産廃の委託契約書作成における留意点を解説!法定記載事項についても

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産廃の委託契約は事前に文書で行う必要があり、5年間の保存義務があります。

また、法定記載事項や添付書類が存在します。

今回のコラムでは委託契約書の締結における実務上のポイントを解説します。継続して取引を行う中で記載事項に変更が生じることもあるため、その際に契約書の再締結や覚書の締結を行わないで済むような契約書にすることが重要です。

全国産業資源循環連合会、日本建設業連合会等6団体、東京都環境局などが作成しているモデル契約書等を参考に自社に合った契約書の雛型を準備しておくと良いでしょう。

法定記載事項等

以下の事項については、必ず記載しなければならない事項になります。(該当しなければ省略できるものあり)

変更の可能性も考慮した記載方法にしましょう。

排出事業場

法定記載事項ではありませんが、収集運搬契約では添付すべき許可証を特定する上で必要となります。

複数の事業場が存在する場合(特に建設現場やチェーン店舗など)は、「東京都および神奈川県の事業所(別紙のとおり)」のように包括的な記載をしておき、別紙を添付すると良いでしょう。

追加・統廃合等があった場合は、PDF等で別紙を入手して契約書と一緒に保管することで対応可能です。

これに伴い許可証の追加が必要な場合はPDF等で排出事業者に送付するとともに自社でも保管しておきます。

産業廃棄物の種類および数量

あくまで「排出予定」のものであり、幅のある記載が可能です。実際の種類や数量は都度発行されるマニフェストで確認できますし、予定が変更になったからといって契約違反や法令違反に問われるものではありません。

廃棄物の種類は、許可の範囲内で可能性のある廃棄物を全て記載すると良いでしょう。

数量は、種類ごとに年間や月間の予定量を記載します。回数(月2回、1回あたり約〇袋)や車両台数(10tダンプ約20台)の記載でも良く、混合物については全体の数量を記載すれば大丈夫です。

産廃委託契約の有効期間

1年契約として自動更新の条項を定めることが一般的であり有効です。定期的に契約書および添付書類を確認することが望ましいと言えます。

建設廃棄物の場合でも支店等で包括的な契約をしていれば同様ですが、個別工事の予定工期で契約する場合には、工期の延長を想定して、「工期延長の場合には、排出者が別途連絡する日まで契約期間は自動的に延長される」というような文言を入れておくと良いでしょう。

処理料金

数量同様に年間や月間の予定金額として記載します。幅のある記載でも大丈夫です。単価を記載しても大丈夫ですし、料金表を添付することも可能です。料金表が改定になった場合は追加保管することで対応可能です。

「別途見積による」という記載も有効ですが、その場合は見積書等を双方で保管し、契約書と一緒に管理することが重要です。

数量同様に当事者が理解する内容を柔軟に記載すれば問題ありません。ただし、後ほど解説する「印紙税額」を考慮して予定でかまわないので契約金額が確定できる記載とすることが望ましいと言えます。

事業の範囲

「許可証記載のとおり」と記載してかまいません。しかしながら重要な項目であるため契約書に明記して、変更があった場合は、覚書の締結や契約の巻き直しを行うべきであるとの考え方もあります。

適正処理に必要な産業廃棄物に関する情報(性状、荷姿、石綿含有、水銀使用製品等)

外観から含有物質や有害特性が判りにくい汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ、あるいは付着・混入等により有害物質等を含む廃棄物については、環境省が提供する「廃棄物情報の提供に関するガイドライン‐WDSガイドライン‐(Waste Data Sheet ガイドライン)」を参考にして排出事業者に情報を提供いただくと良いでしょう。

産業廃棄物の性状等に変更情報の伝達方法

「メール・FAX等」の記載でかまいません。伝達の方法は問われません。

受託業務終了時の報告に関する事項

一般的には「マニフェストによる報告」の記載でかまいません。

広域認定や専ら物など、マニフェストの運用を行わない場合は、別途報告に関する事項を記載します。

委託契約を解除した場合の処理されない廃棄物の取り扱いに関する事項

「当事者間で協議のうえ適正処理を行う」というような内容を記載することでかまいません。

排出事業者が既存の処理業者への新規委託をやめて、新たな処理業者と契約を締結する場合でも、排出事業者は既存の処理業者との処理委託契約書を解除する義務はありません。解除しないケースがほとんどだと思います。

実際に問題となるのは処理困難となったケース(行政処分・欠格該当・災害・事故など)ですが、状況に応じて対応を決定することになると思われます。

運搬の最終目的地

複数の中間処分場に運搬している場合は複数記載することが可能です。数が多い場合や追加・変更が想定される場合は、排出事業場と同様に別紙を添付すると良いでしょう。

積替え保管を行う場合には所在地等の情報

「許可証記載のとおり」と記載してかまいません。

安定型産業廃棄物について、積替え保管を行う場合、混合の可否

排出者が安定型産業廃棄物を排出しない場合、又は運搬中に積替え保管を認めない場合には、当該記載は必要ありません。混合可とした場合は管理型処分場への搬入を行うことになります。

レアケースだと思いますが、記載が必要になった場合や記載内容が変更になる場合は、覚書の締結や契約の巻き直しを行いましょう。

処分・再生委託の場合、その所在地、処分・再生方法、施設の処理能力

「許可証記載のとおり」と記載してかまいません。

中間処理委託の場合、最終処分場所在地等の情報

複数の中間処理行程を経てそれぞれで再生・再資源化が行われることも多く、また、変更になることもあります。

最終処分の場所を別表として、契約書に添付する方法が有効です。

中間処理業者の施設で委託された廃棄物の全量が再資源化される予定の場合、最終処分の場所等の記載は、たとえば「乙において再資源化」「乙において再生」等記載すればよいでしょう。

処理業者の許可証写しを添付

必要な許可を取得していることを証するため添付します。更新時には忘れずPDF等を送付します。


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法定記載事項以外の事項

以下は必ず記載しなければならない事項ではありませんが、記載すべき事項や記載を求められることが多い事項についてまとめています。「支払ルートに関する事項」「禁止事項・順守事項」については明確にしておく必要があります。

支払ルートに関する合意は他の関係者もいて複雑になるため「別途覚書」にするケースのほうが多いと思います。メールでの確認とすることも可能です。その他一般的な事項については必要であれば記載することで良いでしょう。

処理料金の支払代行・受領代行

排出事業者と処理業者間に、処理料金の支払・受領を担当するいわゆる管理会社が介在することがあります。

その場合、処理料金の支払ルートに関する合意を、処理委託契約書の中に記載する場合と、別途覚書を作成する場合があります。

処理委託契約書に記載するメリットは、覚書用の印紙が不要となることです。しかし、処理委託契約書に支払いルートを記載する場合、処理委託契約書が複雑になるため、覚書を別途作成している会社が多いと思います。

また、支払ルートに関する合意について、覚書を作成する必要はなく、メールでの確認、通知等の形式でも問題ありません。その場合はプリントアウトして契約書と一緒に保管しておくと良いでしょう。

リユース・リサイクル・部品取り等に関する記載

特に、特許や著作権がある商品や情報機器については、リユース・リサイクルの方法を禁止又は限定する例が増えています。詳細についてよく確認した上で締結しましょう。

なお、処理業者が、委託された商品廃棄物をそのままネットオークションなどに出すことは、契約違反であり、同時に処理をせずに処理報告を行ったとしてマニフェスト虚偽記載に該当します。

損害賠償に関する記載

債務不履行、不法行為については、特段の記載がなくても請求することが可能です。

前項目もそうですが、禁止事項、順守事項を明確にして記載することが重要であり早期解決につながります。

なお、予定額(限度額)について記載する場合は慎重な判断が必要です。著しく一方に有利な契約は実際に発生した場合に無効とされる可能性が高いです。

反社会的勢力排除条項・機密保持条項

一般的な記載であり、記載することについて問題ありません。

契約解除事由

通常の契約においては重要な項目であり、契約当事者による契約の解除ができる事由を各号で列記するように規定するのが一般的です。

廃棄物処理委託契約の場合には、契約を解除しなくても、排出事業者は将来個別の処理委託をしない、または処理業者は将来個別の処理受託をしないというだけで、結果的に契約解除と同じ効果が得られます。

したがって廃棄物処理委託契約では、契約解除条項はあまり重要ではありませんが、必要であれば記載します。

印紙税について

印紙税

廃棄物処理委託契約書は課税文書となるため、収入印紙を貼りつけ消印しなくてはなりません。

収集運搬に関する契約書は第1号文書に、処分に関する契約書は第2号文書に該当します。また、ほとんどの契約書は契約期間が3か月超で更新の条項が定められているため、第7号文書にも該当することになります。

それでは正しい印紙税額を認識して不必要な納税を行わないようにしましょう。

第7号文書に該当するかどうかの判断

契約金額の記載がある場合は第1号文書もしくは第2号文書に該当します。数量と単価から契約金額が計算できる場合も同様です。記載がない場合は第7号文書に該当します。支払に関する覚書を締結する場合も第7号文書に該当します。

国等(国、地方公共団体など)や公益社団法人等は営業者にならないため、彼らとの契約書については第7号文書に該当しません。従って第1号文書もしくは第2号文書に該当します。支払に関する覚書など契約金額の記載がないものも同様です。

なお、国等(国、地方公共団体など)が作成した課税文書については非課税になるので、自社で保有する契約書は印紙不要です。

第1号文書・第2号文書のいずれに該当するかの判断(収集運搬と処分が一体となった契約書)

収集運搬と処分を同じ契約書で締結する場合は契約金額が別々に記載されていれば高いほうに該当し、分かれていない場合や同額の場合は第1号文書に該当します。

印紙税額(1通または1冊につき)

どの文書に該当するか判断できたら国税庁の「印紙税額一覧表」で印紙税額を確認します。

第1号文書(収集運搬に関する契約書)

記載された契約金額 印紙税額
1万円未満(※) 非課税
10万円以下 200円
10万円を超え50万円以下 400円
50万円を超え100万円以下 1千円
100万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
契約金額の記載がないもの 200円

第2号文書(処分に関する契約書)

記載された契約金額 印紙税額
1万円未満(※) 非課税
100万円以下 200円
100万円を超え200万円以下 400円
200万円を超え300万円以下 1千円
300万円を超え500万円以下 2千円
500万円を超え1千万円以下 1万円
1千万円を超え5千万円以下 2万円
契約金額の記載がないもの 200円

※第1号文書と第7号文書とに該当する文書で第1号文書に所属が決定されるものは、記載された契約金額が1万円未満であっても非課税文書とならず200円となる。第2号文書と第7号文書とに該当する文書についても同様。

第7号文書(継続取引の基本となる契約書)

記載された契約金額 印紙税額
一律 4千円

契約期間が3か月以内で、かつ、更新の定めのないものは除きます。

おわりに

最近は電子契約が急速に普及しており、契約相手方の理解を得やすい状況になっています。

電子契約を導入することで契約締結に要する手間やコスト(印紙代・郵送代)を大幅に削減するとともに、ペーパーレスになることでその後の管理も合理化されコンプライアンスの強化を図ることが可能となります。

DXE Stationもオプション機能として電子契約をリリースしました。主な特徴は以下のとおりです。

  • ・全国産業資源循環連合会の様式に則った電子契約書を簡単に作成
  • ・メール認証により電子署名契約をスムーズに締結(自社書式や産廃以外の契約書にも対応)
  • ・締結済みの契約書や電子データを取り込むことで一元管理を実現
  • ・契約データとマニフェストデータを照合し、自動でコンプライアンスチェック

DXE Station 電子契約サービスでは、株式会社NXワンビシアーカイブズが提供する、GMOグローバルサイン・ホールディングス株式会社と共同開発した電子契約サービス「WAN-Sign」を使用します。

法的効力や電子帳簿保存法への対応はもちろん、高いセキュリティ体制を誇っています。

電子契約により、契約締結に要する手間やコスト(印紙代・郵送代)を大幅に削減するとともに、コンプライアンスの強化を実現しませんか。


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