
産業廃棄物の排出事業者の方が知っておきたい法律が「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」です。
廃棄物処理法には、廃棄物の処理に関する決まりや罰則が細かく規定されています。産業廃棄物の排出事業者はこの法律に従わなければなりません。
本記事では、廃棄物処理法の基礎や必要性、対象者や罰則について分かりやすく解説します。
法律で規定された処理基準や保管方法などもまとめました。産業廃棄物の処理に関わる企業の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
廃棄物処理法とは?

廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)とは、清掃法を全面改正および廃止する形で成立した法律です。廃棄物の適正な処理と再利用を推進するために、昭和45年に公布されました。
廃棄物処理法では、廃棄物の保管・運用・処分などに関するルールが定められています。廃棄物を排出・処理する際は、この法律を遵守しなければならず、違反すると罰則が科されることがあります。
理解を深めるために、概要と目的、産業廃棄物について詳しく見ていきましょう。
※参考:環境省.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」 ,(入手日付2024-07-24).

廃棄物処理法の概要
廃棄物処理法では、大まかに「法律が制定された目的」「一般廃棄物・産業廃棄物の定義」「収集運搬・処分の基準や条件」「責任の所在と罰則」などの項目が記載されています。
廃棄物処理法上、廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分類されます。産業廃棄物は事業活動に伴い排出される廃棄物であり、一般廃棄物はそれ以外のものです。産業廃棄物の詳しい定義や具体的な種類などを後ほど詳しく見ていきましょう。
この法律に基づき、国は基本方針の策定、処理基準や施設基準の設定、緊急時の対応などを行い、市町村は一般廃棄物処理計画を策定し、域内の廃棄物を生活環境保全上支障が生じないように処理基準に従って処理します。さらに市町村は一般廃棄物処理業者を許可・監督し、業者は一般廃棄物処理基準などを遵守しなければなりません。
同様に、都道府県は産業廃棄物処理業者や施設の許可・監督を行い、排出者には自らの廃棄物の適正処理義務(排出事業者責任)が課されます。産業廃棄物処理業者や施設も同様に許可を受け、処理基準を遵守する必要があります。
廃棄物処理法の目的
廃棄物処理法の目的は、廃棄物の適正な処理と再利用を通じて、公衆衛生の向上と生活環境の保全を図ることです。具体的には、廃棄物の収集、運搬、中間処理、最終処分に関する基準を明確にし、不法投棄や不適切な処理を防止します。これにより、地域社会の環境保全と住民の健康を守ることが可能です。
さらに、廃棄物処理法はリサイクルや再資源化を促進し、資源の有効利用を推進することも目指しています。有限な資源の過剰な消費や浪費を防ぎ、持続可能な社会の構築に貢献します。事業者には自らが発生させた廃棄物の適正処理を義務付け、管理責任を徹底させることで、企業の社会的責任を強調している点も特徴的です。
加えて、一般廃棄物に関しては地域住民の生活環境の向上を図るため、自治体に対して処理計画の策定と実行を求めています。
これらの目的を高い水準で達成するために、違反者には厳しい罰則が科されます。例えば、「処理業許可を得ずに収集運搬・処分を実施した者」への罰則は、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」です。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」,(入手日付 2024-07-27).
産業廃棄物とは?
廃棄物処理法における廃棄物とは、「汚物または不要物で、固形状または液状のもの(放射性物質や放射能に汚染されたものを除く)」と定義されています。
また廃棄物処理法では、産業廃棄物を以下に該当するものと定めています。
事業活動で排出した廃棄物のうち、燃えがら・汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ・廃プラスチック類などの廃棄物および輸入された廃棄物(航行廃棄物、携帯廃棄物を除く)
また産業廃棄物の中でも、爆発性・毒性・感染性があるもの、他に有害物と政令で定められたものは「特別管理産業廃棄物」に区分されます。
特別管理産業廃棄物の取り扱いは特に注意しなければなりません。
廃棄物処理法の背景・必要性

廃棄物処理法が策定された背景には、急速な経済発展と人口増加に伴う廃棄物の増加があります。高度経済成長期に日本は産業の急成長を遂げ、都市化が進行しました。その結果、家庭から出る一般廃棄物や事業活動に伴う産業廃棄物の量が急増し、適切な処理が追いつかない状況が引き起こされました。
こうした状況下では、廃棄物が適切に処理されず、野積みや不法投棄が行われることが多くなり、環境汚染が深刻な問題となりました。特に、河川や海洋への廃棄物の流入、悪臭や害虫の発生、健康被害のリスクが顕在化しています。
このような背景を受け、廃棄物処理法が制定されました。この法律により、廃棄物の処理責任が明確になったため、不法投棄や不適切処理を未然に防げるようになり、生活環境の保全および公衆衛生の維持にもつながっています。
廃棄物の処理責任は、排出した者にあります。これは、産業廃棄物の処理を業者に委託した場合でも同様です。不適正な処理を行う事業者への委託が明らかになった場合は、排出事業者も処分の対象となります。
廃棄物処理法の改正の歴史

廃棄物処理法は、施行以来、環境問題や社会情勢の変化に対応するため、その都度改正が行われています。1990年代以降は、公衆衛生の向上・生活環境の保全だけでなく、循環型社会を形成するため3R(リデュース・リユース・リサイクル)の推進も含めた環境政策にも力を入れている点が特徴的です。
また、温暖化対策や災害廃棄物対策に対する要請が高まった他、各種リサイクル法などが制定されたことも相まって、平成9年・12年、15〜18年、22年、27年に改正されています。
※出典:環境省「廃棄物政策の変遷及びこれまでの取組等について」
廃棄物処理法の対象者と責任

廃棄物処理法の対象者は「排出事業者」と、委託を受ける「運搬・処分業者」です。産業廃棄物の処理には、それぞれにどのような責任があるのか解説しましょう。
排出事業者が負う責任
排出事業者には産業廃棄物を処理する責任があります。処理責任を果たしていない場合、罰則を受ける可能性もあるため、排出事業者は責任を持って処理を行わなければなりません。
ただし、排出業者自らが産業廃棄物を収集運搬したり、中間処分や最終処分をするケースはあまり多くありません。
自社で処理するのが難しい場合、委託契約書を交わした上で専門の事業者に産業廃棄物の収集や運搬、処分を代行してもらえます。ただし、委託した産業廃棄物の処理状況は、排出事業者が交付するマニフェストで最後までしっかりと管理しなければなりません。委託契約とマニフェストの詳細について、それぞれ解説していきます。
【産廃委託契約】
排出事業者が産業廃棄物の運搬・処分を委託する場合、委託業者と書面で産業廃棄物処理委託契約を締結します。委託契約できるのは、正式に産業廃棄物処理業の許可を得ている業者との間だけです。
委託契約には「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」の2種類があります。どちらも必ず2者契約であることが必要で、排出事業者はそれぞれの収集運搬業者や処分業者と直接契約を結ぶ必要があります。
【マニフェスト制度】
マニフェスト制度とは、排出事業者が産業廃棄物の処理の流れを把握して、適切に処理されているかどうかを確認する管理伝票の交付を義務付けた制度のことです。
マニフェスト制度に基づき排出事業者は運搬業者・処分業者に必ずマニフェストを交付して、産業廃棄物が最終処分されるまでの間、一貫して管理しなければなりません。
もし期限を過ぎても委託業者からマニフェストが戻ってこなかったり、虚偽の記載があったりした場合は、運搬業者・処分業者へ指示や催促したり都道府県知事へ報告書を提出したりなど、適切な措置を取る必要があります。
またマニフェストは交付した排出事業者と、受け取った運搬業者・処分業者の双方で5年間保管しなければなりません。
【都道府県知事等への処理状況の報告】
マニフェストを運搬業者・処分業者に交付した排出事業者は、年1回、廃棄物処理法第12条に基づき、交付状況などを都道府県知事などへ報告する義務があります。報告書の提出先は委託業者がある自治体ではなく、排出事業者が所在する自治体の都道府県です。
処分業者が負う責任
産業廃棄物の運搬又は処理を行う収運処分業者も、都道府県知事などから産業廃棄物処理業の許可を得る必要があります。
運搬や処理についても法律が定める処理基準にのっとり、適切に行わなければなりません。処分業者が責任を全うしなかった際の罰則などは、記事の後半で詳しく解説します。
産業廃棄物の処理・保管の方法
廃棄物処理法は、産業廃棄物の処理・保管方法についても細かい規定が定められています。ここからは、処理と保管の基準を解説します。
処理基準
処理基準は大別して「収集運搬」と「処分」の2つに分けられます。それぞれの基準を見ていきましょう。
【収集運搬に関する基準】
廃棄物処理法では、産業廃棄物の収集・運搬に関する処理基準を定めています。法律で定められているのは以下の基準です。
- 産業廃棄物が飛散、流出しないようにする
- 悪臭・騒音・振動による支障が生じないよう必要な措置を取る
- 処分・再生のための施設には、必要な措置を取る
- 焼却する場合は決められた構造の焼却設備にて、決められた方法で焼却する
- 熱分解を行う場合は、決められた構造の熱分解設備にて決められた方法で行う
- 特定家庭用機器産業廃棄物の再生・処分を行う場合は、決められた方法で行う
- 石綿含有産業廃棄物の処分は溶融施設において石綿が検出されないように溶融するか、国が認定した無害化処理の方法で処理を行う
さらに特別管理産業廃棄物に関しては、以下に挙げるような主な決まりがあります。
特別管理産業廃棄物とは、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康または生活環境に係る被害を生ずる恐れがある性状を有する廃棄物のことです。
- 人の健康や生活環境に被害が生じないようにする
- 他の物と混合する恐れのないように、他の物と区分する
- 感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物が混合している場合で、感染性廃棄物以外の物が混入する恐れのない場合は区分しないで収集運搬できる
- 「特別管理産業廃棄物の種類」と「取り扱う際に注意すべき事項」を容器に記載、またはその旨が書かれた文書を携行する
- 感染性産業廃棄物・PCB廃棄物は、必ず運搬容器に収納して収集・運搬する
- 感染性産業廃棄物またはPCB廃棄物を収納する運搬容器は「密閉できる(PCBは漏れ防止措置が講じられている)」「収納しやすい」「損傷しにくい」が条件
【処分に関する基準】
処分に関する基準は以下のとおりです。
- 産業廃棄物が飛散、流出しないようにする
- 悪臭・騒音・振動による支障が生じないよう必要な措置を取る
- 処分・再生のための施設には、必要な措置を取る
- 焼却する場合は決められた構造の焼却設備にて、決められた方法で焼却する
- 熱分解を行う場合は、決められた構造の熱分解設備にて決められた方法で行う
- 特定家庭用機器産業廃棄物の再生・処分を行う場合は、決められた方法で行う
- 石綿含有産業廃棄物の処分は溶融施設において石綿が検出されないように溶融するか、国が認定した無害化処理の方法で処理を行う
保管基準
- 保管期間は自ら処理するまでか、収集運搬するまでのやむを得ない期間のみ
- 保管場所の周囲に囲いを設置する(荷重がかかる場合は、構造耐力上安全でなければならない)
- 見やすい場所に必要事項が記載された掲示板を設ける
- 保管に伴い生ずる汚水で、公共水域や地下水を汚染しないよう、排水溝を設けるなど必要な措置を取る
- 屋外で容器を使わずに保管する場合、積み上げられた産業廃棄物が決められた高さを超えないようにする
- ねずみや蚊、ハエなどの害虫が発生しないようにする
- 保管数量の上限は、1日の平均的な排出量の14日分とする
- 石綿含有産業廃棄物が混合しないように、仕切りなどを設ける
- 飛散の防止のため、覆いや梱包などの必要な措置を取る
廃棄物処理法の罰則について
廃棄物処理法に違反すると厳しい罰則が科せられます。ここでは、排出事業者に適用される罰則や処理事業者に適用される罰則、どちらにも適用される罰則について解説します。
違反行為
廃棄物処理法の規定に違反する行為には、主に以下が挙げられます。
- 無許可営業
- 処理委託基準違反
- 不法投棄
- マニフェストに関わる義務違反
- 無許可輸出・輸入
無許可営業
無許可営業は、都道府県知事からの許可を得ずに、産業廃棄物の収集運搬・処理などの事業を行うことです。
処理委託基準違反
排出事業者は、廃棄物の収集運搬・処理を委託する場合、許可を取得している者に委託する義務があります。それ以外の者に委託する行為は、処理委託基準違反に該当します。
不法投棄・焼却
不法投棄とは、廃棄物を適切に処理せず、山林や海岸、空き地などに捨てる行為です。不法焼却は、焼却設備ではなく野外などで焼却する行為を指します。
実際に不法投棄・焼却を行った場合だけでなく、未遂でも罰則の対象です。
マニフェストに関わる義務違反
マニフェスト(産業廃棄物管理票)とは、廃棄物が適切に処理されたかを確認するための書類です。排出事業者は委託と同時に交付する義務がありますが、交付しない・記載すべき事項を記載しない・虚偽の記載をするなどの行為を行うと、罰則が科されます。
無許可輸出・輸入
無許可輸出・輸入は、環境大臣の許可を得ずに廃棄物を他国へ輸出、他国から輸入する行為です。未遂でも罰則の対象となります。
【排出事業者】事例
排出事業者は、正式な資格や許可を取得していない事業者へ廃棄物の収集運搬・処分を委託した際、委託基準違反に問われる可能性があります。この場合、廃棄物処理法第二十五条の規定に基づき、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。無許可営業を行っている処理事業者と同等の重い罰則が科されるので、委託先が許可を持っているかは必ず確認しましょう。
また、マニフェストの交付義務違反・記載義務違反・虚偽記載などをした場合、同法律第二十七条により、1年以下の罰金または100万円以下の罰金が科されます。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 ,(入手日付 2024-07-27)
【処理業者】事例
産業廃棄物の収集運搬・処分を行う場合、都道府県から正式に許可を受ける必要があります。これに違反し無許可営業を行った場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。
処理業者の場合、処理施設に関する手続きに関して正式な手順を踏む必要がある点にも注意してください。無許可で廃棄物処理施設を設置する・不正な手段で廃棄物処理施設の設置許可や変更許可を受けるなどを行った場合の罰則は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方です。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 ,(入手日付 2024-07-27)
【排出事業者・処理業者】事例
排出事業者・処理業者のいずれも注意しなければならない違反行為には、不法投棄や不法焼却などが挙げられます。不法投棄・焼却に関しては、たとえ未遂でも5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されるので注意してください。
また、環境大臣の許可を得ずに廃棄物を輸出した者は、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科されます。未遂でも同様の罰則が科されるので、金属スクラップの中に廃家電が含まれていないかなど、チェックすることが重要です。
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 ,(入手日付 2024-07-27).
まとめ
廃棄物処理法は、公衆衛生の向上・生活環境の保全だけでなく、循環型社会を形成するために必要な法律です。産業廃棄物の処理に関わる事業者は法律を必ず遵守しましょう。マニフェストの記入漏れなどにも、十分な注意を払ってください。
「DXE Station」には、排出事業者に代わって収運業者が電子マニフェストを起票できる機能や、ワンストップでマニフェストの状況を確認できる管理機能も備わっています。導入すると起票を忘れたり、記入漏れが発生したりするミスもなくなるでしょう。
また「DXE Station」は、電子マニフェストをもとに産業廃棄物処理業界での排出・収集運搬・処分の各事業者をつなぎ、排出から処理までのプロセスで一貫したデジタル管理を可能にします。廃棄物処理法を遵守しながら、業務に効率化を進めたい企業の担当者の方は、ぜひDXE株式会社にご相談ください。

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