バイオマス発電とは? 仕組みや燃料の種類、メリット・デメリットを解説

バイオマス発電とは? 仕組みや燃料の種類、メリット・デメリットを解説

バイオマス発電を導入もしくは利用するにあたっては、その詳細を把握しておくことが重要です。

そこで本記事では、バイオマス発電の概要や必要とされる理由、仕組みを解説します。記事後半では、バイオマス発電に使用される燃料の種類や、メリット・デメリット、普及に向けた取り組み例などもご紹介しておりますので、ぜひ最後まで参考にしてください。

バイオマス発電とは?

バイオマス発電とは、「生きた資源」とも呼ばれるバイオマスを利用した発電方法です。バイオマスとは、動植物から得られるエネルギー資源のうち、石油をはじめとする化石燃料を抜いたもので、食品廃棄物や伐採された木々、さとうきび、とうもろこしなどが該当します。

詳しくは後述しますが、麦わら・稲わら・廃材などの未利用系バイオマス、食品廃棄物・生ごみ・家畜の糞尿などの廃棄物系バイオマス、さとうきび・とうもろこし・大豆などの資源作物系バイオマスなどがあります。また、エネルギーを得る方法も、直接燃焼方式や熱分解ガス化方式、生物化学的ガス化方式など多種多様です。

バイオマス発電でも当然、燃焼や発酵させてエネルギーを得るため二酸化炭素が排出されます。しかしこのとき排出される二酸化炭素は、バイオマスが生育する家庭で光合成により吸収した二酸化炭素と同じ量であるため、実質的に二酸化炭素を排出しないとみなすことができるのです。これはカーボンニュートラルと呼ばれ、持続可能な社会の構築に向けて世界中で取り組まれています。

バイオマス発電が必要とされる理由

カーボンニュートラルの実現に向けて、バイオマス発電は必要とされています。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量をトータルで見てゼロにする取り組みです。どうしても排出しなければならない場合もあるため、その場合は同量を吸収または除去して差し引きゼロを目指します。

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスは地球温暖化の原因とされており、異常気象や生態系の喪失など、多くの事象を引き起こしています。この影響を最小限にしようとする取り組みがカーボンニュートラルであり、日本のみならず世界規模で実現が目指されているのです。

日本では、2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを実現すること」を宣言しています。日本で排出される温室効果ガスのほとんどが二酸化炭素であり、その多くが火力発電所から排出されているのが現状です。

こうした現状から脱却するためには、環境に優しく二酸化炭素の増加がないバイオマス発電を推進していくことが重要です。

バイオマス発電の仕組み

バイオマス発電の仕組みには、主に以下の3つがあります。

● 直接燃焼方式
● 熱分解ガス化方式
● 生物化学的ガス化方式

それぞれの発電の仕組みを詳しく見ていきましょう。

直接燃焼方式

直接燃焼方式とは、木材や食品廃棄物、稲わら、麦わら、動物の排泄物など乾燥したバイオマスを直接燃焼させる方式です。発生した熱エネルギーでタービンを回し、電気エネルギーを得ます。

そのままの状態では燃焼に適していないので、必要に応じて細かく砕かれチップ化やペレット化され、燃焼させやすい状態にします。

直接燃焼方式のメリットは、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できるのはもちろん、熱エネルギーとしても活用できる点です。

熱分解ガス化方式

熱分解ガス化方式とは、バイオマスを高温で分解し、その際に発生する可燃性ガス(一酸化炭素・水素・メタンなど)でタービンやエンジンを動かして発電する方式です。直接燃焼させるより発電効率が良く、熱変換効率が良い点が特徴に挙げられます。主に、木くずや野菜くず、古紙などが材料に用いられます。

また熱分解ガス化方式は、仕組み自体は多少複雑ですが、小さな設備でもそれなりの発電効率を得られる点もメリットです。

生物化学的ガス化方式

生物化学的ガス化方式とは、バイオマスを微生物の力で発酵させてガスを発生させ、そのガスでタービンを回して発電する方式です。家畜の糞尿や食品廃棄物、汚水などなどの水分含有量が多く直接燃焼させにくいバイオマスが原料に用いられます。

生物化学的ガス化方式には、バイオエタノールを発生させるエタノール発酵と、メタンを発生させるメタン発酵の2つがあります。バイオエタノールとメタンはそれぞれ、自動車の燃料や熱源として使用されている物質です。

バイオマス発電に使用される燃料の種類

バイオマス発電に使用される燃料の種類には、以下が挙げられます。

● 未利用系バイオマス
● 廃棄物系バイオマス
● 資源作物系バイオマス

それぞれの燃料の種類を詳しく解説します。

未利用系バイオマス

未利用系バイオマスとは、麦わらや稲わら、廃材、工場残材など身近な場所から排出されるバイオマスの総称です。今まで利活用されず、捨てられていましたが、資源として有効活用されています。

例えば、針葉樹・広葉樹などの林地残材や間伐材は、ペレットやチップの原料となり、バイオマス発電事業での需要が増しています。その他の利用例は、燃焼させ熱エネルギーに活用する、木炭を消臭剤に活用するなどです。

廃棄物系バイオマス

廃棄物系バイオマスとは、食品廃棄物や家畜の糞尿、下水汚泥など廃棄される予定のバイオマスの総称です。普通なら捨てられて終わりですが、バイオマス資源として活用するケースもあります。

廃棄物系バイオマスには、以下が挙げられます。

● 食品廃棄物
● 生ごみ
● 家畜の糞尿
● 廃棄紙
● 下水
● し尿汚泥
● 建設発生材木

廃棄物系バイオマスは、堆肥化やエタノール化、メタン化、飼料化、燃料化などにより再利用されています。

資源作物系バイオマス

資源作物系バイオマスとは、資源としてエネルギーを得るために栽培されたバイオマスの総称です。主な資源作物系バイオマスには、以下が挙げられます。

● 米
● とうもろこし
● いも
● さとうきび
● 大豆
● 菜種
● 落花生
● ヤナギ
● ポプラ
● スイッチグラス

資源作物系バイオマスからは、主にバイオエタノールを得ることができます。ガソリンと混合して自動車の燃料としたり、工業用アルコールとして溶媒に用いられたりなどしています。

バイオマス発電のメリット

バイオマス発電のメリットは、以下の通りです。

● 本来廃棄されていた資源を活用できる
● 化石燃料への依存度を減らせる
● 地球環境への負荷が少ない
● 季節や天候に左右されにくい

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

本来廃棄されていた資源を活用できる

バイオマス発電のメリットは、本来なら廃棄されていた資源を有効活用できる点です。

食品廃棄物や動物の糞尿、廃材などはこれまで廃棄物として処分されていた資源ですが、バイオマス発電のエネルギー源として再利用できます。これにより、資源の有効活用を促進するとともに、廃棄物の処分量を減らすことが可能です。

例えば、林地残材や間伐材は木材として、建築資材や家具に用いることは難しいでしょう。そこで細かく粉砕してチップ化・ペレット化すれば、家庭用ステープや工業用ボイラーの原料に再利用できます。

廃棄物のエネルギーとしての利活用は、「廃棄物の発生抑制」と「循環資源の利用」の2つの利点があり、循環型社会の構築には欠かせません。

化石燃料への依存度を減らせる

日本では、エネルギー産生のほとんどを化石燃料に依存しています。2021年度の一次エネルギー供給構成では、石炭が25.4%、石油が36.3%、LNG(液化天然ガス)が21.5%と合計83.2%を占めています。

化石燃料への依存度が高いと、地球温暖化が促進される他、燃焼により大気汚染や環境汚染が引き起こされたり、温室効果ガスが多量に排出されたりなどの弊害が生じるため、その影響は無視できません。

バイオマス発電を促進すれば、化石燃料への依存度を減らすことが可能です。日本のエネルギー生産におけるバイオマス発電の割合は5.7%程度とまだ決して多いとはいえませんが、この割合を増やしていければ、化石燃料からの脱却を図っていけるでしょう。

※参考:経済産業省 資源エネルギー庁「日本のエネルギー 2022年度版 「エネルギーの今を知る10の質問」
※参考:環境エネルギー政策研究所「2023年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報)」

地球環境への負荷が少ない

電気エネルギーを得るには、化石燃料を燃焼させるのが一般的です。この方法では、燃焼時に多量の温室効果ガスが大気中に放出されるため、地球温暖化が進んだり、大気汚染が引き起こされたりします。また燃焼時だけでなく、化石燃料の採掘により陸地や海底の生態系が破壊される、輸送時にも二酸化炭素が多量に排出されるなど多くの課題を抱えています。

その点バイオマス発電は、地球環境への負担が少ない点がメリットです。たしかに燃焼により二酸化炭素は排出されますが、これは元々植物が光合成で吸収した二酸化炭素です。この点を考慮すると、二酸化炭素の排出量を実質ないものだとみなすことができます。

加えて、廃棄物として処分しない分、不法投棄などの人為的災害や焼却による大気汚染なども防げます。

季節や天候に左右されにくい

バイオマス発電以外にも、以下のような再生可能エネルギーはあります。

● 太陽光発電
● 風力発電
● 水力発電

これらは大きなエネルギーを生み出せる一方、季節や天候に左右されやすい点がデメリットです。例えば、太陽光発電は曇りや雨の日が続いた場合、水力発電は雨が降らない場合に発電量が落ちます。地球環境に負荷をかけずに発電するのは重要ですが、それと同じくらい安定的に電力を共有するのは欠かせません。

その点バイオマス発電は、季節や天候に左右されずに発電できます。バイオマスは必要時以外は蓄えておくことができ、電力不足や自然災害時など供給が追いつかないケースに備えられます。

加えて、太陽光発電や風力発電など自然界から得られる無尽蔵なエネルギーを用いた発電方法では調節が難しいですが、バイオマス発電は人の手で調節できるのも利点です。

バイオマス発電のデメリット

バイオマス発電には、先述したメリットだけでなくデメリットがあるのも事実です。導入や利用を検討しているなら、以下のデメリットも把握しておきましょう。

● 原料調達コストが高い
● 燃料の品質が安定しにくい
● 発電効率が低い

それぞれのデメリットを詳しく解説します。

原料調達コストが高い

バイオマス発電のデメリットの一つは、原料調達コストが高い点です。

原料となるバイオマスは地球上に広く存在しており、発電する箇所に収集・運搬するためにコストがかかります。例えば、間伐材をバイオマス発電の原料とする際は、森林で間伐材を収集し、目的の場所まで運搬しなければなりません。

他の再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電と比較しても、太陽光パネルや風車があれば効率良くエネルギーを集められる点で、原料調達コストは異なります。

またバイオマスを収集・運搬・加工するにあたり、多量の化石燃料を使用する点も問題です。バイオマスで発電するトータルのサイクルで、化石燃料による二酸化炭素の排出は無視できないものとなっています。

燃料の品質が安定しにくい

バイオマス発電は、燃料の品質が安定しにくい点も問題の一つです。燃料の品質が悪いと、発電時の運転トラブル、発電効率の低下、燃料詰まりなどの問題を引き起こします。

そこでバイオマス発電の燃料の品質を保ち、効率的かつ安定した発電を実現するために定められたのが、品質規格です。例えば木質ペレットの場合、以下の項目が定められています。

● チップの種類
● 寸法
● 水分含有量
● 灰分含有量

木質パレットを用いる場合、燃料の品質に影響を受けやすい一方で、ガス化させると品質の影響が小さくなり、安定的な運用が可能です。

発電効率が低い

バイオマスは化石燃料と比較して発熱量とエネルギー密度が低く、発電効率が低い点がデメリットです。一般に約20%とされており、以下に示す他の発電方法と比較して低いことが分かるでしょう。

● 水力発電:約80%
● 火力発電:約40〜50%
● 海上風力発電:約40%
● 原子力発電:約35%

太陽光発電の発電効率は同等の約20%ですが、燃料調達に収集・運搬・加工のコストがかかると考えると、コストパフォーマンスに劣ります。

バイオマス発電で発電効率を高めるためには、燃焼温度を高くすることが重要です。そうするとバイオマス燃料に含まれる水分が蒸発し、乾燥させることができるため、燃焼効率が高まります。

また発電効率を高める観点ではありませんが、燃焼によって発生する熱エネルギーを利用する「バイオコージェネレーション」により、エネルギーの無駄をなくすことが可能です。

バイオマス発電の普及に向けた取り組み

バイオマス発電の普及に向けた取り組みが推進されています。その代表例ともいえるのが、FIT制度(固定買取制度)です。

FIT制度(固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギーから得られた電力を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が保証する制度です。太陽光発電や風力発電、水力発電だけでなく、バイオマス発電も対象となっています。

またエネルギーの地産地消も、バイオマス発電の普及に向けた取り組みに挙げられます。オーストリアのギャッシングは、豊富な森林資源から得られる木質バイオマスを活用してエネルギー自給を実現した事例です。企業誘致にも成功した他、雇用創出にもつながり、地域経済が活性化しました。再生可能エネルギーを活用した地産地消、循環型経済の構築は「ギュッシング・モデル」として知られています。

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