
排出事業者から出される産業廃棄物は、収集運搬業者により中間処分場もしくは最終処分場に運ばれます。
一般的に、排出事業場から処分場へ直接運ばれるケースが多いですが、廃棄物の量や輸送距離によっては、途中で荷物を降ろして一時的に保管し、その後別の車両に積替えるケースがあります。
産業廃棄物の「積替え保管」と呼ばれるこの取り組みは、一見すると余計にコストや労力がかかりそうですが、いくつかのメリットがあります。
本記事では、産業廃棄物における積替え保管の概要やメリット・デメリットなどを解説しています。
目次
積替え保管とは?
排出事業者によって排出される産業廃棄物は、収集運搬業者に引き渡され、最終的に処分業者へと運ばれます。
この一連の流れにおいて、排出事業者から処分業者まで直行するのではなく、収集運搬中に産業廃棄物を車から下ろし、一時的に他の車に移し替えたり保管したりするケースがあります。
このプロセスが、本記事で紹介する「産業廃棄物における積替え保管」です。

積替え保管の2つのメリット
一見すると非効率に思える積替え保管ですが、実は「運搬効率が上がる」「コストを抑えられる」などのメリットがあります。
積替え保管は、エネルギー消費の削減に寄与する点が特徴です。
複数の排出事業者から集めた廃棄物を、一箇所で一時的に保管してから処分場へ運ぶことにより、複数回に分けて少量ずつ運ぶケースに比べて、トータルの燃料消費量を減らすことができます。
また、積替え保管を利用することで運搬車両を効果的に使用できるため、車両の稼働率を高めることも可能です。
積替え保管がどのように運搬業務の効率化とコスト削減に寄与するかを詳しく見ていきましょう。
運搬効率が上がる
複数の排出事業者から出される廃棄物を、一箇所の積替え保管施設に集め、そこから処分場へと運ぶというプロセスを考えてみましょう。
例えば、3者の排出事業者から出た産業廃棄物を直行で運ぶ場合は、それぞれの事業者と処分場の間を3往復することになります。
一方で積替え保管では、まず積替え保管施設に運び一時的に保管します。一定量を超えてから全てを一括で処分場に運ぶことにより、運搬効率を上げることができます。
運搬効率が上がれば、排気ガスの排出量を削減できるため環境にも優しい企業運営ができるなど、副次的な効果も生まれます。
費用を抑えられる
積替え保管のメリットの一つに、費用を抑えられる点も挙げられます。
ここでいう費用とは、燃料費や輸送費、人件費など産業廃棄物の収集・運搬に関わるあらゆるものが含まれています。
積替え保管を活用することで、運搬回数を減らすことができ、人件費や燃料費の削減に繋がります。
積替え保管をするデメリットや注意点
積替え保管には先述したような運搬効率が上がる、費用を抑えられるなどのメリットがありますが、デメリットや注意点もあります。代表的なデメリットは以下のとおりです。
● 収集運搬業の許可を確認する必要がある
● マニフェストの種類や取り扱いに注意する
● 委託契約を締結する必要がある
こうしたデメリットや注意点を押さえた上で適切に管理しないと、予期せぬ問題が生じる可能性があります。
例えば、法令を遵守していないことで罰則や社会的信用の失墜のリスクが高まったり、産業廃棄物を正しい手順で効果的に処分できないことで健康や周辺環境へ悪影響が及んだりする可能性などが考えられるでしょう。
こうした事象を引き起こさないためには、デメリットや注意点を正確に把握しておく必要があります。次章以降でそれぞれ詳しく見ていきましょう。
収集運搬業の許可を確認する必要がある
廃棄物を放置すると健康上のリスクが高まったり、生活環境に悪影響を与えたりする可能性が高まります。そのため、積替え保管は全ての収集運搬業者が実施できるわけではありません。
積替え保管を行うには、収集運搬を行う地区を管轄する都道府県もしくは政令市から許可を得る必要があります。この許可は、事業計画書や現地調査、施設調査など厳しいチェックをクリアしなければならない点が特徴です。
例えば東京都の場合、「事前計画書作成の手引(収集運搬業 積替え保管施設用)」に基づき作成します。事業計画書の他にも、施設の案内図や作業手順書、生活環境の安全上の措置等をまとめた添付書類も必要です。加えて、現地審査や内容審査なども行われます。
こうした手続きが大変だからといって、事前計画書で虚偽の申請や届出を行った場合には、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(通称:廃棄物処理法)第十四条の三の二第一項第六号の規定により、許可が取り消され、その後5年間にわたり再申請できない可能性があります。
その他、同法律第二十九条第一項の規定により6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられ、更新許可申請が不許可処分になるリスクもあります。そうした事態を避けるために、都道府県もしくは政令市の規定に基づき不正がないように申請しましょう。
また、上記では新規許可申請について述べましたが、更新や変更の際にも手続きが必要となるため、適切に許可を取得できているか定期的に確認してください。
参考:東京都環境局「産業廃棄物収集運搬業及び処分業の許可申請・届出等」(入手日付 2024-01-07)
参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 (入手日付 2024-01-07)
マニフェストの種類や取り扱いに注意する
マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、産業廃棄物が排出事業者から収集運搬業者を経由して処分業者に運ばれるまでの一連の流れにおいて、正しく管理・処分されているかを確認するための書類です。
排出事業者は、産業廃棄物の名称や種類、数量、収集運搬や処分を委託した業者などの詳細を記したマニフェストの交付が義務付けられています。
上記で紹介したマニフェストは、積替え保管を利用する場合、種類や取り扱いが異なる点には注意しましょう。
直行で処分場まで持っていく場合は、マニフェストが7枚必要ですが、積替え保管を利用する場合は8枚必要です。
各マニフェストの種類の詳細や発行の流れは、以下の表のとおりです。
マニフェストの種類 | 発行・流れ |
---|---|
A票 | 交付後の排出事業者の控え |
B2票 | 第1区間の運搬終了後、その区間の収集運搬業者から排出事業者に返送 |
B4票 | 第2区間の運搬終了後、その区間の収集運搬業者から排出事業者に返送 |
B6票 | 第3区間の運搬終了後、その区間の収集運搬業者から排出事業者に返送 |
C1票 | 処分完了後、処分業者の控え |
C2票 | 処分完了後、処分業者が収集運搬業者に返送 |
D票 | 処分完了後、処分業者が排出事業者に返送 |
E票 | 最終処分終了後、処分業者が排出事業者に返送 |
委託契約を締結する必要がある
排出事業者は、排出した産業廃棄物の収集運搬や処分を処理業者に依頼する場合、委託契約を締結する必要があります。
積替え保管を利用する場合は、一次収集運搬業者と処分業者に加えて、積替え保管・二次収集運搬業者とも契約しましょう。
積替え保管施設の構造に関する注意点
積替え保管施設には、都道府県により構造基準が定められています。例えば大阪府の場合、以下の項目に対して構造基準が設けられています。
● 掲示板
● 管理事務所
● 囲い
● 床構造・排水設備等
● 積替施設
● 保管施設
● 洗車設備
● 消火設備
● 雨水対策
● 粉じん対策
● 臭気悪臭対策
● 騒音振動対策
● 自社の産業廃棄物
囲いに関しては、「鋼板またはブロックで3メートル以上の高さで施設を覆い、みだりに関係者以外の人が施設に立ち入らないようにしなければならない」などと定められています。
細かい基準は都道府県や政令市でも異なるので、詳しくはそれぞれの自治体でご確認ください。
参考:大阪府「大阪府産業廃棄物事前協議取扱指針」(入手日付2024-01-07)
積替え保管の基準を解説
積替え保管には以下の基準が設けられています。
● あらかじめ積替えを行った後の運搬先が決まっていること
● 産業廃棄物の量が、適切に保管できる量を超えていないこと
● 産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに、搬出を行うこと
上記が基本的な基準で、その他にも細かい施設基準や保管基準、処理基準などが定められています。
具体的な項目は、以下のとおりです。
● 囲いが設けられ、見やすい箇所に積み替保管施設である旨を記した掲示板を設置すること
● ねずみやハエ、蚊、その他の害虫が発生しないようにすること
● 汚水が生じる恐れがある場合は、排水設備を設置すること
● 産業廃棄物を屋外で積み上げる場合は、省令で定める高さを超えないこと
● 最大保管量は一日の平均搬出量の7倍以内とすること
● 石綿(アスベスト)含有産業廃棄物または水銀含有産業廃棄物を保管する場合は、その他の産業廃棄物と混合しないように仕切りなどを設けること
※参考:船橋市「廃棄物の保管基準」(入手日付 2024-02-29)
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