
廃棄物は、発生から最終処分が行われるまで「排出事業者の責任において適正に処理しなければならない」と法律で定められています。この規定は排出事業者責任とも呼ばれ、生活環境や自然環境への悪影響を最小限に抑えるためにも、企業はこの責任をしっかりと果たさなければなりません。
そこで本記事では、排出事業者責任の概要や違反した場合に科せられる罰則を詳しく解説します。記事後半では、処理事業者に委託する際の注意点やよくある質問もご紹介しますので、詳細を知りたい方はぜひ参考にしてください。
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排出事業者責任とは?概要を詳しく解説
排出事業者責任とは「事業活動に伴い発生した廃棄物は、排出事業者が責任を持って適切に処理しなければならない」という決まりのことです。廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃棄物処理法)の第三条第一項にて定められています。
排出事業者責任への意識が高まったのは、2016年に起きた食品廃棄物の不正転売事件がきっかけです。それ以降環境省は、チェックリストの作成や排出事業者への周知徹底を行うなど、排出事業者責任に本腰を入れています。
詳しくは後述しますが、排出事業者責任に違反した場合は罰則が科され、社会的信用を失いかねないので遵守しましょう。
排出事業者責任の役割や責任義務は、以下の4つに分類できます。
- 処理責任
- 委託基準遵守
- 管理票交付義務
- 委託した場合の最終処分までの注意義務
それぞれ詳しくご紹介します。
処理責任
前述のように処理責任とは、事業活動に伴い発生した廃棄物は、排出事業者自身が責任を持って処理すべきという原則です。自社で処理する場合は、廃棄物処理法に定められた基準で運搬や処分を行う必要があります。
自社の敷地内だからといって許可なく埋め立てを行ったり、焼却するなどした場合は罰則が科される可能性があるので注意してください。
後述しますが、処分を外部に委託した場合でも処理責任は廃棄物の排出事業者にあります。この点は勘違いしやすいので、排出事業者は適正な処分が実施されているかを徹底して確認してください。
委託基準遵守
排出事業者が廃棄物を自社で処理できない場合、外部の事業者に依頼するケースが大半です。この場合、排出事業者は政令で定める委託基準に従わなければなりません。委託基準は、以下を参考にしてください。
- 産業廃棄物処理業許可を持つ事業者へ依頼すること
- 委託する内容が事業の許可範囲に含まれていること
- 産業廃棄物の処理状況や維持管理の状況を確認すること
- 特別管理産業廃棄物の運搬・処分・再生を委託する場合は、種類や数量、性状、荷姿、取り扱いの際の注意事項を事前に通知すること
- 書面で処理委託契約を締結すること
- 委託契約書を5年間保存すること
特筆すべきは、特別管理産業廃棄物に関する文書を事前に告知する必要がある点と、処理委託契約を締結する点です。
特別管理産業廃棄物とは、爆発性・毒性・感染性その他人体や環境に悪影響を及ぼす性状を有する産業廃棄物です。廃酸、廃アルカリや感染性産業廃棄物、廃PCBやPCB汚染物を含む特定有害産業廃棄物などが該当します。
また処理委託契約とは、排出事業者が運搬や処理を外部に委託する際、種類や量などを明記した上で契約を交わすことです。委託契約書の詳細は、後述します。
参考:産業廃棄物処理事業振興財団「産業廃棄物の委託基準」(入手日付2024-01-19)
産業廃棄物管理票交付義務
排出事業者には、産業廃棄物管理票交付義務もあります。この管理票はマニフェストとも呼ばれる重要な書類です。排出事業者から処理業者へ産業廃棄物の種類や性状を正確に伝える目的と、排出事業者自身が処理の進捗状況を把握することで不適正処理を防ぐ目的があります。
排出事業者が産業廃棄物の処理を外部に委託する際は、管理票に以下の項目を記載してください。
- 交付年月日と交付番号
- マニフェスト交付担当者の氏名
- 排出事業者の氏名または名称と住所
- 排出事業場の名称と所在地
- 産業廃棄物の種類と数量
- 石綿含有廃棄物、水銀使用製品産業廃棄物、水銀含有ばいじん等が含まれる場合はその旨、およびその数量
- 産業廃棄物の荷姿
- 最終処分を行う場所の所在地
- 運搬または処分を受託した者の氏名または名称と住所
- 運搬先事業場の名称と所在地、積み替え保管を行う場合はその所在地
ちなみに、管理票(マニフェスト)は交付義務以外にも、措置義務(適切な処置を講じる)・保存義務(5年間保存する)・報告義務(1年間に交付したマニフェスト情報の報告書を作成し提出する)が定められています。管理票(マニフェスト)の概要は、こちらの記事で詳しく解説しているので、併せて参考にしてください。
委託した場合の最終処分までの注意義務
廃棄物は、排出事業者が責任を持って処分しなければならないことは先述したとおりです。しかし多くの排出事業者は、自社で専門的な処理を行える施設を持っていないため、外部の事業者に委託することになるでしょう。
委託した場合でも、廃棄物の処理責任は排出事業者にあります。つまり、廃棄物の発生から最終処分が完了するまでの一連の処理が遂行されるまで、注意義務があるのです。適切に処理が行われるように、必要な措置を講じなければなりません。例えば、処分業者に適切な処理料金を支払う、施設や設備が機能しているか現地で確認する、不適切な処理がなされている場合は廃棄物の引き渡しを中止するなどです。

排出事業者責任に違反した場合は?罰則をケース別に解説
排出事業者責任に違反した場合、以下のケース別に罰則が科せられます。
- 廃棄物の投棄禁止違反
- マニフェスト確認義務違反
- 注意義務違反
- 処理責任者設置義務違反
それぞれの概要と、科される罰則の詳細を詳しくご紹介します。
廃棄物の投棄禁止違反
廃棄物処理法で個人法人を問わず、廃棄物の不法投棄は禁じられています。個人の場合は5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が、法人の場合は3億円以下の罰金が科されます。
不法投棄の件数は、1998年前半をピークに大幅に減少していますが、2021年度では年間107件、総量3.7万トンもの悪質な不法投棄が発覚しました。私有地に不法投棄した場合は、土地の管理者や所有者に多大な迷惑がかかるので行ってはなりません。
参考:環境省「産業廃棄物の不法投棄等の状況(令和3年度)について」(入手日付2024-01-19)
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
マニフェスト確認義務違反
廃棄物が適切に処理されているか確認するために、排出事業者は各処理業者から送付されるマニフェストを確認しなければなりません。所定の期日を過ぎても終了報告がない場合、処理の進捗状況を確認し、必要な措置を講じると共に、当該地域の自治体に結果を報告する義務があります。
終了報告の期限は、以下のとおりです。
- 運搬終了・処分終了の確認期限:交付日から90日(特別管理産業廃棄物は60日以内)
- 最終処分終了報告:交付日から180日以内
マニフェスト確認義務に違反した場合、すぐに罰則が科されるのではなく、まずは措置命令が下されます。それに従わなければ、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
参考:東京都環境局「処理を委託する場合」(入手日付2024-01-19)
注意義務違反
著しく安い価格で発注する、不適切な処理をしていると噂の業者に発注するなどの注意義務を怠ると、措置命令が出されます。先述したとおり、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されるので注意してください。
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
処理責任者設置義務違反
廃棄物処理法では、事業活動に伴い産業廃棄物が排出される事業者は、事業所ごとに産業廃棄物処理責任者を配置しなければならないと定められています。処理責任者設置義務に違反すると、30万円以下の罰金に処されます。
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
排出事業者責任に違反しないために!処理事業者に委託する際に注意すべきこと
排出事業者責任に違反しないためには、処理事業者に委託する際に以下のポイントに注意してください。
- 委託契約書は必ず作成する
- 処理費用が適正であるかを確認する
- 自治体の許可を受けている事業者を選ぶ
- 「優良産廃処理業者」の認定を受けている事業者を選ぶ
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
委託契約書は必ず作成する
排出事業者責任を遵守するために、委託契約書は必ず作成しましょう。委託契約とは、排出事業者と収集運搬業者・処分業者で締結する契約です。委託契約書に記載すべき項目は、主に以下のとおりです。
- 廃棄物の種類と数量、性状
- 運搬される最終目的地の所在地
- 処理場の所在地と処理方法、その施設の処理能力
- 契約の有効期間や支払う料金
- 委託先の事業の範囲
政令で定められた契約を締結せずに、廃棄物の収集運搬・処理を外部に委託した場合、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
処理費用が適正であるかを確認する
コスト削減のために、収集運搬や処理に関わる費用はなるべく抑えたいものですが、極端に安すぎる事業者に依頼するのは注意が必要です。こうした事業者は、不適切な廃棄物処理が行っている可能性があります。
先述したように、排出事業者には廃棄物の収集運搬・処理を委託した場合、最終処分まで適切に実行されているか注意する義務があります。正しい処理を行うには安全性や環境への配慮が欠かせないので、それなりに費用がかかることもあるでしょう。処理費用が適正である事業者に依頼するのが無難です。
自治体の許可を受けている事業者を選ぶ
廃棄物の収集運搬・処理は、誰もが行えるわけではありません。一般廃棄物の場合は、収集運搬・処理業を行う地域を管轄する地域の市町村長に、産業廃棄物の場合は都道府県知事の許可を得る必要があります。
廃棄物の収集運搬・処理を外部に委託する際は、その業者が自治体の許可を受けているかを必ず確認しましょう。許可なく事業を行っている業者に委託した場合、その業者が罰せられるのはもちろん、委託した排出事業者も5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます。
また、事業者によって扱える廃棄物の種類が異なる点にも注意してください。自社が排出する廃棄物を、委託する業者が処理できるのかも併せてチェックしましょう。
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2024-01-19)
「優良産廃処理業者」の認定を受けている業者を選ぶ
通常の許可基準よりも厳しい基準を満たした優良な産業廃棄物処理業者は、都道府県・政令市から「優良産廃処理業者」の認定を受けています。優良産廃処理業者の認定を受けるためには、以下の基準を満たしている必要があります。
- 法を遵守しているか
- 事業活動に透明性はあるか
- 環境に配慮した取り組みを実行しているか
- 電子マニフェストを導入しているか
- 財務体質に問題はないか
優良認定処理業者に依頼すれば、処理責任の伴う排出事業者にとってリスク回避になります。優良認定処理業者か否かは、「優良さんぱいナビ」から廃棄物の種類や地域、処理方法などで絞って検索できるので、確認してみてください。
排出事業者責任に関するよくある質問
排出事業者責任に関してよくある質問は、以下の4つです。
- 産業廃棄物の排出事業者は誰になる?
- 排出事業者はマニフェストの交付を代行してもらえる?
- 工事現場で出た廃棄物は誰の責任になる?
- 排出事業者責任に違反した事例はある?
それぞれの質問の回答をご紹介します。
産業廃棄物の排出事業者は誰になる?
廃棄物処理法に基づくと、事業活動に伴い廃棄物を排出する事業者は、産業廃棄物排出事業者となります。
ただし、中には判断が難しいときもあります。例えば、小売店で売れ残った商品を破棄する際や、使用済みの製品をユーザーから下取りするケースなどです。このような場合は専門的な判断が必要となるので、各自治体に確認するか弁護士などに相談してください。
排出事業者はマニフェストの交付を代行してもらえる?
特定の条件下では、排出事業者はマニフェストの交付を代行してもらえます。この代行は、集荷場所を提供する事業者が、排出事業者から依頼を受け自らの名義でマニフェストを交付する場合に限られます。
例えば、ビルの管理会社が賃借人(テナント)の産業廃棄物の集積場所を提供するケースなどです。
交付を代行してもらう際は、産業廃棄物が適切に処理されることが前提で、代行に関する契約や覚書を明確にしておく必要があります。
なお、マニフェストの交付自体は代行してもらえますが、確認や保存などの事務作業は、引き続き排出事業者が行わなければなりません。
工事現場で出た廃棄物は誰の責任になる?
建設工事では、発注者・元請業者・下請業者・孫請業者など複数の業者や個人が関連するため、関係性が複雑になります。この状況下では、廃棄物の処理責任が曖昧になる可能性があるでしょう。
そのため、工事現場や建設現場で発生した廃棄物は、原則元請業者が排出事業者となると定められています。つまり、実際に工事を担当するのが下請業者であっても、発注者から依頼を受けた元請業者に処理責任が発生します。
排出事業者責任に違反した事例はある?
排出事業者責任に違反し、不法投棄が行われた事例をご紹介します。
とある解体会社は、平均単価より安価で解体を請け負い、解体工事で生じた建築廃材などの廃棄物を自らの敷地内で保管し、県から指導を受けていました。最終的には完全撤去を命じる措置命令が出され、代表者は不法投棄で逮捕され有罪判決が下されています。
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