
感染性廃棄物とは人に感染する恐れがある病原体を含んだ廃棄物です。危険性が高いため、遵守すべきさまざまなルールがあります。
今回は感染性廃棄物の種類や具体例、処理方法、よくある疑問について5分程度で読めるようコンパクトにまとめました。
目次
感染性廃棄物とは?
感染性廃棄物とは、医療関係機関等で発生する、人が感染する、もしくは感染の恐れがある病原体が含まれている、もしくは付着している廃棄物の総称です。医療関係機関等から排出される全ての廃棄物が該当するわけではなく、あくまでも感染性物質が付着しているかいないかがポイントとなります。医療関係機関等には、以下が当てはまります。
- 病院
- 診療所(保健所・血液センター)
- 衛生検査所
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 助産所
- 動物の診療施設
- 国や地方公共団体の試験研究機関
- 大学およびその附属試験研究機関
感染性廃棄物に該当するものであっても、適切な手順で処理され感染性を失ったものは、最終的に通常の一般廃棄物または産業廃棄物として処理できます。
感染性廃棄物の分類
廃棄物処理法上、感染性廃棄物は一般廃棄物の一種である特別管理一般廃棄物(感染性一般廃棄物)と、産業廃棄物の一種である特別管理産業廃棄物(感染性産業廃棄物)に分類されます。血液が付着した包帯やガーゼは感染性一般廃棄物、注射針や血液そのものは感染性産業廃棄物となります。
特別管理廃棄物とは、廃棄物のうち爆発性・毒性・感染性が高いものです。環境や人々の健康・生活に大きな悪影響を及ぼす恐れがあるので、厳格な処理基準が定められています。
感染性廃棄物の種類と具体例
感染性廃棄物は、バイオハザードマークの色によって種類分けされています。

赤色マークは、液状・泥状の廃棄物です。これには血液、血清、体液、臓器、組織などが該当し、密閉性の高い容器で保管し、漏れがないように管理する必要があります。

橙色は、固形状の廃棄物です。血液や体液で汚染されたガーゼ、手袋、輸液ルート(針なし)などが挙げられます。保管には、二重に強化されたプラスチック袋やビニール袋が適しています。

黄色は鋭利な廃棄物です。注射針やメスなど特に危険性が高いので、針や刃物を通さない頑丈な容器での保管が求められます。
※参考:環境省 環境再生資源循環局. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」.2018年,(入手日付2023-8-1)

感染性廃棄物の判断基準
医療関係機関等では日々さまざまな廃棄物が出るので、感染性廃棄物に該当するか迷うケースもあるでしょう。環境省は感染性廃棄物の判断フローを示しています。大まかな流れは、形状→排出場所→感染症の種類と確認していきます。
Step1. 形状から判断する
最初に確認するポイントは廃棄物の形状です。下記に該当するか確認します。
1.血液、血清、血漿及び体液(精液含む。)
2.病理廃棄物(臓器、組織、皮膚等)
3.病原微生物に関連した試験、検査等に用いられたもの
4.血液等が付着している鋭利なもの(破損したガラスくず等を含む。)
病原微生物に関する試験・検査に用いられる感染性廃棄物とは、培地や実験動物の死体、試験管、シャーレ等です。
上記に列挙した形状のいずれかに該当すると感染性廃棄物だと確定します。
※参考:環境省 環境再生資源循環局. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」.2018年,(入手日付2023-8-1)
Step2. 排出場所で判断する
形状だけでは判断できない場合、次に排出場所を確認します。感染症病棟・結核病棟・手術室・緊急外来室・集中治療室および検査室で排出されたかどうかチェックします。
上記の場所で出た廃棄物のすべてが感染性廃棄物になるのではなく、治療・検査・手術を目的に排出したものが対象です。
ちなみに感染症病棟とは、感染症法で入院措置を講じる必要がある一類・二類感染症、新型インフルエンザ等感染症などの病床です。
※参考:環境省 環境再生資源循環局. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」.2018年,(入手日付2023-8-1)
Step3. どの感染症の治療・検査に使われたかで判断する
形状・排出場所のどちらにも該当しない場合、何の感染症の治療に関する廃棄物なのか確認します。
具体的には、感染症法における一類・二類・三類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症および新感染症の治療・検査などに使用後、排出された廃棄物です。また、四類・五類感染症の治療・検査に使用後、排出された医療器材等も該当します。
医療器材の具体例は、注射針やメス、ガラスくずのほか、ディスポーザル型の器具(ピンセットや手袋等)、衛生材料など(脱脂綿やガーゼ等)です。
※参考:環境省 環境再生資源循環局. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」.2018年,(入手日付2023-8-1)
感染性廃棄物の管理体制
医療関係機関では、感染性廃棄物が周囲に飛散・漏出しないよう厳重な管理体制を敷くことが重要です。以下のような管理体制を整えておきましょう。
- 特別管理産業廃棄物管理責任者を置く
- 処理計画書・管理規程を作成する
- 処理状況を帳簿に記載・保存
それぞれ詳しく解説します。
特別管理産業廃棄物管理責任者を置く
廃棄物処理法第十二条の第二第八項により、特別管理産業廃棄物を発生させる事業場では特別管理産業廃棄物管理責任者の設置が義務付けられています。以下のような業務を行います。
- 特別管理産業廃棄物の排出状況の把握
- 特別管理産業廃棄物処理計画の立案
- マニフェストの交付、保管、保管状況の確認、業者の選定、委託の実施など
感染性産業廃棄物が生じる事業場の場合は、医師・歯科医師・薬剤師・獣医師・保健師・環境衛生指導員などから選出します。
処理計画書・管理規程を作成する
産業廃棄物処理計画書は、産業廃棄物の排出量が多い事業者(多量排出事業者)が作成する計画書です。廃棄物の適正処理と減量を促進するために、廃棄物処理法第十二条第二第十項にて定められています。特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50トン以上の場合、多量排出事業者に該当します。
処理計画書と併せて、施設内での感染性廃棄物の取り扱いに関して、管理規程を必要に応じて作成しましょう。管理規程では、感染性廃棄物の取り扱い方法や種類に応じた注意事項などを定めます。管理規程をベースに運用していくことが重要なので、関係者に周知徹底させます。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-09-05).
処理状況を帳簿に記載・保存
感染性廃棄物の処理状況は、帳簿に記載しましょう。適切に処理されているかを把握するためであり、一定期間保存する必要もあります。帳簿には、以下の内容を記載してください。
運搬 |
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---|---|
処分 |
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感染性廃棄物の保管および処理方法
感染性廃棄物の保管および処理方法を、以下の流れに沿って詳しく解説します。
- 分別
- 梱包
- 移動
- 保管
- 表示
- 中間処理
それぞれのステップごとのポイントを詳しく見ていきましょう。
分別
感染性廃棄物は、病原微生物の拡散防止と公衆衛生の観点から、発生時には他の廃棄物と厳格に区別して排出する必要があります。
具体的には、医療行為に伴い生じた廃棄物は、非感染性・感染性・その他の廃棄物に分別します。感染性の有無での分別に加えて、廃棄物の発生段階から性状に応じて分別するよう心掛けてください。例えば、液状の廃棄物と固形の廃棄物を分けて扱う、鋭利な廃棄物は専用のケースに入れて保管するなどの対応が挙げられます。
梱包
感染性廃棄物の収集運搬は、必ず密閉容器を使用し、内容物が漏れ出さないようにする必要があります。使用する容器は、「密閉性、収納のしやすさ、損傷のしにくさ」の3つの条件を満たしているものを使用してください。
加えて、感染性廃棄物処理マニュアルに基づき、廃棄物の性状に応じた梱包方法を選択しましょう。
- 液状・泥状:廃液が漏えいしない密閉容器を用いる
- 固形状:丈夫なプラスチック袋を二重にする、もしくは堅牢な容器を用いる
- 鋭利なもの:耐貫通性のある堅牢な容器を使用する
移動
感染性廃棄物を施設内で移動させる際は、容器を密閉した上で、移動中に内容物が飛散・流出しないよう細心の注意を払ってください。
例えばふた付き容器に入れて保管して、安全に移動できるようにカートを用いると安心です。廃棄物は直接容器に入れることが理想的ですが、施設内で移し替える際は、飛散・流出しないように十分注意が必要です。
保管
感染性廃棄物を施設内で保管する際、運搬までの期間がなるべく短くなるようにしましょう。
保管場所には、関係者以外が立ち入れない場所を選ぶのが重要です。屋内に設置し、温度・湿度・臭気管理、定期的な清掃・消毒などを徹底して行います。飛散・流出・地下浸透による被害が拡大しないよう、底面を不浸透性の材料で覆うなどの対策も必要です。
また、見やすい位置に取り扱いに関する縦横60cm以上の掲示板も設置しましょう。以下の内容を記載します。
- 関係者以外立ち入り禁止であること
- 許可なく容器を持ち出すことは禁止していること
- 取り扱い時には、破損しないように注意すること
- トラブル時の担当者名・連絡先を記載すること
長期間の保管に伴い腐敗する恐れのあるものは、冷蔵庫に入れるなど、腐敗しないように必要な措置を講じる必要があります。
表示
感染性廃棄物を収納した容器には、感染性廃棄物がある旨と、取り扱い時の注意事項を記載します。マークは誰が見ても分かるように全国共通のものが望ましく、バイオハザードマークが推奨されています。マークを付けない場合は、「感染性廃棄物」と明記してください。
非感染性廃棄物を収納する容器には、必要に応じて非感染性である旨の表示を行うことが推奨されています。これは外見上、感染性廃棄物か非感染性廃棄物の区別が付かなくなってしまうためです。
中間処理
感染性廃棄物は、医療関係機関等の施設内で焼却・溶融・減菌・消毒などの中間処理を行うのが原則です。自らの施設内で発生した廃棄物は、内部の設備を用いて処理を行い、感染性を失わせなければなりません。例えば、焼却設備を用いた焼却、溶融設備を用いた溶融、滅菌装置を用いた滅菌、高圧蒸気減菌装置を用いた減菌、肝炎ウイルスに効果的な薬剤の使用、などです。
感染性を排除するための設備を持たない場合は、専門の特別管理産業廃棄物処分業者に委託して処理しなければなりません。
感染性廃棄物の処理の委託
自社内に設備がない場合や、焼却炉の性能が十分でない場合などは、感染性廃棄物の処理を業者に委託できます。
ただし法律では、排出事業者が自らの責任において廃棄物を処理することを定められています。委託処理の場合も同様で、処分が完了するまでの一切の責任を排出事業者が負わなければなりません。
また、感染性廃棄物の処理を引き受ける場合、都道府県知事から収集運搬業の許可を受ける必要があります。特別管理産業廃棄物収集運搬業や特別管理産業廃棄物処分業の許可が必要です。
産業廃棄物収集運搬業や産業廃棄物処分業の許可だけでは感染性廃棄物の取扱いはできないので注意してください。
感染性廃棄物のよくある質問
感染性廃棄物の種類や保管、処分方法に関する質問をまとめました。ミスなく処理を行うための知識を深められるので、ぜひご覧ください。
感染性廃棄物の具体例は?
感染性廃棄物の分かりやすい例は、臓器・血液等が付着したガーゼや脱脂綿などです。他にも注射針やメス、破損したガラス製品などもイメージしやすいでしょう。
※参考:環境省 環境再生資源循環局. 「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」.2018年,(入手日付2023-8-1)
感染性廃棄物の保管場所は?
感染性廃棄物の保管場所は建物内に設けるほか、周囲を囲う必要があります。また温度管理や臭気管理、定期的な清掃を実施し、ネズミやハエ、蚊などの害虫が発生しないよう配慮してください。
また、保管場所を示す縦横60cm以上の掲示板を設置する必要があります。掲示板には関係者以外立ち入り禁止、許可のない容器の持ち出し禁止など注意事項も併記します。
感染性廃棄物の処理方法は?
感染性廃棄物の処理方法は、排出事業者が自社設備を用いて中間処理(焼却・融解・減菌・消毒)を行う、または許可を取得している収集運搬業者や処分業者に処理を委託するかのどちらかです。
委託した場合も、感染性廃棄物に関する責任は排出事業者にあります。とはいえ不法投棄を犯した場合、収集運搬業者も罰せられるので注意してください。
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感染性廃棄物の処理にかかる義務を負うのは、基本的に排出事業者です。ただ収集運搬業者も処理に必要な許可を取得するほか、中間処理のルールに沿った適正な処理が求められます。
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