廃棄物収集運搬の注意点は?基準や法規制を解説

廃棄物の収集運搬における注意点

産業廃棄物を処理する場合は自ら処理するか許可を持った業者に委託することになります。多くの場合は後者になると思われます。処理には収集運搬と処分(再生を含む)がありますが、今回は収集運搬を行う際の注意点についてまとめてみました。

収集運搬業者は排出事業者と直接接点を持ち、排出事業場の状況も把握できる立場にあります。廃棄物の適正処理を推進する上でその役割は重要です。

受注可否判断と条件確認

新たに廃棄物処理の委託を受ける、もしくは新たな種類の廃棄物処理の委託を受ける際には、廃棄物の内容やその他の条件について十分確認する必要があります。
廃棄物の内容がよくわからないまま委託を受けると、危険なだけでなく、無許可営業となり許可取消となる可能性があります。

主な確認内容は下表のとおりです。

廃棄物の内容 廃棄物の種類、数量、性状及び荷姿並びにその他取扱い上の注意
性状の変化(通常の保管下)、石綿・水銀含有廃棄物の有無、混合等による支障
その他の情報 発生現場、発生頻度(スポットor継続)
処理に関する条件(車両の成約・時間指定の有無・処分の指定など)

写真情報や発生工程情報もあわせて確認するのが有効です。必要に応じてサンプルの分析による確認を行います。

また、特別管理産業廃棄物に該当する(その可能性がある)ものかどうかの確認は非常に重要です。
特別管理産業廃棄物とは、「爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有する廃棄物」であり、必要な処理基準を設け、通常の廃棄物よりも厳しい規制を行っています。
排出事業者は特別管理産業廃棄物責任者を設置する必要があり、委託に際しては廃棄物の内容をあらかじめ文書で通知する必要があります。

さらに、多量排出事業者に該当すると電子マニフェストが義務化になります。

特別管理産業廃棄物

特定有害廃棄物はさらに「廃PCB等」「廃水銀等」「廃石綿等」「有害金属等を含む有廃棄物」に分類されます。

廃棄物情報の提供に関するガイドライン – WDS ガイドライン(Waste Data Sheet ガイドライン)-

排出事業者は、委託する産業廃棄物の適正な処理のために、性状や取り扱う際の注意事項等の必要な情報を処理業者へ提供しなければならないことが廃棄物処理法で定められています。

この「廃棄物情報の提供に関するガイドライン ― W D Sガイドライン ―」は、廃棄物の処理過程における事故を未然に防止し、環境上適正な処理を確保することを目的としています。
排出事業者が提供すべき廃棄物の性状等の情報について具体的に解説し、排出事業者が処理業者へ産業廃棄物の処理を委託する際の廃棄物情報の提供の望ましいあり方を示すものです。

特別管理産業廃棄物の中でも「有害金属等を含む産業廃棄物」のように、外観から含有物質や有害特性が判りにくい汚泥・廃油・廃酸・廃アルカリ、あるいは付着・混入等により有害物質等を含むなどの廃棄物については、このガイドラインを適用してWDS により情報提供することが重要になります。

※参考:環境省 大臣官房廃棄物・リサイクル対策部「廃棄物情報の提供に関するガイドライン ― W D Sガイドライン ―

許可の範囲内であり、処分ルートの確保も可能であることを確認した上で、見積書の提出(もしくは口頭での提示)を経て価格等の条件を確定することになります。


DXE株式会社資料DL

書面による処理委託契約の締結

排出事業者は「収集・運搬」「処分」それぞれの業者と書面による契約を結ぶ必要があります。
契約書の記載事項は定められており、許可業者であることを証するため許可証の写しを添付する必要があります。
最近は電子契約が普及しており、導入することで契約までの時間短縮とコスト削減が期待できます。

廃棄物の回収、マニフェストの受領

産業廃棄物の回収を行う際には、排出事業者からマニフェスト(産業廃棄物管理票)を受領する必要があります。
廃棄物は事前に確認しているものに相違ないこと、廃棄物管理票が正しく記載されていることを確認します。
予定外の廃棄物の回収を依頼されるケースがあるかもしれませんが、安易に引き受けるべきではありません。
最近は電子マニフェストが普及しており、導入することでコスト削減とコンプライアンス強化などが期待できます。

収集運搬基準

・産業廃棄物が飛散し、流出しないようにすること
・悪臭、騒音又は振動によって生活環境の保全上支障がないよう必要な措置を講じること
・収集、運搬のための施設を設置する場合は、生活環境の保全上支障を生じるおそれのないよう必要な措置を講じること
・運搬車両、運搬容器及び運用パイプラインは産業廃棄物が飛散し、及び流出し、並びに悪臭が漏れるおそれのないものであること

特別管理産業廃棄物(共通)

人への健康被害が生じる可能性があるためより慎重に行うことが求められる。
・他の廃棄物との混合は原則禁止であり、混合した場合はその廃棄物も特別管理産業廃棄物として取り扱う。
・必要に応じて容器に廃棄物の種類と取扱上の注意を表示頂くよう、排出事業者に依頼することが望ましい。
・特に液状の廃棄物は、漏れた場合に回収が困難で影響が大きいため、十分な知識と配慮が求められる。

感染性産業廃棄物

「感染性廃棄物処理マニュアル」に従う。
・排出元でバイオハザードマーク等の表示がある専用容器に収納したものをそのまま運搬する。
・運搬車両は冷蔵機能のある屋根付きボックスタイプとする。
・積替え・保管をせず処分施設へ直送することを原則とする。
・作業中は保護具を着用し、注射針など鋭利なものによる作業員の事故を防止する。

石綿含有廃棄物等(廃石綿等・石綿含有廃棄物)

「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」に従う
・破砕禁止(パッカー車はNG)
・他の物と区別する。(廃石綿は他の廃棄物と混載した場合、すべて廃石綿等の取扱いとなる)
・廃石綿等の場合、積込みは人力を原則とする。
・廃石綿等の場合、積替え・保管をせず処分施設へ直送することを原則とする。
・廃石綿等の場合、飛散・流出防止措置を講じる。(荷台に覆いをかけてロープで固定する等)

水銀廃棄物(廃水銀等・水銀使用製品産業廃棄物)

「水銀廃棄物ガイドライン」に従う
・廃水銀等は、混合するおそれのないよう他のものと区分して行う。(混載禁止)
・廃水銀等は、排出元であらかじめ容器に密閉したものをそのまま運搬する。
・水銀使用製品産業廃棄物は、破砕防止の措置をとり、混合するおそれのないよう他のものと区分して行う。
PCB廃棄物 : 「PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」及び「低濃度PCB廃棄物収集・運搬ガイドライン」に従う

積替え・保管基準

・周囲に囲いが設けられ、かつ、産業廃棄物の積替えの場所であることの表示がなされている場所で行うこと
・産業廃棄物が飛散し、流出し、及び地下に浸透し、並びに悪臭が発散しないように必要な措置を講じること
・ねずみが生息し、及び蚊、はえその他の害虫が発生しないようにすること。
・あらかじめ積替え・保管を行った後の運搬先が定められていること
・保管量が、平均搬出量の7日分を超えないこと
・搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること

・特別管理産業廃棄物等については、特性に応じて、仕切りを設ける。冷蔵倉庫や専用容器に保管する。

表示義務

表示義務について

※出展:環境省 廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課「表示義務について

書類の携帯義務

※電子マニフェストの場合、電子マニフェスト加入証、及び携帯電話で必要事項が見られれば可

※出展:環境省 廃棄物・リサイクル対策部 産業廃棄物課「書類の携帯義務について

建設工事の例外

建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理については、その建設工事の元請業者が廃棄物処理法上の排出事業者としての責任を有するという原則を確立ししまたが、その請負金額が500万円以下で以下①~③に該当する場合は、当該工事請負契約書に定めた上で、産業廃棄物収集運搬業の許可のない下請け業者に建設系廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く)を運搬させることができます。(法第21条の3)

① 1回当たりの運搬量が1㎥ 以下
② その廃棄物が発生する事業場の所在地の都道府県または隣接都道府県の区域内の、元請業者が所有権又は使用権限をもつ施設(積替保管場所を含む。)に運搬されるもの
③ 廃棄物の運搬途中において保管が行われないもの
この場合も「表示義務」「書類の携帯義務」は対象となります。
また、解体工事における発注者等の残置物はそもそも対象外なので注意が必要です。

その他の法規制

廃棄物処理法以外にも理解しておくべき代表的な法規制とそのポイントは以下のとおりです。

車両関係の法規制 :道路交通法等

・5台以上の自動車を使用する場合は「安全運転管理者」を選任し、管轄の公安委員会に届け出る。
・過積載、速度超過、酒気帯び等の交通違反をおこさない。
・もらい事故を含めて事故に遭う確率を減らす、および、事項の状況を最小限に防ぐ「防衛運転」に努める。

労働および労働安全衛生に関する法規制 : 労働基準法、労働安全衛生法等

・2024年問題(時間外労働の上限規制適用)をふまえた労働時間の適正化を図る。
・荷物の積み下ろし作業は、正しい手順・操作で行う。必要な保護具を着用する。監視人を配置する。
・テールゲートリフターの特別教育は2024年2月より義務化。

その他の法規制 : 消防法、毒物及び劇物取締法等

・消防法の「危険物」、毒劇法の「毒物及び劇物」を取り扱うには有資格者が行う必要がある。
廃棄物処理法の「特別管理産業廃棄物」とは必ずしも一致しないので注意が必要。
・消防法の危険物を輸送する場合、品名別の注意事項等を記載したイエローカード(緊急連絡カード)を
荷主が用意し、輸送中はこれを携行する。
・化学物質の管理は、GHS(世界調和システム)に準拠する形で、ラベル表示やSDS(安全データシート)
提供など情報提供のルールが変更になるとともに、労働安全衛生法も順次施行されています。

おわりに

産業廃棄物の収集運搬は廃棄物処理法の他にも多くの法規制を受けていますね。今回は触れていませんが、車両や重機に関する知識・技能なども求められます。そして交通事故などで廃棄物の飛散・流出が起こると、社会や環境に大きな影響を与えてしまいます。

少子高齢化による労働者不足が顕著になっていますが、知識・技能が受け継がれ、安全で適正な処理が行われて行くことを切に願っています。


DXE株式会社資料DL

この記事をシェアする

収運業者のお客様向け

DXE Station 収運業者

受注データから電子マニフェストを代行起票

クラウドでマニフェスト管理や
請求業務を一元化!
電子マニフェスト代行起票で
業務を大幅に効率化!

収運・処分業者のお客様向け

DXE Station 収運・処分業者

収運業者と処分業者をワークフローでつなぐ

クラウドで収集運搬から
処分完了までの業務を一元化!
搬入予定の確認や、
二次マニフェストの
紐づけが簡単に!

閉じる