
産業廃棄物は法律や政令、施行令により明確に種類が定められており、「燃え殻」もそのうちの一つです。燃え殻について「どのような廃棄物を指すのか」「具体例には何が挙げられるのか」「処理方法や注意点が分からない」などの悩みを抱えている方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、産業廃棄物の燃え殻の概要や混同されがちなばいじんとの違い、燃え殻の具体例をご紹介します。事業活動に伴い燃え殻が排出される事業場に携わっている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
産業廃棄物の燃え殻とは?
燃え殻とは、物を焼却したときに生じる焼却残さです。事業活動に伴い発生したものは、産業廃棄物に分類されます。
燃え殻は健康と環境に与える影響が大きく、産業廃棄物に分類されるものは一般廃棄物と分けて処理する必要があります。また、重金属やダイオキシン類を一定濃度を超えて含むものは特定管理産業廃棄物(特定有害産業廃棄物)に分類されるため、さらに厳格に処理しなければなりません。
燃え殻はこれらの基準に基づき適切に処理する義務があるため、事業活動に伴い発生する廃棄物が燃え殻に該当するか判断が難しいケースでは、所轄の自治体に確認してください。
ばいじんとの違い
ばいじんとの違いを正確に理解するために、まずは概要を把握しておきましょう。
ばいじん(煤塵)とは、物を燃やした際に発生する煙やすす、ちりなどの中に含まれている微粒子を総称したものです。石炭灰や電気炉ダストなどがばいじんの代表例です。
正確にはばいじんは「大気汚染防止法に定めるばい煙発生施設または産業廃棄物の焼却施設において発生するばいじんであって、集じん施設によって集められたもの 」だと定義されています。
上記の定義に該当する施設には、以下のようなものが挙げられます。
- ボイラー:燃焼能力 50リットル/時 以上
- ガス発生炉・加熱炉:原料処理能力 20トン/日、 燃焼能力 50リットル/時 以上
- 石油ガス洗浄装置に付属する硫黄回収装置の燃焼炉:燃焼能力 6リットル/時 以上
- 【カドミウム系顔料または炭酸カドミウム製造用】乾燥施設:容量 0.1立方メートル以上
- 【硝酸の製造用】吸収施設、漂白施設、濃縮施設:硝酸の合成、漂白、濃縮能力100kg/時 以上
上記はあくまでも一例なので、施設とその規模要件の詳細が知りたい方は環境省のWebサイトを確認するのがおすすめです。
燃え殻もばいじんのいずれも、物を焼却した際に生じますが、発生源や性質に違いがあります。
燃え殻は、物を燃やした際に焼却炉に残る燃え殻を指します。一方でばいじんは、焼却プロセス後に空中に飛散した粒子状のすすやダストを、集じん機で回収したものです。燃え殻は燃やした物質そのもので、ばいじんは焼却プロセスに伴い生じる副産物だと理解しておくといいでしょう。
燃え殻に分類されるものの具体例
燃え殻に分類されるものの具体例には、以下が挙げられます。
- 石炭がら
- コークス灰
- アルミ灰
- 重油燃焼灰
- 重金属を含む焼却灰
- 煙道灰
- 灰カーボン
- 下水道焼却灰
- クリンカ
- 木灰
- 製紙スラッジ焼却灰
- 焼却炉の残灰
- 炉清掃排出物
- 廃活性炭
- その他焼却残さ(物を燃やした際の燃えかす)
上記に該当する場合は、産業廃棄物として正しく処理しなければなりません。
燃え殻の処理方法
燃え殻の処理方法は大きく分けて、「リサイクルする」「埋め立て処理する」の2つです。それぞれの概要やメリットを詳しく見ていきましょう。
リサイクルする
燃え殻は、以下のようにリサイクルされます。
- 路盤材の原料にする
- セメントの原料にする
- 建築資材として再利用する
それぞれのリサイクル方法を詳しく見ていきましょう。
路盤材の原料にする
路盤材とは、路の基盤を作る材料で、一般的には砕石や砂利が用いられています。燃え殻は、路盤材へとリサイクル可能です。このプロセスでは、回収や分別などの特定の処理を施して路盤材を製造します。
燃え殻の路盤材への活用は、持続可能な資源の利用方法の一つとして注目を集めています。
セメントの原料にする
燃え殻は、セメントの原料にも活用できます。すべての燃え殻がセメントの原料にできるわけではなく、石灰(CaO)・シリカ(SiO2)・アルミナ(Al2O3)を成分として含む燃え殻が、セメントの原料となります。
廃棄物の排出量を削減できると同時に、セメント製造に必要な自然資源の使用量を減らせる点がこの手法のメリットです。
建築資材として再利用する
燃え殻を建築資材に再利用する際は、主に溶融処理を行い、その後スラグ化する処理を実施します。燃え殻由来のスラグは、建築資材として有効活用できるものもあるため、環境負荷の低減と資源の再生利用の両方を推進できます。
埋め立て処理する
リサイクル基準を満たさないものは、フレキシブルコンテナなどに収納され、埋め立て処理されます。燃え殻は主に、管理型最終処分場で埋め立てられます。
管理型最終処分場とは、有害物質の濃度が基準値未満の燃え殻やばいじん、汚泥、木くず、紙くず、繊維くず、動植物性残さ、鉱さい、動物のふん尿などの埋め立て処分を行う処分場です。
廃棄物の分解や有害物質の溶出に伴いガスや汚水が発生するため、管理型最終処分場では、環境保護の観点から十分な管理体制が必要です。具体的には、漏洩防止目的の貯留設備、地下水汚染を防止する遮水設備、浸出水を集める設備、発生したガスを排出する設備などが設けられています。
燃え殻に含まれる有害物質が一定濃度以上の場合は、セメント固化やキレート処理を行った上で管理型最終処分場に埋め立てる方法や、そのまま遮断型廃棄物最終処分場に埋め立てるなどの方法が取られます。
燃え殻をリサイクルする際の注意点
燃え殻をリサイクルする際は、まずは燃え殻に含まれる成分を詳しく分析することが重要です。これは、重金属やその他の有害物質が含まれていないかを確認するために必要なステップです。以下に示すように、重金属等やダイオキシン類を一定濃度を超えて含むものは、特定管理産業廃棄物(特定有害産業廃棄物)に分類されます。
- カドミウムまたはその化合物:0.09mg/L
- 鉛またはその化合物:0.3mg/L
- 六価クロム化合物:1.5mg/L
- 砒素またはその化合物:0.3mg/L
- セレンまたはその化合物:0.3mg/L
- ダイオキシン類:3ng/g
上記の基準に該当しなくても、健康や環境への影響を考えて特定有害産業廃棄物として処理されるのが一般的です。厳密な廃棄が必要な場合は、地方自治体や政令市に確認して指示を求めるといいでしょう。
特定有害産業廃棄物の概要や種類、判断基準、処理方法などの詳細は以下の記事で詳しくまとめているので、併せて参考にしてください。
※参考:環境省「特別管理産業廃棄物の判定基準(廃棄物処理法施行規則第1条の2)」 (入手日付2024-04-06).
燃え殻の排出量と処分比率の現状
環境省の公表した資料「産業廃棄物の排出及び処理状況等」によると、令和3年度の「燃え殻」の排出量は、全国合計で2,084千トンです。
そのうち全体の72.2%にあたる1,540千トンが再生利用され、6.2%にあたる130千トンが減量化、21.6%にあたる451千トンが最終処分されています。
全部で20種類ある産業廃棄物のうち、「燃え殻」の再生利用率はちょうど中間程度です。一方でがれき類の再生利用率は96.4%、金属くずは95.9%、動物のふん尿は95.0%、鉱さいは91.9%です。最終処分される割合も比較的多いので、依然としてリサイクルに課題を抱えています。
なお減量化とは、産業廃棄物の発生量や処理量(中間処理量・最終処分量)を削減したり、再生利用を促進してエネルギーを回収したりすることです。最終処分場をできるだけ長期にわたって使用するためには、減量化処理が欠かせません。
※参考:環境省「令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値」 (参照 2024-04-05).
※参考:栃木県環境森林部資源循環推進課「廃棄物の適正管理と減量化・再生利用の推進について p6」(参照 2024-04-06).
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