
トラックに荷物を積載する際に注意したいのが、車両の最大積載量を超えていないかという点です。最大積載量を超えて荷物を積んでいる状態は過積載と呼ばれ、さまざまな危険性やリスクが伴います。トラブルを未然に防止するためには、過積載の概要を押さえた上で、対策などを理解しておくことが重要です。
本記事では、過積載が起きる理由やその背景、危険性・リスク、科される可能性のある罰則などを解説します。記事後半では、過積載を防ぐ具体的な方法や危険性に関するよくある質問もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
過積載とは
過積載とは、車両に定められた最大積載量以上に荷物を積載、運行することを言います。重大事故を引き起こす原因の高い悪質な違反行為として、シートベルト非着用、違法駐車と並ぶ「新交通三悪」の一つに数えられ、警察による厳重な取り締まりの対象となっています。
過積載がもたらす6つの危険性・リスク
過積載がもたらす危険性・リスクは、主に以下の6つです。
- 制動距離の延長リスク
- 操縦性悪化のリスク
- 荷崩れが発生しやすくなるリスク
- 道路にダメージを与えるリスク
- 車両に負担がかかるリスク
- 環境が悪化するリスク
中には命に関わるものもあります。それぞれの危険性とリスクを詳しくご紹介します。

制動距離の延長リスク

制動距離とは、車両がブレーキをかけてから完全に停止するまでの距離です。過積載の状態でブレーキをかけると、荷物の重さでタイヤと道路の摩擦力が減少し、進行方向へかかる力が大きくなるため制動距離が延長するリスクがあります。
制動距離が延長している場合、運転手が「これくらいの距離からなら停止できるだろう」といつも通りにブレーキを踏んでも、車両は想定以上に前に進みます。前方車両とぶつかる可能性がある他、停止線で停止できず交差点に侵入したり、歩行者と接触したりする事故が発生する可能性も考えられるでしょう。
定量積載10トン車の制動距離
積載量/制動距離 | 40km /h | 80km /h |
---|---|---|
10トン(定量) | 13.3m | 50.3m |
14トン(140%積) | 14.6m | 58.9m |
18トン(180%積) | 16.1m | 70.3m |
参照:社団法人 奈良県トラック協会 適正化事業情報誌「あすか VOL.14」
操縦性悪化のリスク
運動エネルギーは、質量に比例します。過積載で重量が大きくなると、その分運動エネルギーが増し、スピードの制御が難しくなります。
特に下り坂では予想以上にスピードが出ます。ブレーキを踏んでも事故を回避できない可能性があり、運動エネルギーも増すので重大な事故につながりかねません。
加えて、過積載のトラックではフェード現象が起こる可能性もあります。フェード現象とは、必要以上にブレーキを使用することで制動力が弱まる現象です。下り坂で特に起きやすく、過積載の場合はブレーキに大きな負担がかかるので、より危険性が高まります。

荷崩れが発生しやすくなるリスク
過積載では、車両に荷物が満載になることで、荷台の重心の位置が高くなり、車両の安定性が低下します。重心の位置が高い状態だと、カーブを曲がったりブレーキをかけたりする際に荷物が傾きやすく、荷崩れが発生する危険性が高まります。
荷崩れを防ぐための防止ベルトや滑り止めシートなどもありますが、過積載の状態では積み荷を適切に固定することが難しくなります。
また前述のように制動距離が延長したり、操縦性が悪化したりすることも、荷崩れが発生しやすくなる要因です。

道路にダメージを与えるリスク
過積載は、道路にダメージを与えるリスクもあります。荷台も含めたトラックの重さはタイヤを通じて道路に伝わるため、タイヤを取り付ける車軸にかかる重量(軸重)は、道路運送車両の保安基準に基づき、10トン未満に制限されています。
規定の軸重を超えると、道路に大きな負担がかかるため注意しなければなりません。例えば、軸重20トンのトラックが走行した場合、軸重が10トンのトラックの約4,000倍もの負担がかかるといわれています。
参考:e-GOV法令検索「道路運送車両の保安基準」 (入手日付2024-01-19)
参考:独立行政法人 日本高速道路保有・債務返済機構「「軸重超過」にご注意!」 (入手日付2024-01-19)
車両に負担がかかるリスク
過積載により車両にかかる負担が限界を超えると、車体やフレーム、サスペンション、ブレーキなど車両のあらゆる部品が故障・損傷しやすくなり、事故につながる危険性があります。買い替えや修理などで余計なコストがかかる可能性もあるでしょう。
また車両に負担がかかれば、安全な走行にも支障をきたします。特にブレーキが摩耗しやすくなるため、事故のリスクが増大します。
環境に悪影響を与えるリスク
過積載は安全性に問題があるだけでなく、交通公害の原因ともなり得ます。過積載の状態では、低速ギアでの高回転走行が増えます。その結果、通常よりも多くの汚染物質が放出され、大気汚染を引き起こす可能性が高いです。
また、過積載状態での走行はエンジンや車体に大きな負担をかけるため、騒音や振動などの問題も発生しやすくなります。周辺の自然環境や住民の生活環境に悪影響を及ぼす恐れがある行為でもあるのです。
過積載は法律違反!科される罰則をケース別に解説
過積載には危険やリスクが伴うことは先述した通りですが、大前提として法律に違反する行為です。
過積載によって科される罰則を、運転手・運搬事業者・荷主の3つのケースに分けてご紹介します。
運転手
道路交通法では、警察官は過積載をしている運転手に対し、以下の必要な応急措置を取れると定められています。
- 自動車検査証の提示および、車両積載物の重量測定
- 荷物の積み下ろし
- 通行指示書の交付
もし過積載と認められた場合には、運転手には以下の表で示すように違反点数および反則金などの措置が取られます。
過積載割合/車種 | 大型車 | 普通車 |
---|---|---|
5割未満 | 2点:3万円 | 1点:2万5,000円 |
5割以上10割未満 | 3点:4万円 | 2点:3万円 |
10割以上 | 6点:罰則 | 3点:3万5,000円 |
6点の違反は免許停止となる他、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されます。
また、過積載した状態で事故を起こすと、雇い主である運搬事業者だけでなく、運転手にも賠償責任が生じる可能性があります。
参考:国土交通省「過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!」(入手日付2024-01-19)
参考:e-GOV法令検索「道路交通法」(入手日付2024-01-19)
運搬事業者
運転手に過積載をさせた運搬事業者は、事業許可取り消しなどの措置が取られる場合があります。こうした措置が取られた場合、荷主や運転手、さらには社会からの信用が失われるでしょう。
貨物自動車運送事業法により、過積載の程度と何回目の違反なのかに応じて車両停止処分が行われます。最大で500日×違反車両数の間は車両が使用できなくなるため、事業活動に大きな支障をきたします。
具体的な車両停止の日数は以下の通りです。
過積載の割合が5割未満 | 過積載の割合が5割以上10割未満 | 過積載の割合が10割以上 | |
---|---|---|---|
初回 | 10日×違反車両の台数 | 20日×違反車両の台数 | 30日×違反車両の台数 |
2回目 | 30日×違反車両の台数 | 50日×違反車両の台数 | 80日×違反車両の台数 |
3回目 | 80日×違反車両の台数 | 130日×違反車両の台数 | 200日×違反車両の台数 |
4回目 | 200日×違反車両の台数 | 330日×違反車両の台数 | 500日×違反車両の台数 |
上記に加えて、悪質と判断されたり重大事故を引き起こした場合には、事業許可や運行管理者の資格取り消しの処分が下されます。
参考:国土交通省「過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!」(入手日付2024-01-19)
荷主
荷物を実際に運搬する運転手や運搬事業者のみならず、発注元の荷主にも責任が追及されます。
道路交通法では、過積載になることを知りながら運転手に積載物を売り渡したり引き渡したりすると、警察署長から過積載の「再発防止命令」が出されます。再発防止命令に違反すると、6カ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科されるため、過積載に関する規格を厳守することが重要です。
また、無理な発注や過積載になることを知っていながら依頼した場合、協力要請書(イエローカード)や警告書(レッドカード)および、勧告が発動されます。
発注条件が過積載のリスクに大きく影響を与えるため、荷主は無理な条件で発注しないよう配慮が求められます。
参考:国土交通省「過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!」(入手日付2024-01-19)
過積載の危険性を防ぐためには?やるべき対策
過積載をすると命に関わるだけでなく、罰則が科されて社会的信頼を失う可能性もあります。こうした危険の伴う過積載を防ぐには、以下の対策が重要です。
トラックの最大積載量を理解しておく
トラックの最大積載量と車両総重量を混同して理解している方もいますが、両者は明確に異なります。両者の関係は、以下の式で表されます。
車両総重量=車両重量+乗車定員×55kg+最大積載量
車両総重量の目安は、以下を目安にしてください。
- 大型トラック:最大25トン
- 中型トラック:最大11トン
- 小型トラック:最大4〜5トン
上記の数値と車両重量、乗車定員の体重を考慮して最大積載量を計算してください。
参考:社団法人 全日本トラック協会「車両総重量と積載量」(入手日付2024-01-19)
積載量を目視で確認する
過積載とならないよう、積載量を目視で確認するのも重要です。サスペンションの下がり具合や荷台のへこみ具合をチェックしましょう。目視でのチェックなので、新たな器具を導入する必要もなく、コストもかかりません。
砂利を運ぶ場合は荷台の水平面ギリギリまで、重量のある建築資材はアオリから30センチ程度の高さまでにするなど、各事業所で積載基準を設けるのも良いでしょう。
目視では簡易的に積載量を確認できますが、より正確さを求めるなら後述する自重計を使用してください。
自重計を使用する
自重計とは、ダンプカーやトラックの荷台に設置された積載量を図る装置です。出発前に自重計を使用して、過積載が起こっていないかを確認してください。
自重計を使用する際は、計測担当者・計測日・車両番号・積載量などを控えておくと、トラブルの原因究明にもつながります。
監視者を配置する
実際に走行する前に、監視者を配置して過積載になっていないかをチェックするのも対策の一つです。
運転手が積荷作業やタイムテーブルに追われている場合、積載量のチェックまで手が回らない可能性があります。こうした状況下でも、積載量を確認する監視者を配置していれば、過積載、ひいてはそれに起因するトラブルや事故のリスクを減らせるでしょう。
過積載の危険性に関するよくある質問
1割未満の過積載なら許容範囲?
運送業界では、「1割未満の過積載なら許容範囲内だろう」という憶測が飛び交っています。実際、1割未満の過積載なら見た目の変化が小さく、検挙されないのではないかと思ってしまう場合もあるでしょう。
しかし、実際は法定積載量を1キロでもオーバーすると過積載と判断され、罰則の対象となるので注意が必要です。「このくらいなら問題ないだろう」という認識の甘さが重大な事故につながる可能性もあるため、日頃から過積載に対する高い問題意識を持つことが大切です。

過積載による社会的影響はある?
過積載に起因する事故を引き起こしてしまった場合、車両停止処分が下され、事業継続が困難になる可能性があります。
また過積載を日常的に行っている事業者として社会的信用を失い、発注数が減少するかもしれません。
過積載は一度に運搬できる量こそ増えますが、それ以上に大きなリスクが伴う行為であると覚えておきましょう。
会社で過積載をさせられる場合はどうすれば良い?
雇用される立場にある運転手は、過積載を知っていながらも会社に運転を強要される可能性もあるでしょう。もし過積載が発覚した場合には運転手にも罰則が科されるため、自分を守るためにもなんらかの対策を講じるべきです。
雇用主に訴えても状況が変わらない場合は、転職を検討することをおすすめします。
可能であれば、今後の過積載運行による被害を防ぐために、会社の所在地を管轄する警察署の交通課や国土交通省へ現状を報告することも検討してみるべきかもしれません。
その際、報告を行ったことによって勤務先から不当な解雇や賠償請求などの不利益を被ることのないよう、報告者を保護する「公益通報者保護法」という法律が定められています。
警視庁「相談ホットラインのご案内」
国土交通省「国土交通省における公益通報手続等」
消費者庁「公益通報者保護制度」
また、労働者の意思に反する労働を強要している場合は労働基準法にも抵触します。電話やメールでのアドバイスも受け付けているので、不安な場合は相談してみてください。
厚生労働省「労働基準行政の相談窓口」
過積載をしたら免許が取り消しになる?
過積載の超過割合が10割以上の大型車を運転している場合、免許停止が科されます。仕事ができなくなるだけでなく、日常生活にも悪影響を及ぼすので、過積載は避けましょう。
参考:国土交通省「過積載は、荷主にも罰則が適用されます!!」(入手日付2024-01-19)
過積載をなくすためにはどうしたらいい?
過積載は命に関わる大変危険な違法行為です。警視庁により厳しい取り締まりが実施されている他、企業への啓蒙活動が強化されていますが、過積載で検挙されるトラック運転手や運送事業者は後を絶ちません。
この背景には、業界内の競争の激化による値下げ圧力や、深刻なドライバー不足などがあります。適正な量の運搬で利益を上げることが難しくなった事業者が、一度に多くの荷物を運ぼうとした結果、過積載が起きるのです。
荷主からは、適正な価格での運搬依頼を行うことで、過積載の防止に働きかけることができるでしょう。また、事前に依頼していない荷物を現場で追加するなど、イレギュラーな対応から過積載へ繋がる可能性もあります。
たとえば過積載のトラックが事故を起こした際に「あのトラックに積まれているのは、一歩間違えれば自社の荷物だったかもしれない」と、当事者意識を持つことがとても重要です。
運送業者には、人材を確保するための職場環境の改善や、より効率の良い方法で運送を行うための業務改革が求められるでしょう。業界内の問題を解決するため、民間企業によるDX化を推進するシステムの開発も進んでいます。今後の事業継続に向けて、配車管理や手続きの電子化などを視野に入れることを検討してみるのも良いでしょう。

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