電子マニフェストとは?紙マニフェストとの違いや導入のメリットについて分かりやすく解説

電子マニフェストとは?紙マニフェストとの違いやメリットなどを解説

事業活動によって発生した産業廃棄物は、排出事業者が適正に処理をする義務があると法律で定められています。外部の会社に処理を委託した場合も、その会社がどのような処理を行ったのか、最後まで確認しなくてはなりません。

そのために発行されるのが、産業廃棄物処理の流れを記録する「マニフェスト」と呼ばれる管理票です。制度ができた当初は紙のマニフェストのみでしたが、現在はインターネット上で管理できる電子マニフェストも普及しています。

本記事では電子マニフェストと紙マニフェストの違いや、それぞれのメリット・デメリットなどについて解説します。

目次

マニフェスト制度とは?

マニフェスト制度とは、産業廃棄物の適正な処理を確保するために導入された制度です。この制度では、廃棄物の排出事業者が収集運搬業者や処分業者に委託する際に、廃棄物の処理過程を明確に管理するための「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」を発行します。

マニフェスト制度の目的

マニフェスト制度の目的は、産業廃棄物が適正に処理をされているかを管理することです。排出事業者が収集運搬業者や処分業者に委託した産業廃棄物の処理状況を把握し、不法投棄や不適切な処理を未然に防止するために設けられました。

この制度下では、排出事業者は、マニフェスト(紙媒体または電子媒体)を発行して廃棄物が最終処分まで問題なく処理されたか確認しなければなりません。マニフェストは各処理段階で交付・回収され、その結果を基に処理過程を詳細に把握することができます。

マニフェスト制度導入の背景・対象者・提出先

マニフェスト制度導入以前は、排出事業者が委託先の処理方法を正確に把握することが難しく、不法投棄や不適切な処理の未然防止が難しい現状がありました。こうした状況を受け、厚生省(現在の環境省)が1990年にマニフェストの任意運用を開始。1993年には人や環境に被害を及ぼす可能性のある特別管理産業廃棄物を対象にマニフェスト発行が義務付けられ、1998年からは全ての産業廃棄物が対象となっています。

ただし、「市区町村・都道府県に産業廃棄物処理を委託する場合」や「古紙・鉄くずなどの再生利用が目的の産業廃棄物(専ら物)を、専門の処理業者に処理を委託する場合」などでは不要です。

マニフェスト発行義務が課せられる対象者は、産業廃棄物の排出事業者です。マニフェストを作成し、その内容を基に委託先の処理状況を確認する義務があります。作成したマニフェストの処理状況は、年に一度、排出した事業場のある管轄自治体(都道府県や政令指定都市など)に報告します。

※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)「マニフェスト制度の目的」(入手日付2024-07-24)

電子マニフェストとは?

電子マニフェストとは?

マニフェストの形式は、紙媒体と電子媒体の2つです。廃棄物の適正な処理を確保するために、それぞれの特徴を押さえておくことが重要です。ここでは、電子マニフェストの概要を詳しく見ていきましょう。

電子マニフェストとは、産業廃棄物の処理状況を、インターネットを通じてリアルタイムで管理するシステムです。排出事業者は、廃棄物の処理を委託する際に電子マニフェストを作成し、JWNET(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター)のデータベースに登録します。


DXE株式会社資料DL

JWNETとは?

JWNET(公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター:Japan Waste Network)とは、法律によって指定された唯一のシステムです。産業廃棄物の排出事業者が電子マニフェストを利用する際には、必ずこのJWNETに加入する必要があります。民間事業者も電子マニフェスト関連のシステムを提供しているケースがありますが、これらはJWNETの操作や運用を簡便にするためのものであり、JWNETそのものとは異なる点には注意しましょう。

JWNETの利用には年間利用料金がかかり、料金は業種とマニフェスト登録件数によって異なります。年間利用料に加え、排出事業者と処分業者は、マニフェスト1件当たり最大で22円の使用料を支払う必要があります。主な料金形態は、以下の表の通りです。

年間利用料 マニフェスト登録料(1件当たり)
排出事業者 110円~26,400円(料金プランによる) 無料~22円
収集運搬業者 13,200円 なし
処分業者 13,200円~26,400円(料金プランによる) 無料~22円

料金の詳細は、プランや年間登録件数により異なるので、詳細はJWNETの公式サイトにて確認してください。

※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)(入手日付2024-07-24)

電子マニフェストと紙マニフェストとの違い

紙マニフェストとは、産業廃棄物の処理状況を管理するために用いられる7~8枚綴りの複写式伝票です。排出事業者、収集運搬業者、処分業者が各プロセスで必要事項を記入し交付・回収することで、廃棄物の流れを追跡できます。

紙マニフェストはインターネット環境がなくても使用できますが、いくつかデメリットがあります。手書きで記入するためミスや漏れが起こりやすく、徹底した法令遵守が難しくなる点や、保存義務が5年間と長期間に及ぶ点などです。また、紙媒体で管理するため一定の紛失リスクもあります。

その点電子マニフェストは、システム上で必要な情報を管理するため、記入ミスや漏れを紙マニフェストと比較して低減させることが可能です。また、入力データはクラウド上に保存されるため、保管スペースは不要で、紛失のリスクもありません。

電子マニフェストのメリット

電子マニフェストは導入することで業務の効率化をはじめとしたさまざまなメリットを得られます。
まずはメリットに関してご紹介します。

メリット1. 業務の効率化

電子マニフェストでは必要事項を手書きで記載する必要はありません。また排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者間で伝票を郵送するやり取りも不要です。そのため紙マニフェストで発生していた運用・管理の手間が省けて、業務の効率化につながります。

JWNETの発表によれば、電子マニフェストを導入したある企業では、年間3,000時間、約1,000万円の事務処理の費用の削減を実現しているとのことです。削減できた時間の具体的な内訳は次の通りです。

作業時間
(紙マニフェスト)
作業時間
(電子マニフェスト)
削減時間
発行業務 2,600時間 250時間 2,350時間
管理業務 500時間 150時間 350時間
交付等状況報告業務 300時間 0時間 300時間
合計 3,400時間 400時間 3,000時間

業務が効率化すれば、コストの削減につながり従業員を他業務へ従事させられるなどのメリットも期待できます。

出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター.「導入のメリット」

メリット2. マニフェスト交付等状況報告書の提出が不要

紙マニフェストの場合、交付者である排出事業者と中間処理業者は、1年間に交付したマニフェストの情報を自治体に報告しなければなりません。

対して、電子マニフェストではこれらの業務を行う必要がありません。JWNETに登録されている情報はJWセンターがまとめて報告するため、排出事業者による報告は不要となるのです。

出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター.「措置命令と罰則」

メリット3. 産業廃棄物処理の透明性が保てる

JWNETに登録された情報は、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者が常に閲覧できるため、産業廃棄物処理の透明性を保つのに役立ちます。また、修正や取り消しを行うには関係者の承認が必要なため、不適正な処理が行われることを防ぐ役割もあるでしょう。

メリット4. 5年間の保管義務が発生しない

紙マニフェストは交付や受け取りをしてから、5年間保管しなければなりません。これは特定の事業者に限ったわけではなく、排出事業者、収集運搬業者、処分業者それぞれに保管義務があります。

電子マニフェストでは、JWセンターが管理を行うため、各事業者に保管義務が発生しません。これによって紛失のリスクや保管スペースの削減につながります。

メリット5. 処理状況が共有される

JWNETでは処理状況がリアルタイムで確認可能なため、紙マニフェストのように控えの郵送を待つ必要がありません。また、未報告のマニフェストの報告期限が近くなると、JWセンターから排出事業者宛に通知が届くようになっているため、報告漏れを防ぐことができます。

出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター.「紙マニフェストとの運用比較」
出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター.「よくあるご質問」

メリット6. 入力ミスを防げる

電子マニフェストは入力する事項がシステムで管理されているため、どの項目にどんな内容を入力するかが分かりやすくなっているのが特長です。そのため、紙マニフェストと比べて記載ミスや入力漏れを防ぐことができます。

また、ミスがあった場合でもシステム上で修正をすることができます。他社の処理が完了した後に修正をする場合は別途承認をもらう必要がありますが、紙のように7~8枚の複写をすべて修正する必要がないのはメリットと言えるでしょう。

メリット7. 登録情報をダウンロードして集計できる

電子マニフェストでは、過去5年間におよぶ登録情報を迅速に照会できます。また該当のデータをCSVとしてダウンロード可能です。過去の処理状況を確認しなければならない場合や、情報分析を行う際に役立てられます。

メリット8. 法令を遵守できる

電子マニフェストでは、システム上で必須項目を管理し、入力漏れを防止できるため、廃棄物処理法に基づく報告義務を確実に果たすことが可能です。運搬終了や処分終了などの報告期限が近づくと、システムが自動的に通知するため、報告漏れのリスクも大幅に減少します。マニフェスト紛失のリスクもなく、徹底して法令を遵守できるでしょう。

電子マニフェストのデメリット

電子マニフェスト導入には様々なメリットがある一方、導入費用の発生、運用のルール策定といったデメリットもあります。メリットとデメリットをそれぞれ把握した上で導入を検討しましょう。

デメリット1. 導入に費用がかかる

電子マニフェストの利用には年間料金がかかります。また、排出事業者と処分業者は、マニフェスト1件につき最大22円の登録料が別途かかります。

紙のマニフェスト伝票にも購入代金はかかりますが、電子システムのような実物の見えないものに費用をとられるということに、抵抗を覚える方もいるかもしれません。

なお、料金の詳細はJWNETの公式サイトで確認することができます。排出事業者と処分業者は選択する料金プランと、年間のマニフェスト件数によっても異なります。

利用料金|公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター(JWNET)

デメリット2. 3者すべてが加入する必要がある

電子マニフェストは排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者すべてが加入しなければ運用できません。未加入の事業者と契約をした分は、紙マニフェストで運用をする必要があります。

現状、すべての事業者が電子マニフェストを導入しているわけではないため、おのずと紙と電子の処理が混在することになります。運用ルールを検討しなければ、管理が複雑になってしまう恐れがあるでしょう。

デメリット3. 導入にあたってルール策定をはじめとした環境整備が必要

電子マニフェストの導入にあたっては、取引先も交えて運用ルールを策定する必要があります。
特に産業廃棄物を排出する事業所とJWNETを使用する事業所が異なる場合や、産業廃棄物の引き渡し担当者とJWNETの入力者が異なる場合は運用ルール策定が求められます。

例えば、排出事業者は産業廃棄物の引渡しから3日以内にマニフェストを登録しなければならないため、どのタイミングで登録するかといったルールを設けておきましょう。
また、JWNETを操作する担当者に操作方法をレクチャーする時間も必要です。

電子マニフェストのメリット・デメリット

紙と電子どちらを選べばいい?

上記のように、電子マニフェスト導入にはメリットとデメリットがあります。一度導入してしまえば大幅に業務が効率化されますが、導入までのハードルが高いのが問題と言えます。

今後も電子の利用者が増えていくことを考えると導入をするのが望ましいですが、現状はどちらを使用しても問題ないため、運用に合わせて検討するとよいでしょう。

電子マニフェストの一部が義務化

電子マニフェストは2020年4月1日より、一部を対象に義務化されました。
対象となるのは以下のような排出業者です。

前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が50トン以上の事業場が
特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する場合

義務化対象にもかかわらず、紙マニフェストの伝票を交付していた場合、行政による勧告、公表、命令を経て1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科されます。

義務化の背景には、過去に起きた廃棄物の不適正処理があります。
電子マニフェストが導入されていれば、不適正処理の原因究明を迅速に行うことができるという行政側のメリットもあります。

出典:環境省.「Q&A 電子マニフェスト使用の一部義務化等について」
出典:滋賀県.「電子マニフェストの使用が一部義務化されました」

電子マニフェストの加入状況

電子マニフェストの加入状況は年々増加傾向にあります。JWセンターの発表によれば、2024年2月29日時点の加入状況は以下の通りです。

年度 加入者数 加入者数の内訳
排出事業者 収集運搬業者 処分業者
2019 240,099 209,923 21,063 9,113
2020 271,587 239,435 22,738 9,414
2021 304,128 270,091 24,384 9,653
2022 301,863 266,108 25,891 9,864
2023 314,678 276,394 28,143 10,141

また、マニフェストの電子化率(普及率)は次の通りです。

  • 2019年度:62.6%
  • 2020年度:65.1%
  • 2021年度:71.7%
  • 2022年度:77.1%
  • 2023年度:81.4%

(※マニフェスト総数を 5,000 万件として算出した電子化率)

環境省が2018年に発表した『電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ』において2022年度までに電子マニフェスト普及率70%という目標を掲げており、実際に2022年度には77.1%が電子化されています。

世界的な循環型社会実現への取り組みも踏まえ、今後も電子マニフェストの普及は進んでいくと考えられます。

出典:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター.「電子マニフェストの加入・登録状況(2024年2月29日現在)」
出典:環境省.「電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ」

電子マニフェスト導入の流れ

電子マニフェストを導入するには、前提としてパソコンやインターネットをはじめとした電子マニフェストが使用できる設備、環境が整っていなければなりません。まずはそれらの整備に取り掛かる必要があります。

電子マニフェストは、21時までにJWNETに加入を申し込めば当日に利用可能です。電子マニフェストの運用開始日が定まっているのであれば、運用開始日から逆算して次のような流れで進めていきましょう。

● 取引先の導入状況の確認
● 加入する単位の検討
● 料金プランの選択
● 運用ルールの策定
● 社内周知と導入後のフォロー

ステップ1. 関連する業者がJWNETに加入しているかを確認

取引している業者がJWNETに加入しているかどうかを確認します。
加入状況はJWセンターのホームページから業者別に確認可能です。ただしホームページから確認できるのは、加入状況の公開を承認した業者のみです。
ホームページで確認できなければ取引先に直接確認してみましょう。

ステップ2. 加入する単位を検討する

業者の中でも、排出事業者はJWNETにどのような単位で加入するかを任意で設定可能です。通年で廃棄物を排出している事業所はもちろん、年に数回しか廃棄物を排出しない事業所までを洗い出して、どのような単位で加入するかを検討しましょう。

加入単位の例として以下が挙げられます。

● 事業所ごとの加入
● 事業所を管轄する営業所ごとの加入

ステップ3. 料金プランを選択する

排出事業者には、料金プランにいくつかの選択肢があります。マニフェスト伝票の交付件数によって適したプランが異なるため、過去のマニフェスト伝票の交付件数を確認した上で、適した料金プランを選んでください。
特に小規模の排出事業者向けであるC料金はJWNETとの対応を代表企業にお任せできるプランになっており、事務負担が非常に少なくて済みます。対応している収集運搬業者や当社にご相談下さい。

ステップ4. 取引先も交えて運用ルールを決める

取引先も交えた運用ルールの策定も必要です。産業廃棄物の引渡しからJWNETにマニフェスト登録するまでの日数などのルールを決めておくことでスムーズな運用につながります。

ステップ5. 運用ルールの社内周知

運用ルールが定まったら、電子マニフェストを操作する従業員にルールや操作方法を周知します。
ただし周知しても運用開始後に従業員から質問や意見などが出てくることが考えられます。
また、導入したは良いものの電子マニフェストが浸透しない可能性もあるため、導入からしばらくは細かく確認しフォローする体制を整えておきましょう。

電子マニフェストを導入して業務の効率化を目指そう

いかがだったでしょうか。
電子マニフェストの導入はハードルが高い反面、一度導入すれば大幅な効率化が望める便利なシステムだと言えるでしょう。
とはいえ、取引先の事業者が電子化に消極的だと、なかなか導入が進められない…ということもあるかもしれません。

DXE株式会社ではそんな事業者様に向けて、お取引先の電子化推進にも役立つ産廃業務効率化システム「DXE Station」を提供しています。登録に不慣れな排出事業者に代わって、収集運搬業者が主となりマニフェストの作成、管理を行うことができる「代行起票」機能を始め、電子化推進に役立つサービスを多数取り揃えています。

マニフェストについての業務負担を軽減したい場合は、ぜひ一度ご検討ください。


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