
地球温暖化の抑制や環境負荷の低減の観点から、カーボンニュートラル燃料の導入や開発が世界的に進められています。日本でも2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて資源エネルギー庁を中心に、開発研究や普及促進活動が進行中です。
本記事では、カーボンニュートラル燃料の概要や種類、メリット、デメリットを網羅的に解説します。カーボンニュートラル燃料の活用を進めていこうとお考えの場合は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
カーボンニュートラル燃料とは?
カーボンニュートラル燃料(カーボンニュートラルエネルギー)とは、燃焼して排出される二酸化炭素の量が、その燃料を生成する際に吸収される二酸化炭素の量と等しい、もしくは下回るような燃料の総称です。
カーボンニュートラル燃料の製造方法には、二酸化炭素や水素から合成する方法や、植物などのバイオマスから作る方法があります。燃焼時に二酸化炭素を排出しても、製造段階で吸収した分と相殺されるため、大気中の濃度を実質的に増加させない点が特徴です。
※参考: 経済産業省.「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(入手日付 2024-11-27)

カーボンニュートラル燃料の種類
カーボンニュートラル燃料の種類には、以下が挙げられます。
- 合成燃料
- バイオ燃料
- 水素
- SAF
それぞれのカーボンニュートラル燃料の概要や特徴、用途などを詳しく見ていきましょう。
合成燃料
合成燃料(Electrofuels)とは、二酸化炭素と水素を合成して生成される燃料です。化学燃料の原油によく似た構造をしているため「人工的な原油」とも呼ばれます。DAC(Direct Air Capture:直接空気回収技術)などの技術を用いて回収します。
合成燃料は、ガソリンなど従来の化石燃料と性質が似ており、既存の燃料インフラや内燃機関を活用できます。大規模な設備投資が必要なく、コストを抑えて導入を進めていきやすい点がメリットです。
バイオ燃料
バイオ燃料とは、再生可能な植物や動物などの有機物の資源(バイオマス)を原料にした燃料で、バイオエネルギーとも呼ばれます。代表的なバイオ燃料には、以下のものが挙げられます。
- バイオディーゼル:菜種や大豆、トウモロコシなどの原材料としたディーゼル燃料
- バイオエタノール:サトウキビやトウモロコシなどを発酵させて得られるエタノール
- バイオガス:有機物を原料とし、微生物のメタン発酵により生成されるメタンガスを含むガス燃料
- バイオジェット:木材チップや藻類から得られる航空燃料
主に植物由来の燃料であり、その植物は成長過程で光合成により二酸化炭素を吸収しているため、トータルで見ると二酸化炭素の排出量を削減できます。
水素
水素も、カーボンニュートラル燃料の一つとして注目されているクリーンエネルギーの一つです。水素を燃焼させても、水を生成するだけで二酸化炭素などの温室効果ガスや有害物質は発生しません。
水素エネルギーは、製造方法により以下の3つに分けられます。
- グリーン水素:再生可能エネルギーを活用して水を電気分解して得る水素
- ブルー水素:化石燃料を燃焼させた際に二酸化炭素を回収・貯留し、排出を抑えた水素
- グレー水素:化石燃料を燃焼させた際に二酸化炭素を回収・貯留しない水素
水素と酸素を反応させてエネルギーを得る燃料電池も実用化されており「発電効率が良い」「水素と酸素という地球上に無数に存在する資源を活用できる」「排出されるのが水のみである」などの点がメリットです。
また水素エネルギーは、液化させたり貯蔵合金に吸蔵させたりして貯蔵・輸送ができるため、電力の安定供給や長距離輸送の観点でも優れています。
SAF
SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)とは、原油を精製して得られるガソリンなどの従来の化石燃料に代わる、環境負荷の小さいジェット燃料です。飲食店などから排出される食用油・廃油や、バイオマス由来の油から生成され、航空業界がカーボンニュートラル化を目指す上で重要な要素となっています。
SAFは主に、以下の原料から精製されます。
- 廃油:飲食店で使用済みの食用油や植物油
- バイオエタノール:サトウキビやトウモロコシを発酵して製造されるエタノール
- 非可食原料:古紙や藻などの非可食原料から得られる油
- 廃プラスチック類などのごみ:炭化水素化合物から液体燃料を製造する
- 二酸化炭素・水素:化学反応により合成燃料を製造する
SAFのメリットは、既存のジェットエンジンやインフラと適合するように製造されているため、サービスの質を保ちながら二酸化炭素の排出量を削減できる点です。
カーボンニュートラル燃料のメリット
カーボンニュートラル燃料のメリットは、以下の通りです。
- 環境に優しい
- 化石燃料のインフラを流用できる
- エネルギー自給率を高められる
それぞれのメリットを解説します。
環境に優しい
カーボンニュートラル燃料は、環境に優しい点がメリットです。
カーボンニュートラル燃料は燃焼過程で二酸化炭素が排出されますが、製造過程で二酸化炭素を吸収しています。例えば植物の場合、光合成により二酸化炭素を吸収し酸素を大気中に放出しているため、トータルで見ると二酸化炭素の排出量は抑えられているのです。
また、石炭・石油・天然ガスなどの化石燃料と比較して、環境負荷が抑えられている点も特徴です。再生可能エネルギーを用いて製造されており、化石燃料依存からの脱却にも寄与するでしょう。
化石燃料のインフラを流用できる
カーボンニュートラル燃料は化石燃料のインフラを、そのまま流用できる点もメリットです。従来のガソリン・ディーゼルなどと性質が似ており、エネルギー供給のために構築されたパイプラインや輸送設備、貯蔵施設を利用できます。そのため、新しい設備投資が必要なく、コストを大幅に抑えて普及を進めていくことが可能です。
またインフラに加えて、自動車や航空機、船舶の燃料にも利用できます。産業や工業、商業の幅広い分野でカーボンニュートラルへの取り組みを加速させられるでしょう。
エネルギー自給率を高められる
日本は主要国と比較して、一次エネルギーの自給率が低いだけでなく、その多くを化石燃料に依存している点が課題です。資源エネルギー庁の資料によれば、2021年の一次エネルギーの自給率は13.3%、2022年度の一次エネルギー供給構成における石炭・石油・液化天然ガス(LNG)の割合は83.5%にも上ります。
このようにエネルギー自給率が低い場合、国際情勢の変化を受けやすく、最悪の場合は輸出がストップするリスクがあります。
その点、カーボンニュートラル燃料は、二酸化炭素や水素、バイオエネルギーなどを国内で自給可能なものを原料とするため、エネルギー自給率を高めていくことが可能です。
※参考:資源エネルギー庁.「2023―日本が抱えているエネルギー問題(前編)」(入手日付 2024-10-24).
カーボンニュートラル燃料のデメリット
カーボンニュートラル燃料には先述したメリットだけでなく、デメリットもあります。活用するに当たっては、デメリットも押さえておくことが重要です。
カーボンニュートラル燃料の主なデメリットには、以下が挙げられます。
- 生産コストが高い
- 技術的な課題が残っている
- 原料の調達が難しい
それぞれのデメリットを解説します。
生産コストが高い
カーボンニュートラル燃料は、化石燃料と比較して生産コストが高い点がデメリットです。
例えば合成燃料の場合、水素価格に依存しますが、資源エネルギー庁によると以下のように試算されています。
- 海外で全て製造して輸入する場合:300円/L
- 原料調達から製造まで全て国内で行う場合:700円/L
- 水素を輸入し、国内で製造する場合:350円/L
カーボンニュートラル燃料を国内で原料調達から製造まで行うと、確かにエネルギー自給率は高まりますが、上記の試算が示すようにコストがかかります。カーボンニュートラル燃料を低コストで安定的に製造するには、まだ課題があるのが事実です。
※参考:資源エネルギー庁「CN燃料普及のあり方について」(入手日付2024-10-24)
※参考:資源エネルギー庁「エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは」(入手日付2024-10-24)
技術的な課題が残っている
現在、合成燃料は研究開発の段階にとどまっており、商業化・実用化を進めるためには、製造プロセス全体にあるあらゆる課題を解決しなければなりません。
例えば、二酸化炭素の吸収・回収と水素の製造を組み合わせたプロセスは、大量のエネルギーを必要とします。電解効率が約80%でも、その後の合成燃料製造において多くのエネルギーが消費されるため、最終的なエネルギー効率は50%程度となることもあり、効率化が求められます。
また、大容量のエネルギーを安定供給していくための設備も、まだ整っているとはいえません。大規模な生産体制を確立しカーボンニュートラル燃料を供給していくためには、多くの実証実験が必要です。
※参考:自然エネルギー財団.「エネルギーロスが大きく、カーボンニュートラルに寄与しない合成メタン」(入手日付 2024-10-24).
原料の調達が難しい
カーボンニュートラル燃料は、原料の調達が難しい点もデメリットです。
カーボンニュートラル燃料の一種であるバイオ燃料は、サトウキビやトウモロコシなどの穀物を使用するのが一般的です。しかし、これらの作物の生産量は天候や地理的条件に大きく依存しています。原料の価格変動が生じやすい他、食物と燃料の両方の需要が高まると奪い合いになる可能性も考えられ、安定供給には課題を抱えています。
また、日本ではバイオエタノールの導入量は進みつつありますが、その多くを輸出に頼っているのが現状です。安定供給の面で輸入に頼らざるを得ず、自給率の低さに起因するリスクを常に抱えています。
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