鉄鋼スラグとは？種類や主な用途についても解説

鉄鋼を製造する過程で、鉄鉱石やコークス、石灰石などからなる「鉄鋼スラグ」と呼ばれる副産物が発生します。副産物ではあるものの、リサイクル性がありセメントやコンクリート製造の材料にされています。

鉄鋼スラグには、さまざまな種類があることを知っているでしょうか。種類ごとに用途や特徴が異なるので、これらを把握しておくことは重要です。

そこで本記事では、鉄鋼スラグの概要や種類、主な用途を解説します。鉄鋼スラグへの理解を深めたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

鉄鋼スラグとは？

鉄鋼スラグの詳細を見ていく前に、まずはスラグについて解説します。

そもそもスラグとは、鉄や非鉄金属の製造過程で不純物が分離して生成される副産物の総称です。鉱さいとも呼ばれ、大きく金属製造工程起源スラグと、廃棄物加熱溶融起源スラグの2つに分けられます。金属製造工程起源スラグは、さらに細かく鉄鋼スラグと非鉄金属スラグに分類されます。

鉄鋼スラグは、鉄鋼を製造する際に副産物として生成される化合物の総称です。鉄鉱石を還元・精錬し鉄鋼を生成する過程で、鉄以外の物質が石灰と溶融・結合して作られます。

鉄を得る過程で発生する副産物ではあるものの、エネルギー源にも活用できるため、地球温暖化防止や省エネルギーの観点から、地球環境に優しい資源として注目を集めています。

鉄鋼スラグの種類 

鉄鋼スラグには、高炉スラグと製鋼スラグの2種類があります。それぞれ詳しく見ていきましょう。

高炉スラグ

高炉スラグとは、鉄鉱石を溶融・還元する際に発生するスラグです。鉄鉱石のシリカやコークスの灰石が、石灰石と結合しています。

高炉スラグは冷却方法の違いにより、さらに細かく水砕スラグと徐冷スラグに分けられます。それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。

水砕スラグ

水砕スラグとは、高炉スラグに対して加圧水を噴射するなどして、急冷したものです。急激に冷却することで、ガラス質の細かい粒状の形状となり、独自の性質を持つようになります。

水砕スラグには、以下に挙げる特徴があります。

• 軽量：多孔質のため空気含有量が多く、砂よりも軽い
• 強いせん断抵抗：角張った形状をしているため、外部からのせん断力に強い抵抗を示す
• 均一な品質：人工的に生成される砂なので、均一な品質
• 潜在水硬性：セメントと似た組成を持つため、潜在水硬性（水分と接触すると徐々に硬化する）がある

水砕スラグは、セメント材やコンクリート用細骨材などに再利用されます。特に水砕スラグから製造されたセメントは、従来の石灰石資源の消費を大幅に減少させる他、セメント製造に伴う二酸化炭素排出量も削減するとして、注目を集めています。

徐冷スラグ

徐冷スラグとは、高炉スラグを自然放冷する、または適度に水をまくことで冷却して得られるものです。急速に冷却する水砕スラグと異なり、ゆっくり冷やすため結晶質の岩石状のスラグになります。

粒度を適切に加工して、道路舗装やコンクリート製造に用いられるのが一般的です。

製鋼スラグ

製鋼スラグとは、高炉で生成された鋳鉄を鉄鋼に精錬するプロセスで生まれる副産物です。どこで生成されるかによって、転炉系スラグと電気炉系スラグの2つに分類されます。それぞれの概要を詳しく見ていきましょう。

転炉系スラグ

転炉系スラグとは、転炉を使用した製鉄工程で生成される副産物です。

高炉では鋳鉄に酸素を吹き込んで、不純物を取り除き加工性や靭性の高い鉄鋼を作成します。このときに、酸化物と石灰などが溶融した転炉系スラグが生成されます。

主成分は酸化カルシウムやシリカ、鉄分ですが、酸化カルシウムの配合割合が高い点が特徴です。そのため、水分と反応して高いアルカリ性を示します。

電気炉系スラグ

電気炉系スラグとは、電気炉を使用した製鋼の製造で発生する副産物です。このうち酸化精錬時に発生するものを酸化スラグ、還元精錬時に発生するものは還元スラグと呼ばれます。

酸化スラグは、溶鋼中に酸素を吹き込む不要物を酸化除去する際に生成されるものです。主に酸化鉄や酸化マンガン、二酸化ケイ素、酸化カルシウムを含みます。酸化物が結合して化学的に安定した黒い塊状の物質で、重量があり硬度が高い点が特徴です。

還元スラグは、溶鋼中に残った酸素と硫黄を除去して得られるものです。硫黄を取り除くため酸化カルシウムの含有量が高くなっています。酸化鉄や酸化マンガンの含有量が少ないため、白っぽい見た目をしています。

鉄鋼スラグの主な用途

鉄鋼スラグの用途を種類別に見ていきましょう。

水砕スラグは、潜在水硬性を持つのが特徴であり、高炉セメントの製造に活用されます。高炉セメントは、長期間にわたり強度が保たれる、水との反応時の発熱温度が小さいなどの化学的特性があり、港湾などの大規模な土木建設工事などでも用いられています。

徐冷スラグも同様に水硬性があり、コンクリートや路盤材などが主な用途です。

転炉系スラグと電気炉スラグはいずれも、強度が高く耐久性にも優れているので、舗装材や土木工事などに用いられています。また水と反応するとアルカリ性を示すので、酸性化した土壌の性質を改善する効果もあります。

スラグの捨て方

スラグは産業廃棄物上では「鉱さい」に分類されます。鉱さいの処理業許可を持った事業者に委託をし、適切な処分が行われるよう努めなければなりません。

スラグは、砕いて再利用できるものは道路の路盤材などにリサイクルされます。
リサイクルすることができないものは、有害物質を含まないものは管理型最終処分場、有害物質を含むものは遮断型最終処分場で処分されます。