
産業廃棄物処理業界には、どのようなプレーヤーがいて、どのような業界なのでしょうか。これまでのコラムはマニフェストや委託契約など法規制中心でしたが、今回は事業者数や規模、そして市場規模について確認したいと思います。
目次
産業廃棄物処理業界の実態
産業廃棄物処理業の事業者数
少し古いデータになりますが、2017年5月に発表された「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」によると、2015年4月時点で産業廃棄物処理業の許可業者は約11万者、主業(産業廃棄物処理業の売上高割合が50%以上)として活動している事業者は全体の約11%程度で、概ね1万2千者程度としています。この数字は若干増えているもののそれほど大きな変化はないと見ています。
また、「アクティブ」「主業者」「優良認定」の比率はいずれも、最終>中間>収運の順番で高くなっています。
なお、優良認定を取得している者はこの時点では約1千者程度でしたが、現時点では約1,500者程度に増えています。ちなみに全国産業廃棄物連合会の会員企業数は約1万5千者程度としており、こちらは大きな変化はないと見ています。

- 注1)アクティブ数は産廃処理業の売上高が0円でない事業者数
- 注2)主業者数は産業廃棄物処理業の売上高割合が 50%以上の事業者数
- 注3)収運は収集運搬業のみの許可をもつ事業者、中間と最終を兼業する者は重複してカウント
産業廃棄物処理業に携わる従業員数
同じく「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」によると、許可業者全体の平均従業員数は10人となっており、業種ごとの内訳は下表のとおりとなっています。
業種 | 許可業者 | 主業者 |
---|---|---|
収集運搬のみ | 4人 | 9人 |
中間処理 | 13人 | 20人 |
最終処分 | 7人 | 9人 |
中間処理・最終処分 | 21人 | 29人 |
このうち、主業者(産業廃棄物処理業の売上高割合が50%以上を占める事業者)について見てみると、全体の8割以上が29人以下となっており、5割以上が9人以下となっています。
収集運搬のみだと95%が29人以下となっており、半数近くは4人以下となっています。

産業廃棄物処理業における売上高
主業者について見てみると、全体の半数弱が1億円未満となっており、10億円以上は1割を満たしません。
収集運搬のみだと7割弱が1億円未満となっており、10億円以上は約2%にとどまっています。

なお、市場規模についての推計がそれぞれありますが、業界の慣例である請求代行の部分も含めて単純合計されているように感じています。
参照:産業廃棄物処理業の振興方策に関する検討会「産業廃棄物処理業の振興方策に関する提言」
参照:加藤商事株式会社「平成 23 年度産業廃棄物処理業実態調査業務」
業界大手の状況
上場企業については決算短信等から連結もしくは産業廃棄物処理事業のセグメント情報、その他については産業廃棄物処理事業振興財団が運営する「さんぱいくん」からデータを入手しました。直近の損益データは次のとおりとなっています。


注1)黄色は上場企業もしくは上場企業における主要セグメント
大手企業を中心にM&Aや提携などが積極的に進められており、上場企業も増えてきています。またヴェオリアなど海外からの参入、ヤマダ電機など異業種からの参入、J-STARなどファンドによる買収も活発に行われています。
まさに業界再編の渦中にあるといったところだと思われます。
環境産業における市場規模の推計


「環境産業」とは、環境負荷の低減、資源循環により持続可能な社会を実現させるための製品・サービスを提供する産業のことで、環境産業の市場規模は、2021 年に全体で 108.1 兆円と、前年比 2.2%の増加となり、2000 年の約 1.7 倍となりました。2000 年以降、特に、地球温暖化対策分野が大きく増加しています。雇用規模は、2021 年に約280万人となり、2020 年(約200万人)の約 1.4 倍となりました。
今後の推計として、環境産業の市場規模は、2050年に全体で123.7兆円と2021年比約14%の増加と見込んでおり、引き続き地球温暖化対策分野が牽引し拡大するものの、拡大のスピードはこれまでよりも鈍化すると見ています。
廃棄物処理・資源有効利用分野について見てみると、2021 年に53.3 兆円と、前年比1.9%の増加となり、2000 年比約23%の増加となった。雇用規模は、2021 年に約164万人となり、2000 年(約130万人)比約 26%の増加となりました。
今後の推計として、廃棄物処理・資源有効利用分野の市場規模は、2050年に全体で59.4兆円と2021年比約11%の増加と見込んでおり、こちらも拡大のスピードはこれまでよりも鈍化すると見ています。
廃棄物処理・資源有効利用分野の内訳


2000年から2021年にかけて約16%増加した「資源、機器の有効利用分野(リフォーム・リペア・リース・レンタルなど)は2050年にかけて引き続き約16%増加すると見ています。
これに対して「産業廃棄物、リサイクルの分野」は、2000年から2021年にかけて約22%増加したが、2050年にかけて約▲34%減少すると見ています。
ちなみに2021年度の廃棄物処理、リサイクル分野4.8兆円のうち、産業廃棄物処理は2.5兆円となっています。
廃棄物処理業者としては、地球温暖化対策やリフォーム・リースなどの成長分野に出ていくもしくは連携することを考える必要があるのかもしれません。
おわりに
持続可能社会への移行に向け、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーといった新たな概念が登場し、廃棄物の流れが大きく変わりつつあります。業界の再編も加速することでしょう。
われわれ廃棄物処理業者は情報収集に努めるとともに、既存業務の効率化を進めておくことが必要ではないでしょうか。
DXE株式会社では電子マニフェストをはじめ、産業廃棄物処理に関わる一連の業務プロセスをデジタル管理するシステム「DXE Station」を提供しております。電子マニフェストをもとに各事業者をつなぐことで作業の効率化を推進し、産業廃棄物業界で働く方々のより良い働き方と、持続可能な社会の実現に貢献いたします。

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