【徹底解説】産業廃棄物委託契約書|記載事項・注意点・電子契約

産廃契約

産業廃棄物の処理を外部に委託する際に不可欠な「産業廃棄物処理委託契約書」。これは、廃棄物処理法に基づき、排出事業者の責任を明確にし、不法投棄などの不適正処理を防ぐための極めて重要な書類です。しかし、「契約書の必須の記載事項は?」「電子契約にしたいけど法的に大丈夫?」といった疑問や不安をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

この記事では、産業廃棄物の委託契約について、法的根拠から具体的な記載事項、契約時に見落としがちな注意点、そして電子契約へ移行する際の法的要件に至るまで、網羅的に詳しく解説します。コンプライアンスを遵守し、安心して契約業務を進めるための確かな情報をお伝えします。


契約の原則と産廃委託契約の特殊性

契約成立の基本原則(民法)

そもそも、一般的な「契約」は、当事者間の意思の合致によって成立します。民法第522条に定められている通り、法令に特別な定めがある場合を除き、契約書の作成は契約成立の必須要件ではありません。つまり、口約束のような目に見えない形式であっても契約は法的に成立し、電子データ上での契約も同様に有効です。

(契約の成立と方式)第五百二十二条
契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

※引用:e-Gov法令検索「民法

産業廃棄物委託契約の特別なルール(廃棄物処理法)

しかし、産業廃棄物の処理委託契約は、この民法の一般原則の例外にあたります。「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」により、委託契約は必ず書面により行い、その契約書と添付書類を一定期間保存することが明確に義務付けられています。これは、過去に不法投棄などの不適正処理が社会問題化した経緯から、排出事業者から処理業者への責任の連鎖を明確にし、適正処理を確保するために設けられた極めて重要な規定です。

(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)第六条の二
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
五 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間保存すること。

※引用:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(入手日付2023-08-25)

DXE株式会社資料DL


産業廃棄物処理委託契約書の必須要件

契約の相手方と範囲

産業廃棄物の処理を委託する際は、その処理(収集運搬処分)を行うために必要な許可を持つ業者と、事前に書面で契約を締結しなければなりません。
原則として「収集・運搬」と「処分」は別の許可であるため、それぞれの業者と契約を締結します。ただし、一事業者が収集・運搬と処分の両方の許可を有しており、両方の業務を委託する場合は、1通の契約書で締結することが可能です。
注意点として、排出事業者が直接契約を結ぶ義務があるのは、一次委託先までです。中間処理業者がさらに別の業者に処理(二次処分など)を委託する場合、排出事業者がその二次委託先と直接契約を結ぶ必要はありません。しかし、排出事業者は自ら排出した廃棄物が最終的にどこで、どのような方法で処分されるかを把握し、その処理が適正であることを確認する責任を負います。

契約書の記載事項

委託契約書には、廃棄物処理法施行規則で定められた事項を漏れなく記載する必要があります。記載漏れは契約義務違反となるため、注意が必要です。

【収集運搬・処分契約に共通の記載事項】

  1. 産業廃棄物の種類および数量:数量は確定値でなく、契約期間内の予定数量で構いません。
  2. 委託契約の有効期間:自動更新条項を設けることも可能です。
  3. 受託者に支払う料金:予定金額、または単価と数量から算出できる形式で記載します。
  4. 受託者の事業範囲:添付する許可証の通りと記載することもできます。
  5. 委託者の有する、受託者が適正処理を行うために必要な情報:具体的には、性状及び荷姿、通常の保管状況下での性状の変化、他の廃棄物との混合による支障、JIS C0950含有マーク、石綿・水銀含有の有無、その他取扱い上の注意点などを指します。
  6. 委託契約期間中における、上記⑤の情報に変更があった場合の伝達方法:メール、FAX、書面など具体的な伝達方法を定めます。
  7. 受託業務終了時の受託者の委託者への報告に関する事項:通常はマニフェスト(産業廃棄物管理票)の写しの送付をもって報告とします。
  8. 契約解除時の未処理産業廃棄物の取扱いに関する事項:受託者の責任で処理できない場合の廃棄物の返還や、それに係る費用負担などを定めます。

【契約別の個別記載事項】

収集運搬委託契約処分委託契約
・運搬の最終目的地の所在地・処分または再生の場所の所在地、その処分方法および処理能力
・積替えまたは保管を行う場合は、その場所の所在地、保管できる産業廃棄物の種類、保管上限量・中間処理後に残渣が発生する場合、その残渣の最終処分場所の所在地、処分方法、処理能力
・安定型産業廃棄物の積替え保管の場合、積み上げることができる高さなど・輸入された廃棄物である場合はその旨(該当する場合のみ)

添付すべき書面

契約書には、委託する業務が許可の範囲内であることを証明するため、委託先の「産業廃棄物処理業の許可証の写し」などを添付する必要があります。

保存期間

委託契約書およびその添付書類は、契約終了日から5年間の保存が法律で義務付けられています。これは紙でも、後述する法的要件を満たした電子データでも問題ありません。

「再委託」の禁止と罰則

委託した処理業務を、受託業者が排出事業者の承諾なしに別の業者へ丸投げする「再委託」は、責任の所在が不明確になり不法投棄の温床となるため、原則として固く禁止されています。違反した場合、委託した排出事業者も措置命令の対象となる可能性があります。

契約義務違反への注意

ここまで述べた契約書の作成・締結義務や記載事項、保存義務などに違反した場合、排出事業者には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」という厳しい罰則が科される可能性があります。コンプライアンス遵守の観点からも、契約書の適正な作成・管理は極めて重要です。

委託契約書作成時のよくある間違いと注意点

法律要件を満たす契約書を作成する上で、実務上見落としがちな注意点をいくつかご紹介します。

  • 曖昧な数量・料金設定
    「数量:一式」や「料金:別途協議」といった曖昧な記載は、後々のトラブルの原因となります。数量は「月間 約〇トン」、料金は「〇円/kg」のように、できる限り具体的に記載しましょう。
  • 事業範囲の確認漏れ
    添付された許可証を見て、委託しようとする廃棄物の「品目」が許可内容に含まれているか、また「積替え保管を除く」といった条件が付いていないかを必ず確認してください。
  • 自動更新条項のリスク
    契約の自動更新は便利ですが、その間に委託先の許可が失効しているリスクも考えられます。更新時には、改めて許可証の有効性を確認する社内ルールを設けることが望ましいです。
  • 情報変更時の伝達方法の形骸化
    廃棄物の性状に重要な変更があった際に、口頭で伝えただけでは「聞いていない」というトラブルになりかねません。契約書で定めた方法(メール、書面など)で、記録が残る形で確実に伝達することが重要です。

委託契約書の電子化|法的根拠と注意点

なぜ電子化できるのか?(法的根拠)

2005年に施行された「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(通称:e-文書法)が、契約書電子化の根拠法です。この法律により、これまで法令で紙での作成・保存が義務付けられていた文書について、電磁的記録(電子データ)での対応が認められました。
このe-文書法を受け、環境省は関連する施行規則を制定し、その中で産業廃棄物の委託契約書および添付書類が電子化の対象であることを明確に指定しました。これにより、電子契約は法的に紙の契約書と同等に扱われることになったのです。

電子契約の法的効力を担保する仕組み

電子契約が法的な効力を持つためには、そのデータが「本人が作成し、改ざんされていないこと」を証明できなければなりません。そのために重要な役割を果たすのが「電子署名」と「タイムスタンプ」です。

  • 電子署名
    電子データ上の「実印」に相当し、その文書が「本人によって作成された」ことを証明します。2001年に施行された「電子署名法」では、信頼できる第三者機関(認証局)が厳格な本人確認を経て発行する電子署名が付与された電子文書は、法的に「真正に成立したものと推定する」と定められています。これにより、電子署名付きの電子契約書は、押印された紙の契約書と同様の法的効力を持つことが保証されます。
  • タイムスタンプ
    電子データが「ある時刻に確かに存在し、それ以降改ざんされていないこと」を第三者機関(時刻認証局)が証明する技術です。契約書などを電子保存する際のルールを定めた「電子帳簿保存法」でも、データの真実性を担保するためにタイムスタンプの付与が有効な手段とされています。

裁判になった場合の証拠力(係争時の効力)

もし契約を巡って裁判になった場合、その契約書が証拠として認められるには、「成立の真正性(作成者本人の意思に基づき作成されたこと)」を証明する必要があります。
紙の契約書では、本人の実印と印鑑証明書があれば、真正性は強く推定されます。電子契約の場合もこれと同様で、本人確認の厳格さが証拠力に直結します。
例えば、第三者認証局が発行する電子証明書に基づく電子署名が付された契約書は、本人性や非改ざん性の担保レベルが非常に高く、極めて強力な証拠となります。
一方で、メールアドレスの所持のみをもって本人確認とするタイプの電子契約サービスは、認証レベルが低いため、単体での証拠力は劣る可能性があります。しかし、契約締結に至るまでのメールのやり取りや、取引の背景、当事者の関係性など、他の証拠と組み合わせることで、契約の成立が十分に認められるケースも多くあります。
重要な契約ほど、より厳格な本人確認手段を持つ電子契約サービスを選定したり、関連するやり取りを保存したりといった対策が求められます。


電子契約の普及状況

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)などの調査によると、電子契約を導入する企業の割合は年々拡大しており、2023年1月の調査では73.9%に達しました。
産業廃棄物業界は特に多くの書類を取り扱うため、業務効率化やコンプライアンス強化の観点から電子化のニーズは高く、公益社団法人全国産業資源循環連合会も電子契約サービスの活用を推進しています。

電子契約の普及状況の円グラフ

※出典:一般財団法人日本情報経済社会推進協会「企業IT利活用動向調査2023」結果発表」(入手日付2023-08-25)


まとめ:委託契約で失敗しないための最終チェックリスト

本記事で解説した産業廃棄物委託契約の重要ポイントを、最後に実務で使える詳細なチェックリストとしてまとめます。契約締結前に、このリストを使って最終確認を行ってください。

契約相手の適格性チェック

□ 委託業務に必要な許可を保有しているか?
収集運搬業者であれば「産業廃棄物収集運搬業許可」、中間処理業者であれば「産業廃棄物処分業(中間処理)」の許可が必要です。許可証の写しを必ず受け取り、許可の種類を確認してください。

□ 許可の範囲は委託内容と一致しているか?
許可証には、取り扱いが許可されている「産業廃棄物の種類(品目)」が明記されています。委託したい廃棄物がその品目に含まれているか、必ず確認が必要です。例えば「廃プラスチック類」の許可しかない業者に「金属くず」の運搬を委託することはできません。

□ 許可証の有効期限は切れていないか?
産業廃棄物処理業の許可には有効期限(通常5年)があります。契約締結時点だけでなく、契約期間中も有効期限が切れないか注意が必要です。

□ 「積替え保管を除く」などの条件が付いていないか?
収集運搬の許可に「積替え保管を除く」という条件が付いている場合、その業者は廃棄物を自社の保管施設に一時的に下ろすことができません。運搬ルートや方法に影響するため、重要なチェック項目です。

契約書の内容チェック

□ 法律で定められた必須記載事項に漏れはないか?
本記事で解説した「共通の記載事項」と「契約別の個別記載事項」がすべて網羅されているか、契約書の条文を一つずつ確認してください。特に料金、有効期間、責任範囲は重要です。

□ 廃棄物の性状や注意点を正確に伝えているか?
「WDS(廃棄物データシート)」などを活用し、腐食性、引火性、有害物質の有無といった廃棄物の特性を正確に伝えることは、排出事業者の重要な義務です。情報不足が原因で処理工程で事故が起きた場合、排出事業者が責任を問われる可能性があります。

□ 許可証の写しは契約書に添付されているか?
契約書と許可証は一体の書類として扱われます。契約書への添付を忘れないようにしてください。

契約形態・プロセスのチェック

□ 書面または法的に有効な電子契約で締結しているか?
口約束や、覚書程度の簡単な書類での委託は法律違反です。必ず正式な二者間契約(排出事業者と処理業者)を締結してください。

□ 再委託(丸投げ)の禁止は明記されているか?
原則禁止である再委託を行わない旨を、契約書に明記しておくことが望ましいです。これにより、受託業者のコンプライアンス意識を高める効果も期待できます。

契約後の管理体制チェック

□ 契約書の保管ルールは確立されているか?
契約終了日から5年間、いつでも取り出せる状態で保管する義務があります。電子契約の場合は、電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。

このチェックリストを活用し、コンプライアンスを遵守した適切な委託契約を締結してください。


おわりに

DXEStationでは、オプション機能として電子契約サービスをリリースしました。主な特徴は以下のとおりです。

  • 全国産業資源循環連合会の様式に則った電子契約書を簡単に作成
  • メール認証により電子署名契約をスムーズに締結(自社書式や産廃以外の契約書にも対応)
  • 締結済みの契約書や既存の電子データを取り込み一元管理を実現
  • 契約データとマニフェストデータを照合し、自動でコンプライアンスチェック

本サービスは、株式会社NXワンビシアーカイブズがGMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社と共同開発した電子契約サービス「WAN-Sign」を基盤としており、法的効力や電子帳簿保存法への対応、高いセキュリティ体制を誇ります。
電子契約の導入により、契約締結の手間やコスト(印紙代・郵送代)を大幅に削減し、コンプライアンス強化を実現しませんか。

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