
ほとんどの企業で、顧客との取引や給与管理でパソコンを利用しているでしょう。消耗品であるパソコンは、寿命が訪れると使えなくなるので、処分しなければなりません。
事業用のパソコンを廃棄する際の具体的な処理方法や、注意すべき点を把握できているでしょうか。適切に処分をしなければ罰則が課されたり、企業の重要な情報が外部に漏れたりするリスクがあります。
本記事では、法人のパソコンを廃棄する際は産業廃棄物に分類されるか否かの論点を中心に、廃棄する場合の処分方法や廃棄にかかる費用、注意点を解説します。よくある質問とその回答もご紹介するので、法人所有のパソコンを処理する際に参考にしてください。
目次
法人のパソコン廃棄は産業廃棄物になる|金属くず扱い
法人のパソコンは「資源有効利用促進法(資源の有効な利用の促進に関する法律)」に基づき、メーカーに回収してもらいリサイクルします。ただ必ずしも製造メーカーに依頼しなければならないというわけではありません。
法人がリサイクルをせずにパソコンを廃棄する場合は、産業廃棄物に該当するため、廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)に沿って処分する必要があります。この場合、パソコンを処分する事業者は「排出事業者」となり、マニフェスト制度に則って最終処分まで把握することが義務となっています。
法人のパソコンを処分する際は、法令違反をすると罰則が課される他、企業の社会的信用を失う可能性があります。
そういったリスクを回避するためにも、詳しい処理方法を次章で詳しく見ていきましょう。
法人のパソコンを廃棄する場合の処分方法
法人のパソコンを廃棄する場合、大きく以下の3つの処分方法に分類できます。
● リサイクル業者に依頼する
● 産業廃棄物処理業者に依頼する
● パソコン製造メーカーに依頼する
各処分方法の概要やメリット、注意点などをご紹介します。
リサイクル業者に依頼する
一つ目は、パソコンをはじめとした家電製品のリサイクルを請け負っている業者に依頼する方法です。リサイクル業者はパソコンのリユースやリサイクルで収益を得ています。そのため、他の処分方法と比較して、パソコン廃棄にかかる処分費用を抑えられる傾向にあります。業者によっては、完全に壊れていたりデータが残っていたりしても、回収してもらえるケースがあります。回収費用が無料のところもあるので、費用をなるべく抑えたい方は検討してみましょう。
リサイクル業者に依頼する際は、環境省・経済産業省から認定を受けた「小型家電リサイクル法」の認定事業者であるかを確認しましょう。中には小型家電リサイクル法に則った、適性なルートで回収していない業者もいる点には注意しなければなりません。信頼のおける業者か否かは、実績や認定の有無、安全にデータを削除してもらえるかどうかなどで判断しましょう。
産業廃棄物処理業者に依頼する
大量のパソコン、もしくは複数のメーカーのパソコンを廃棄したい場合は、産業廃棄物の処理を専門で取り扱う業者に依頼するのがおすすめです。産業廃棄物マニフェストを発行して、他の産業廃棄物と同様に処理してもらいます。
産業廃棄物として処理する利点は、完全に処分されるためデータが残らず、第三者に機密情報が知れ渡るリスクが低い点です。また、他の産業廃棄物とまとめて処理できる分、手間暇がかからない点もメリットにあげられます。
産業廃棄物処理業者に依頼する際は、マニフェストの保存が廃棄物処理法で義務付けられている点には注意しましょう。その他、業者を選ぶ際は、電子マニフェストに対応しているか否かも重要なポイントです。
パソコン製造メーカーに依頼する
資源有効利用促進法により、使用済みのパソコンはメーカーが回収とリサイクルするよう義務付けられています。比較的少ない台数のパソコン、もしくは同一メーカーのパソコンを処分する際は、パソコン製造メーカーに依頼するのもいいでしょう。回収対象となるパソコンは、「デスクトップコンピュータ本体」「ディスプレイ装置付きのパソコン」「ノートパソコン」です。
回収の申込に関しては、業界団体である「一般社団法人パソコン3R推進協会」へ委託しているメーカーが多いため、まずはそちらを確認することをおすすめします。各メーカー窓口へのリンクが用意されているので、該当メーカーの回収方法を確認の上、依頼をするとよいでしょう。

法人のパソコンを廃棄する際の費用はどれくらい?
法人のパソコンを廃棄する際の費用は、処分方法により異なります。リサイクル業者、産業廃棄物処理業者、パソコン製造メーカーのケースを見ていきましょう。
リサイクル業者に依頼する場合、無料もしくは有料で買い取ってもらえるケースもあれば、別途費用がかかるケースがあるなど、業者やパソコンの状態によって大きく異なります。加えて、データを消化してもらう場合は別途費用がかかるので、一概にいくらかかるかは断言できません。詳しくは各リサイクル業者に問い合わせてみましょう。
産業廃棄物処理業者に依頼する場合も同様です。加えて、廃棄証明書を発行してもらったり、回収してもらったりする場合は別途費用がかかるので、確認しておきましょう。
パソコン製造メーカーへ回収依頼をする場合、法人は原則として回収再資源化料金がかかります。
平成15年(2003年)10月以降に販売された家庭向けパソコンには「PCリサイクルマーク」が貼付されており、家庭のパソコンであれば無償で廃棄できますが、事業者が廃棄する場合には対象外となりますので注意が必要です。
具体的な料金については、廃棄の台数やメーカーごとに異なるので、各メーカーへ問い合わせるとよいでしょう。
法人パソコンを廃棄する際の注意点4つ
法人のパソコンを廃棄する際は、以下の4つの点に注意してください。
● データの完全消去を行う
● 外部接続デバイスを確認する
● アカウントやライセンスを解除する
● マニフェストを発行し保管する必要がある
データの完全消去を行う
パソコンの廃棄を依頼する前に、まずはデータを完全に消去してください。法人で使っているパソコンには、自社の重要な情報のみならず、取引先に関するデータも保存されています。これらが外部に流出してしまうと多大な損失を出す可能性があり、最悪の場合は損害賠償にまで発展して、企業の信用を失いかねません。
自社でデータ消去用ソフトを使って削除するか、もしくは専門業者に依頼するなどして、処分手続きを進めていきましょう。
外部接続デバイスを確認する
重要なデータが保存されているのは、パソコン本体のみではありません。USBメモリや外部HDD、SDカードなどの外部接続部に接続できるデバイスにもデータは入っています。これらのデバイスを接続したまま廃棄すると、そこから情報が漏えいする恐れがあります。
パソコン本体だけでなく、外部接続デバイスに情報が残っていないかも確認した上で、廃棄手続きを進めてください。
アカウントやライセンスを解除する
続いて、廃棄するパソコンに紐付けられているソフトウェアやサービスのアカウント、ライセンスを解除、または移行します。特に、継続利用で費用がかかるサブスクリプションタイプのサービスの場合は、忘れずにおこなってください。
また、データはパソコン本体のみならずこうしたクラウド型のサービスにも保存されているケースがあります。不正利用や情報漏洩を防ぐためにも、廃棄する際にデバイスとアカウント・ライセンスの紐づけを解除しましょう。
マニフェストを発行し保管する
いくつかある法人のパソコン処分方法のうち、産業廃棄物処理業者に依頼する際は、産業物処理法によってマニフェスト(産業廃棄物管理票)の交付が定められています。マニフェストは、産業廃棄物の処理が適切に行われたかを証明するために必要な書類です。適切な手順に基づき、産業廃棄物の排出事業者は発行しましょう。
また、マニフェストは基本的に5年間の保存が義務付けられています。保存を怠ったり虚偽の記載をしたりした場合には、1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金が科せられるため、制度の仕組みを理解しておくのが重要です。
※参考:公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター. 「措置命令と罰則」, (入手日付2023-10-31).
パソコンの廃棄に関するよくある質問
パソコン廃棄に関するよくある、以下の5つの質問について回答します。
● 家電メーカーで法人用のパソコンを処分することは可能?
● 液晶モニターの廃棄は産業廃棄物に含まれる?
● パソコンを分解して部品ごとにゴミで捨てたらどうなる?
● 会社のパソコンをもらうには?
● パソコンの廃棄に関する法律はある?
家電メーカーで法人用のパソコンを処分することは可能?
資源有効利用促進法により、パソコンを製造したメーカーには、回収とリサイクルが義務付けられています。個人利用のパソコンだけではなく、事業用で使っている法人のパソコンも対象です。
製造メーカーが倒産・合併され回収してもらえない場合は、「一般社団法人パソコン3R推進協会」に依頼しましょう。
液晶モニターの廃棄は産業廃棄物に含まれる?
液晶モニターの蛍光管には、人体に有毒な水銀が含まれており、産業廃棄物として処理する必要があります。一般的な産業廃棄物の処分方法に従ってマニフェストを発行し、処分手続きを進めてください。
また、液晶モニターは資源有効利用促進法において回収の対象になるケースもあります。
液晶モニターに関する処分方法は上記のとおりですが、自治体によっても異なります。詳しくは自治体のホームページを確認するか、担当窓口に問い合わせてください。
パソコンを分解して部品ごとにゴミで捨てたらどうなる?
パソコンをそのまま処分する方法は「法人のパソコンを廃棄する場合の処分方法」で述べたとおりですが、分解して部品ごとゴミとして捨てることも可能です。
分解された部品は、大まかに金属ゴミ、プラスチックごみ、有害・危険ごみ、粗大ごみに分解できます。これらは、自治体の取り決めに基づき廃棄しましょう。
会社のパソコンをもらうには?
廃棄される会社のパソコンをもらう場合は、管理部門やIT部門に相談しましょう。
ただ、会社によってはセキュリティ上の理由や会社・顧客上保護の観点から、外部への持ち出しや譲渡を禁じている場合があります。また、廃棄するパソコンを譲り受ける場合は、税務処理もやや複雑になるでしょう。
廃棄されるパソコンをもらう場合は、データを完全に削除して外部に漏れないよう気をつけつつ、税金が課せられるケースも想定し取引記録をしっかり取っておいてください。
パソコンの廃棄に関する法律はある?
パソコンの廃棄は、産業物処理法と資源有効利用促進法に定められています。
前者は産業廃棄物として処理する場合、後者はリサイクルして再利用できる資源として活用する場合に参考にしてください。
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