
産業廃棄物の収集運搬には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」)が定めたさまざまな規定があります。運搬方法から容器まで細かく定められているため、基本的な規定を頭に入れておきましょう。
産業廃棄物の収集運搬には主に産廃トラックを使用しますが、産廃トラックにもさまざまな種類があります。産業廃棄物は種類によって性質や形状が異なるため、それぞれに適した車両を使用するのが重要です。
本記事では産業廃棄物の収集運搬車両や容器の種類を解説します。
規定に違反しないために収集運搬業者の方はもちろん、処理を業者に委託する排出事業者の方も、ぜひ参考にしてみてください。
目次
産廃トラック(産業廃棄物収集運搬車両)の種類
トラックは貨物自動車の総称で、主に「貨物」を輸送する運送業で用いられる車両です。
ただし収集運搬業者が運ぶのは、一般的な「貨物」ではなく、「廃棄物」です。
貨物を運ぶ運送業と、廃棄物を運ぶ収集運搬業では必要な許可も異なります。
また産業廃棄物(※)を運搬する場合、廃棄物の種類によって使用するトラックも異なるため、収集運搬業では運送業よりも多くのトラックの種類を使い分けることも必要です。そこでここからは産廃トラックの種類別に、特徴や主な収集運搬物を解説していきます。
※参考:e-Gov法令検索 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条」(入手日付2023-09-29)

ダンプ車

ダンプ車の正式名称は「ダンプトラック」、油圧シリンダーによって荷台を傾けて積荷を降ろせる車両です。土砂などの固形物の運搬に適しており、基本的にどのような積荷でも運べます。運送コストが安いのも特徴といえるでしょう。
ダンプ車は建物の解体現場で排出されるコンクリート片・がれき・廃プラスチックなどの産業廃棄物を運搬します。他にも燃え殻・木くず・金属くず・紙くず・ガラスくずなど多様な産業廃棄物を運搬できます。
クレーン車

クレーン車は、動力によって荷をつり上げ、水平に運搬する機械装置を搭載したトラック車両です。主に建設・解体現場などで活躍する車両です。
産業廃棄物の収集運搬では、主に建設現場で排出される鉄骨鉄筋くず・金属加工くず・足場パイプ・足場材・木造解体材などをワイヤーでまとめて持ち上げ、運搬車両へ乗せる作業で用いられます。
アームロール車

アームロール車(脱着ボディーシステム車)は、オペレーターが油圧式の車載アームを操作してコンテナなどの積み下ろしをする車両です。
建設現場や物流倉庫、工場などにコンテナだけを置いておき、満杯になったらアームロール車がコンテナを取りに来て、空のコンテナと交換する運用方法が一般的です。
アームロール車は主に事業所や建設現場などで排出された産業廃棄物の回収時に使用します。
パッカー車

パッカー車とは、一般的にゴミ収集車と呼ばれている車両のことです。パッカー車は車体後部から投入したゴミを圧縮して運搬します。
「塵芥(じんかい)車」が正式名称で、英語のpack(詰め込む)からパッカー車の名が付いたとする説が有力です。
パッカー車は主に各自治体や造園業・建築業・工場で使用されていますが、産業廃棄物の収集運搬にも使われます。
産業廃棄物収集運搬車としての役割は、圧縮が必要な廃プラスチックの収集がメインです。
コンテナ車

コンテナ専用車とは、その名のとおり荷台がコンテナになっているタイプのトラックのことで、正式名称は「脱着装置付きコンテナ専用車」です。
正式名称から分かるようにコンテナは脱着式になっています。そのため腐食しない産業廃棄物をコンテナに入れたまま、一時保管できるのが特徴です。例えばがれきや金属くず、ガラスくずや繊維くず、廃プラスチックなどの収集保管に使用します。
産廃コンテナは、産業廃棄物を入れておく大きなゴミ箱のようなものです。廃棄物が排出されるたびに収集運搬を依頼していると、その都度コストが発生してしまいます。しかし、ごみ箱に保管して、一定量に達してから処理するとコストも抑えられます。
タンクローリー車

液体輸送に欠かせない車両がタンクローリー車です。ドラム缶などの運搬容器に入れて輸送する方法もありますが、タンクローリー車はドラム缶に収まりきらない大量の液体の移送に適しています。
産業廃棄物に指定されている廃油や汚泥、廃酸や廃アルカリなど、液体が大量に排出される場合にタンクローリー車が使用されます。
バキューム車

バキューム車はトラックの荷台の代わりにタンクを搭載し、真空ポンプと吸引ホースで液状の汚物を吸い上げて運搬する特殊車両です。正式名称は「汚泥吸引車」です。
バキューム車は汲み取り式トイレの糞尿や浄化槽の汚水の回収が主な用途です。流動体や粘性半流動体、沈殿物などの吸引に向いているため、産業廃棄物の一つである汚泥の収集運搬にも活躍します。
チップ車
チップ車とは、おがくずや木片などのウッドチップを主に運ぶトラックのことです。あおり(荷台の枠)がオープントップより高いのが特徴で「深ダンプ」とも呼ばれます。
上からチップを入れやすいよう、荷台に天井がないのが特徴です。ウッドチップの飛散を防ぐため、屋根部分にネットが備え付けられているタイプや、開閉式の屋根を搭載しているタイプがあります。
産廃トラック(産業廃棄物収集運搬車両)の義務
産業廃棄物の収集運搬車両には、廃掃法施行令第6条の1のイによって義務事項(※)が定められています。
ここでは収集運搬業の方はもちろん、自ら運搬する排出事業者も知っておきたい収集運搬車の「表示・書面備え付け義務」を紹介します。
※参考:e-Gov法令検索 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第6条の1のイ」(入手日付2023-09-29)
車両表示
法令では、定められた事項を「車体の両側面に鮮明に表示する」と規定されています。定められた事項は、排出事業者が自ら運搬する場合と、収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合で異なります。
排出事業者が自ら運搬する場合に必要な表示は以下の2つです。
● 産業廃棄物を収集運搬している旨の表示
● 排出事業者名
収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合は以下の3つを表示します。
● 産業廃棄物を収集運搬している旨の表示
● 収集運搬業者名
● 許可番号(下6桁に限る)
なお、上記の表示は車体に直接プリントしなくても、記載のあるマグネットシートなどを貼るだけでも構いません。マグネットシートなら収集運搬時にのみ貼ればよいため、運用しやすいでしょう。
※参考:環境省 「産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務(表示義務について)」(入手日付2023-09-29)
書類携帯
携帯が義務付けられている書類も、排出事業者が自ら運搬する場合と、収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合で異なります。また電子マニフェストを使用している場合も携帯すべき書類が異なるため注意してください。
排出事業者が自ら運搬する場合は以下の情報が記載された書類の携帯が必要です。
● 排出事業者の氏名または名称および住所
● 運搬する産業廃棄物の種類および数量
● 運搬する産業廃棄物を積載した日
● 積載した事業場の名称、所在地および連絡先
● 運搬先の事業場の名称、所在地および連絡先
上記の情報はマニフェストに記載されている事項のため、排出事業者が自ら車両を使用する場合はマニフェストを携帯しておけばよいでしょう。
収集運搬業者が委託を受けて運搬する場合は、以下の2つの書類を携帯してください。
● マニフェスト(産業廃棄物管理票)
● 産業廃棄物収集運搬業許可証の写し
また委託を受けた収集運搬業者が運搬する場合で、電子マニフェストを使用しているときは、追加で以下の書類の携帯が必要です。
● 次の情報が記載された電子マニフェスト受渡確認票(電子情報も可)
・運搬する産業廃棄物の種類、数量
・運搬する産業廃棄物を積載した日
・積載した事業場の名称、連絡先
・運搬先の事業場の名称、連絡先
・その運搬を委託した者の氏名または名称
● 電子マニフェスト加入証の写し
● 産業廃棄物収集運搬業許可証の写し
※参考:環境省「産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務(書類の携帯義務について)」(入手日付2023-09-29)
産業廃棄物収集運搬容器の種類
収集運搬に使用する容器も、産業廃棄物の性質に適したものの使用が必要だと、廃掃法施行規則第10の1のイに明記されています。ここからは容器別の概要と使用例を紹介していきましょう。
※参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則第10条の1のイ」(入手日付2023-09-29)
ドラム缶
産業廃棄物の運搬容器によく使用されているのがドラム缶です。コストも安く、大きな廃棄物や感染性廃棄物を除けば、液状でも固形でも幅広く使用できます。
ドラム缶は、ふた付きオープンドラムとクローズドラム缶の2種類です。ふた付きオープンドラム缶は固形物や粉末状の産業廃棄物を入れ、飛散防止のためにふたをして運びます。
クローズドラム缶は液状の産業廃棄物に使用します。充填口から廃棄物を入れるため、中の液体が漏れない仕組みです。
【使用例】がれき類、燃え殻、紙くず、木くず、繊維くず、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくずおよび陶磁器くず、鉱さい、ばいじん、動植物性残さ、廃プラスチック類、汚泥、廃油など
プラスチックドラム
上に挙げた鋼製のオープンドラムやクローズドラムでは、廃酸や廃アルカリなど金属を腐食させる廃棄物は運べません。廃酸や廃アルカリに腐食性があるためです。
その場合、鋼製ではなく内部がプラスチック素材となったプラスチックドラムを使用します。プラスチックドラムはプラスチック製なので、サビが発生しにくく重量も軽いのが特徴です。また液体や粉末のどちらにも使用でき、耐薬品性に優れています。
【使用例】廃アルカリ、廃酸など
フレキシブルコンテナ
フレキシブルコンテナバッグとは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの化学繊維でできた袋です。主に工業・農業用に使用される袋型大型容器で、フレコンバックやフレコンと略される場合もあります。
柔軟性のある素材が使われているため、幅広い固形の廃棄物に対応できるのがフレコンの特徴です。コストも安いため使い捨ての運搬容器として多く使用されています。
【使用例】がれき類、燃え殻、紙くず、木くず、ゴムくず、繊維くず、ガラスくず・コンクリートくずおよび陶磁器くず、鉱さい、ばいじん、廃プラスチック類など
コンテナ車両を利用したコンテナ
前述した脱着装置付きコンテナ車のコンテナも収集運搬容器の一つです。コンテナの中に産業廃棄物を集めておき、一定量になったらコンテナ車両に乗せて廃棄物処理場へ運びます。コンテナは腐食しない産業廃棄物を一時保管するのに便利です。
【使用例】がれき類、燃え殻、ばいじん、廃プラスチック類、木くず、金属くず、ゴムくず、紙くず、繊維くず、ガラスくず・コンクリートくずおよび陶磁器くずなど
石油缶
石油を産業廃棄物として運搬する場合は石油缶を使用します。石油小口の輸送・販売に用いる容器で、ブリキ製で容量約18リットルのものが一般的です。
一斗缶から石油缶ベロを使用して容器に移すのが一般的で、石油缶ベロを使わず一斗缶の上部にふたが付いているタイプもあります。
【使用例】石油、クリーニング溶剤など
感染性廃棄物容器
感染性廃棄物とは、医療機関などから排出される血液の付着したガーゼや包帯、注射針などのことです。中でも注射針やギプス用石膏、手袋・レントゲンフィルムなどは産業廃棄物に該当(※)します。
これらには人が感染する病原体が含まれているおそれもあるため、廃棄時に感染性廃棄物容器に直接入れることが義務付けられています。感染性廃棄物容器には関係者が一目で内容物を把握できるよう、バイオハザードマークを付けるのが一般的です。
【使用例】血液の付着したガーゼ、包帯、注射針・アンプル・金属性機械器具・天然ゴム製器具・レントゲンフィルムなど
※参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第2条の4の4」(入手日付2023-09-29)
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