産業廃棄物の委託契約書の作成や保存について解説

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産業廃棄物の委託契約書は、本当に電子化しても問題ないのでしょうか。
このコラムでは、産業廃棄物処理委託契約書の概要や、委託契約の電子化に関して解説しています。

契約の成立

そもそも契約は、「民法五百二十二条第二項」により、原則としていかなる形式でも成立します。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しません。
つまり、口頭などの目に見えない形式であっても契約は成立するのです。もちろん電子契約も同様に成立します。

(契約の成立と方式)
第五百二十二条 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

※引用:e-Gov法令検索「民法」(入手日付2023-08-25)

産業廃棄物の委託契約については、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令第六条の二第四号」により、文書で契約することが定められています。第五号には保存の義務が定められています。
過去に産業廃棄物の不法投棄が繰り返されたこともあり、書面で作成することが求められているのです。

(事業者の産業廃棄物の運搬、処分等の委託の基準)
第六条の二 法第十二条第六項の政令で定める基準は、次のとおりとする。
四 委託契約は、書面により行い、当該委託契約書には、次に掲げる事項についての条項が含まれ、かつ、環境省令で定める書面が添付されていること。
五 前号に規定する委託契約書及び書面をその契約の終了の日から環境省令で定める期間保存すること。

※引用:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(入手日付2023-08-25)


DXE株式会社資料DL

産業廃棄物処理の委託契約

委託契約の相手方

産業廃棄物処理の委託に際しては、適正な許可業者と事前に書面で契約を締結する必要があります。また、「収集・運搬」と「処分」はそれぞれの業者と契約を締結する必要があります。ただし、収集・運搬と処分の両方の許可を持つ業者に両方の処理を委託する場合は1通の契約書とすることが可能です。
第2区間以降の収集運搬業者が別に存在する場合は、それぞれの収集運搬業者と契約する必要があります。
一次委託の中間処理以降の廃棄物については、直接の処理委託契約は不要です。ただし、最終処分先がどこで、どのような処分がされるかを把握する必要があります。

契約書の記載事項

運搬および処分の共通記載事項
① 産業廃棄物の種類および数量 ・・・ 数量は予定で構わない
② 委託契約の有効期間 ・・・ 自動更新の定めがあっても良い
③ 受託者に支払う料金 ・・・ 予定金額もしくは単価と数量から算出出来れば良い
④ 受託者の事業範囲 ・・・ 添付する許可証の通りとするケースあり
⑤ 委託者の有する適正処理に必要な産業廃棄物に関する情報 ・・・ WDSを添付して引用することも可能
ア 性状及び荷姿 エ JIS C0950含有マークの表示
イ 性状の変化(通常の保管下) オ 石綿・水銀含有廃棄物が含まれる旨
ウ 混合等による支障 カ その他取扱い上の注意
⑥ 産業廃棄物の性状等に変更情報の伝達方法 ・・・ メール・FAX等、伝達の方法は問わない
⑦ 受託業務終了の報告に関する事項 ・・・ マニフェストによる報告で良い
⑧ 契約解除時の産業廃棄物の取扱い ・・・ 未処理廃棄物の責任などを記載
収集運搬契約の記載事項 処分契約の記載事項
運搬の最終目的地の所在地(実際に搬入する施設) 処分(再生)の場所等に関する事項
積替保管を行う場合は、場所等に関する事項 最終処分の場所等に関する事項(一次処分後に残渣が発生する場合)
輸入された廃棄物である旨(該当する場合)

契約書に添付すべき書面

収集運搬および処分を業として行うことができ、かつ事業の範囲に含まれていることを証明する書面として、「産業廃棄物処理業の許可証の写し」を添付する必要があります。
一次委託の中間処理以降の処理会社の許可証の写しは不要です。

委託契約書の保存期間

委託契約書及び添付書面は、その契約の終了の日から5年間保存しなければなりません(マニフェストも同様です)

委託契約の電子化

2005年に施行されたe-文書法(民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律)により、産業廃棄物処理の委託契約書を電子化することが可能となりました。その根拠を確認しておきましょう。

電子化の根拠

(電磁的記録による保存)
第三条 民間事業者等は、保存のうち当該保存に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(主務省令で定めるものに限る。)については、当該法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の保存に代えて当該書面に係る電磁的記録の保存を行うことができる。
2 前項の規定により行われた保存については、当該保存を書面により行わなければならないとした保存に関する法令の規定に規定する書面により行われたものとみなして、当該保存に関する法令の規定を適用する。
(電磁的記録による作成)
第四条 民間事業者等は、作成のうち当該作成に関する他の法令の規定により書面により行わなければならないとされているもの(当該作成に係る書面又はその原本、謄本、抄本若しくは写しが法令の規定により保存をしなければならないとされているものであって、主務省令で定めるものに限る。)については、当該他の法令の規定にかかわらず、主務省令で定めるところにより、書面の作成に代えて当該書面に係る電磁的記録の作成を行うことができる。

※引用:e-Gov法令検索「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」(入手日付2023-08-25)

これを受けて電子作成や電子保存を認める書類を規定した環境省令が出ています。

(e-文書法第三条第一項の主務省令で定める保存)
第三条 法第三条第一項の主務省令で定める保存は、別表第一の上欄に掲げる法令の同表の下欄に掲げる規定に基づく書面の保存とする。
 [別表第一] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第六条の二第四号及び第五号

(e-文書法第四条第一項の主務省令で定める作成)
第五条 法第四条第一項の主務省令で定める作成は、別表第二の上欄に掲げる法令の同表の下欄に掲げる規定に基づく書面の作成とする。
 [別表第二] 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 第六条の二第四号

少し複雑ですが、この環境省令の「別表第一」および「別表第二」に、産業廃棄物の委託契約書および添付書類が規定されていることにより、電子作成や電子保存が認められていることが確認できます。
ちなみに、「別表第一」には、収集運搬車両に備え付ける必要のある許可証などの書面(令第六条第一項第一号イ)も規定されていますので、これも電子保存することが認められています。

※引用:e-Gov法令検索「環境省の所管する法令に係る民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律施行規則」(入手日付2023-08-25)

保存の要件

e-文書法では、4つの要件が定められています。

① 見読性:ディスプレイなどで明瞭な状態で読める解像度で保存すること。
② 完全性:保存期間中の改ざんや消去を防げ、修正の履歴がわかるようになっていること。
③ 機密性:許可されていない人がアクセスできないよう管理していること。
④ 検索性:文書をすぐに利用できるよう、検索しやすさが確保されていること。

もっとも、4要件すべてを満たすことが求められるわけではなく、①見読性以外は対象文書の種類によって必ず満たすべき要件とはされていません。②~④の要件については病院のカルテや国税関係帳簿・書類等に限られています。

電子帳簿保存法は、国税関係帳簿・書類(契約書も含む)が対象となるため、見読性に加えて真実性と可視性の要件を満たすことが求められています。

真実性:訂正や削除の履歴が確認でき、帳簿との相互関連性が確保されていること。
可視性:明瞭な状態で読めて、検索して取り出せるようになっていること。

ちなみに2023年10月には「インボイス制度」が開始されます。(2029年まで経過措置あり)

タイムスタンプは、時刻配信局などの第三者機関を利用することで時刻情報の改ざんを防ぎ、日時の真実性を担保してくれる仕組みです。実際に、電子帳簿保存法ではタイムスタンプの付与が義務付けられています。
電子署名は、電子文書の本人性と内容の完全性(改ざん防止)を保証するものです。
2001年4月に施行された「電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)」により、適正に管理された電子署名が付与された電子文書については、真正な成立の推定が働くルールが制定されました。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

※引用:e-Gov法令検索「電子署名及び認証業務に関する法律」(入手日付2023-08-25)

これにより、一定の要件を満たす電子署名を付した電磁的記録は、本人が作成し、かつ内容が改ざんされていないという主張をすることが可能となりました。(文書における署名および押印と同様になりました)

係争時の効力

民事訴訟法には以下のような記載があり、係争時に電子契約書を証拠として利用するためには成立の真正性を確保する必要があります。

(文書の成立)
第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。

※引用:e-Gov法令検索「民事訴訟法」(入手日付2023-08-25)

これは本人確認をどこまで厳格に行うのかという問題であると言えます。文書での契約においても重要度の高いものは、実印を押印して印鑑証明を提出するでしょうし、一般的な契約であれば認印やサインで行っているかと思います。
電子契約においても、第三者認証局による本人確認を行い発行される電子証明書を署名者情報として記録するか、メールアドレスのみを署名者情報とするかで証拠力は異なります。
信頼関係がある先と産業廃棄物の委託契約書を電子契約する場合は後者でも問題ないのではないでしょうか。
不安がある場合は、本人確認書類の写しを提出頂き保存しておく、前後のメールでのやりとりについてもPDFにして保存しておく、といった対策を講じることで証拠力を高めることは可能です。
金額が大きいなど重要なものについては、第三者認証局による本人確認を行うことも考えられますが、契約相手方の負担もあるので、現時点では書面契約とすることも選択肢だと思います。

電子契約の普及状況

一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)と株式会社アイ・ティ・アール(ITR)が、国内企業1,022社のIT/情報セキュリティ責任者を対象に、2023年1月に共同で実施した『企業IT利活用動向調査2023』によると、電子契約の利用企業は前年の69.7%から73.9%に拡大しています。

電子契約の普及状況の円グラフ

※出典:一般財団法人日本情報経済社会推進協会「企業IT利活用動向調査2023」結果発表」(入手日付2023-08-25)

産業廃棄物業界は「産業廃棄物処理委託契約書」を含め多くの書類が存在します。公益社団法人全国産業資源循環連合会もホームページの中で電子契約サービスを紹介しています。

※公益社団法人 全国産業資源循環連合会「産業廃棄物処理委託契約

おわりに

DXE Stationのオプション機能として電子契約をリリースしました。主な特徴は以下のとおりです。

・全国産業資源循環連合会の様式に則った電子契約書を簡単に作成
・メール認証により電子署名契約をスムーズに締結(自社書式や産廃以外の契約書にも対応)
・締結済みの契約書や電子データを取り込むことで一元管理を実現
・契約データとマニフェストデータを照合し、自動でコンプライアンスチェック

DXE Station 電子契約サービスでは、株式会社NXワンビシアーカイブズが提供する、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社と共同開発した電子契約サービス「WAN-Sign」を使用します。
法的効力や電子帳簿保存法への対応はもちろん、高いセキュリティ体制を誇っています。

電子契約により、契約締結に要する手間やコスト(印紙代・郵送代)を大幅に削減するとともに、コンプライアンスの強化を実現しませんか。

DXE Station 電子契約の詳細はこちら

DXE Station電子契約

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