
産業廃棄物の収集・運搬には一般的なトラックの他にダンプも使用されますが、車両の種類によっては収集・運搬が禁止されている品目もあります。産業廃棄物を適切に処理するためにも、各車両の特徴や種類を理解しておくことが大切です。
そこで本記事では、ダンプとトラックの違いに触れた上で、産業廃棄物運搬用ダンプを6種類解説します。また運搬時の注意点や、よくある3つの質問もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
ダンプとは?トラックとの違いも解説
ダンプは正式名称を「ダンプトラック」と言います。
この名前からも分かるように、ダンプはトラックの一種です。
まず、トラックは荷物の収集・運搬に特化した車両の総称で、運転席と荷台が区切られている点が特徴です。トラックにはさまざまな形態やサイズがあり、ダンプ以外にもトレーラーやタンクローリー、クレーン車、ミキサー車などの大型の車両も含まれます。
その中でもダンプは、荷台を傾けたり上下させたりして荷物を下ろす機能を有している車両のことを指します。主に土砂や産業廃棄物の収集・運搬に用いられることが多いダンプですが、さらにいくつかの種類に分けられます。次章ではそれぞれの種類を詳しくご紹介します。

産業廃棄物運搬用ダンプの種類6つ
ダンプには用途や形状によって様々な種類がありますが、産業廃棄物運搬用に使用されるものには、以下の6種類が挙げられます。
- リアダンプ
- サイドダンプ
- 三転ダンプ
- ローダーダンプ
- 深ダンプ
- 重ダンプ
それぞれの特徴や用途などを詳しく見ていきましょう。
リアダンプ

リアダンプは、荷台を後方に傾けられるタイプのダンプです。ダンプと聞くと一般的に連想されるスタンダードなタイプで、産業廃棄物の収集・運搬だけでなく、建設現場や運送業などで幅広く活用されています。
サイドダンプ
リアダンプの荷台が後方に傾くのに対して、サイドダンプは、荷台が左右に傾くタイプの車両です。リアダンプほど積み下ろし作業で高さが出ないので、高さに制限がある場所でも荷物の積み下ろしが可能となります。
三転ダンプ
三転ダンプは荷台を後方だけでなく、左右にも傾けられるタイプの車両です。リアダンプと、サイドダンプの両方の特徴を兼ね備えています。高さに制限がある場所や狭い場所で荷物を積載する際に、活躍します。
ローダーダンプ

ローダーダンプとは、リアダンプのように後方に傾けられる機能に加えて、荷台を後方にスライドできる機能を有するタイプです。スライドダンプとも呼ばれます。
リアダンプとは異なり荷台をダンプアップせずに積載できるため、高さ制限がある場所でも活用できます。また、荷台の柔軟性が高いため、小型重機をローダーダンプに積載し作業現場まで運搬するなど、様々なシーンで活躍します。
似たもので重機運搬車やキャリアカーなどがありますが、これらは他の車両を運搬することに特化しているのに対し、ローダーダンプは土砂を運搬する機能も備えた「一台二役」を兼ねた車両となっています。
深ダンプ(土砂禁ダンプ)

深ダンプはあおり部分が高く、深さがあるタイプの車両です。容積が大きいので一度に大量の積載物を運搬できる点が特徴ですが、土砂やコンクリートなど、密度の大きいものの運搬は禁じられています。そのことから別名「土砂禁ダンプ」とも呼ばれます。
落ち葉や木くず、空のペットボトルなど、軽量でかさばるものの運搬に向いています。
重ダンプ

重ダンプは「オフロードダンプ」や「マンモスダンプ」とも呼ばれる、大容量の積荷を運搬できるタイプの車両です。鉱山や採掘現場、ダム建設現場、広大なインフラ建設現場などで活用されています。
通常のダンプの最大積載量が2~11t程度なのに対し、重ダンプはそれ以上~中には一度に300t以上の積荷を運搬できるものもあります。
大きいものでは二階建ての家ほどもあり、一般の公道を走行することはできません。そのため、実際に重ダンプが廃棄物処理場までの運搬を行うことはありません。しかし、排出現場で発生した大量の廃棄物を運搬車両に効率的に積み込むためには欠かせない存在です。
参考:内閣府. 「道路通行車両の制限」.(入手日付2023-12-09).
以上が6つの主なダンプの種類です。ダンプは特別な機能を有している分、価格が高くなる傾向にあります。コストを抑えるために中古車両や、長持ちするようステンレス加工が施されている車両を購入するのも一つの手です。
ダンプ以外の産業廃棄物運搬用の車両
産業廃棄物はダンプ以外にも、さまざまなトラックで収集・運搬されます。車両の名称と、運搬される産業廃棄物の例を見ていきましょう。
- クレーン車:鉄骨鉄筋くず・金属加工くずなど建設現場で排出される産業廃棄物
- アームロール車:事業所や建設現場で排出される産業廃棄物
- パッカー車(塵芥車):圧縮が必要な廃プラスチック
- コンテナ車(脱着装置付きコンテナ専用車):金属くず・ガラスくず・廃プラスチック・がれきなどの腐食しない産業廃棄物
- タンクローリー車:廃油・廃酸・廃アルカリ・汚泥など液体状の産業廃棄物
- バキューム車:動物のふん尿・汚泥
- チップ車:紙の原料となるおがくずや木片
それぞれの車両の特徴や形状などは以下の記事で詳しく解説しているので、ダンプ以外の車両を検討している際はぜひ参考にしてください。
産業廃棄物の運搬時にダンプを使用する際の注意点3つ
産業廃棄物の運搬時にダンプを使用する際は、以下の3つの点に注意してください。
- 産業廃棄物と土砂の違いを理解しておく
- 深ダンプは土砂を運搬できない(土砂禁)
- 過積載にならないようにする
それぞれの注意点を押さえ、適切な運搬を行いましょう。
産業廃棄物と土砂の違いを理解しておく
土砂とは、地表や地盤、岩盤を掘削した際に生じる土・砂・がれき・石・れき・砂利が集まったものを指します。岩石などが混合していても、全体における割合が少なければ土砂と判断されます。土砂は建設現場で発生する不要物ですが、実は産業廃棄物には分類されないため、廃棄物処理法で収集や運搬、処理については定められていません。
しかし、土砂に汚泥やコンクリートの粉砕物、木くず、金属くず、ガラスくずなどが混入されている場合もあります。これらを分離できない場合は、産業廃棄物として処理をする必要があります。
また、流動性が少なくダンプに積載できる形状でも、運搬に伴い泥状に変化するものは産業廃棄物の一種である汚泥として取り扱わなくてはなりません。
上記のように土砂として処分できないケースもあるので、産業廃棄物と土砂の違いはしっかり把握しておきましょう。
深ダンプ(土砂禁ダンプ)は土砂を運搬できない
深ダンプ(土砂禁ダンプ)では、土砂を運搬できません。荷台の容積が大きいため、比重の高い土砂を積むと最大積載量を超える可能性があり、制動距離が延びたり横転のリスクが高まったりと運搬に支障をきたすためです。土砂以外にも、比重の高い汚泥や鉱さい、コンクリートくず、陶磁器くずなどは運搬できません。
ダンプは汚泥や土砂などを運搬するイメージが強く、深ダンプも同じように考えがちですが、禁止されているため収集・運搬しないよう規則を守りましょう。
過積載にならないようにする
経費削減や効率化目的などから、最大積載量を超える荷物をのせて走行する過積載が問題視されています。
過積載の状態で運転を行うと下記のようなリスクがあり、重大な事故を引き起こす危険があります。産業廃棄物をダンプで収集・運搬する際は、最大積載量を超えないよう注意してください。
- ブレーキが効きづらくなり制動距離が長くなる
- スピードが制御できなくなる
- 車体に大きな負担がかかる
- 荷崩れが起きやすくなる
最大積載量を超えての運搬を行った場合、法律により罰せられます。
過積載の割合や違反回数などに応じて、運転手には違反点数の加算、事業者には車両停止処分や、悪質な場合には事業許可の取り消し処分が行われることもあります。また、運搬を依頼した荷主にも再発防止命令が出され、違反すると6か月以上の懲役または10万円以内の罰金が科せられます。
なお、過積載に許容範囲はなく、最大積載量を1kgでも超えると違法となるので、各車両の最大積載量を把握した上で余裕を持たせて運搬するよう注意が必要です。
参考:e-GOV法令検索. 「道路交通法」 , e-GOV法令検索. 「貨物自動車運送事業法」. (入手日付2023-12-09)
参考:国土交通省「過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!」(入手日付2024-01-25)
産廃ダンプに関するよくある質問3つ
ここでは、産業廃棄物運搬用のダンプに関する、よくある以下の3つの質問をご紹介します。
- 深ダンプで土砂を運搬したら違法?
- 産廃コンテナとは?
- 2tダンプと3tダンプの違いは?
それぞれの質問に対する回答もセットで把握した上で、産業廃棄物を収集・運搬しましょう。
深ダンプ(土砂禁ダンプ)で土砂を運搬したら違法?
深ダンプ(土砂禁ダンプ)で土砂を運搬してはいけないことは先述した通りですが、実際に運搬した場合違法なのか気になる方もいるでしょう。結論からお伝えすると、深ダンプで土砂を運搬するのは、違法行為に当たります。
深ダンプは積載可能な容積が大きい分、積み荷によっては過積載となりやすい車両です。そのため深ダンプの車検証には必ず「積載物は、土砂等以外のものとする」と記載されます。
一方、「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法(通称:ダンプ規制法)」には、土砂等を運搬する車両はあらかじめ国土交通大臣への申請をする必要があるという内容が記されています。しかし、深ダンプで申請を出しても許可が下りることはないため、深ダンプで土砂を運ぶことは違法になるのです。
土砂等の運搬の用に供するため大型自動車(事業用自動車であるものに限る。)を使用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、国土交通大臣に申請して、当該大型自動車について表示番号の指定を受けなければならない。 – 土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法 第三条(表示番号の指定)第二項 |
また、「土砂等」の中には産業廃棄物のがれき類、鉱さい、ガラスくず、コンクリートくず及び陶磁器くずなどの品目も含まれます。
これらを許可のない深ダンプで運搬した場合、同法律により三万円以下の罰金が科されます。
この罰金は交通違反における反則金とは異なり、刑事罰として前科がつく重い罰となります。
参考:e-GOV法令検索. 「土砂等を運搬する大型自動車による交通事故の防止等に関する特別措置法」.(2023-12-09).
産廃コンテナとは?
産廃コンテナとは、産業廃棄物の保管・収集・運搬に用いられるコンテナです。コンテナと聞くと、船舶やトラックに積む金属製の箱型のものをイメージするかもしれませんが、産廃コンテナには以下の種類が挙げられます。
- フレキシブルコンテナバッグ:布やポリプロピレン樹脂を使った袋状の容器。汚泥や紙くず、繊維くず、がれきくず、金属くずの収集・運搬に用いられる。
- 脱着装置付きコンテナ:アームロール車に搭載するコンテナ。がれきくずや金属くず、ガラスくず、木くず、ゴムくずなど多くの産業廃棄物を収集・運搬できる。
- 産廃ボックス(バッカン):四角形の大型の容器。廃プラスチックや金属くず、紙くず、木くずの保管に用いられる。
産廃コンテナの種類や用途、サイズ、運用方法などの詳細は、こちらの記事で詳しく解説しています。産廃コンテナの運用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
2tダンプと3tダンプの違いは?
2tダンプと3tダンプの違いは、最大積載量です。前者は最大2tまで、後者は最大3tまで積載できます。
3tダンプの方が一度に多くの産業廃棄物を収集・運搬できますが、2tダンプより車両総重量がある分、自動車重量税が高くなります。「多く積載できるから3tダンプにしよう」と安易に考えるのではなく、使用用途や収集・運搬する産業廃棄物の積載量に応じて、どちらを購入するか検討すると良いでしょう。
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