
マニフェスト制度は、産業廃棄物の処理を委託する際に排出事業者がマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、処理の流れを確認することで適正な処理を確保する仕組みです。委託契約書は、産業廃棄物の処理を業者に委託する際に、処理内容や責任範囲を明確にするために法律で定められた書面契約です。本記事では、これらの制度について詳しく解説し、産業廃棄物処理を適切に進めるためのポイントをご紹介します。
目次
委託契約書
廃棄物処理の委託は、書面による直接契約が必要です。ここでは委託契約書と添付書類について解説します。 なお、廃棄物の流れと代金の支払いの流れが異なる場合は、「支払いに関する覚書」を別途締結する必要があります。
委託契約と相手方
産業廃棄物の処理を委託する際は、適切な許可を持つ業者と事前に書面で契約を結ぶことが必要です。これは、廃棄物処理法で定められている基準です。また、収集運搬と処分をそれぞれ別の業者に委託する場合、原則としてそれぞれの業者と二者間契約を締結する必要があります。 ただし、収集運搬と処分の両方の許可を持つ同一業者に委託する場合は、一つの契約書で問題ありません。複数の収集運搬業者が関わる場合は、それぞれの業者と契約が必要です。 一次委託の中間処理以降の処理委託について、排出事業者が直接契約を結ぶ必要はありませんが、最終処分がどこでどのように行われるかは把握しておくことが重要です。
契約書の記載事項
運搬および処分の共通記載事項 | |
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1 産業廃棄物の種類および数量 ・・・ 数量は予定で構わない | |
2 委託契約の有効期間 ・・・ 自動更新の定めがあっても良い | |
3 受託者に支払う料金 ・・・ 予定金額もしくは単価と数量から算出できれば良い | |
4 受託者の事業範囲 ・・・ 添付する許可証の通りとするのが一般的 | |
5 委託者の有する適正処理に必要な産業廃棄物に関する情報 ・・・ WDSを添付して引用することも可能 | |
ア 性状及び荷姿 | エ JIS C0950含有マークの表示 |
イ 性状の変化(通常の保管下) | オ 石綿・水銀含有廃棄物が含まれる旨 |
ウ 混合等による支障 | カ その他取扱い上の注意 |
6 産業廃棄物の性状等に変更情報の伝達方法 ・・・ メール・FAX等、伝達の方法は問わない | |
7 受託業務終了の報告に関する事項 ・・・ マニフェストによる報告で良い | |
8 契約解除時の産業廃棄物の取扱い ・・・ 未処理廃棄物の責任などを記載 | |
収集運搬契約の記載事項 | 処分契約の記載事項 |
運搬の最終目的地の所在地(実際に搬入する施設) | 処分(再生)の場所等に関する事項 |
積替保管を行う場合は、場所等に関する事項 | 最終処分の場所等に関する事項(一次処分後に残渣が発生する場合) |
積替保管を行う場合であり、廃棄物が安定型産業廃棄物である場合、他の廃棄物と混合することの許容等に関する事項 | 輸入された廃棄物である旨(該当する場合) |
契約書に添付すべき書面
産業廃棄物の処理を委託する際には、適法な業者であること、そして委託する処理内容が業者の事業範囲に含まれていることを証明する書類の添付が義務付けられています。具体的には、委託先の「産業廃棄物処理業の許可証の写し」が必要不可欠です。
この許可証は、委託しようとしている処理(収集運搬や処分など)の事業を都道府県や政令指定都市から許可されていることを示す公的な書類です。 また、複数の業者を介して処理が行われる場合、例えば中間処理業者に委託し、その中間処理業者がさらに別の最終処分業者に処理を委託する場合でも、排出事業者が直接契約する一次委託の処理業者(この場合は中間処理業者)の許可証の添付が必要です。ただし、二次委託以降の処理業者の許可証の写しについては、原則として排出事業者が契約書に添付する必要はありません。しかし、最終処分まで責任を持つという排出事業者の義務を果たす上で、最終処分業者の許可証の写しを添付し、契約書に記載する最終処分の場所などを「許可証のとおり」と参照するケースが一般的です。
特定の処理方法、例えば廃棄物を再生利用する「再生利用認定制度」や、広範囲での処理を可能にする「広域認定制度」を活用している業者に委託する場合は、これらの「認定証の写し」も契約書に添付する必要があります。これらの書類を確認することで、委託先が適正な処理を行う能力と権限を持っていることを確認し、不法投棄などのリスクを回避することにつながります。
許可証のチェックポイント
1 許可番号 | 許可証の右上には必ず記載されています。下6桁を固有番号と呼び処理業者を特定する番号となります。産廃情報ネット等で検索する場合も活用されています。 |
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2 許可の種類 | 許可の種類は4種類あります。委託する処理内容と一致していることを確認します。 |
3 優良認定の有無 | 優良認定のマークがあるかどうか確認します。 |
4 許可自治体 | 処分や積替え保管は施設を管轄する自治体、運搬は引渡しと運搬先それぞれを管轄する自治体の許可証が必要になります。 |
5 許可の有効期限 | 有効期限は一般的には5年間、優良認定を受けていれば7年間です。 許可更新に伴い期限が切れている場合は、更新手続中であることを確認しましょう。 |
6 廃棄物の種類 | 委託する予定の廃棄物がどの種類に該当するのか把握した上で、その種類が全て含まれているかを確認しましょう。 |
7 処理能力、その他条件など | 自治体によっては、条件を付加した上で許可を出す場合があります。 「~を除く」「~に限る」といった表記がある場合は、その内容についても注意しましょう。 |
廃棄物データシート(WDS)
WDS(廃棄物データシート)は、排出事業者が処理業者へ産業廃棄物の適正な処理に必要な情報を提供するツールです。廃棄物処理法により、排出事業者は性状や取り扱い上の注意点などを処理業者に伝える義務があります。WDSは、この情報伝達を円滑に行うために作成され、特に外観から判断しにくい汚泥や廃油などに有効です。
WDSには、廃棄物の種類や組成、有害特性、物理的・化学的性状などが含まれ、正確な情報共有が事故や環境汚染の防止につながります。 記載内容は、排出事業者と処理業者が十分に話し合い、相互に確認して作成することが重要です。 環境省からガイドラインが提供されており、必要に応じてWDSの様式をダウンロードできます。
■廃棄物情報の提供に関するガイドライン
http://www.env.go.jp/recycle/misc/wds/

マニフェストとは
廃棄物の適正処理を実現する上で重要なマニフェスト制度について、義務や運用を説明します。
マニフェスト(産業廃棄物管理票)制度とは
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マニフェスト制度は、排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、処理業者に対してマニフェスト(産業廃棄物管理票)を交付し、最終処分まで委託内容どおりに処理されたことを確認することで、適正な処理を確保することを目的としています。この制度は、排出事業者の責任を明確にし、不法投棄を未然に防ぐ役割も担っています。マニフェスト制度は、1990年に厚生省(現在の環境省)の行政指導により任意運用が始まり、1993年には特別管理産業廃棄物に、1998年には全ての産業廃棄物への使用が義務化されました。同時に電子マニフェストの運用も開始されました。
近年では、法令改正により電子マニフェストの利用が推進されています。特に、2020年4月からは、前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者に対し、当該事業場から生じる特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する際に、電子マニフェストの使用が義務付けられています。これは、産業廃棄物処理におけるトレーサビリティの向上と、行政報告事務の効率化を図るための措置であり、今後も電子マニフェストの義務化対象が拡大される可能性も考えられます
マニフェストに関する4つの義務
1 交付義務 | 産業廃棄物を運搬業者に引き渡す際に産業廃棄物の種類や数量等を記載したマニフェストを交付しなければなりません。 |
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2 措置義務 | マニフェストによる処理完了報告が定められた期限内に行われない場合、当該産業廃棄物の処理状況を把握するとともに、適切な処置を講じなければなりません。 |
3 保存義務 | 交付したマニフェスト、並びに処理終了報告を受けたマニフェストは5年間保存しなければなりません。 |
4 報告義務 | 産業廃棄物の排出事業場ごとに、毎年6月末までに前年度1年間に交付したマニフェスト情報の報告書を作成し、各自治体に報告しなければなりません。 |
義務に違反すると罰則が適用されるケースも
排出事業者がマニフェストに関する義務を果たさない場合、廃棄物処理法違反として罰則が適用されることがあります。例えば、マニフェストを交付しない、マニフェストに虚偽の内容を記載する、またはマニフェストの保管義務を守らないといったケースが該当します。これらの違反行為は、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象となり得ます。特に、産業廃棄物の処理を委託する際にマニフェストを発行しないことは重大な違反です。また、虚偽の内容を記載することも不適正処理につながるため厳しく罰せられます。交付したマニフェストを決められた期間保管しない場合も、罰則の対象となることに注意が必要です。これらの義務違反は、産業廃棄物の不適正な処理を招くリスクを高めるため、排出事業者にはマニフェストの適切な運用が求められます。万が一、不適正処理が発生し、措置命令に従わない場合は、さらに重い罰則が科される可能性もあります。排出事業者として、委託した産業廃棄物が最終処分まで適正に処理されたかを確認し、関連書類を適切に保管することが重要です。
マニフェスト伝票(紙マニフェスト)
紙マニフェストは、一般的に全国産業資源循環連合会が販売する7枚複写式の伝票が使用されます。建設業界では、建設六団体副産物対策協議会が作成する建設系専用のマニフェストも利用されています。排出事業者は、廃棄物の引き渡し時にマニフェストを交付し、収集運搬業者や処分業者から返送される各票を確認・保管することで、処理が適正に行われたことを把握します。排出事業者が保管する主なマニフェスト伝票は下表の通りです。
マニフェスト伝票 | 役割 | 内容および確認事項 |
---|---|---|
A票 | 排出事業者控 | 廃棄物の引渡しと同時に7枚綴りのマニフェスト伝票を交付する。収集運搬業者が署名した後、A票の返却を受ける。 |
B2票 | 収集運搬終了確認 | 運搬終了後、収集運搬業者から返送される。 |
D票 | 処分終了確認 | 処分終了後、返送される。 |
E票 | 最終処分終了確認 | 処分業者が最終処分終了を確認した後、返送される。 |
マニフェストの記載事項と書き方
マニフェスト伝票(紙マニフェスト)を交付する際は、下記の法定記載事項を記入する必要があります。記載事項は、マニフェストの各票(A票、B2票、D票、E票)や記載者によって異なります。排出事業者はA票を記載し、運搬業者や処分業者もそれぞれ担当する票に必要事項を記載します。例えば、A票には交付年月日、交付番号、排出事業者情報、産業廃棄物の種類と数量、最終処分場所などを記載します。B2票は収集運搬業者が運搬終了日などを記載し、D票とE票は処分業者が処分終了日などを記載します。これらの記載は、産業廃棄物が法に基づき適正に処理されたことを確認するために非常に重要です。紙マニフェストにおける「交付担当者」「運搬の受託者」「処分の受託者」の押印は、現在不要とされています。正確な記載と適切な管理は、排出事業者の義務であり、違反した場合には罰則の対象となる可能性があります。
マニフェスト伝票 | 記載者 | 法定記載事項 |
---|---|---|
A票 | 排出事業者 | 1 交付年月日と交付番号 2 マニフェスト交付担当者の氏名 3 排出事業者の氏名又は名称と住所 4 排出事業場の名称と所在地 5 産業廃棄物の種類と数量 6 石綿含有廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨、及びその数量 7 産業廃棄物の荷姿 8 最終処分を行う場所の所在地 9 運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称と住所 10 運搬先事業場の名称と所在地、積替え保管を行う場合はその所在地 |
B2票 | 収集運搬業者 | 1 氏名又は名称 2 運搬を担当した者の氏名 3 運搬を終了した年月日 4 積替え保管の場所において産業廃棄物に混入している有価物の収集を行った場合はその収集量 |
D票 | 処分業者 | 1 氏名又は名称 2 処分を担当した者の氏名 3 処分を終了した年月日 4 処分が最終処分である場合は、最終処分を行った場所の所在地 |
E票 | 最終処分業者 | 1 最終処分が終了した旨 2 最終処分を行った場所の所在地 3 最終処分が終了した年月日 |
マニフェストの交付(発行)単位
マニフェストは、原則として産業廃棄物の種類ごと、および運搬先ごとに交付が必要です。ただし、発生段階で複数種類の廃棄物が一体不可分となっている混合廃棄物は、例外的に1つのマニフェストで扱うことができます。その際は、混合廃棄物であることと、含まれる全ての廃棄物の種類を明記する必要があります。 排出事業者が収集運搬業者や中間処理業者に委託する際に交付するのが「一次マニフェスト」です。一方、中間処理業者が中間処理後の残さをさらに処分業者に委託する際に交付するマニフェストは「二次マニフェスト」と呼ばれます。 二次マニフェストには、一次マニフェストの排出事業者名と交付番号を記載します。
マニフェストの送付期限・返却期限・保管期限
マニフェスト伝票 | 種別 | 送付/登録期限 | 返却/登録期限 | 保管期限 |
---|---|---|---|---|
A票 | 紙 | – | 引渡しと同時 | 交付日から5年間 |
電子 | – | 引渡し日から3日以内 | 登録義務終了から5年間 | |
B2票 | 紙 | 運搬終了日から10日以内 | 交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内) | 交付日から5年間 |
電子 | 運搬終了日から3日以内 | 交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に登録 | 登録義務終了から5年間 | |
D票 | 紙 | 処分終了日から10日以内 | 交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内) | 交付日から5年間 |
電子 | 処分終了日から3日以内 | 交付日から90日以内(特別管理産業廃棄物は60日以内)に登録 | 登録義務終了から5年間 | |
E票 | 紙 | 終了を確認した日から10日以内 | 交付から180日以内 | 交付日から5年間 |
電子 | 終了を確認した日から3日以内 | 交付から180日以内に登録 | 登録義務終了から5年間 |
B2票、D票、E票の返送を受けた場合、期限内に送付されているか、契約書記載通りの処理かを確認します。
マニフェスト交付状況等報告書
廃棄物処理法では、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付した排出事業者(中間処理業者を含む)は、事業場ごとに前年度1年間のマニフェスト交付等の状況(産業廃棄物の種類および排出量、マニフェストの交付枚数等)について、都道府県知事等への報告が義務付けられています。
対象期間:前年度の4月1日〜3月31日までの期間
提出期限:毎年6月30日まで
報告対象者:マニフェストを交付した者(電子マニフェスト交付分を除く)
報告内容
1.排出事業者の名称・住所・電話番号
2.排出事業場で行われる事業の業種
3.マニフェストを交付した産業廃棄物の種類・排出量(t)・交付枚数
4.運搬受託者(収集運搬業者)の許可番号・氏名又は名称
5.運搬先の住所
6.処分受託者(収集運搬業者)の許可番号・氏名又は名称
7,処分場所の住所
電子マニフェスト登録分については、JWNETが都道府県知事等に報告を行いますので、排出事業者が自ら報告する必要はありません。
紙と電子それぞれのマニフェスト比較
産業廃棄物の処理を委託する際に発行が義務付けられているマニフェストには、紙媒体の「紙マニフェスト」と、インターネット上のシステムで情報を管理する「電子マニフェスト」の2種類があります。運用方法は基本的に同じですが、媒体の性質によってそれぞれメリット・デメリットが存在します。
紙マニフェストは、全国産業資源循環連合会などが販売する用紙を使用して作成します。大きなメリットは、特別なシステムや機器が不要で、すぐに作成できる点です。排出回数が少なければ、運用にかかる手間も比較的少ないと言えます。一方で、手書きによる記載間違いや記載漏れが発生しやすく、紛失のリスクも伴います。また、交付日から5年間の保管義務があり、その管理に場所と手間がかかります。さらに、排出事業者は毎年、前年度の交付状況を日本国内の自治体に報告する義務があります。
一方、電子マニフェストは、日本産業廃棄物処理振興センターが運営するJWNETという情報処理センターを介して利用します。最大のメリットは、マニフェストに関する情報をシステム上で一元管理できる点です。これにより、記載漏れなどの人的ミスを防ぎやすく、情報の紛失リスクもありません。いつでもシステム上で閲覧できるため、リアルタイムでの処理状況の把握が容易になり、事務処理の効率化につながります。 また、JWNETが行政報告を代行するため、排出事業者による報告書の提出は不要になります。 デメリットとしては、導入に費用がかかること、そして排出事業者、収集運搬業者、処分業者のすべての関係者がJWNETに加入している必要がある点が挙げられます。
DXE Stationは、特に産業廃棄物運搬処理業者向けの電子マニフェスト管理システムで、排出事業者が苦手意識を持つマニフェスト作成を運搬処理業者が代行できる「代行起票」機能を備えています。これにより、排出事業者と運搬処理業者の双方の業務負担を軽減し、マニフェストに関わるタイムロスや修正対応を削減します。産廃処理業務を効率化したい方は、ぜひDXE Stationにご相談ください。

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