
産業廃棄物とは、事業活動に伴い発生する廃棄物のうち、廃棄物の処理及び清掃に関する法律で定められた20種類の廃棄物を指します。そこに含まれる金属くずは、リサイクル率が高く資源として再利用できる点が特徴です。
本記事では、産業廃棄物の金属くずの種類や発生場面などの概要を解説します。処分方法なども併せて解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
産業廃棄物の金属くずとは?
廃棄物の処理及び清掃に関する法律上、産業廃棄物は20種類に分類されており、金属くずはそのうちの一つです。もちろん他の産業廃棄物と同様に、事業活動に伴い発生したものはマニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行が義務付けられています。
詳しくは後述しますが、鉄くずや古鉄・スクラップ、トタンくずなどが挙げられます。鉄・非鉄問わず「金属」と名称が付くものは、その多くが金属くずに該当し、金属を主成分とする複合素材は、金属くずとして扱います。
産業廃棄物のうち、紙くずや木くず、動植物性残渣、動物系固形不要物などは排出される業種が限定されていますが、金属くずは排出する業種は指定されておらず、工場や小売店、病院、建物解体現場など、多くの事業場から排出されます。
法律上、産業廃棄物に分類される金属くずですが、リサイクルや再利用により新たな資源として活用できるため、「有価物」にもなり得ます。
次章では、有価物の概要や金属くずとの関係を詳しく見ていきましょう。

有価物として売却可能?
有価物とは、所有者にとって不要なものでも、活用次第で「価値が有るもの」のことを指します。金属くずは、加工やリサイクルによって新たな製品の原料や材料になることができれば、有価物としても売却可能です。
有価物と産業廃棄物の違いは、有償で売却できるかです。有価物は有償で買い取ってもらうことが可能ですが、産業廃棄物の処理には一般的に費用がかかります。また、有価物は産業廃棄物に分類されないため、委託を受けて産業廃棄物の運搬・収集を行う際に必要となる廃棄物収集運搬業許可が不要な点も違いの一つです。
一口に金属くずの有価物といっても、大きく「鉄スクラップ」「アルミニウムスクラップ」「金スクラップ」に分けられます。
鉄スクラップは、鉄鉱石と同様、製鉄の貴重な原料となります。鉄鉱石から製鉄する際と比較して不純物が多く含まれますが、十分に活用可能です。
アルミニウムスクラップは、アルミ地金の原料として利用されています。ボーキサイトから精錬するよりもエネルギー効率がいいため、環境保護の面でも注目されています。
金スクラップは、金・銀・プラチナ・パラジウムなどの貴金属が含まれる有価物です。パソコンやスマートフォンなどの電子機器や医療用合金の素材に欠かせない貴金属であり、需要が高く高値で取引されています。
金属くずは産業廃棄物として処理しなければなりませんが、場合によっては新たな資源になり、循環型社会の実現に役立ちます。買い取ってもらうことで収入源となり得るので、今一度活用できないか確認してみるのがおすすめです。
金属くずの種類
先述したように、金属くずにはアルミニウムや金などが含まれますが、その大半は鉄くずです。鉄くずには、2つの分類方法があります。
1つ目の分類方法が、発生源で分けるものです。この場合、鉄鋼生産時に発生するものを「自家発生スクラップ」、一般に市中に出回っているものを「市中スクラップ」と呼びます。
市中スクラップは、機械や車両、造船などの製造・加工過程で発生したものを「工場発生スクラップ」、廃車や廃船、建造物の解体などで発生するものを「老廃スクラップ」と、さらに細かく分類することが可能です。
2つ目の分類方法が、鉄の種類で分類する方法です。
「銑(せん)くず」に分類されるのは、上銑くずや並銑くず、可鍛鋳(ちゅうたん)、鉄銑くずなど。
「鋼(はがね)くず」に分類されるのは、炭素鋼くずや低銅炭素くず、低りん・低硫・低銅炭素鋼くず、合金鋼くず、雑用鋼くずなどです。
金属くずの具体例
金属くずの具体例には、以下が挙げられます。
- 鉄くず
- 非鉄金属くず
- ドラム缶
- 建築系スクラップ
- 工具系スクラップ
- 自動車系スクラップ
- 機械系スクラップ
- ダライ粉
- ワイヤースクラップ
順番に解説していきます。
鉄くず
鉄くずは、鉄を主成分とするごみや不要となった鉄製品をスクラップにしたものです。橋げたなどの建築用鋼材や家電製品から回収した鉄などが挙げられます。
非鉄金属くず
非鉄金属くずは、その名の通り鉄以外の金属くずです。ステンレスやアルミニウム、銅などが挙げられます。鉄と比較して市場に流通している量が少なく、状態が良好なものは高値で取引される点が特徴です。
ドラム缶
ドラム缶は、主に液体や粉末、固形物などの内容物を保管・運搬する道具です。内容物を取り除き洗浄した上で、リサイクルや再利用のプロセスへと移行します。
建築系スクラップ
建築系スクラップは、建設現場や解体工事で発生する金属くずの一種です。主に未使用の金属や新品の金属のかけらなどが該当します。
工具スクラップ
工具スクラップとは、スパナやモンキーなど手動工具のスクラップを指します。リユースされるのが一般的ですが、難しい場合は資源リサイクルの対象となります。
自動車系スクラップ
自動車系スクラップとは、廃車や解体された状態の自動車をスクラップとして扱う場合に使われる名称です。自動車には多くの金属が用いられており、解体やシュレッダー処理を施された後、リサイクルに回されます。
機械系スクラップ
機械スクラップとは、さまざまな機械や設備、家電が廃棄される際に発生する金属くずの総称です。プラスチック成型機・印刷機・電動工具・プレス機などの大型の機械から、業務用クーラーなどの非鉄金属を多く含む小型のものまであります。
ダライ粉
ダライ粉(切粉)とは、金属の加工や切削、研磨により発生する細かい粉状の金属片です。再び原材料として使用され、リサイクルされます。
ワイヤースクラップ
ワイヤースクラップとは、金属を針金状に束ねて強度を高めたものです。強度の必要な吊り橋などに用いられていますが、元の状態では活用するのが難しく、長さがある場合は切断を必要とします。
金属くずの発生場面
金属くずは、以下の場面のようにさまざまな事業活動に伴い発生します。
- 工場
- 小売店
- 病院
- 建築解体現場
各場面で発生する金属くずの概要を見ていきましょう。
工場
何を生産する工場かによって違いはありますが、工場は金属くずが発生しやすい場所です。特に、金属を加工する工場では、研磨くずや切削くず、鉄くず、アルミニウムくずなどが排出されるでしょう。
また工場では、廃液や油などを保管する容器系スクラップであるドラム缶スクラップが発生するケースもあります。ドラム缶は内部に液体が残っていないこと、内部が見える状態であることに留意して廃棄しなければなりません。
小売店
小売店では内装工事や移転工事に伴い発生する不要となったネジやナット、ボルトなどに加えて、リフォームや改装で鉄板の建材などが金属くずとして排出されます。
病院
病院では、メスや鉗子などの手術道具、治療に使う機器、ベッド、キャビネット、ロッカーなど、さまざまな場面や場所で金属が使われています。このうち手術道具や治療に使ったものは感染性廃棄物に分類され、特殊な方法で処分する必要がありますが、非感染性のものは金属くずとして排出されます。
建物解体現場
建物解体現場は、工場と並んで金属くずが排出されやすい場面の一つです。
柱に使われる鉄骨や窓やドア枠に用いられるアルミニウム、ステンレス機材など多種多様な金属くずが排出されます。電気配線には銅が使われており、非鉄金属の中では比較的高値で買い取りされます。
金属くずの処分方法
金属くずの処分方法は、大きく分けてリサイクルと埋め立て処理の2つです。それぞれの処分方法を解説します。
リサイクル
金属くずは、産業廃棄物の中でも再度資源として利用できる点が特徴です。
しかし、そのままでは不純物が多いため、それらを取り除くための処理が必要となります。リサイクルに伴い必要となる処理は、金属回収と金属精錬の2つに分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
【金属回収】
金属回収は、金属くずからリサイクル可能な鉄・金・銀などの金属を取り出す手法です。
例えば、パソコンに搭載されているプリント基板から、金・銀・パラジウムなどを回収することが可能です。また金を回収する際は、濃塩酸と濃硝酸を3:1で混合した王水に溶かして取り出すという処理が施されるケースもあります。
【金属精錬】
金属精錬は、不純物の混じった金属から不純物だけを取り出し、純度の高い金属を取り出す手法です。
液体を用いる温式精錬と、高温で溶かす乾式精錬、電気分解を利用する電解精錬にさらに細かく分類できます。
埋め立て処理
リサイクル処理が困難な金属くずの一部は、安定型産業廃棄物に分類され、安定型最終処分場にて埋め立て処理が施されます。
安定型産業廃棄物とは、有害物質や有機性物質が混入・付着しておらず、雨水による化学的・物理的変化により有害事象が生じる恐れの少ない、廃プラスチックやゴムくず、がれき類、ガラス・陶磁器などの産業廃棄物のことです。
金属くずの場合、自動車等破砕物や廃プリント配線板、廃容器包装、鉛蓄電池の電極などが該当します。
金属くずの処理にマニフェストは必要か
有価物として処分されるなど、特殊な取り扱いも多い金属くずですが、その処理にマニフェストは必要なのかと疑問に感じた方も多いのではないでしょうか。
金属くずを処理する際、収集運搬業者や処分業者に委託する際は、マニフェストを発行しなければなりません。マニフェストの概要を見ていきましょう。
産業廃棄物管理票とも呼ばれるマニフェストは、産業廃棄物を処理する際に用いられる管理用の伝票です。排出事業者のみならず、委託された収集運搬業者・処分業者が産業廃棄物の流れを把握し、正しく処理するために必要となります。
排出事業者は、産業廃棄物を収集運搬業者・処分業者に引き渡すと同時に、マニフェストを発行する義務があります。マニフェストに記載するべき項目は決まっているので、金属くずを処分する際は以下を参考にしてください。
- 交付年月日
- 担当者指名
- 排出事業者名
- 排出事業場名
- 産業廃棄物の種類と数量
- 収集運搬業者名
- 処分業者名
マニフェストは、紙マニフェストと電子マニフェストの2種類あります。

有価物として処理する場合
金属くずを有価物として処理する場合、基本的にマニフェストの発行義務はありません。しかしそれは、有価物が取引により金銭的利益を生み出す場合に限る点には注意が必要です。
一部の有価物では、取引で得られる代金よりも運搬費の方が高くなる、いわゆる「逆有償」となるケースがあります。こうしたケースでは、排出事業場から処分場まで運搬されている間は産業廃棄物として取り扱い、処分場に引き渡した時点で有価物となります。
これらは「到着時有価物」と呼ばれており、たとえ有価物でも廃棄物処理法が適応され、マニフェストを発行しなければなりません。
ただし全ての伝票を発行する必要はなく、C票以降は不要です。
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