許可取消とその連鎖について解説!廃棄物処理業の欠格要件とは?

許可取消とその連鎖について

廃棄物処理法には欠格要件が定められており、これに該当すると新たに許可を受けることができず、また既に受けている許可を取り消されることになります。厳格な罰則規定が定められている廃棄物処理法ですが、欠格要件による許可の取消とその連鎖こそが最も厳しいものであり注意が必要なのです。

これは、産業廃棄物および一般廃棄物の「処理業(収集運搬および処分)の許可」と「施設設置の許可」が対象であり、もちろん全ての拠点の許可が対象となります。

それでは法人の許可取消を中心に確認して行きたいと思います。

欠格要件とは

法に従った適正な業の遂行を期待できない者を廃棄物処理業から排除するため、欠格者を類型化したものになります。
これに該当すると新たに許可を受けることができず、また既に受けている許可を取り消されることになります。
具体的には次のとおりです。

①心身の故障によりその業務を 適切に行うことができない者
②破産開始決定を受け免責を得ていない者
③禁錮以上の刑に処され、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
④廃棄物処理法等、環境関係法令及び暴行罪等一定の刑法犯(粗暴犯)等に処され、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
⑤許可取消処分を受け、5年を経過しない者(許可取消にかかる行政処分の通知を受けてから60日以内に当該法人の役員等であった場合、業の廃止届を出し業の廃止をした場合を含む)
⑥その業務に関し不正または不誠実な行為をするおそれがあると認める相当な理由がある者
⑦法人または個人で、役員等について欠格事由が生じている者
⑧暴力団員等でなくなった日から5年を経過しない者
⑨暴力団員等がその事業活動を支配する者

もちろん ②破産開始決定、⑥不正・不誠実な行為のおそれ、⑨暴力団員等による支配 も欠格条項ですが、法人の許可取消を念頭に重要なものをまとめると次の3パターンとなります。

① 会社が環境関係法令等の罰金刑を受けた場合
② 会社の役員等が禁錮以上の刑を受けた場合、または環境関係法令等の罰金刑を受けた場合
③ 会社の役員等が許可取消処分を受けた会社の役員等を兼務している(兼務していた)場合

役員等が実際に禁錮以上の刑となり許可取消となる事例としては、大幅なスピード違反、自動車運転処罰法違反など自動車の運転における悪質な違反や覚せい剤取締法違反などがあります。
②については速やかに該当する役員等を辞任させることで許可取消を回避できる場合もあります。
しかし①については不起訴処分(「起訴猶予」など)を勝ち取るしかありません。


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役員等の範囲

会社法の定める役員は「取締役」「会計参与および監査役」のことですが、廃棄物処理法では、「取締役、執行役又はこれらに準ずる者」であって、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し同等以上の支配力を有する者を含む。とされています。

従って、執行役員や支店長(契約の締結権限を持っている者)なども含まれており、かつての代表取締役が相談役や顧問として強い影響力を持っている場合も含まれることになります。
同様に5%以上保有株主についても影響力によっては「みなし役員」となります。実際に株主が欠格要件に該当したことにより許可取消となった事例が存在します。

役員等の任命については慎重に行うべきであり、私生活を含めて言動に注意する必要があることを理解頂く必要があります。またその数を極力減らすことがリスクヘッジになります。

グループ会社や協力会社間で役員等を兼務するのも止めたほうが良く、そのような場合は対策として、ホールディングス会社(持ち株会社)を設立することも検討するべきです。

罰金刑でも欠格要件に該当するケース

環境関係法令に違反した場合

① 廃棄物処理法
② 浄化槽法
③ 大気汚染防止法
④ 騒音規制法
⑤ 海洋汚染防止法
⑥ 悪臭防止法
⑦ 振動規制法
⑧ 特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律
⑨ ダイオキシン類対策特別措置法
⑩ PCB特別措置法

反社会的勢力を忌避するための類型に該当する場合

① 暴力団対策法(暴力団員による不当な行為)
② 暴力行為等処罰に関する法律(集団的な暴行や脅迫、器物損壊など、重大な犯罪行為)
③ 一部の刑法犯 粗暴犯(傷害罪・現場助成罪・暴行罪・凶器準備集合罪・脅迫罪)
        背任罪(任務に反して反社会的勢力等へ利益供与)

欠格要件に該当してしまった場合

2週間以内に欠格要件該当届を提出しなければなりません。欠格要件該当届の提出をせずにいた場合には、6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。廃棄物処理法の処罰を受ければ、もちろん欠格要件に該当し許可取消となります。

役員等はいったん欠格要件に該当すると、5年間は欠格者となります。
役員等の任命にあたっては5年以内に欠格要件に該当していないことを確認する必要があります。知らずに許可申請を行うと申請は却下され、申請手数料も戻りません。

欠格要件の合理化(無限連鎖の解消)・・・ 廃棄物処理法の改正(2011年4月施行)

以前はA社が欠格要件に該当することにより許可取消となった場合に、共通の役員がいるB社も許可取消となり、B社と共通の役員がいるC社も許可取消となる。といったように、共通の役員がいる限り許可取消が無限に連鎖していくことになっていました。

さすがにこれは行き過ぎであるとして、2011年4月の改正により、許可取消しの無限連鎖を一次連鎖で止めるとともに、一次連鎖の起こる場合についても、許可取消原因が、廃棄物処理法上の悪質性が重大なものである場合に限定することとなっています。

許可の欠格要件に係る規定の合理化

出展: 環境省「廃棄物処理法の改正について

廃棄物処理法の罰則

廃棄物処理法に違反すると、刑事処分(罰則)の対象になる場合があります。主な罰則は下表のとおりです。
基本的に両罰規定となっており、行為者本人だけではなく、法人に対しても罰金刑が科せられます。

廃棄物処理法の罰則

詳しくは以下の通りです。
(1)5年以下の懲役(個人のみ)、1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰金またはこの併科
● 無許可営業(または不正手段による営業許可取得)、無許可変更(または不正手段による変更許可取得)
● 廃棄物の無確認輸出(未遂罪を含む)
● 廃棄物の投棄禁止違反(未遂罪を含む)
● 廃棄物の焼却禁止違反(未遂罪を含む)

(2)5年以下の懲役(個人のみ)、1,000万円以下の罰金またはこの併科
● 事業停止命令違反
● 措置命令違反
● 委託基準違反(無許可業者への委託)
● 名義貸禁止違反
● 処理施設の無許可設置(または不正手段による設置許可取得)
● 処理施設処理能力構造等無許可変更違反(または不正手段による変更許可取得)
● 受託基準違反
● 指定有害廃棄物の処理禁止違反

(3)3年以下の懲役(個人のみ)、300万円以下の罰金またはこの併科
● 委託基準違反(政令で定める委託基準の違反)
● 再委託基準違反
● 処理施設の改善命令・使用停止命令違反
● 改善命令違反
● 処理施設の譲受け・借受け違反
● 廃棄物の輸出禁止違反
● 国外廃棄物の輸入禁止違反
● 輸入許可条件違反
● 廃棄物の投棄禁止・焼却禁止違反目的の収集・運搬

(4)2年以下の懲役(個人のみ)、200万円以下の罰金またはこの併科
● 廃棄物の無確認輸出目的の収集・運搬

(5)1年以下の懲役(個人のみ)、100万円以下の罰金
● 管理票交付義務違反・記載義務違反・虚偽記載
● 管理票写し送付義務違反・記載義務違反・虚偽記載(収集運搬、処分)
● 管理票回付義務違反・管理票の運搬終了報告の違反
● 管理票写し保存義務違反
● 虚偽管理票交付
● 引受禁止違反
● 電子管理票虚偽登録(排出事業者)
● 電子管理票報告義務違反・虚偽報告(収集運搬、処分)
● 管理票制度違反の勧告の措置命令違反

(6)1年以下の懲役(個人のみ)、50万円以下の罰金
● 指定区域の土地の形質変更命令(または変更に係る措置命令)違反

(7)6ヶ月以下の懲役(個人のみ)、50万円以下の罰金
● 欠格要件該当の届出義務違反(無届、虚偽の届出)
● 処理施設使用開始前受検義務違反
● 土地形質変更届出義務違反
● 特定施設における事故時の応急措置命令違反

(8)30万円以下の罰金
● 帳簿備付け保存等義務違反
● 廃棄物処理業・処理施設の廃止・変更等の届出義務違反
● 最終処分場の埋立終了届出義務違反
● 処理施設継承届出義務違反
● 処理施設の維持管理記録違反および閲覧拒否
● 産業廃棄物処理責任者設置義務違反
● 特別管理産業廃棄物管理責任者設置義務違反
● 報告義務違反(報告拒否、虚偽報告)
● 立入検査拒否、妨害、忌避
● 技術管理者設置義務違反

出典:東京都環境局「廃棄物の不適正処理禁止

おわりに

不法投棄等の不適正処理を正すため改正を続けながら現在に至る廃棄物処理法ですが、欠格要件はその核となる部分だと言えます。反社会的勢力と一線を画すための決意を感じ取ることが出来ます。

もちろんこのコラムをご覧頂いている方に反社会的勢力の方はいないと思いますが、この業界に関わる者として、私生活を含めてその言動を慎み、業界の地位向上につなげていきたいと思います。


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