
毎年この時期に労働災害発生状況が公表されます。
また、6月は全国安全週間(7月1日~7日)に向けた準備月間にあたります。まずはそのポイントを確認してみましょう。
うっとうしい梅雨が明けると一気に気温が上昇します。この時期に熱中症対策の準備を進めておくことが求められます。後段では熱中症対策についてもまとめてみました。
目次
労働災害発生状況
厚生労働省は5月、2022年(1~12月)の労働災害発生状況を公表しました。ポイントを確認してみましょう。
出典:厚生労働省「令和4年の労働災害発生状況を公表」
死亡者数および死傷者数の推移は以下のようになっています。
・死亡者数は774人(前年比4人減)と過去最少
・休業4日以上の死傷者数は132,355人(前年比1,769人増)と過去20年で最多

(新型コロナウイルス感染症へのり・患による労働災害を除く)
事故の型別労働災害発生状況では、死亡者数は全体に減少傾向にある中、「墜落・転落」はあまり減少が進まず前年比でプラスとなっています。一方で「はさまれ・巻き込まれ」は減少が進んでいます。(廃棄物処理業界で減っている感じはあまりしないのですが)
死傷者数はここ十数年漸増傾向が続く中、「転倒」「動作の反動・無理な動作」が上位かつ増加傾向にあります。これは高年齢労働者の増加が主な要因であり、死傷者数の数字を引き上げています。

ちなみに、新型コロナウイルス感染症へのり・患による労働災害は以下のとおりです。
・死亡者数は17人(前年比72人減)、死傷者数は155,989人(前年比136,657人増)
「第14次労働災害防止計画」(2023年度~2027年度)では、2027年までに2022年比で減少させること等を目標にしています。
・建設業及び林業においてそれぞれ死亡災害を15%以上
・製造業における機械によるはさまれ・巻き込まれの死傷者数を5%以上
・陸上貨物運送事業の死傷者数を5%以上
2023年度は、労働者の作業行動に起因する労働災害対策、高年齢労働者、多様な働き方への対応や外国人労働者等の労働災害防止対策、陸上貨物運送業、建設業、製造業や林業への対策、労働者の健康確保対策、化学物質等による健康障害防止対策などに取り組むこととしています。
高年齢労働者や外国人労働者の増加を前提とした対策が求められているところです。

全国安全週間
毎年7月1日~7日は、全国安全週間となっており、6月はその準備月間になります。今年のスローガンは「高める意識と安全行動 築こうみんなのゼロ災職場」です。
この期間に、厚生労働省・都道府県労働局から、事業場・関係業界団体等に対して、積極的な労働災害防止活動の実施を働きかけることになっています。
「令和5年度全国安全週間実施要綱」には対策のエッセンスが詰まっています。確認してみましょう。
出典:厚生労働省「令和5年度全国安全週間実施要綱」
業種の特性に応じた労働災害防止対策(抜粋)
① 陸上貨物運送事業における労働災害防止対策
ア 荷台等からの墜落・転落防止対策、保護帽の着用
イ 積み卸しに配慮した積付け等による荷崩れ防止対策の実施
ウ 歩行者立入禁止エリアの設定等によるフォークリフト使用時の労働災害防止対策の実施
エ トラックの逸走防止措置の実施
オ トラック後退時の後方確認、立入制限の実施
② 製造業における労働災害防止対策
ア 機械の危険部分への覆いの設置等によるはさまれ・巻き込まれ等防止対策の実施
イ 機能安全を活用した機械設備安全対策の推進
ウ 作業停止権限等の十分な権限を安全担当者に付与する等の安全管理の実施
エ 高経年施設・設備の計画的な更新、優先順位を付けた点検・補修等の実施
オ 製造業安全対策官民協議会で開発された、多くの事業場で適応できる「リスクアセスメントの共通化手法」の活用等による、自主的なリスクアセスメントの実施
業種横断的な労働災害防止対策
① 労働者の作業行動に起因する労働災害防止対策
ア 作業通路における段差等の解消、通路等の凍結防止措置の推進
イ 照度の確保、手すりや滑り止めの設置
ウ 「転倒等リスク評価セルフチェック票」を活用した転倒リスクの可視化
エ 運動プログラムの導入及び労働者のスポーツの習慣化の推進
オ 中高年齢女性を対象とした骨粗しょう症健診の受診勧奨
カ 「職場における腰痛予防対策指針」に基づく措置の実施
② 高年齢労働者、外国人労働者等に対する労働災害防止対策
ア 「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン」に基づく措置の実施
イ 母国語教材や視聴覚教材の活用等、外国人労働者に理解できる方法による安全衛生教育の実施
ウ 派遣労働者、関係請負人を含めた安全管理の徹底や安全活動の活性化
③ 交通労働災害防止対策
ア 適正な労働時間管理、走行計画の作成等の走行管理の実施
イ 飲酒による運転への影響や睡眠時間の確保等に関する安全衛生教育の実施
ウ 災害事例、交通安全情報マップ等を活用した交通安全意識の啓発
エ 飲酒、疲労、疾病、睡眠、体調不良の有無等を確認する乗務開始前の点呼の実施
④ 熱中症予防対策(STOP!熱中症 クールワークキャンペーン)
ア 暑さ指数(WBGT)の把握とその値に応じた熱中症予防対策の実施
イ 作業を管理する者及び労働者に対する教育の実施
ウ 事業場における熱中症予防に係る責任体制の確立、発症時・緊急時の措置の確認、周知
⑤ 業務請負等他者に作業を行わせる場合の対策
ア 安全衛生経費の確保等、請負人等が安全で衛生的な作業を遂行するための配慮
イ その他請負人等が上記 10(1)~10(3)④に掲げる事項を円滑に実施するための配慮
上記対策を講じる上で、経営トップ自ら深く関与しコミットすることが重要になります。
他社に作業を行わせる場合の注意点
業務委託を行う場合はこれまで以上に注意が必要です。また、危険有害な作業現場で廃棄物を回収する場合、これまで以上に厳格なルールを求められるケースが出てくると思われますので、確実に周知徹底を図る必要があります。
労働安全衛生規則等の改正内容は以下の2点になります。
・作業を請け負わせる場合は、請負人(一人親方や下請業者)に対しても、①局所排気装置等の設備の稼働、②特定の作業方法の周知、③保護具の使用の周知の義務
・同じ場所で作業を行う労働者以外の者(他社の労働者や資材搬入業者など)に対して、①立入禁止・喫煙・飲食禁止などの周知及びその徹底、②事故発生時等の退避、③化学物質等の有害性等の掲示の義務
重層請負の場合の措置義務者は、請負契約の相手方に対する義務です。
仮に三次下請まである場合、一次下請は二次下請に対して義務を負いますが、三次下請に対して義務を負いません。また、二次下請は三次下請に対して義務を負います。

出典:厚生労働省「労働者と同じ場所で危険有害な作業を行う個人事業者等の保護措置が義務付けられます!」
熱中症予防対策
厚生労働省は5月、職場における熱中症による死傷災害の発生状況を公表しました。

出典:厚生労働省「令和4年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況」
年間30人の方が職場における熱中症で亡くなっています。熱中症予防対策に有用なサイトはいくつも存在すると思いますが、「環境省 熱中症予防情報サイト」では、予測を含めた暑さ指数(WBGT)を地図表示しており、対策についても記載しています。
「厚生労働省 クールワークキャンペーン」のリーフレットにはコンパクトにチェック項目が整理してありますので、ご存じの方は多いと存じますがご紹介しておきます。
環境省 熱中症予防情報サイト
厚生労働省 クールワークキャンペーン
以下に当社のグループ会社で主に工場を対象に行っている取り組みを紹介します。ご参考になれば幸いです。
事業所・工場への指示
① 朝礼時に顔色や体調を相互確認する。通常の休憩と別に1~1.5時間おきを目安として、チャイムや館内放送で、給水や体を休めることを促す。(休憩を指示する)
② WBGT測定器の購入、熱中症警戒情報のメール配信、社内ポータルサイトに「環境省 熱中症予防情報サイト」のバナーを表示するなどにより、注意喚起を行う。
③ スポーツドリンク・塩飴などを購入し、いつでも利用できるようにしておく。作業場の近くに冷蔵庫もしくはクーラーBOXと保冷剤を準備し、適度に冷えた飲み物等を摂取できるようにしておく。応急対策用にアイスノン・氷嚢などの冷却材も準備しておく。
④ 空調服・冷却ベスト・空調ヘルメットなど身につけるもの、固定式スポットクーラー・移動式大型冷風機など推奨品を紹介し購入および設置を促す。
⑤ 現場近くで日中常時エアコンを稼働させた場所を確保し、緊急時に涼むことができるようにしておく。
⑥ 応急対策用にAEDを設置し、市民救命講習修了者を増やし、熱中症の応急処置訓練、対応シミュレーションを実施しておく。
⑦ 健康診断の有所見者のうち、特に注意を要する者の情報を所属長など現場の安全管理担当者と共有しておく。
⑧ 実際に熱中症が発生した場合は、必ず監視人をつけた上で休ませる。意識がもうろうとしているなど、容体によってはためらわず救急車を呼ぶ。
個人への周知
① 日常の健康管理に留意する。 特に、深酒はしない。睡眠を十分とる。朝食を必ず取る。
② 積極的な水分補給を行う。 発汗時は塩分補給も行う。
③ 脱水症状のセルフチェックを行う。
④ 兆候を感じたら周囲に伝えた上で無理せず休む。

参照:日本医師会「かくれ脱水に注意」
参照:厚生労働省「爪を押してセルフチェック」
いかがでしたでしょうか。今年の夏もご安全に。

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