産業廃棄物の保管基準は?注意点と運搬基準についても解説

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産業廃棄物は収集運搬・処分までの間、自社で保管する必要があります。不適切に保管すると、自然環境や人々の健康、生活に悪影響を及ぼす可能性があるので、保管基準に則った処理を行いましょう。

産業廃棄物の排出事業者は、法律に基づいて適切に保管するためにも、正確に把握しておく必要があります。

そこで本記事では、産業廃棄物の保管基準や保管基準、保管方法別の注意点などを解説します。中間処理や最終処分で何が行われているかもチェックできるので、ぜひ参考にしてください。

産業廃棄物の保管基準

産業廃棄物は、たとえ少量でも環境や人々の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。適切に保管するために、保管基準が定められています。主な基準は以下の通りです。

  • 基準①周囲に囲いを設ける
  • 基準②掲示板を設ける
  • 基準③飛散・流出・地下浸透・悪臭の発散を防ぐ
  • 基準④害獣・害虫を防ぐ
  • 基準⑤石綿含有廃棄物の保管時は特別な措置を行う
  • 基準⑥水銀含有ばいじん等又は水銀使用製品産業廃棄物の保管時は特別な措置を行う
  • 基準⑦保管時は決められた数量を守る
  • 基準⑧事業場外で保管する場合は届け出をする

これらの保管基準は、廃棄物処理法施行令第六条、施行規則第八条に基づいています。それぞれの保管基準を詳しく見ていきましょう。

※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(入手日付2024-09-05)
※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」,(入手日付2024-09-05).


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基準①周囲に囲いを設ける

産業廃棄物を保管する際には、周囲に囲いを設ける必要があります。囲いの素材や高さ、厚みなどに関する具体的な規則はないものの、保管する産業廃棄物が周囲に飛散・漏出しないような対策が求められます。

例えば、水分を含む細かい汚泥はコンクリートの囲いを設置する、容器に入った産業廃棄物を保管する際はロープや縄で縛るなど種類や性質、量に応じて調節しましょう。

また、保管する産業廃棄物の量が多いと、直接囲いに荷重がかかる場合があります。その場合は、その荷重に安全上耐えられる構造であるかを確認しましょう。

基準②掲示板を設ける

産業廃棄物の保管場所には、以下の条件や項目を記載した掲示板を見やすい場所に設置します。

  • 縦横それぞれ60cm以上
  • 産業廃棄物の保管場所である旨
  • 保管する産業廃棄物の種類(石綿含有産業廃棄物・水銀使用製品産業廃棄物・水銀含有ばいじんが含まれる場合はその旨)
  • 保管場所の管理者の氏名または名称および連絡先
  • 屋外で容器を用いずに保管する場合、最大保管高さ

文字サイズやフォント、色に特に指定はありませんが、分かりやすさを意識して作成しましょう。

また上記のいずれか一つでも満たしていない場合、設置義務を果たしていないと見なされるので、一つひとつ確実に対応してください。

基準③飛散・流出・地下浸透・悪臭の発散を防ぐ

保管する際、当該廃棄物の飛散・流出・地下浸透・悪臭の発散を防ぐ対策も必要です。それぞれの対策ポイントを詳しく見ていきましょう。

飛散・流出しないためには、廃棄物にカバーをかける、保管場所を囲むなどの対策が求められます。容器を用いずに保管する場合、高さや斜面に関する以下の制限も守る必要があります。

  • 囲いに接しない場合:囲いの下端から勾配50%以下にした状態で積み上げる
  • 囲いに接する場合:囲いの内側2m以内では囲いの上端の高さより50cm以上低く積み上げる。2m以上の範囲では勾配50%以下にする

地下浸透を防止するには、不浸透性の材料で底面を覆う対策が有効です。悪臭の発散に関しては、そもそも臭いを発生させない対策や脱臭設備の導入などが重要となります。

基準④害獣・害虫を防ぐ

産業廃棄物の保管場所では、害獣・害虫の発生を防ぐための対策も重要です。これらが発生すると、保管場所だけでなくその周囲の生活環境にも悪影響を及ぼします。

衛生状態の悪い場所に集まりやすいので、小まめに清掃し、衛生管理を徹底しましょう。

基準⑤石綿含有廃棄物の保管時は特別な措置を行う

かつては建築資材の原料に用いられていた石綿(アスベスト)は、健康被害が多発したことから、現在では製造と使用が禁止されています。石綿含有廃棄物の保管時は、特別な措置が必要です。

  • 石綿含有廃棄物が他の廃棄物と混合しないよう、仕切りを設ける
  • 覆いを設ける、梱包するなど飛散防止のための措置を講ずる

基準⑥水銀含有ばいじん等又は水銀使用製品産業廃棄物の保管時は特別な措置を行う

水銀は工業・商用用途で広く使用されており、水銀電池や証明、薬品、工業品、塗料などに用いられています。利便性が高い一方で有害性もあり、健康被害をもたらすことがあります。

そのため、水銀含有ばいじん等または水銀使用製品産業廃棄物の保管時にも、特別な措置が必要です。具体的には、他の廃棄物と混合しないように仕切りを設けることです。

基準⑦保管時は決められた数量を守る

保管時は、決められた数量以内に保つ必要があります。収集運搬施設では、1日当たりの平均搬出量の7日分、処理施設では1日当たりの処理能力の14日分を超えないようにしましょう。

数量の規定だけでなく、保管期間の上限も把握しておきましょう。具体的な日にちは定められてはいませんが、適切に処理・再生できる範囲の期間内とする他、廃棄物の性状が変化する前に搬出を完了させることが重要です。

※参考:札幌市「産業廃棄物保管基準」(入手日付2024-09-05).

基準⑧事業場外で保管する場合は届け出をする

建設工事に伴い発生した産業廃棄物を事業場外で保管する場合、非常災害に伴う応急措置以外では、事前に都道府県知事への届け出が必要です。これは、廃棄物処理法第十二条第三にて、定められています。届け出た内容を変更する際も、新たに届け出る必要があります。

※参考:e-GOV法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」,(入手日付2024-09-05).

産業廃棄物の【保管方法別】注意点

産業廃棄物は運搬するまで、保管している必要があります。主な保管方法は以下の通りです。

  • フレコンバッグ
  • コンテナ
  • ドラム缶

それぞれの保管方法の概要や注意点を詳しく見ていきましょう。

フレコンバッグ

フレコンバッグ(フレキシブルコンテナバッグ)とは、主に農業や工業用途、産業廃棄物の運搬・保管に用いられる袋型の大型容器です。ポリエチレンやポリプロピレンでできており、丈夫な点が特徴です。

フレコンバッグで産業廃棄物を保管する際は、以下の点に注意してください。

  • 破損する恐れはないか
  • 劣化していないか
  • 防水対策は十分か

木くずや金属くず、コンクリートくずなど鋭利な産業廃棄物を保管する際、破損する恐れがある点には注意してください。フレコンバッグを積み重ねると破損のリスクが高まるため、基本は2段積みまでにして、崩れないように保管しましょう。

使用する際は、袋本体やベルト部分、ロープなどが劣化していないかを確認するのも重要です。劣化が進むと、内容物の漏出や落下事故につながる恐れがあります。紫外線や雨風で特に劣化しやすいので、屋外で保管する場合は特に注意が必要です。

また、水分を多く含む汚泥や廃油などを保管する際は、周囲に漏出しないように防水対策が不可欠です。防水内袋付きのフレコンバッグを用いるなど、漏出の可能性を減らしましょう。

コンテナ

コンテナは主に貨物輸送に用いられますが、木くずや金属くず、紙くず、コンクリートくず、ゴムくずなどの固形状の産業廃棄物の保管にも適しています。

コンテナの種類にはいくつかありますが、産業廃棄物の保管に用いられるのは、車両に着脱できるコンテナ(バッカン)です。廃棄物をコンテナに集め、そのまま車両に積んで処理施設まで運搬できます。天面が開いているため、飛散・流出防止のためにカバーを使用するなどの対策が必要です。

ドラム缶

ドラム缶は、廃酸・廃アルカリ・廃油・汚泥など液体状または泥状の産業廃棄物の保管に適しています。

ドラム缶を屋外で長期間保管する場合、腐食や破損に注意してください。直射日光にさらされたり水ぬれ・乾燥が繰り返されたりするとダメージが蓄積されるので、カバーで保護して定期的に状態をチェックしましょう。

また、内容物に応じてドラム缶の種類を適切に選ぶのも重要です。オープンドラム缶は固形物、蓋付きのクローズドラム缶は液体の保管に適しています。


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運搬基準

ここでは産業廃棄物の運搬に関する基準について説明します。
自社で運搬する場合も対象となります。委託業者の順守状況やドライバーのレベルを確認しましょう。

運搬基準概要

  1. 産業廃棄物が飛散、流出しないようにすること。
  2. 悪臭、騒音又は振動による生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること。
  3. 収集又は運搬のための施設には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
  4. 運搬車、運搬容器及び運搬用パイプラインは、飛散、流出、悪臭の漏れがないものであること。
  5. 運搬車両(運搬船)を用いる場合には、「産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車(船舶)」である旨その他の事項を見やすいように表示し、かつ、必要な書面を備え付けておくこと。
  6. 石綿含有産業廃棄物(非飛散性、廃石綿を除く)は、破砕せず、かつ混合せず、他のものと区別すること。
  7. 保管は原則禁止のため、すぐに自己処理するか委託すること。ただし、排出から自ら処理するまでの間あるいは委託した処理業者が収集するまでの間、積み替え保管が認められている。
  8. 人の健康又は生活環境に係る被害が生じないようにすること。
  9. その他の物と混合するおそれのないように、他の物と区分すること。ただし、感染性産業廃棄物と感染性一般廃棄物が混合している場合であって、この感染性廃棄物以外の物が混入するおそれのない場合は区分しないで収集運搬することができる。
  10. 次の事項を記載した文書を携帯すること(運搬容器に記載されていれば文書の携帯は不要)。 「特別管理産業廃棄物の種類」「取り扱う際に注意すべき事項」
  11. 感染性産業廃棄物又はPCB廃棄物の場合は、必ず運搬容器に収納して収集、又は運搬すること。
  12. 感染性産業廃棄物又はPCB廃棄物を収納する運搬容器は次の構造を有するものであること。「密閉できること(PCBに関しては漏れ防止措置が講じられていること)」「収納しやすいこと」「損傷しにくいこと」

運搬車両の表示

次の項目を車両の両側面に見やすいように表示する必要があります。マグネットシートでも大丈夫です。

  1. 産業廃棄物収集運搬車両である旨
  2. 氏名又は名称
  3. 許可番号(下6けた)・・・ 事業者(自社運搬)の場合は不要

書類の携帯

産業廃棄物を運搬する際には、運搬車両に次の事項を記載した書面を携帯する必要があります。

【産業廃棄物収集運搬許可業者の場合】

紙マニフェスト 電子マニフェスト
1 産業廃棄物収集運搬業許可証の写し
2 産業廃棄物管理票(マニフェスト)
1 JWNET加入証の写し
2 受渡確認票(書式は任意)もしくは電子データ(容易に表示できること、通信による方法も可)

【事業者(自社運搬)の場合】

  1. 氏名又は名称及び住所
  2. 運搬する産業廃棄物の種類及び数量
  3. 運搬する産業廃棄物を積載した日並びに積載した事業場の名称、所在地及び連絡先
  4. 運搬先の事業場の名称、所在地及び連絡先

処分又は再生基準

処分については委託する場合がほとんどだと思います。新規契約時を含め定期的に現地確認するのがお勧めです。
現地確認についてはwebを活用したサービスも普及しつつあります。

処分又は再生基準概要

  1. 産業廃棄物が飛散、流出しないようにすること。
  2. 悪臭、騒音又は振動による生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること。
  3. 処分又は再生のための施設には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
  4. 焼却する場合には、決められた構造を有する焼却設備を用いて、決められた方法により焼却すること。
  5. 熱分解を行う場合には、決められた構造を有する熱分解設備を用いて、決められた方法により行うこと
  6. 特定家庭用機器産業廃棄物の再生又は処分を行う場合には、決められた方法により行うこと。
  7. 石綿含有産業廃棄物の処分又は再生は次の方法で行うこと。
    • 溶融施設において石綿が検出されないように溶融する。
    • 国が認定した無害化処理の方法で処理を行う。

参照:環境省「廃棄物処理法における廃石綿等の基準等について」

中間処理と最終処分

排出された産業廃棄物の多くは、そのまま埋め立てなどの最終処分をされるのではなく、中間処理を行い、減量化・安定化・無害化等の中間処理を行っています。中間処理を行うことで排出された産業廃棄物の量を半分近く減らすことができています。代表的な中間処理の方法は下表のとおりです。なお、最終処分は基本的に埋立てになります。

焼却 産業廃棄物を燃やすことによって減量化を図る。
破砕 産業廃棄物を潰したり砕いたりして減容化を図る。
溶融 産業廃棄物を高温で溶かすことで減量化を図る。(溶融スラグはリサイクルされます)
脱水 産業廃棄物の中から水分を取り除くことで減量化を図る。
選別 産業廃棄物を種類や目的(中間処理・リサイクル・最終処分)に合わせて分別する。
安定化 廃酸や廃アルカリなど、そのままの状態では人体や環境に悪影響を及ぼすものもあるため、そうした産業廃棄物を中和し、安定化した状態に戻す。
無害化 ダイオキシン類を含んだものや、PCBを含んだものなど、有害な産業廃棄物から有害物質の除去および分解を行う。

破砕・脱水・選別・安定化・無害化を行った後に、焼却等の減量化を行い、最終処分されるケースもあります。

焼却設備の構造、焼却の方法

  1. 燃焼ガスの温度が800℃以上で焼却
  2. 燃焼に必要な空気量が確保される通風
  3. 廃棄物が燃焼しているときに投入する場合には、外気と遮断された状態で定量ずつ投入可能なこと
  4. 燃焼室内温度の測定
  5. 燃焼室温度保持に必要な助燃装置の設置
    6.煙突以外から燃焼ガスが排出されないこと。
  6. 煙突から火炎、黒煙が出ないこと。
  7. 煙突から焼却灰及び未燃物が飛散しないこと。

埋立処分基準

産業廃棄物の最終処分場は、安定型最終処分場、管理型最終処分場、遮蔽型最終処分場に分類されます。

安定型最終処分場 有害物や有機物等が付着していない廃プラスチック類、金属くず、ガラスくず、がれき類等の産業廃棄物が対象となります。
これらの安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物を搬入しないように展開検査が義務付けられています。
管理型最終処分場 有害物質の濃度が基準以下の燃え殻、汚泥、紙くず、木くず、繊維くず、動物性残さ、動物系固形不要物、鉱さい、処理物(13号廃棄物)等が対象となります。
隠蔽型最終処分場 有害な金属等を含む産業廃棄物の中で、法で定められた基準に適合しないものが対象となります。
自然から隔離するため、強固なコンクリート構造物で造られています。

液状である廃油及び廃酸、廃アルカリは、埋立処分を行うことは出来ません。
石綿(アスベスト)の処理については別に規制が設けられています。


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