トレーサビリティシステムとは？種類や取り入れるメリット、課題などを解説！

製造業や物流業、食品加工業などでは業務効率や生産性を高めることが重要ですが、そのプロセスを適切に管理することも、同じくらい重要です。

そこで注目されているのが、製造履歴や作業履歴を正確に記録できるトレーサビリティ（Traceability：追跡可能性）という考え方です。

本記事では、トレーサビリティシステムの概要や種類、使われる媒体などを詳しく解説します。
記事後半では、トレーサビリティシステムを取り入れるメリットや課題も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

トレーサビリティシステムとは？

トレーサビリティシステムとは、製品や情報がサプライチェーンを通じてどのように流通したかを追跡し、その履歴を管理するためのシステムです。日本語では、生産流通情報把握システムなどとも呼ばれます。

具体的には「いつ、どこで、誰によって作られたか」という、製品の起源や加工過程などを明確にできます。

製造業や食品業界、システム開発など、様々な現場で使用され、品質管理やリスク管理の強化には欠かせません。トレーサビリティシステムにより、各プロセスで発生した不具合やトラブルをいち早く特定し、適切な対策を講じることが可能です。

トレーサビリティシステムの種類

トレーサビリティシステムには、主に以下の表に挙げる種類があります。

種類	特徴
チェーントレーサビリティ	サプライチェーン全体にわたる製品を追跡する
内部トレーサビリティ	主に企業内の製造過程や詳細情報を記録する

それぞれの種類を詳しく見ていきましょう。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティは、製品の原材料調達から生産、加工、流通、販売まで、サプライチェーン全体の追跡が可能です。

チェーントレーサビリティを取り入れれば、生産者は自社の製品管理を徹底できるため、万が一トラブルや問題が発生しても、迅速に原因を究明できます。

また消費者はこのシステムにより、購入した製品の詳細を把握することができます。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、工場や倉庫など、各企業や拠点ごとに行うトレーサビリティです。
製品がどのようなプロセスで製造され、どの部品が使用されたのか、さらには製造日時や担当者などの詳細な情報を記録します。

内部トレーサビリティの強化は、製造プロセス全体を透明化させることにつながります。また、トラブル時の原因究明や品質管理も可能となるため、リスク管理や生産性向上の観点でも有用です。

トレーサビリティシステムで使われる媒体

トレーサビリティシステムで使われる媒体には、QRコードやGPS、ブロックチェーンなど多岐にわたります。それぞれの概要や特徴は、以下の表を参考にしてください。

種類	二次元バーコード・QRコード	GPS	RFID	ブロックチェーン	センサーネットワーク
特徴	スキャンで情報を読み取れる	位置情報をリアルタイムで確認できる	無線でタグに埋め込まれたデータを読み込む	分散型台帳とも呼ばれ、改ざんが事実上不可能	多数のセンサーをネットワークでつなぐ
主な用途	小売業、物流、製造業	農業、物流	医療、物流、製造業	製造業、金融	農業、医療、物流
メリット	コストがかからず導入しやすい	リアルタイム追跡が可能	非接触でデータを取得できる	セキュリティ性と透明性が高い	データの精度が高い
注意点	二次元バーコードの場合、読み込める情報量が限られている	インターネット通信ができる環境が必要	コストがかかる	専門的な知識が必要となる	物理的にセンサーを設置する必要がある

トレーサビリティシステムを取り入れるメリット

トレーサビリティシステムを取り入れるメリットは、以下の通りです。

• 品質管理の精度がアップする
• 目視では分からない問題を検出できる
• 企業の信頼性が上がる
• 監査や法的要件を守れる

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

品質管理の精度がアップする

トレーサビリティシステムの導入により、製品の製造から流通、破棄に至るまでの一連の流れを把握できるため品質管理の精度を高められます。

万が一品質の問題やトラブルが発生した場合、迅速に原因を特定し、適切な対策を講じることができます。また、影響が多方面に及んでしまい製品を自主回収するとなった場合でも、ロット番号やシリアルナンバーを付与していれば、不要な製品回収を防ぎ、対象となる商品のみを効率的に回収できます。

目視では分からない問題を検出できる

トレーサビリティシステムは、目視では分からない問題を検出できる点もメリットです。

例えばシステムによっては、機械が稼働していない時間も把握でき、故障やトラブルなどの潜在的なリスクを事前に見つけ出せます。

企業の信頼性が上がる

企業の信頼性が上がることも、トレーサビリティシステムを取り入れるメリットの一つに挙げられます。これは、サプライチェーン全体の透明性を確保し、品質を保証できるためです。

例えば農作物の場合、取引先や消費者はトレーサビリティシステムを通して農家の情報や生産地、生産日、流通経路、保存状態などをリアルタイムで確認できます。

トレーサビリティシステムを取り入れることで、農作物に限らず自社製品が安全で信頼できるものだとアピールできるでしょう。

監査や法的要件を守れる

トレーサビリティシステムの導入は、監査や法的要件を遵守することにもつながります。

牛や米・米加工品を扱う場合、以下の法律に基づき生産者や取引メーカー、小売店、流通経路を登録する必要があります。

• 牛トレーサビリティ法（牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法）
• 米トレーサビリティ法（米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律）

トレーサビリティシステムを導入していれば、こうした法規制にも対応でき、リスクマネジメントにつながります。

トレーサビリティシステムの課題

トレーサビリティシステムには、先述したメリットだけでなく課題もあります。活用するに当たっては、課題も把握しておくことが重要なので詳しく見ていきましょう。

• コストがかかる
• 企業同士の連携が重要となる
• 現場の理解を得る必要がある

まず挙げられるのが、コストの問題です。紙媒体や二次元バーコード・QRコードなど低コストで導入できるものもありますが、本格的なシステムを構築しようとなると、それなりに費用がかかります。

また、トレーサビリティシステムの構築には企業同士の連携が必要不可欠です。サプライチェーン全体での情報共有が重要で、安定運用できるようになるまでのハードルは高いといえます。

さらに、現場の理解を得た上で推進していくことも求められます。内部トレーサビリティは自社内で完結するため、トップダウン式に方針が決められることが一般的です。現場のことを知らずに導入を進めても、コストや労力に見合う効果が得られない可能性があります。そのため、現場の状況に即したシステムを構築していくことが重要です。

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