カーボンニュートラルにおける大きな「矛盾」とは?問題点について解説

カーボンニュートラルにおける大きな「矛盾」とは?

カーボンニュートラルとは、排出された二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを吸収・除去することによって、トータルで排出量をゼロにしようとする取り組みです。環境負荷の低減や地球温暖化の抑制などの効果が期待されており、日本でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けてさまざまな取り組みが実施されています。

しかし、カーボンニュートラルの詳細を見ていくと、ある種の「矛盾」が存在することがわかります。

そこで本記事では、カーボンニュートラルの概要や目的に加えて、矛盾点や問題点について解説します。カーボンニュートラルの実現や環境負荷を低減させる取り組みに注力している事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

カーボンニュートラルとは

カーボンニュートラル(Carbon Neutral)とは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出と吸収の量を均衡させ、トータルで見て排出量をゼロにする取り組みです。

環境破壊による気候変動によって世界の平均気温は上昇の一途をたどっており、このままでは「農作物が採れない」「大規模な自然災害が引き起こされる」「異常気象が続く」などの問題が起きるだろうとされています。
こうした状況に対応するため、カーボンニュートラルの取り組みを進め、地球温暖化の進行を抑制することが重要なのです。

カーボンニュートラルの現状

ここでは、日本のカーボンニュートラルの現状を詳しく見ていきましょう。

日本政府はカーボンニュートラルの実現に向けて、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この戦略では、経済産業省を中心に各官公庁が協力し、再生可能エネルギーの普及拡大や二酸化炭素の吸収などに取り組みます。

2021年度の温室効果ガスの排出・吸収量は、11億2,200万トンと前年比2.0%増加ですが、2013年と比較すると20.3%と大幅に減少しています。
このペースで排出・吸収量を削減していけば、2030年の中間目標、そして2050年のカーボンニュートラル実現を達成できる見込みとされています。

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組み例 

次に、カーボンニュートラルの実現に向けて、実際に行われている取り組み例を見ていきましょう。

再生可能エネルギーの普及

まず挙げられるのが、太陽光・風力・水力・地熱などの再生可能エネルギーの普及です。
再生可能エネルギーは従来の化石燃料と比較して二酸化炭素の排出量が少ないため環境負荷が小さく、資源も枯渇することがありません。今後の主力エネルギーにしていくべく、普及活動が進められています。

二酸化炭素回収技術の活用

また、排出してしまった二酸化炭素を回収・利用する技術も導入が進んでいます。

  • CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)

CCSは直訳すると「二酸化炭素を回収して貯蔵する」で、排出された二酸化炭素を回収・輸送し、地層の間などに貯蔵する技術です。CCSはカーボンニュートラルを達成するための中核的な技術とされ、世界的に導入が進められています。

  • CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)

直訳で「二酸化炭素を回収して利用、貯蔵する」となり、回収された二酸化炭素を資源として活用・貯蔵する技術です。先に挙げたCCSは二酸化炭素を「貯蔵」することに重きを置いているのに対して、CCUSは有用に再利用するという目的も含んだ取り組みです。

カーボンオフセット

カーボンニュートラルを目指すためには、そもそもの二酸化炭素の排出量を抑えることを検討しなければなりません。しかし、事業内容などによってはどうしても排出量を削減することが難しい場合もあります。こうしたケースで活用されるのが、カーボンオフセットです。

カーボンオフセットとは、可能な限り温室効果ガスの削減努力をした上で、どうしても削減できない排出分を「他の排出削減プロジェクト」を支援することでオフセット(相殺)するという考え方です。

国によって運営されている「J-クレジット」という制度では、排出削減に取り組んでいるプロジェクトに対して「クレジット」を認証し、それを企業が購入することでカーボンニュートラルの実現に貢献することができるというものです。
購入企業は直接の排出削減を行うことはできませんが、プロジェクトの金銭的な支援の他、環境問題に取り組んでいることをアピールできるというメリットがあります。

※参考:J-クレジット制度について

カーボンニュートラルの「矛盾」とは?

さまざまな取り組みにより二酸化炭素の排出量削減は進んでいますが、その取り組みの中には次にあげるような矛盾があるのも事実です。

  • 設備工事による森林伐採
  • 発電所の設置・稼働に伴う生態系の乱れ
  • 企業の温室効果ガス排出を許容することになる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

設備工事による森林伐採

カーボンニュートラルを実現する上で重要となるのが、太陽光発電や水力発電などの再生可能エネルギーを利用した発電方法です。これらの発電方法は環境負荷が小さく、半永久的に確保できる資源であるため、積極的に普及や開発が進められています。

しかし、これらの大規模な設備を作るに当たって、森林伐採や環境保全のバランスが崩されているという事実もあります。

太陽光発電のケースを考えてみましょう。効率的に太陽光発電をするには、広大な土地が必要ですが、国土面積が小さくそのほとんどが山岳地帯である日本では、こうした土地を見つけるのは容易ではありません。発電のための場所を確保するには森林を伐採して土地を確保しなければならず、光合成量が減る他、地盤が脆弱化して土砂崩れのリスクが高まるなどの問題が発生します。

「環境負荷を低減させるためにカーボンニュートラルを進める」という目標があるのにもかかわらず、その導入過程では環境破壊が繰り返されているのが大きな矛盾点です。

発電所の設置・稼働に伴う生態系の乱れ

再生可能エネルギーの発電所の設置・稼働に伴い、生態系が崩れる点も課題の一つです。風力発電や水力発電などはクリーンなエネルギー供給源とされていますが、その発電設備が生態系に与える悪影響も無視できません。

例えば風力発電の場合、バードストライクが問題視されています。バードストライクとは、猛禽類をはじめとする鳥類が、風力発電機の羽根(ブレード)に衝突し、死亡する事故です。風力発電の施設整備により生物多様性への影響、特に生息地が奪われることが懸念されています。洋上風力発電に関しては、海洋生態系への影響も示唆されています。

また大規模なダムの建設が必要となる水力発電では、森林伐採による生態系の崩壊、水質の変化なども課題とされており、こちらも矛盾点のひとつになります。

企業の温室効果ガス排出を許容することになる

二酸化炭素の排出削減プロジェクトに対して支援を行うカーボンオフセットは、必ずしもカーボンニュートラルの実現に寄与しているわけではありません。

「カーボンオフセットによりカーボンニュートラル実現に貢献する」という考え方は、間接的に企業の温室効果ガス排出を許容しているとも言えます。「金銭的負担をしているから、より多く排出しても大丈夫」という免罪符として使用されることにもなりかねず、矛盾を生む可能性をはらんでいます。

環境省はカーボンオフセットについて、「まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資する」としています。カーボンクレジットを購入する際も、自社内で行える環境問題への取り組みへの努力を忘れてはなりません。

※参考:環境省「J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて」

カーボンニュートラルのこれから

上記のような矛盾点に加え、発電設備の導入コストの高さや、根強い化石燃料への依存など、カーボンニュートラル実現のためには解決しなければならない問題が多くあります。

国際的に気候変動問題に取り組むため2015年に採択されたパリ協定以降、世界各国はカーボンニュートラル実現に向けて動き出しました。日本政府も2050年までのカーボンニュートラル実現に向けてさまざまな取り組みや施策を実施しており、今後もさまざまな取り組みが進められていくでしょう。
それは私たちの生活にも変化をもたらします。
次世代に向けた新たな暮らしは、少しずつ始まっているのです。

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