サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行に向けた廃棄物処理業の方向性

サーキュラーエコノミー(循環経済)への移行に向けた廃棄物処理業の方向性

サーキュラーエコノミーの概念および移行については、欧州を中心とする先進国においてほぼ合意した感があります。
日本も官民挙げて取り組みを加速しており、成長市場となることが期待されています。
今回のコラムでは、それらを踏まえて、最終処分(埋立て)施設や焼却施設などの動向を見てみたいと思います。

ミッションと中長期目標

サーキュラーエコノミー

2022年12月16日 「成長志向型の資源自律経済の確立」 経済産業省 産業技術環境局
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/010_05_00.pdf

最終処分量(埋立て量)の推移

成長志向型の資源自律経済の確立

「成長志向型の資源自律経済の確立」 経済産業省 産業技術環境局
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/010_05_00.pdf

最終処分場の逼迫についてはあまり論じられなくなりましたが、最終処分量が大きく減少したことで残余年数が大幅に伸びていることが背景にあります。最終処分場は毎年数件ずつ稼働しており、嵩上げ等による拡大も行われています。2021年度の最新データよると一般廃棄物の残余年数は23.5年まで伸びています。

また、産業廃棄物にCO₂を固定化し最終処分場に貯留するCCSに取り組む動きが出てきています。 『 Carbon dioxide Capture and Storage: 二酸化炭素回収・貯留』
ちなみに再生利用率(リサイクル率)および 循環利用率 については、ほぼ横ばいとなっています。サーキュラーエコノミーに転換する中で、今後伸ばしていくべき数字だと思われます。
(参考)再生利用率(リサイクル率)・・・ リサイクル量/ごみ排出量

リサイクル率

(参考)循環利用率 ・・・ 循環利用量/総物質投入量
*経済社会に投入されるものの全体量のうち循環利用量(再使用・再生利用量)の占める割合

一般廃棄物最終処分場の施設数と残余年数の推移

2022年3月末現在、一般廃棄物最終処分場は1,572施設(うち2021年度中の新設は15施設で、稼働前の8施設を含む)、残余容量98,448千m3であり、昨年度より減少した。残余年数については最終処分量の減少が大きく寄与して23.5年に伸びている。

最終処分場数

「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」環境省
https://www.env.go.jp/content/000123409.pdf

最近および今年度に稼働したもしくは稼働予定の主な施設には以下のものがある。
●ミダック「奥山の杜クリーンセンター(静岡県浜松市、埋立容量:約 320 万㎥)」 ・・・ 昨年稼働
●タケエイ「門前クリーンパーク(石川県輪島市、埋立容量:約 343 万㎥))」 ・・・ 今年稼働予定

2050年CNに向けた検討事項

環境省がまとめた「2050年CNに向けた廃棄物・資源循環分野中長期シナリオの検討事項」の対策項目は下表のとおり、焼却に関連する部分の概要について抜粋して記載しています。
これを見ると強力な減量化処理である焼却を減らす考えはなく、廃油・廃プラなどはリサイクルするが、直接埋立されている有機性廃棄物を焼却する方向です。
また、地域的な広域化と、「一廃と産廃」や「一般ゴミと下水汚泥」などを混合焼却する集約化を進める方向です。
施設を大型化・最新化して廃棄物発電に注力し、その先ではCCU*で更にGHG排出の削減を目指します。
焼却対象となる廃棄物の質の変化(カロリー減)については対策が必要になるかもしれません。

廃棄物・資源循環分野におけるGHG排出の削減

プラスチックのマテリアル・ケミカルリサイクル
バイオプラスチックの導入
有機性廃棄物のバイオガス化
廃食用油の有効利用
最終処分量削減 焼却を経ずに最終処分される有機性廃棄物(一廃・産廃)の削減
廃潤滑油・廃溶剤対策
廃タイヤ対策
紙くず・合成繊維くず・紙おむつ対策
下水汚泥の焼却に伴うN₂O排出対策

他分野のGHG排出の削減

廃棄物発電 一廃炉の発電効率の向上、ごみ処理の広域化・集約化、産廃発電対策
食品ロス削減
金属等のマテリアルリサイクル

廃棄物・資源循環分野におけるCCU*案

直接利用 焼却炉廃ガス中のCO2を藻類栽培や植物工場等で利用
メタネーション 焼却炉廃ガス中のCO2に水素を反応させてメタンを製造
FT合成 焼却炉廃ガス中のCOと水素の混合ガスから、軽油等・アルコール・化学品などを製造
微生物発酵 焼却炉廃ガス中のCOから微生物発酵によりエタノール合成

『*二酸化炭素回収・有効利用(CCU: Carbon dioxide Capture and Utilization)』 CCSを含めた概念が
『二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS: Carbon dioxide Capture,Utilization and Storage)』

一般廃棄物ごみ焼却施設の状況

2022年3月末現在のごみ焼却施設数は1,028施設(うち令和3年度中の新設は35施設)、処理能力の合計は175,737トン/日、1施設当たりの処理能力は171トンです。
施設数は減少していますが処理能力はほぼ維持しています。
発電施設を有する施設数は396施設で全体の38.5%、発電能力は前年から3.3%増加しています。

施設数 1,028施設 前年度1,056施設 2.7%減
処理能力 175,737トン/日 前年度176,202トン/日 0.3%減
1施設当たりの処理能力 171トン/日 前年度167トン
発電施設を有する施設数 396施設 前年度387施設 全体の38.5%
総発電能力 2,149MW 前年度2,079MW 3.3%増

「一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について」環境省
https://www.env.go.jp/press/press_01383.html

産廃焼却施設の具体的計画

産廃焼却施設についてのデータはありませんが、一般廃棄物ごみ施設と同様の傾向にあると思われます。産廃焼却施設は比較的小型なものが多いのですが、最近は大型施設の計画が目立ちます。
首都圏の主な産廃焼却施設の建設計画をプロットしたのが下図になります。東京湾と北関東に集中しています。
大規模施設が多くなっており、廃棄物発電は必須になっています。
地方では、大栄環境と石坂グループ(熊本)、オオノ開發(愛知県知多市)なども大型焼却施設を計画しています。
一廃と産廃の混合焼却の動きも増えており、CCUSに取り組む予定の施設も出てきています。

産廃焼却施設の具体的計画

最後に

今まさに中長期にわたる大転換が始まったのです。廃棄物・資源循環分野の企業は静脈産業と言われてきましたが、これからは動脈と静脈が一体となってCE・CNに取り組む新たなフェーズに入ったと言えます。
排出事業者のビジネスパートナーとして、この変化を事業に落とし込みことで、ともに持続的発展を遂げることが求められているのです。


DXE株式会社資料DL

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