マテリアルリサイクルとは？種類や具体例、課題などを徹底解説

廃棄物のリサイクルはさまざまな方法で実施されています。その一つが、廃棄されたものを新たな製品の原材料に用いる「マテリアルリサイクル」です。

マテリアルリサイクルというワード自体は聞いたことはあるものの、具体的な内容やどのような廃棄物が対象となるのか、課題はあるのかなどの詳細を理解できていない人も多いでしょう。

そこで本記事では、マテリアルリサイクルの概要や種類、具体例をご紹介します。記事後半では、マテリアルリサイクルが抱える課題も解説するので、リサイクルへの取り組みを推進しようとお考えの方はぜひ参考にしてください。

マテリアルリサイクルとは？

マテリアルリサイクル（Material Recycle）とは、廃棄物や副産物を新たな製品・商品の原材料に再利用するリサイクル方法です。このリサイクル方法では、収集した廃棄物を適切な処理を施した上で、製造プロセスへと投入します。ペットボトルやビニールなどのプラスチック製品や金属製品、木くずなどの自然素材などが対象となります。

マテリアルリサイクルの利点は、資源を有効活用でき、新たな製品の製造に伴う環境負荷を大きく低減させられる点です。天然資源を原材料に用いるよりも、エネルギー消費が少なく、日本でも環境省を中心に推進されています。

その一方で、課題を抱えているのも事実です。例えば、リサイクルの質と効率を高めるためには徹底的な分別が必要になる点や、繰り返し製品の原材料に用いると製品の質が劣化する点などです。このあたりの詳細は、後ほど詳しく解説します。

なお、リサイクル方法はマテリアルリサイクル以外にも化学的に分解する「ケミカルリサイクル」や、焼却して熱エネルギーを取り出す「サーマルリサイクル」などがあります。

マテリアルリサイクルの種類

マテリアルリサイクルには大きく分けて、以下の2種類があります。

• レベルマテリアルリサイクル（水平リサイクル）
• ダウンマテリアルリサイクル（カスケードリサイクル）

それぞれのリサイクル方法の特徴を詳しく見ていきましょう。

レベルマテリアルリサイクル（水平リサイクル）

レベルマテリアルリサイクルとは、廃棄された素材を同じ製品の原料に用いるリサイクル方法です。使用前後で用途が変わらない状態で循環するため、水平リサイクルとも呼ばれています。

例えば、使用済みのペットボトルを処理して新たなペットボトルを再生する、古紙を再び紙製品としてリサイクルするなどです。

ダウンマテリアルリサイクル（カスケードリサイクル）

ダウンマテリアルリサイクルとは、使用済みや廃棄予定の製品が元の製品同様の品質を保つのが難しい場合に、品質レベルを下げてリサイクル製品を作る方法です。滝が上流から下流に流れ込む様子と似ていることから、カスケードリサイクル（Cascade：滝）とも呼ばれています。廃棄物を分解し、その一部を抽出して新たな製品の材料に利用するとイメージするとよいでしょう。

例えば、ペットボトルを洗浄・加工し、衣類の原料にするなどです。レベルマテリアルリサイクルと比較して求められる品質レベルが抑えられており、元の製品に使用できないものでも有効活用できるため、実施しやすい方法といえるでしょう。

マテリアルリサイクルされるものの例

マテリアルリサイクルされるものの例には、以下が挙げられます。

• ペットボトル
• プラスチック
• ビニール
• 金属製品
• 木くず・がれき

それぞれの具体例を詳しく見ていきましょう。

ペットボトル

マテリアルリサイクルの代表例ともいえるのが、ペットボトルです。収集されたペットボトルは、まず塩ビボトル除去・着色ボトル除去・粉砕・選別・風力分離・洗浄・比重分離などの処理が施されます。その後、数ミリ単位の小片であるフレークや、加熱融解してさらに細かくしたペレットと呼ばれる素材にまで分解します。

ペットボトルのレベルマテリアルリサイクルは「ボトル to ボトル」とも称され、主に飲料用ペットボトルに再生されるのが一般的です。その他、カスケードリサイクルのプロセスを経て、以下の製品に再生されます。

• 食品用トレイ・卵パックなどのシート状製品
• 食品用・日用品用パウチ
• アウター・ワーキングウェア・白衣などの衣類
• 台所用洗剤やセロハンテープ台などの成形品

プラスチック

ペットボトル以外のプラスチック製品も、マテリアルリサイクルが実施されています。一般社団法人プラスチック循環利用協会の公表した資料によると、2021年は824万トンのプラスチックが廃棄されました。このうち177万トンがマテリアルリサイクルされています。

シャープ株式会社の事例を見ていきましょう。同企業では、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機に用いられているプラスチックを成形部品として再生すれば、何度でも回収・再利用できるのではないかと考え、自己循環型マテリアルリサイクル技術を開発しました。2001年に始まったこのリサイクル手法は3巡目を迎えており、環境負荷を低減しつつ新たな資源消費を抑えられています。

※参考：一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」（入手日付2024-04-06）
※参考：シャープ株式会社「プラスチックの自己循環型マテリアルリサイクル技術とは」（入手日付2024-04-06）

ビニール

ビニールは異物混入の影響を受けづらく、さまざまな製品にリサイクルされています。

ビニールのマテリアルリサイクルの具体例に挙げられるのは、農業用ビニールハウスやパイプなどです。その他、内装の床の仕上げに使われる床材などにダウンマテリアルリサイクルされています。

金属製品

金属製品もマテリアルリサイクルが実施されています。代表的なものが、アルミ缶のマテリアルリサイクルです。収集されたアルミ缶から異物を取り除き、表面のフィルムや塗装を剥がした後、融解処理して再生地金に変換します。成形後はアルミ缶や、自動車の部品などさまざまな場面で活用されています。

木くず・がれき

建設現場や解体現場で発生する木くず・がれきなども、マテリアルリサイクルの対象です。

木くずは破砕してパーティクルボードや合板の原料に、がれきは細かく砕かれて新たな建築資材にされます。

マテリアルリサイクルが抱える課題

環境負荷を低減させつつ、資源消費を削減できるマテリアルリサイクルですが、「徹底した分別を行わなければならない」「品質が劣化する恐れがある」などの課題を抱えています。それぞれの課題を詳しくご紹介します。

徹底した分別を行わなければならない

マテリアルリサイクルを実施する際、リサイクルの質と効率を高めるために徹底した分別を行わなければなりません。リサイクル対象の廃棄物から異物を事前に除去した上で、細かい分別作業が必要です。分別作業は基本的に手作業で行われるため、廃棄物の量が多ければ多大な時間がかかります。

分別プロセスが不十分だと、リサイクルされた材料の質が低くなり、その結果利用可能範囲が制限されるでしょう。異物が混入していると繰り返し利用することが難しくなるため、リサイクル率の向上には限界があります。

また分別を行っても、すべての製品がリサイクルできるわけではありません。例えば、食用油脂や香辛料を入れた容器類などは、洗浄に手間がかかりリサイクルをスムーズに実施できないケースがあります。

品質が劣化する恐れがある

廃棄物を再び新たな製品の原材料にするマテリアルリサイクルでは、品質が劣化する恐れがある点が大きな課題です。

リサイクルされたプラスチックは、加熱や加工などのプロセスを繰り返す過程で、分子構造が変化し物理的特性や化学的特性が低下する可能性があります。そのまま製品化しても、消費者の期待する品質やニーズを満たすことは難しいでしょう。何度も繰り返すとより劣化が進むので、リサイクルの回数に制限を設ける必要があります。最初はレベルマテリアルリサイクルが可能でも、徐々に品質が落ちるためダウンマテリアルリサイクルに移行し、最終的にはリサイクルが難しくなります。

この品質の劣化を防ぐには、新たなリサイクル技術の開発やプロセス自体の改善などが求められます。