あわせ産廃とは?自治体の受け入れ基準や対応例を解説

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事業者から排出される廃プラスチック類やガラス類などは、産業廃棄物として法律に従って処理する必要があります。産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあり、家庭ごみのように自治体に処理してもらうことは原則としてできません。

ただし一部の産業廃棄物を一般廃棄物とあわせて処理するのを認めている市区町村もあります。市区町村が産業廃棄物と一般廃棄物をあわせて処理できる廃棄物を「あわせ産廃」と呼びます。ただし、何でもあわせて処理できるわけではありません。また、そもそもあわせ産廃処理を認めていない市区町村も多くあります。

本記事ではあわせ産廃の概要や受け入れている自治体の例をご紹介します。あわせ産廃処理を認めていない自治体での処理方法も解説するので、事業で出たごみの扱いに迷っている方は参考にしてみてください。

あわせ産廃とは?一般廃棄物と産業廃棄物を一緒に処理すること

あわせ産廃とは事業系一般廃棄物と産業廃棄物が複合しているものです。一般的には市区町村が一般廃棄物とあわせて、一部の産業廃棄物を処理する行政サービスを「あわせ産業廃棄物処理」、略して「あわせ産廃」と呼びます。

産業廃棄物とは事業活動に伴って排出される、法令で定められた20種類の廃棄物のことです。代表的なものは廃プラスチック類や金属くず、紙くずなどです。産業廃棄物の処理は排出事業者にその責任があり、廃棄物処理法に基づいた処理を行う必要があります。

一方、事業系一般廃棄物は20種類の産業廃棄物に該当しない廃棄物で、処理責任は市区町村にあります。

本来、産業廃棄物は排出事業者が責任を持って処理する必要がありますが、あわせ産廃に対応している自治体では、産業廃棄物を事業系一般廃棄物と一緒に市区町村のクリーンセンターなどで処分してもらうことが可能です。

あわせ産廃は、産業廃棄物の処理に費用や人手をさけない中小企業に対する行政サービスといえるでしょう。この行政サービスが可能なのは、市区町村が例外的に産業廃棄物を処理できる権限も持っているためです。

その法的根拠となっているのが廃棄物処理法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の第11条2項に記された以下の条文です。

市町村は、単独にまたは共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。

※出典:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 ,(入手日付2023-11-01).

この条文のポイントは「できる」としている点です。つまり、市町村側には処理する義務が課せられているわけではありません。

あわせ産廃を受け入れるかどうかは市区町村の裁量次第のため、受け入れないとしている市区町村も多くあります。あわせ産廃の受け入れは、あくまで任意の行政サービスです。そのため従来は受け入れていたものの、コストがかかるため受け入れを中止した自治体もあります。

事業所のある自治体が受け入れているかどうかは市区町村のホームページに記載されていることが一般的です。あわせ産廃として産業廃棄物の処理を依頼しようと考えている方は、あらかじめ自治体のホームページを確認しておきましょう。


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あわせ産廃の受け入れ基準・条件は自治体によって異なる

あわせ産廃を受け入れている自治体でも、市区町村によって受け入れ基準 が異なるため注意してください。また、産業廃棄物ならどの種類でも受け入れてもらえるわけではありません。自治体が受け入れているのは、主に以下のような産業廃棄物です。

  • ● 廃プラスチック類
  • ● 紙くず
  • ● 繊維くず
  • ● 木くず
  • ● 金属くず
  • ● ガラスくず・陶磁器くず

受け入れ可能なのは、その自治体で発生したものに限られるのが一般的です。また「1業者1トンまで」などの制限や、「建設業で出たものに限る」などの条件が付いている場合もあります。

どの産業廃棄物を受け入れるかは、市区町村の裁量に任されていますが、全体的には廃プラスチック類を受け入れている自治体が多い傾向です。プラスチックごみの海洋流出が環境問題を引き起こしていることから、環境省が廃プラスチック類の処理に力を入れているためです。

環境省は2019年5月20日にも「廃プラスチック類の処理を促進するための通知」を出しました。その中で環境省は市区町村に対して「必要な間、産業廃棄物に該当する廃プラスチック類を受け入れて処理することを積極的に検討するよう」申し入れています。

ただし、財政が厳しい自治体も多いため、処理コストのかかる廃プラスチック類を受け入れる自治体が、今後増えていくかどうかは分かりません。

※参考:環境省.「廃プラスチック類等に係る処理の円滑化等について(通知)」, (入手日付2023-11-01).

自治体のあわせ産廃対応例

ここでは実際にあわせ産廃を受け入れている「東京23区」と「熊本県熊本市」の対応例をご紹介します。

※2023年11月時点の情報です。

東京23区の例

東京都では23の特別区(いわゆる23区)であわせ産廃を収集しています。事業活動に伴って排出される一般廃棄物と一緒に出せる産業廃棄物は以下の5種類です。

  • ● 紙くず
  • ● 木くず
  • ● ガラスくずおよび陶磁器くず
  • ● 金属くず(廃油等の付着しているものを除く)
  • ● 廃プラスチック(プラスチックの製造・加工業から排出されるものを除く)

「紙くず」「木くず」「廃プラスチック」は可燃ごみの日、「ガラスくずおよび陶磁器くず」「金属くず」は不燃ごみの日に収集されます。なお事業者が自ら清掃工場などに直接持ち込む場合は、この5品目は産業廃棄物となり、あわせ産廃にはなりません。

また23区では以下の産業廃棄物は収集していません。

  • ● 事業所や店舗で不用になった粗大ごみ(家具、電器製品など)
  • ● 危険物(薬品類や石油等の可燃物)
  • ● 処理が困難なもの(バッテリー、タイヤ、コンクリくず、汚泥など)

これらの処理は販売元に引き取りを依頼するか、廃棄物処理業者に委託してください。

※参考:世田谷区. 「事業系一般廃棄物 ガイドブック」, (入手日付2024-09-10).

熊本県熊本市の例

熊本県熊本市では市と委託契約を結んだ排出事業者が、あわせ産廃をごみ処理施設(環境工場・扇田環境センター)に持ち込めます。環境工場・扇田環境センターに持ち込み可能な産業廃棄物はそれぞれ以下の通りです。

環境工場に持ち込み可能な産業廃棄物の種類および量
汚泥(市の施設から排出されるもの)
廃プラスチック類 200キログラムまで
動植物性残さ 1トンまで
・紙くず(建設業に関わるもの)
・繊維くず(建設業に関わるもの)
合計1トンまで
扇田環境センターに持ち込み可能な産業廃棄物の種類および量
燃えがら(市の施設から排出されるものに限る)
・廃プラスチック類(環境工場で処理困難なもの)
・金属くず(他廃棄物と密着不可分なもの)
・ガラスくずおよび陶磁器くず(廃石膏ボードおよび水銀を含む廃蛍光管を除く)
合計1トンまで

なお、下記に該当するものは持ち込みできません。

  • ● 資源化できるもの
  • ● 市の処理施設で処分が困難なもの
  • ● PCBが付着または封入されているもの
  • ● 爆発などの危険性のあるもの
  • ● 医療関係機関から排出されるものについては、感染の恐れがあるもの
  • ● 有害物質を含むもの
  • ● 汚泥については、含水率85%以上のもの
  • ● 自動車等を破砕したもの(シュレッダーダスト)
  • ● 水銀が付着または封入されているもの

参考:熊本市.「あわせ産廃について」, (入手日付2023-11-02).

自治体の受け入れが困難な場合は自社で分別・処分

事業所がある市区町村であわせ産廃を受け入れていない場合は、どのようにして処理したらよいのでしょうか。その場合には自社で一般廃棄物と産業廃棄物を分別して、それぞれに処分するのが一般的です。

ただし、あわせ産廃を産業廃棄物として処理するよう指導している自治体もあります。その場合は運搬基準に従って自社で直接処分施設に持ち込むか、認可を受けた処理業者に委託するかして処理してください。迷ったら事業所のある市区町村に問い合わせてみるのがおすすめです。

あわせ産廃に関する7つのよくある質問

あわせ産廃に関してよく寄せられる以下の質問に回答します。

  • ● あわせ産廃にマニフェストは必要?
  • ● あわせ産廃に契約書は必要?
  • ● みなし一般廃棄物とは?
  • ● 一般廃棄物を産業廃棄物として処理した場合の罰則は?
  • ● 大阪市はあわせ産廃に対応している?
  • ● テナントから出た産業廃棄物の排出事業者は誰?
  • ● 廃棄物処理法第11条第2項の内容は?

該当するものがあれば参考にしてみてください。

あわせ産廃にマニフェストは必要?

市区町村のあわせ産廃処理サービスを利用する場合、マニフェストの運用は不要です。

廃棄物処理法施行規則の第8条の19で「産業廃棄物管理票の交付を要しない」ケースとして「市町村または都道府県に産業廃棄物の運搬または処分を委託する場合」と規定されているためです。

※参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則」, (入手日付2023-11-02).

あわせ産廃に契約書は必要?

市区町村にあわせ産廃の処理を委託する際にマニフェストは不要ですが、原則として「委託契約書」を作成する必要があります。マニフェストのように「要しない」とする除外規定が存在しないためです。

みなし一般廃棄物とは?

あわせ産廃を「みなし一般廃棄物(みなし一廃)」と呼ぶことがあります。ただし、あわせ産廃処理をしている市区町村は、産業廃棄物を一般廃棄物と「みなして」処理しているわけではありません。廃棄物処理法の第11条の2に基づき、産業廃棄物として処理します。

※参考:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」, (入手日付2023-11-02).

一般廃棄物を産業廃棄物として処理した場合の罰則は?

本来一般廃棄物であるものを産業般廃棄物として処理してしまったり、逆に産業廃棄物であるものを一般廃棄物として処理したりした場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその併科となる可能性があります。

※参考:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」, (入手日付2023-11-01).

大阪市はあわせ産廃に対応している?

大阪府大阪市はあわせ産廃に対応していません。大阪府大阪市は2009年度から廃プラスチック類などが混ざった、あわせ産廃の受け入れを取りやめています。

テナントから出た産業廃棄物の排出事業者は誰?

テナント(ビルと賃貸契約して入居する事務所や店舗)から出た産業廃棄物は、原則として各テナントが排出事業者です。なお、ビルの所有者などが各テナントから委任状による委任を受けている場合には、所有者などが一括して契約を締結できます。またビルの共有部分の廃棄物はビルの運営権限を有するものが排出事業者になります。

廃棄物処理法第11条第2項の内容は?

廃棄物処理法第11条第2項の内容は以下の通りです。

市町村は、単独にまたは共同して、一般廃棄物とあわせて処理することができる産業廃棄物その他市町村が処理することが必要であると認める産業廃棄物の処理をその事務として行なうことができる。

この条文は市区町村が産業廃棄物をあわせて処理しても「違法でない」ことを意味するもので、市区町村側に処理する義務が課せられているわけではありません。

※参考:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」, (入手日付2023-11-02).

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