト廃棄物の種類や、運搬から廃棄までのプロセス、処理方法を紹介します。 危険で有害性が高いアスベストの処理の仕方が分かるため、ぜひご一読ください。

アスベストとは

アスベストは法律では石綿(いしわた)と呼ばれる繊維状の天然鉱物で、形状は細いながらも高強度の物質です。丈夫で変化しにくい性質や、酸やアルカリへの耐性の強さから、我が国では古くから建材や自動車の部品に使われてきました。その総消費量は約1,000万トンにものぼり、特に1970年~1990年に建てられた建造物などに大量に使用されています。

しかし、空気中のアスベストを吸入した労働者やその家族における健康被害が相次いで報告されたことから徐々に規制が進み、2006年9月には使用が原則禁止になりました。

アスベストは極めて細い形状をしており、ほとんど肉眼で見ることはできません。人間の髪の毛が50~100μm、スギやヒノキ花粉が30~40μmほどだとすると、アスベストの大きさはわずか0.02μmほどです。

毛髪、スギ花粉、アスベストの大きさ比較

アスベストはその小ささゆえに空気中に浮遊しやすく、呼吸によって人の体内に取り込まれると、容易に肺胞に到着します。大半は異物と認識されて体外に排出されますが、一部のアスベストはそのまま異物として肺組織にとどまり続けます。これが原因となり、炎症による肺の繊維化や、細胞のがん化などの健康障害を引き起こすと考えられています。

現在においても、建築時期が古い建造物(特に1970~90年代に建てられたもの)は建材に石綿が残っている場合があるため、健康被害には引き続き注意が必要です。鉄骨や梁の断熱・保湿材、床や壁の下地、内装材や外装材などによく使われています。

参考:独立行政法人環境再生保全機構「アスベスト(石綿)による健康障害のメカニズム」


DXE株式会社資料DL

アスベストの種類

アスベストの主な種類は以下のとおりです。

蛇紋岩族 クリソタイル(白石綿)
角閃石族 クロシドライト(青石綿)
アモサイト(茶石綿)
アンソフィライト(直閃石綿)
トレモライト(透明閃石綿)
アクチノライト(陽起石綿)

国内の建材で使用されてきたのは、蛇紋岩族のクリソタイル(白石綿)、角閃石族のクロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)です。発がん性はアスベストの種類によって異なり、青石綿が最も強く、次点で茶石綿、白石綿と続きます。

アスベストを含む廃棄物の分類

アスベストを含む廃棄物は、廃石綿等と石綿含有廃棄物に分類できます。それぞれの特徴や違い、廃棄物処理法における取扱いをチェックしましょう。

廃石綿等(飛散性アスベスト)

石炭の含有率が大きく、飛散する可能性も高い廃棄物は「廃石綿等」と定義され、厳格な管理が必要な特別管理産業廃棄物に位置づけられます。

廃石綿等の定義(規則第1条の2第9項)
① 建築物その他の工作物(以下「建築物等」という)に用いられる材料であって石綿を吹き付けられたものから石綿建材除去事業により除去された当該石綿
② 建築物等に用いられる材料であって石綿を含むもののうち石綿建材除去事業により除去された次に掲げるもの
 イ.石綿保温材
 ロ.けいそう土保温材
 ハ.パーライト保温材
 ニ.人の接触、気流及び振動等によりイからハに掲げるものと同等以上に石綿が飛散するおそれのある保温材、断熱材及び耐火被覆材
③ 石綿建材除去事業において用いられ、廃棄されたプラスチックシート、防じんマスク、作業衣その他の用具又は器具であって、石綿が付着しているおそれのあるもの
④ 特定粉じん発生施設が設置されている事業場において生じた石綿であって、集じん施設によって集められたもの
⑤ 特定粉じん発生施設又は集じん施設を設置する工場又は事業場において用いられ、廃棄された防じんマスク、集じんフィルタその他の用具又は器具であって、石綿が付着しているおそれのあるもの

– 環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」

廃石綿等は危険性の高い順に1、2、3のレベルに分けられており、作業場所の隔離や防護マスクの着用など、レベルに応じた対応が必要です。

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)

石綿が含まれているものの、通常の使用環境では飛散の恐れはないものは「石綿含有廃棄物」に分類されます。

石綿含有廃棄物の定義
① 石綿含有一般廃棄物(規則第1条の3の3)
工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた一般廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの
② 石綿含有産業廃棄物(規則第7条の2の3)
工作物の新築、改築又は除去に伴って生じた廃石綿等以外の産業廃棄物であって、石綿をその重量の0.1%を超えて含有するもの

– 環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」

石綿含有廃棄物は特別管理産業廃棄物には該当しませんが、処理を行う際には石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)であることを明記し、他の廃棄物と分けて運搬する必要があります。また、運搬の際に破損すると石綿が流出し、人が吸い込む危険もあります。プラスチックの袋で二重梱包するなど、飛散を防ぐための対策が必要です。

アスベストの処理方法

鉱物のアスベストは、通常の廃棄物と同じ焼却処理や、微生物による分解ができません。この性質から他の廃棄物と区分して保管・運搬し、最終処分場で埋め立て処理されることが一般的です。

収集・運搬

アスベストの廃棄にかかる収集・運搬処理は飛散性アスベストと非飛散性アスベストで異なります。それぞれ処理の際に遵守すべきルールは次のとおりです。

廃石綿等(飛散性アスベスト)

飛散性アスベスト(廃石綿等)は以下の処理基準が定められています。

● 他の廃棄物等と混ざることを防ぐため、単体で分けて収集・運搬すること
● 人々の健康や生活環境に被害が生じないように行うこと
● 廃石綿等が飛散や流出しないよう行うこと

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)

非飛散性アスベストの収集・運搬における基準は次のとおりです。

● 破砕しないよう行い、他の廃棄物との混合を防ぐために分けて実施すること
● 人々の健康や生活環境に被害が生じないように行うこと
● 石綿含有廃棄物が飛散や流出しないよう注意すること

中間処理

産業廃棄物の処理では、最終処分される廃棄物の量を減らすため中間処理を行います。再利用が可能なものを分類し、リサイクルが難しいものは粉砕・焼却処理を実施して、埋め立てるごみの量をあらかじめ減少させておくためです。

中間処理の方法はいくつか存在しますが、アスベストを含む廃棄物は特定の処理フローが定められています。

廃石綿等(飛散性アスベスト)

廃石綿等(飛散性アスベスト)の中間処理は溶融施設での溶融、無害化処理です。1500度以上の非常に高い温度で融解処理されるため、通常の焼却では灰にできないアスベスト廃棄物を無害化できます。

溶融処理の過程で発生したばいじんはセメント化され、最終処分場で埋め立て処理されます。

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)は一般廃棄物と産業廃棄物のいずれに区分されるかによって、中間処理の方法が異なります。

● 石綿含有一般廃棄物:溶融施設による融解、無害化処理、または一般廃棄物と混合しての破砕・焼却の方法により行うこと
● 石綿含有産業廃棄物:溶融施設における融解の方法により行うこと

石綿含有産業廃棄物の具体例は外装材(石綿スレート)や床タイル、石炭含有一般廃棄物の具体例は日曜大工で排出された外装材などです。

最終処分

産業廃棄物の最終処分場には、施設の構造による区分が存在します。アスベストの処分は、環境への配慮を目的として、遮水工や浸出水処理施設がある管理型の処分場で行われます。

周囲に影響を与える恐れがない廃棄物であれば、埋立地のみの安定型最終処分場で行うことも可能です。

廃石綿等(飛散性アスベスト)

廃石綿等(飛散性アスベスト)の最終処分は、都道府県知事や廃棄物処理法で定める政令市の市長の認可を受けた処分場で行います。収集運搬業者や処分業者は埋め立て時に以下の基準を守らなければなりません。

  • ・大気中の飛散を防ぐため、固定化もしくは薬剤による安定化、その他これらの方法に準じた措置を実施した後、耐水性の材料で梱包すること
  • ・埋め立ては最終処分場の一定の場所において、当該廃石綿等が分散しないよう行うこと
  • ・当該廃石綿等が埋立地の外に飛散・流出しないよう必要な措置を行うこと

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)

石綿含有廃棄物(非飛散性アスベスト)の最終処分で守るべき基準は次のとおりです。

  • ・埋め立ては最終処分場の一定の場所において、当該廃石綿等が分散しないよう行うこと
  • ・当該廃石綿等が埋立地の外に飛散・流出しないよう必要な措置を行うこと

参考:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」(入手日付2024-02-06)

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