廃酸とは?廃アルカリとの違いや処理方法についても解説

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廃酸は液状の産業廃棄物で、処分の際は中和処理を施し、有害な成分を取り除いてから焼却します。廃アルカリとの違いはpHの値にあり、数値が7より小さければ廃酸です。

酸性の程度や成分によっては、廃棄のルールが厳しい特別管理産業廃棄物や特定有害産業廃棄物として扱われる場合があります。直接処分する立場ではなくても、排出事業者や収集運搬事業者には、廃酸の処理にかかる正しい知識を備えなくてはいけません。

今回は廃酸の定義や廃アルカリとの違い、処理方法について解説します。事業を通じて排出した塩酸や硫酸などの捨て方が気になる方はぜひご一読ください。

廃酸とは?

廃酸とは産業廃棄物のうち、pH(水素イオン濃度)の数値が7よりも小さい酸性の廃液を示す言葉です。廃硫酸や廃塩酸、有機廃酸など具体的な種類は存在するものの、酸性の廃液であれば全て廃酸と称されます。

著しい腐食性を示すpH2.0以下の廃酸は産業廃棄物よりも有害性や危険性が高いことから「特別管理産業管理物」として扱われます。また、特別管理産業廃棄物のうち、重金属やPCB、ダイオキシンなど特定の有害性が高い物質を含んだものは「特定有害産業廃棄物」に該当します。

これは、数ある産業廃棄物の中でも最も危険な分類です。

廃酸の排出量

環境省により発表された「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」によると、全国の産業廃棄物の総排出量約 3 億 7,400 万トンのうち、廃酸の排出量は2,971千トン、割合に換算すると全体の0.8%です。

廃棄物の量としては多いとはいえないもののリサイクル率の低さが問題視されています。同調査によると廃酸の再生利用率は29.1%で、汚泥(7.1%)、廃アルカリ(17.9%)に次ぐワースト3に位置づけられています。

ただし、廃酸は全体の7割ほどが中和処理などにより減量化されるため、最終処分の対象となるのは、残った全体の1%ほどです。
再生利用される廃酸のうち、大部分はアルカリとの中和剤として用いられ、一部はセメント資源や鉄・非鉄金属原料として用いられます。

廃酸の循環利用の割合
廃酸の循環利用の割合(「令和4年度 廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量 実態調査報告書」を元に作成)

参考:環境省環境再生・資源循環局「令和4年度 廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量 実態調査報告書 (廃棄物等循環利用量実態調査編) 」※分析対象データは令和2年度のもの
参考:環境省「産業廃棄物の排出・処理状況等(令和2年度実績)」


DXE株式会社資料DL

廃アルカリとは?

廃アルカリはpHの数値が7よりも高いアルカリ性を有する廃液です。具体例として写真現像液や廃ソーダ液、金属せっけん液などが挙げられます。産業廃棄物の種類別排出量によると、廃アルカリの排出量は廃酸よりも少ない水準となっています。

著しい腐食性を示すpH12.5以上の廃アルカリは特別管理産業廃棄物の一種です。強い腐食性を有し、人間の皮膚や粘膜、呼吸器に悪影響を及ぼす他、植物や水性生物の生育を阻害して生態系にまで悪影響を及ぼす可能性があります。

廃酸と廃アルカリの違い

廃酸と廃アルカリの違いは水素イオン濃度の数値にあり、pHが7を超えるかどうかで画一的に判断します。両方とも産業廃棄物の廃液で、廃硫酸や廃塩酸など同じ種類もあることから混同しないよう注意しましょう。

廃酸と廃アルカリは排出される場所にも違いがあります。廃酸は主に科学工業や電気機械業、鉄鋼業、タバコ製造業などの業種で製品の製造過程で排出されます。一方の廃アルカリは紙パルプや石鹸などの製造工場や清掃工場、コークス炉が主な排出場所です。

廃酸の例

廃酸の具体例は以下のとおりです。

  • 無機塩酸(硫酸、塩酸、フッ酸、硝酸、スルファミン酸、ホウ酸など)
  • 有機廃酸(酢酸、ギ酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸など)
  • アミノ酸発酵廃液
  • アルコール発酵廃液
  • 染色廃液
  • クロメート廃液
  • 炭酸飲料
  • ビール 等

液状の酸性廃液であれば、名称を問わず廃酸に該当します。

廃酸の処分方法

産業廃棄物の廃酸は自治体では回収できないため、産業廃棄物の収集運搬業者に回収を依頼する必要があります。その際、委託先は必ず「廃酸」の産業廃棄物(特別管理産業廃棄物)の収集運搬業許可を持った事業者でなければなりません。

排出事業者自身で処理施設に持ち込むことも可能ですが、運搬車両に「産業廃棄物収集運搬車両」である旨を表示すること、廃棄物情報を記載した書面を携帯すること、その他廃棄物収集運搬に関する各種基準を遵守する必要があります。

廃酸の処分方法は「焼却」「中和処理」「再資源化」の3つです。それぞれ処理の工程について詳しく解説します。

焼却

液体の廃酸はそのままの状態では最終処分場に埋めることができません。燃焼の効率を上げるため、霧状に噴射する形で焼却炉に投入して焼却します。

pHの値が2を下回る特別管理産業廃棄物の場合、十分な注意が必要です。他の廃棄物と混ざり合うことで爆発事故を引き起こしたり、酸性が強すぎて焼却炉を傷めたりする危険があります。

中和処理

中和処理とは酸性の廃酸を中性に近づけることで毒性や危険性を取り除くことです。一般的には廃アルカリと反応させる方法で実施します。処理の過程で有毒ガスが発生する危険があるため、安全性の基準を満たす特別な施設で行わなければいけません。

中和が完了したら焼却や排水処理を行い、発生した不純物は汚泥として処理します。

再資源化

廃酸は特別な処理を施すことでさまざまな用途に再利用可能です。例えば鉄鋼の製造時に排出された場合、結晶化した酸化鉄を分離し、取り出した硫酸を次の製造時に使用します。冷却処理を施せば、不純物を取り除くことが可能です。

金属成分を含んだ廃酸の場合、沈殿物から金属を回収する方法もあります。中和時の条件を変更し、沈殿する量が多くなるように調整すれば、資源の再利用を促進できます。

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