
太陽光や風力、水力、地熱などの再生可能エネルギーは、エネルギー生産に伴う二酸化炭素排出量の削減など、持続可能な社会の実現に向けて注目を集めています。一方で、発電量が安定しにくい、発電コストが高いなどの課題も抱えています。
そこで本記事では、再生可能エネルギーの概要とともに、課題を解説します。記事後半では、課題解決に向けた取り組みの例も紹介するので、再生可能エネルギーの利用を視野に入れている事業者はぜひ参考にしてみてください。
目次
再生可能エネルギーとは?
再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、水力、地熱などの自然界に存在し、枯渇しないエネルギーの総称です。従来の石油・石炭・天然ガスなどの化石燃料と比較すると、二酸化炭素や有害ガスが発生しない点や、エネルギー自給率を高められる点がメリットとして挙げられます。
再生可能エネルギーを利用した発電方法には、いくつかの種類があります。それぞれの概要やメリット・デメリットは以下の通りです。
名称 | 概要 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|
太陽光発電 | 太陽の光エネルギーを利用する | 太陽光とソーラーパネルがあればどこでも発電できる | 設置コストがかかる、発電効率が天候に左右される |
風力発電 | 風の運動エネルギーを利用する | 発電効率が高くコストパフォーマンスに優れている | 風がないと発電できない、景観が損なわれる、騒音が発生する |
水力発電 | 水の運動エネルギー・位置エネルギーを利用する | 天候の影響を受けにくく、安定した電力供給が可能となる | ダム建設にはコストと時間がかかる、降水量や地理的条件の影響を受けやすい |
バイオマス発電 | 生物由来のエネルギーを利用する | カーボンニュートラルを実現できる | 発電コストが高い、素材の質に発電効率が影響される |
地熱発電 | 地球内部の熱エネルギーを利用する | 天候や季節に左右されずにエネルギーを供給できる | 地理的制約を受ける |
再生可能エネルギーの課題
再生可能エネルギーは、環境負荷が小さい点や、化石燃料と異なり枯渇しない点などがメリットとして挙げられます。その一方で、以下に示す課題も抱えています。
- 発電量が安定しにくい
- 広い土地が必要となる
- 発電コストが高い
- 発電設備の建設場所が限られる
- 送電線などの増強が必要
それぞれの課題を詳しく見ていきましょう。
発電量が安定しにくい
再生可能エネルギーの課題の一つに、天候や時期、季節、時間帯に大きく影響されるため「発電量が安定しにくい」点が挙げられます。
例えば、太陽光発電は曇りの日や夜間に発電量が大幅に減少します。また風が弱い日には風力発電による発電量が大幅に減少し、電力の供給が不安定になることがあります。
その点、水力発電は基本的には安定した発電が可能ですが、降水量が極端に少ない場合には発電量が低下するという課題があります。特に自流式の水力発電は、河川の自然流量に依存しているため、降水量が少なくなると発電に使用できる水の量が減り、発電効率が落ちるのです。
その他、バイオマス発電も燃料となるバイオマス原料の質に発電効率が影響されやすく、安定して供給するには質にもこだわらなければなりません。さらに、木質バイオマス(木材からなる生成可能な資源)の場合、林業の労働者減少により原料の確保が難しく、生産量に変動が生じやすくなっています。
広い土地が必要になる
再生可能エネルギーは、化石燃料から発電する場合と比較して広大な土地が必要です。再生可能エネルギーと化石燃料で、最大出力量がどの程度異なるのかを、川崎市にある浮島太陽光発電所と川崎火力発電所で比較してみましょう。
発電所 | 面積 | 最大出力量 | 面積当たりの最大出力量 |
---|---|---|---|
浮島太陽光発電所 | 11万平方メートル | 7,000 kW | 0.063 kW |
川崎火力発電所 | 28万平方メートル | 3,420,000 kW | 12.2 kW |
上記の発電所の場合、太陽光発電と火力発電では面積当たりの最大出力量は約200倍もの差があります。面積当たりの発電効率が低いので、現在の設備で大規模な電力を生み出すには、火力発電以上に広い土地が必要という計算になります。
発電コストが高い
環境負荷の少ない再生可能エネルギーですが、その経済性にはいまだに課題を抱えているのが事実です。
発電を行うためには新たな発電設備の製造・建設が必要になりますし、その設備も恒久的に使えるわけではありません。また、耐用年数を超えた設備は廃棄する必要がありますが、資源の有効利用の観点からすると、多少コストが高くなっても再生利用をするのが望ましいでしょう。
再生可能エネルギーの日本での市場規模はまだ小さいため設備投資や関連産業・ビジネスの発展が進まず、全体のコストが高止まりする要因となっています。
下記は化石燃料と比較した、再生可能エネルギーの発電コストです。
発電方法 | 発電コスト(円/kWh) |
石炭火力 | 12.5 |
LNG火力 | 10.7 |
原子力 | 11.5~ |
石油火力 | 26.7 |
陸上風力 | 26.7 |
洋上風力 | 30.0 |
事業用太陽光 | 12.9 |
住宅用太陽光 | 17.7 |
小水力 | 25.3 |
中水力 | 10.9 |
地熱 | 16.7 |
バイオマス(混焼・5%) | 13.2 |
バイオマス(専焼) | 29.8 |
化石燃料と比較して、2倍以上の発電コストがかかる再生可能エネルギーもあります。コスト削減の対策を進めなければ、化石燃料から再生可能エネルギーに移行すると、それだけで電気料金が2倍以上に膨らむ可能性があるのです。
※参考:資源エネルギー庁(入手日付2024-10-25).
発電設備の建設場所が限られる
再生可能エネルギーは、どこでも自由に発電場所を設置できるわけではありません。
例えば地熱発電の場合、効率的に発電するためには、高温の蒸気や熱水を取り出せる火山地帯で実施する必要があります。日本国内では発電に適した地熱地帯は限られており、国立公園や温泉地・観光地と重なる地域も多いです。そのため、開発には環境保護や地域住民との調整が求められます。
また、風力発電や太陽光発電に関しても、発電効率を最大化するためには、風が強い地域や日照量が豊富な平地が適していますが、こうした条件を満たす土地は限られているのが現状です。
太陽光発電のパネル設置の場合は、日照量が豊富かつ平坦な広い土地が必要です。しかし、日本の国土の大半は山岳地帯で、このような条件を満たす場所を確保することも容易ではありません。山岳地帯の森林を伐採して発電に適した場所を確保するケースも多く、別の環境破壊につながる可能性もあります。
さらに水力発電に関しても似たような問題があります。水力発電を行うために必要なダムはどこにでも建設できるわけではなく、山岳地帯に限られます。大規模なダムを建設する場合は、山岳地帯を切り開いて周囲の川の水の流れをせき止めるため、野生動物や魚類の生息地を奪うなど、生態系に大きな悪影響を及ぼしかねません。
このように、国土面積が狭く平地の少ない日本では、環境にやさしいエネルギーを生み出そうとすると環境を汚染しなくてはいけなくなる、というある種のジレンマを抱えています。
送電線などの増強が必要
発電所で生産された電力は、送電線・配電線などの設備(系統)を通して各地に供給されます。しかし送電線・配電線には容量の限界があり、生み出した電力を制限なく送り出せるわけではありません。
再生可能エネルギーの普及に伴い発電所が新設されると発電量が増えるため、容量不足が大きな課題となっています。電力の安定供給を実現するためには、送電線・配電線を強化していかなければなりません。
送電線・配電線を強化するには、多額のコストと時間がかかります。2023年に公表された「電力ネットワークの次世代化について」では、地域間連系線の整備を進めるために、約6〜7兆円の資金がかかるだろうと予想されています。
※参考:資源エネルギー庁.「電力ネットワークの次世代化について」(参照 2024-10-25).
再生可能エネルギーの課題解決に向けた取り組み
先述した再生可能エネルギーの課題解決に向けて、以下のような取り組みが行われています。
- 次世代型太陽電池の開発
- 入札制度の導入
- 日本版コネクト&マネージ
- 発電にかかるコストの削減
それぞれの取り組み内容を詳しく見ていきましょう。
次世代型太陽電池の開発
太陽光発電の課題解決に向けて、次世代型太陽電池の開発が進められています。次世代型太陽電池には有機系、量子ドット系などがあり、代表的なものには以下が挙げられます。
- ペロブスカイト太陽電池(PSC)
- 色素増感太陽電池(DSC・DSSC)
- GaAs太陽電池
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は、ペロブスカイト構造を持つ材料を用いた次世代型太陽電池です。耐久性や大容量化には課題がありますが、軽量で加工しやすく、コストが低い特徴があります。
色素増感太陽電池(DSC・DSSC)は、光を吸収する色素と酸化チタンを用いたタイプの太陽電池です。耐久性に課題があるものの、製造コストが安く色調を工夫すると発電性能を向上させられます。
GaAs太陽電池は、ガリウム(Ga)とヒ素(As)を配合した太陽電池です。ガリウムはレアメタルなので製造コストが高い点がデメリットですが、エネルギーの変換効率の高さに優れます。
入札制度の導入
太陽光発電は、コスト削減と電力価格の競争を目的に入札制度が導入されています。これは2017年にスタートしたFIT(固定価格買取制度)の一部で、当初は2MW以上の大規模発電所を対象としていましたが、徐々に範囲が拡大し2020年には250kW以上が対象となっています。
この制度では、発電事業者が発電価格を競い合い、最もコスト効率の高い提案が選ばれる仕組みです。適正な価格設定を通じて、国民負担を軽減し、再生可能エネルギーの普及を進める狙いがあります。
また太陽光発電の入札制度により、太陽光発電の価格競争が促進され、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再生可能エネルギーの買い取りにかかる費用をまかなう賦課金)の負担を抑制する効果も期待されます。
※参考:資源エネルギー庁.「太陽光発電について」(参照 2024-10-25).
日本版コネクト&マネージ
日本版コネクト&マネージとは、送電線などの電力系統の制約を解決する取り組みです。このシステムは、イギリスやアイルランドなどのコネクト&マネージをモデルにしたもので、「ノンファーム型接続」と「N-1電制」を導入しています。
ノンファーム型とは、系統の容量があるときに新しい電力を接続する方法です。この方式では、あらかじめ系統容量を確保しません、そのため、系統が混雑していなければ、発電した電力を系統に流すことができます。
N-1電制とは、1本の送電線が故障しても他の回線で補い、電力を供給できるようにする仕組みである「N-1基準」を改良したものです。いつ起こるか分からないトラブルに備えて常に容量を制限しているのは、効率的ではありません。N-1電制を導入すれば、平常時は運用容量を増やし、トラブルが生じた際は発電を遮断することで、容量の問題解決とシステム全体の安定性を両立します。
発電にかかるコストの削減
発電にかかるコストの削減に向けた取り組みも進められています。例えば、FIT(固定価格買取制度)やFIP(フィードインプレミアム制度)などの国策が挙げられます。
FIT(Feed-in Tariff:固定価格買取制度)とは、再生可能エネルギーの普及を目的に2012年に導入された制度です。この制度では、再生可能エネルギーにより発電された電力を、発電事業者が一定期間買い続けることを義務付けています。
FIP(Feed In Premium:フィードインプレミアム制度)とは、2022年4月に導入された再生可能エネルギーの発電事業者に対し、売電価格に加えてプレミアム報酬を上乗せする制度です。この制度があることにより、発電事業者は安定した収益を確保でき、再生可能エネルギーの経済性を高められます。
これらの制度は、直接的にコスト削減効果を狙ったものではありませんが、発電へのインセンティブが生まれることでスケールが拡大し、間接的にコストメリットに期待できるのです。
※参考:資源エネルギー庁「平成28年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2017)(入手日付2024-10-31).
※参考:資源エネルギー庁「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」(入手日付2024-10-31).
おわりに
いかがだったでしょうか。持続可能な社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの促進は急務です。2030年代後半には、耐用年数を迎えた太陽光パネルの大量廃棄が予定されており、設備のリサイクルシステムの構築も求められます。
日本にとっては国土の狭さが課題となってくるため、それらを解決する日本独自の取り組みが必要となってくるでしょう。

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