
災害廃棄物とは地震や津波などの自然災害によって生じた廃棄物のことです。災害で発生したがれきや鉄筋は産業廃棄物ではなく一般廃棄物として扱うため、地方自治体が処理責任を担います。
災害廃棄物はさまざまな物質が混ざり合った混合物の状態になる場合が多く、構成要素による分類が存在することが特徴です。
今回は災害廃棄物の定義や種類、法改正、処理方法について解説します。災害で発生したごみを廃棄する方法が知りたい方はぜひ参考にしてください。
目次
災害で出たごみ「災害廃棄物」とは?
災害廃棄物とは、自然災害によって発生したがれきや避難所のし尿、避難生活中の生活ごみなどのことです。これらは法律上の区分では家庭から排出された可燃ごみや不燃ごみと同様、一般廃棄物に該当します。
災害は緊急事態とはいえ、がれきや避難生活で出た廃棄物は事業活動の過程で生じたものではないため、産業廃棄物とは異なります。
ただし、災害廃棄物は日常生活のごみとは比較にならない量に達する場合が少なくありません。さらに土砂が混ざって分別しにくいため、一般廃棄物の処理責任を負う地方自治体では処理しきれないケースが見受けられます。
管轄の自治体だけで処理が困難な場合、災害で発生したごみの処理に全国の廃棄物処理施設を利用できる「広域処理」を行うことも可能です。
災害廃棄物に関わる法律は廃棄物処理法と災害対策基本法です。災害が起きたときに迅速かつ円滑に処理するためにも、2つの法が相互に補完する形で有事の対策が定められています。
災害廃棄物に関する重要な考え方は「スピーディーな初動対応」「行政と民間事業者の密な連携」「被災市町村のリーダーシップの発揮」「平時からの計画策定」「定期的な見直しなど」です。
近年の災害から得た教訓や知見を踏まえ、災害廃棄物の適正な処理を推進するため、2015年に廃棄物処理法および災害対策基本法の一部が改正されています。
主な改正事項は次の通りです。
- 平時の備えの強化を目的とした関連規定の整備(廃掃法第二条の三、第四条の二、第五条の二、第五条の五)
- 災害時の廃棄物処理施設の新設または活用にかかる特例措置の整備(廃掃法第九条の三の二、第九条の三の三)
- 大規模災害で生じた廃棄物の処理に関する指針の策定(災対法第八六条の五第二項)
- 大規模な災害に備えた環境大臣による処理の代行措置の整備(災対法第八六条の五の九~十三)
平時から災害に対する十分な備えをして、大規模災害が発生したときにスムーズに対応できるよう、切れ目のない対策の推進・強化のために法の整備が行われました。
参考:環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部廃棄物対策課 災害廃棄物対策チーム「災害廃棄物対策の基礎~過去の教訓に学ぶ~」

災害廃棄物の種類
災害廃棄物はさまざまな物質が混ざり合った状態のため、排出された状態のままでは廃棄できません。まず選別を行い、異物を取り除いた上で処理する必要があります。選別前の災害廃棄物は物質の種類による分類が可能です。
可燃物や不燃物、コンクリート塊、金属類、木質廃材など複数の物質が混合した状態にあるものは混合物と呼ばれます。以下で災害廃棄物の種類や処理時の注意点について解説します。
可燃系混合物
可燃系混合物とは木質廃材や廃プラスチック、紙や繊維類などの可燃物が主体となった災害廃棄物です。処理時の注意点は、腐敗や発酵が進むと温度の上昇を招き、火災につながる場合があることです。
可燃系混合物を含む災害廃棄物は量が膨大になるため、仮置き場で仮設の焼却施設を設け、処分施設に運び込む前に減量化する必要があります。
不燃系混合物
不燃系混合物はがれきやガラス、陶磁器、レンガなど不燃物の割合が多い災害廃棄物です。これらは選別や分別の過程を経た後、不燃物となり、埋め立て処分またはセメントの原料に再利用されるケースが一般的です。
埋め立ては不燃ごみの性状に応じて、安定型処分場や管理型処分場で行われます。不燃物の再利用は、製品になるセメントの品質確保のため、塩素濃度や寸法などの条件を満たす設備を検討する必要があります。
木質系混合物
木質系混合物とは木造建築の角材や柱材等が主体の災害廃棄物のことです。倒壊した木造建築のがれきが代表例で、稲わらや生木を含む場合もあります。
可燃性混合物は量が多いながらも判別が容易で分別しやすく、早い段階で他の廃棄物と分離されます。また、後の工程でリサイクルしやすいよう、あらかじめ釘や金具を分離しなくてはいけません。
なお分別や選別が完了した廃棄物のうち、再資源化できる廃木材のことを柱角材と呼びます。
コンクリート系混合物
コンクリート系混合物はコンクリートの破片や塊を主たる構成要素とする災害廃棄物のことです。鉄筋コンクリート構造の建物(建造物)の解体時や、住宅の基礎やブロック塀の撤去時に発生します。
コンクリート系混合物の処理における注意点は、リサイクル施設に搬出する前に、可燃物の除去や鉄筋類の破砕などの準備が必要になることです。
なお分別・選別が完了した廃棄物のうち、再資源化が可能なコンクリート破片やコンクリート塊はコンクリートがらと呼ばれます。
金属系混合物
金属系混合物は鉄筋構造の建物の解体時に発生した鉄骨や鉄筋をはじめ、鋼材が主体となった災害廃棄物です。機械類や、家電リサイクル法の対象品目を除く家電が主たる混合物も含まれます。
なお分別や選別が完了した廃棄物のうち、再資源化できる金属のことを金属くずと呼びます。
土砂系混合物
土砂系混合物とは、山が崩れて発生した土砂や、津波・洪水で体積した汚泥などが主たる構成要素の災害廃棄物です。
被災エリアの特性に応じて、混ざり合う要素が変わりやすいことが特徴です。住宅地域では家屋や生活用品が多数を占め、工業地帯では有害物質や化学物質が混入する可能性もあります。
津波堆積物
津波堆積物とは、津波により海底や海岸から地上へ打ち上げられた災害廃棄物です。主に砂泥で構成されていながらも、2011年の東日本大震災では処理困難物や有害物質、化学物質を含む状態にあったため、混合物として扱われるようになりました。
津波が発生すると、波と一緒に海底の土壌が押し寄せるだけでなく、陸上の農地や住宅地などが巻き込まれます。災害が過ぎ去った後にはさまざまな物質が混ざり合った混合物が地上に残存します。
災害廃棄物の処理方法
一般廃棄物の災害廃棄物は地方自治体に処理を委託できるとはいえ、混合物の状態のままでは焼却や埋め立てができません。
ここからは、主な処理の流れを解説します。
解体・撤去を行う
始めに被災地で建物や建造物の解体・撤去を行い、災害廃棄物を集積します。ただ1カ所にまとめるだけでなく、仮置き場へと搬出する前に、災害現場で粗分別を実施しましょう。
さらに人命救助や障害物の撤去のための通路の確保なども、被災地における一時的な対応として求められます。
一次仮置き場へ運搬して分別・保管する
続いて、集積した廃棄物を一次仮置き場に搬出し、ごみの特性ごとに分類してから保管します。可燃物や不燃物、再資源化が可能なものなどを区分しておけば、収集運搬時にかかるコストの低下や最終処分量の削減につながるためです。
一次仮置き場は災害廃棄物の速やかな撤去のために重要となる場所です。仮置き場の設置に当たっては、地域住民の理解を得た上で造成工事を施し、災害で生じた廃棄物を即座に搬入できる用地を確保します。
二次仮置き場へ運搬して分別・破砕する
災害廃棄物を保管する際は、一次仮置き場では難しい細かな中間処理を行うための二次仮置き場を利用します。
破砕やきめ細かい分別、焼却処理を実施する都合上、ある程度の広さが求められることが特徴です。運動公園や工業用地、港湾、公有地など数ヘクタールの面積がある場所が推奨されています。
処理施設で処分・再資源化する
二次仮置き場から排出された災害廃棄物は処理施設に運ばれ、埋め立てや再資源化を行い、最終的な処理が完了します。中間処理の過程でリサイクルが可能な性状に分類され、焼却処理を通して埋め立て可能な焼却灰になっていることが前提です。
災害廃棄物の最終処分は全国の一般廃棄物処理施設で行われます。
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