
「リサイクル」という言葉はよく使われますが、その中身はいくつかに分類されており、広義のリサイクル・狭義のリサイクルなど使われ方は様々です。
今回はリサイクルの定義を確認し、資源循環におけるその位置づけを再確認したいと思います。
目次
リサイクルとは

使用済みの資源を原料(資源)として再利用することを指します。「再資源化」や「再生利用」といわれることもあります。いわゆる「3R」の一つとして広く定着しています。(他2つは「リデュース」「リユース」)
循環型社会形成推進基本法(2000)では、廃棄物処理やリサイクルの優先順位を
(1)リデュース(ごみの発生抑制)
(2)リユース(再使用)
(3)(狭義の)リサイクル
(4)熱回収
(5)適正処分
としています。

3つのリサイクル

リサイクルには、「マテリアルリサイクル」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル」がありますが、最近は「マテリアルリサイクル」と「サーマルリサイクル」を狭義のリサイクルとし、エネルギー回収(熱回収)については「エネルギーリカバリー」もしくは「サーマルリカバリー」として区別されるようになっています。
広義のリサイクルとしては、使用済み製品からまだ使える部品を取り出し、新製品に組み込む「部品のリユース」、例えばタイヤのリトレッドなども含めてリサイクルと呼ぶことがあります。
また、廃棄物の埋立処分量ゼロを目指す「ゼロエミッション」のことを称して「リサイクル」と呼ぶこともあります。この場合は、鉄鋼向け(高炉・コークス炉)やガス化によるリサイクル手法を指します。
分類(日本) | リサイクルの手法 | ISO 15270 | |
---|---|---|---|
マテリアルリサイクル (材料リサイクル) |
再生利用・プラ原料化・プラ製品化 | Mechanical Recycle (メカニカルリサイクル) |
|
ケミカルリサイクル | 原料・モノマー化 | Feedstock Recycle (フィードストックリサイクル) |
|
高炉還元剤 | |||
コークス炉化学原料化 | |||
ガス化 油化 |
化学原料化 | ||
サーマルリサイクル (エネルギー回収) |
燃料 | Energy Recovery (エネルギーリカバリー) |
|
セメント原・燃料化 ごみ発電 RPF※1 RDF※2 |
※1 :Refuse Paper & Plastic Fuel(マテリアルリサイクルが困難な古紙と廃プラスチック類を原料とした高カロリーの固形燃料)
※2:Refuse Derived Fuel(生ごみや可燃ごみや廃プラスチックなどからつくられる固形燃料)
一般社団法人 プラスチック循環利用協会 「プラスチックリサイクルの基礎知識2022」
マテリアルリサイクルとは

回収した資源ごみなどを原料にして新しいものをつくり出し、再利用する方法です。マテリアル(material)は英語で「原料」や「材料」を意味することから、「材料リサイクル」とも呼ばれます。
プラスチックをリサイクルする場合は、プラスチックごみを高温で溶かして原料に戻し、そこからプラスチック製品に再生します。
マテリアルリサイクルでは、フレーク(プラスチックを破砕・洗浄・乾燥したもの)やペレット(フレークを溶かして粒状に成型したもの)にしたのち、さらに溶かして「樹脂材料」となります。
樹脂材料としての品質基準を満たすには、異物や汚れを取り除き、なおかつ同一種類のプラスチックでなければなりません。
ケミカルリサイクルとは

使用済みの資源を化学的(chemical)に分解し、原料に変えてリサイクルする方法です。プラスチックごみを分解して石油やガスなどに戻す取り組みは、その代表的な事例と言えるでしょう。その他、家畜の糞尿を化学反応によって組成変換し、バイオガス化するという処理もケミカルリサイクルの一種です。
例えばペットボトルの場合、マテリアルリサイクルで作られた原料は衛生面やニオイなどの課題があり、飲料用のペットボトルには再利用されていません。一方、そうした問題を科学的方法でクリアしたケミカルリサイクルなら、使用済みのペットボトルから新たな飲料用ペットボトルを作ることができます。
国内の廃プラスチックの総排出量は、2020年時点で822万トンほどです。そのうち、全体の3%にあたる27万トンの廃プラスチックをケミカルリサイクルで処理しています。

一般社団法人 プラスチック循環利用協会 「プラスチックリサイクルの基礎知識2022」
ケミカルリサイクルの具体例
① 原料・モノマー化:PETボトルからPETボトルをつくる
PETボトルは繊維やシートにリサイクルされていますが、飲料用PETボトルそのものには使われませんでした。
一度使われたPETボトルは、衛生面や匂いの点から、清涼飲料、酒、醤油ボトルの原料には適さないとされていたためです。しかしながら、PET樹脂を石油やナフサからあらためてつくるよりも、合成の途中段階まで戻して新にPET樹脂とすれば資源の節約が図れるはずです。この考えに基づき、新品樹脂と同等のリサイクルPET樹脂をつくり飲料用ボトルにするボトルtoボトル事業が2003年から始まりました。そこで使われている技術が、使用済PETボトルを化学的に分解し原料やモノマーに戻して(解重合)、再度PET樹脂にする方法です。
② 高炉原料化:廃プラスチックを還元剤として使う
製鉄所では、鉄鉱石とコークスそして副原料を高炉に入れ鉄鉱石を融かして銑鉄を生産します。
このときコークスは燃料として炉内を高温にするとともに、鉄鉱石の主成分である酸化鉄から酸素を奪う還元剤として働きます。プラスチックは主に石油から作られているので、炭素と水素が主成分です。それ故、廃プラスチックをコークスの代わりに還元剤として高炉で利用できます。
③ コークス炉化学原料化:廃プラスチックをコークス炉で再利用する
石炭を蒸し焼きにするとコークスができ、その際に発生する揮発成分からは炭化水素油、コークス炉ガスができます。廃プラスチックからも同様に、コークスや炭化水素油、コークス炉ガスができます。
日本製鉄(株)では、廃プラスチックをコークス、化学原料、燃料として利用するための設備を完成し、各製鉄所で稼働させています。
④ ガス化:廃プラスチックをガスにして化学工業の原料にする
プラスチックの主成分は炭素と水素です。このため、普通に燃やすと二酸化炭素と水になります。プラスチックガス化のプロセスでは、ガス化に必要な酸素と蒸気を供給して加熱しますが、酸素が制限されているので、プラスチックの大部分は炭化水素、一酸化炭素、そして水素になります。
⑤ 油化:廃プラスチックを油に戻す
プラスチックは石油が原料なので、製造と逆のプロセスをたどれば石油に戻るはずです。1970年代後半から廃プラスチック油化技術の開発が進められ、その技術はほぼ確立されました。しかしながら、実用化にあたって事業規模の確保、高コストの軽減等の課題が数多く残されており、本技術を採用するにあたってはこれらの問題・課題についての十分な検討が必要です。
資源循環におけるリサイクル
持続可能性(サステナビリティ)やSDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれ、プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)を超えない活動の維持とWell-Being(幸福の実現)の同時達成が求められる中、実現のためのアプローチとして、脱炭素(CN)、循環経済(CE)、自然再興(NP)が世界の潮流となっています。
製品ライフサイクルにおけるあらゆる段階で天然資源投入量を抑制するための取り組みが求められる中、資源循環は3Rから「Renewable」を加えた4R(3R+Renewable)に変わりつつあります。

環境省 第四次循環基本計画の第2回点検及び循環経済工程表の策定について
「Renewable(リニューアブル)」とは再生可能という意味の言葉であり、「プラスチック資源循環促進法」においては、プラスチックを再生可能なバイオマスプラスチックなどに置き換えることが求められています。
また、イメージ図の中には炭素そのものの回収・利用・貯留(CCUS)も盛り込まれており、炭素の利用については炭素リサイクルと呼ばれることもあります。
LCA(ライフ サイクル アセスメント)とは

LCAとは、製品の資源採取から原材料製造、加工、組立、製品使用、さらに廃棄にいたるまでの全過程(ライフサイクル)における環境負荷を総合して、科学的、定量的、客観的に評価する手法です。
どのリサイクルを選択するべきか、リサイクルすべきか否かを判断する場合の環境負荷計算にあたっては、LCAの手法が有効です。
ここで間違いやすいのは、「リサイクルしない」場合を「廃棄処分」のみであるとしてしまうことです。そうするとCO2発生量が極端に少なくなり、「リサイクルしない」ことが一番「エコ」であるということになってしまいます。
「リサイクルしない」を選んだ場合は、廃棄処分のCO2発生量に加えて、新品に係る資源(原油)の採取、ナフサの精製、樹脂原料ペレットの製造、樹脂原料ペレットの加工、パレットの製造、パレットの使用、廃棄処分までの各工程におけるCO2発生量も合算しなければならないのです。
最後に
経済産業省は、2023年3月31日に、「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました。この中で、サーキュラーエコノミーを通じた「新しい成長」を実現するとしており、国内の関連市場規模は2020年50兆円、2030年80兆円、2050年120兆円としています。資源循環関連分野は今後急速な成長が期待される分野なのです。
実際に、持続可能な航空燃料ジェット燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)などのように、価格を通じた市場メカニズムにより、原料(廃食用油など)のリサイクルが急速に推進されるケースが出てきています。
環境負荷が科学的、定量的、客観的に明確になり、環境負荷の低さが価値を生む社会が目の前に迫っているのです。
DXEはこれらの動きを踏まえて継続的なバージョンアップを行うことで、お客様とともに成長したいと考えています。

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