PVC素材とは?使うメリット・デメリットや廃棄方法について解説

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PVC素材は耐久性や耐水性が高く、腐食にも強いことから水道管や排水設備など身の回りのさまざまなところで活用されています。リフォームや解体作業、土木工事の建築廃材として発生するPVC素材は一部、産業廃棄物に分類されるため適切な処理が必要です。

そこで本記事では、PVC素材とは何か、使用するメリット・デメリットなどの概要とともに、PVC素材が環境に与える影響や廃棄方法などをご紹介します。記事後半では、再利用方法なども解説するので、PVC素材の使用や廃棄方法について興味のある方はぜひ参考にしてください。

PVC素材とは?

PVC素材とはPolyvinyl Chlorideの略語で、日本語では「ポリ塩化ビニル」「塩ビ」「ビニール」などと呼ばれます。

PVCを製造する際はまず、石油化学から得られるエチレンと、ソーダ工業から得られる塩素を合成して二塩化エチレン(EDC:Ethylene Dichloride)を合成します。その後EDCを熱分解してモノマー化(VCM:Vinyl Chloride Monomer)できる最終的な産物が、PVC素材です。モノマーとは比較的低分子からなる単量体で、重合することでポリマーや高分子化合物となります。

PVC素材は耐久性と強度が高く、低コストで生産できることから高度経済成長期以降から急激に需要が高まり、大量に生産されました。しかし2000年付近で、PVC素材がダイオキシンなどの有害ガスの発生源になるのではないか、またPVC素材製造に使われるフ夕ル酸系可塑剤は環境ホルモンではないか、など安全性が懸念され、塩ビ忌避の風潮が強まりました。

その後はリサイクルや再利用を推進する他、塩ビ工業・環境協会(VEC)をはじめとする複数の団体や企業が、積極的にPVC素材の環境性能の良さを社会全体に訴えかけたことで、再びさまざまな業界でPVC素材が使われるようになっています。

PVC素材は大きく、硬質PVCと軟質PVCに分けられます。それぞれの特徴や用途などを詳しく見ていきましょう。

硬質PVC

硬質PVCは、硬くて強度に優れたPVC素材です。硬質PVCは外部圧力や機械的負荷に耐えることができるため、パイプや継手、建材などとして用いられています。

軟質PVC

軟質PVCとはソフトビニールとも呼ばれる、可塑剤を加えることで柔軟性を持ったPVC素材です。床タイルや壁紙、化粧フィルム、タイルカーペット、防水シートなどある程度の柔らかさが必要な場面で用いられています。

塩化ビニル管・継手は産業廃棄物に該当する

塩化ビニル管・継手とは、硬質ポリ塩化ビニル管のことで、耐久性・耐水性が高く腐食にも強いため、水道管や下水道管、通気管などとして使われています。主に以下の4つの種類に分けられます。

  • VP管:内腔が滑らかで、圧力管や水道管などに使用される
  • VU管:内径が小さく、住宅や簡易的な排水設備などの無圧管路などに使われる
  • HI管(HIVP管):高い耐衝撃性を持ち、寒冷地域や衝撃が強く加わる箇所等使用される
  • HT管:比較的高い耐熱性を持ち、給油配管などに用いられる

塩化ビニル管・継手は産業廃棄物のうち、廃プラスチック類に該当します。そのため法律に基づき、適切に処理しなければなりません。一般廃棄物と混ぜない、委託業者による収集・運搬が行われるまでは指定の場所に保管するなどの対策を行いましょう。

なお産業廃棄物とは、事業活動に伴い発生する廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)と政令で定義された以下の20種類です。


【あらゆる事業活動に伴うもの】
● 燃え殻 ● 汚泥 ● 廃油 ● 廃酸 ● 廃アルカリ ● 廃プラスチック類 
● ゴムくず ● 金属くず ● ガラス・コンクリート・陶磁器くず 
● 鉱さい ● がれき類 ● ばいじん
【特定の事業活動に伴うもの】
● 紙くず ● 木くず ● 繊維くず
● 動物系固形不要物 ● 動植物残渣 ● 動物のふん尿 ● 動物の死体
【上記の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの】
● 汚泥のコンクリート固形化物など

産業廃棄物は不要物になるため、排出者の意思に処理を委ねる場合、適切に処理されない可能性があります。そうなると健康や生活環境に悪影響を与える恐れがあるため、廃棄物処理法により処理方法や処理に関わる許可などが厳格に定められています。排出事業者や収集運搬、処分に関わる業者は、それらを遵守しなければなりません。

産業廃棄物の具体例や処理方法は、こちらの記事で詳しく解説しているので併せて参考にしてください。


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PVC素材を使うメリット

PVC素材を使うメリットには、以下が挙げられます。

  • 低コストで製造できる
  • 加工しやすい
  • 強度がある
  • 耐水性・耐候性に優れる

次章からはPVC素材のメリットを詳しく見ていきましょう。

低コストで製造できる

PVC素材は、HDPE (高密度ポリエチレン)・LDPE (低密度ポリエチレン)・PS (ポリスチレン)・PP (ポリプロピレン)などとともに5大汎用プラスチック (5大汎用樹脂)に数えられます。材料は石油や塩素、水など調達しやすいもので、懸濁重合法など製造プロセスが確立していることから、大量生産に適しておりコスト効率が良いためです。

またリサイクルや再利用が推進されており、比較的容易に材料を調達できる点も低コストで製造できる要因だと考えられるでしょう。

加工しやすい

PVC素材は、加工しやすい点もメリットです。可塑剤を加え、熱を与えるとさまざまな形に変形可能で、冷却するとその形を保ち続けます。

パイプやシート、フィルムなど形状の異なる製品へと加工が可能で、上下水道や電線、最新の医療機器、日用品など多くの場面で活用されています。

強度がある

PVC素材は、他のプラスチック樹脂と比較して強度にも優れている点もメリットです。その理由の一つに、機械的物性の強さが挙げられます。

PVC素材には分子間の極性が存在し、これにより分子間で強固な相互作用が働きます。機械的な強度を把握できるのが、引張り応力-歪み曲線(S-S曲線)です。これは、材料が引張り負荷を受けた際の応力と、ひずみの関係を表したグラフです。引張り応力-歪み曲線(S-S曲線)からは、PVC素材が引張りや曲げ、圧縮に対して耐性が高いことが読み取れます。

つまり、PVC素材は摩擦に強く損傷しにくいのです。そのため曲げたり、傷をつけたりできないクレジットカードなどにも使われています。

耐水性・耐候性に優れる

PVCは耐水性と耐候性に優れており、水や湿気によるダメージを受けづらく、屋外での使用や水に触れる環境下でも、長期にわたって性能が衰えづらい特徴を有しています。色あせや劣化による変化が少なく、配管や屋外建材などに用いることができます。耐候性とは、太陽光や気温、湿度、雨風などの自然環境に耐え得る性質のことです。

PVC素材は耐水性と耐候性以外にも、耐薬品性、耐酸性、耐アルカリ性が高く日常のあらゆる場面で用いられています。

PVC素材を使うデメリット

PVC素材を使う際、メリットだけでなくデメリットも存在します。代表的なものは「有機溶剤で溶ける」「耐熱性・耐寒性がない」です。PVC素材を適材適所で活用するためにも、デメリットをしっかり押さえておきましょう。

有機溶剤で溶ける

PVC素材は耐酸性・耐アルカリ性・耐薬品性に優れていますが、アセトンやトルエン、クロロベンゼンなどの特定の有機溶剤で溶解する点がデメリットです。

こうした有機溶剤に接触すると、軟化したり腐食したりするため、本来の耐久性や強度が失われます。有機溶剤の使用が想定される環境では、PVC素材が接触しないように注意する必要があります。

耐熱性・耐寒性がない

PVC素材の中にはHT管のように耐熱性が比較的高いものもありますが、基本的には熱可塑性を持ち、高温には弱い性質があります。耐熱温度は約80度で、それ以上の温度になると物理的特性が悪化し、形状が変化します。線膨張率が高いため耐熱温度以上でなくても、常温を超える環境下で使用し続けると、反りや歪みが生じる可能性があるため注意が必要です。

また氷点下では、脆くなり衝撃で壊れやすくなります。

PVCが環境に与える影響は?

日常的に使用されているPVC素材ですが、環境や人体に与える影響も示唆されています。主には以下の3つです。

  • PVCの二酸化炭素排出量
  • ダイオキシン問題
  • 可塑剤は食品や乳幼児製品には使用できない

環境や健康への問題意識を高めるためにも、それぞれの影響や問題を詳しく見ていきましょう。

PVCの二酸化炭素排出量

一時期はPVC素材を製造・処分する際に発生する二酸化炭素が、地球温暖化の原因になるのではないかと疑問視されていました。

しかしPVCは主に塩素からなる物質であり、石油使用量は他の石油由来プラスチックと比較しても抑えられています。製造や処分で発生する二酸化炭素の排出量は比較的少なく、むしろ地球温暖化の抑制に寄与していると考えられるでしょう。

ダイオキシン問題

ダイオキシン類とは、塩素と芳香族化合物の混合物が不完全燃焼する際に発生する化学物質です。化学的に非常に安定しており、長期間環境に残り続けることで健康に悪影響を与える可能性があります。

PVCとダイオキシン類にはいずれも塩素が主成分として含まれており、このことからダイオキシン類の発生原因はPVCではないかとの世論が強まり、一時は撤廃運動が強まりました。

しかし実際は、ダイオキシン類の発生は燃やす素材ではなく焼却条件に依存しています。日本ではダイオキシン類対策特別措置法が制定され、設備が整えられて以降はダイオキシン類の発生量は減少しています。

可塑剤は食品や乳幼児製品には使用できない

可塑剤とは、物質に柔らかさや柔軟性を与え、加工しやすくするために添加する化学物質です。PVC素材にも、加工性を高める目的で加えられることがあります。

可塑剤にはいくつか種類があり、汎用性が高く使用割合の多いフタル酸エステルは安全性が確認されています。しかしげっ歯類に大量投与すると毒性が見られることから、成長段階にある乳幼児期用製品には予防的措置として使用が制限されています。

また食品衛生法でも一部の条件を除き、フタル酸ビス(DEHP)を含有するPVCを主成分とする合成樹脂を使用してはならないと定められています。

PVCの再利用方法

PVC素材の代表的な再利用方法は、以下の3つです。

  • マテリアルリサイクル
  • ケミカルリサイクル
  • サーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)

それぞれの再利用方法の特徴やメリットなどをご紹介します。

マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、材料リサイクルや材料再生とも呼ばれるリサイクル方法です。マテリアルリサイクルにより、廃棄されたプラスチック類は新たなプラスチック製品へ生まれ変わります。廃棄物の量を削減できるだけでなく、プラスチックを製造するために必要な石油をはじめとする天然資源を削減できるため、環境にも優しい点がメリットです。

PVC素材からできている塩ビパイプや塩ビ管などは、他の汎用プラスチックと比較して異物混入の割合が少なく、必要な材料だけを取り出せるためマテリアルリサイクルしやすい素材です。また耐久性が高く、長期使用による劣化の影響も少ないことからもマテリアルリサイクルに適しています。

2021年はPVC素材を含む廃プラスチック類は824万トン排出されていますが、マテリアルリサイクルで処理された量は177万トンで、これは全体の21.4%に当たります。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-07)

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルはフィードストックリサイクルとも呼ばれる、廃プラスチック類を原料やエネルギーとして取り出すために、化学的に分解する処理方法です。このリサイクル方法では、最終的に炭化水素やガス、石油などの化合物や混合物へと分解されます。PVC素材をケミカルリサイクルで処理する場合、主に以下の手法が取られます。

  • 高炉原料化:高温処理で塩素と炭化物に分解し、鉄の還元剤や薬剤として利用する
  • コークス炉化学原料化法:石炭と混合し、高温熱分解によりコークス、炭化水素を取り出す
  • 塩化揮発法:塩素を利用して、鉄と非鉄金属を分離する
  • ガス化法:ガス化させ一酸化炭素と水素を生成し、アンモニア合成の原料とする

2021年は廃プラスチック類の全体の排出量のうち、3.5%にあたる27万トンがケミカルリサイクルにより処理されました。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-07)

サーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)

サーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)とは、PVC素材を高温で熱溶解し、その熱をエネルギーとして利用する手法です。このリサイクル方法では、ごみ焼却熱利用、セメント原・燃料化、固形燃料化(RPF、RDF)などの手法により、エネルギーを取り出します。

廃プラスチック類の多くはサーマルリサイクル(エネルギーリカバリー)で処理されており、2021年は全体の62%に当たる511万トンがこの方法で処理されています。

参考:一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチックリサイクルの基礎知識」(入手日付 2024-02-07)

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