
建設現場から一般家庭の庭まで、木材はさまざまな場面で排出されます。排出状況によっては産業廃棄物にも一般廃棄物にもなるため、判断に迷うケースもあるでしょう。木材を適切に処理するためには、正しい知識や処理方法を把握しておくことが欠かせません。
そこで本記事では、事業活動で出た木材の分類や種類、産業廃棄物と一般廃棄物の分類が難しい木材を解説します。記事後半では、木材の処理方法も併せて解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
廃木材は廃棄物処理法では「木くず」
廃木材は、廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)上では「木くず」に分類されます。
木くずは数ある産業廃棄物の中でも比較的、再生利用されている点が特徴です。環境省の公表した資料「産業廃棄物の種類別の処理状況(令和4年度実績値) 」によると、木くずの再生利用量は全廃棄量の86%を占めます。これはがれき類・金属くず・動物のふん尿・鉱さい・動物系固形不要物に次ぐ水準です。
詳しくは後述しますが、木くずはチップ化・燃料化・堆肥化などのリサイクルプロセスに回り、リサイクルできないものは埋め立てや焼却処分がなされます。
※参考:環境省「令和5年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和4年度速報値(概要版)」p34,(入手日付2024-06-18)
廃木材の種類
廃木材は大きく、産業廃棄物と一般廃棄物に分けられます。それぞれどのようなものが該当するのかは、以下の表の通りです。
産業廃棄物 | 一般廃棄物 |
---|---|
・建設業に係るもの(工作物の新築・改築・除去に伴なって発生するもの) ・パルプ製造業の製造工程で排出されるもの ・家具など木製品の製造工程で排出されるもの ・輸入木材の加工や卸売の際に排出されるもの ・事業活動に伴い生じた、PCBが染み込んだもの |
・剪定枝(林業、園芸サービス業の一貫で排出されたもの) ・間伐材 ・木材や家具などの木製品 ・流木 ・その他、産業廃棄物に該当しないもの |
木材を一般廃棄物と産業廃棄物に分けるのは、木材の種類とそれが排出された状況です。
事業活動に伴い排出された木材のうち、建設業や木材製品の製造業など指定の業種から排出された木くずと、有害物質を含むものが産業廃棄物に分類されます。
一方で、個人が排出した木材や、完成済みの木材製品を単に廃棄する場合などは、一般廃棄物として扱います。事業活動に伴い排出されたものでも、産業廃棄物となる木くずの定義に該当しなければ、事業系一般廃棄物として処理します。

産業廃棄物と一般廃棄物の分類が難しい木材
廃木材は大きく、産業廃棄物と一般廃棄物に分類されることは先述した通りです。しかし、一般廃棄物とされているものでも、排出量や含まれる成分、性状などにより各自治体での処理が難しい場合もあり、その分類については議論が続いています。
分類が難しいものとしての代表例は、以下の通りです。
- 伐採木(間伐材・主伐材)
- 剪定枝
- 木製パレット
- 流木
- PCBを含む木材
それぞれの木材の概要や何に区分されるかなどを詳しく見ていきましょう。
伐採木(間伐材・主伐材)

伐採木は、間伐や主伐によって発生した木材です。
間伐材は森林の成長促進のために計画的に間引かれた木材、主伐材は素材として利用するために収穫された木材を指します。
伐採木が産業廃棄物に分類されるのは、建設工事のために伐採された場合や、伐採木を原料にした木製品の製造過程で廃棄物となった場合などです。
一方で、森林内などで木々の密集を避けるために切った間伐材は、一般廃棄物に分類されます。
産業廃棄物となる伐採木 | 一般廃棄物となる伐採木 |
---|---|
・木製品を製造する過程で廃棄物となったもの ・建設・解体工事のために伐採したもの |
・森林内の樹木の密度調整のために間引いたもの |
剪定枝

剪定枝とは園芸や造園作業において、景観を調整したり樹木や植物の形状を整えたりするために切り落とされる枝です。
剪定枝が産業廃棄物に分類されるのは、建設工事や、造園工事業による道路や公園の手入れに伴い排出される場合です。
一般廃棄物に分類されるのは、園芸サービス業による道路や公園の手入れ、林業によって排出された場合などです。
どちらも似たように思えますが、土木工事に付随したものかどうかが判断基準になるでしょう。なお、総務省の日本標準産業分類において、造園工事業は「建設業」、園芸サービス業は「農業、林業」に分類されています。
産業廃棄物となる剪定枝 | 一般廃棄物となる剪定枝 |
---|---|
・建設業で生じたもの ・造園工事業で生じたもの |
・園芸サービス業で生じたもので、土木工事を伴わないもの ・林業で生じたもので、土木工事を伴わないもの |
木製パレット

不要となった木製パレットは、荷物の保管や管理など事業で活用されていた場合は産業廃棄物、一般家庭で個人が使用していた場合は一般廃棄物です。
元々は使用状況によらず木製パレットは一般廃棄物に分類されていましたが、排出量の多さから自治体での処理が困難であり、平成19年に産業廃棄物へと区分変更されました。
産業廃棄物となる木製パレット | 一般廃棄物となる木製パレット |
---|---|
・貨物の流通のために用いたパレット(パレットへの貨物の積付けのために用いたこん包用の木材を含む)に係るもの ・物品賃貸業(リース業)に係るもの |
・産業廃棄物に該当しないパレット |
参照:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令の施行について」
流木

流木は一般廃棄物に分類されます。これは流木が、事業活動に伴い排出されるものではないためです。造園工事や建設工事、河川整備などにより排出された流木も、一般廃棄物です。
しかし、流木は水分や塩分を含んでおり、自治体の処理施設に負担がかかることが問題視されています。また、災害に伴い大量排出される場合もあり、産業廃棄物としての処理を望む声もあります。
PCBを含む木材
PCB(Poly Chlorinated Biphenyl:ポリ塩化ビフェニル)とは、化学的に合成される有機塩素化合物です。絶縁性や不燃性に優れていることから、変圧器やコンデンサ、蛍光灯などの電気機器に広く採用されてきました。今では有毒性があるため製造や使用が禁止されていますが、過去に製造された製品には含まれていることがあります。
PCBが含まれた木材は、産業廃棄物の一種である特定有害産業廃棄物に分類されます。特定有害産業廃棄物は通常の産業廃棄物よりも、爆発性・感染性・中毒性が高いため、より厳格な処理基準が設定されています。
廃木材の処理方法
廃木材の処理方法は、大きく以下の2つに分けられます。
- 再利用する
- 埋め立て・焼却する
それぞれの処理方法の概要や特徴、どのような木材が対象となるかなどを詳しく見ていきましょう。
再利用する
廃木材は再生利用が進んでいる廃棄物であり、主な再利用方法は大きく以下の3つに分けられます。
- チップ
- 燃料
- 堆肥
それぞれの再利用方法の概要をご紹介します。
チップ
チップ(ウッドチップ)とは、木材を細かく砕いてチップ状にした素材です。廃木材のリサイクル方法の中でも、一般的に普及している方法です。主に以下のような用途があります。
- 製紙:紙の原料(パルプ)となる
- 木質バイオマス:チップを燃やしてバイオマスエネルギー(生物由来のエネルギー)として利用する
- ファイバーボード(繊維板):チップを線維化して成形する板状製品
- マルチング材:土壌表面を覆うマルチングの材料となる
- 家畜用の敷材:吸収性・保水性・通気性に優れたものは、家畜用の敷材となる
燃料
廃木材は元々樹木であり、光合成により二酸化炭素を吸収して酸素を排出しています。木材の燃焼によって排出される二酸化炭素は、新たな樹木の成長過程で吸収されるため、結果的に二酸化炭素の増減がゼロになる『カーボンニュートラル』の考え方に基づいているのです。
また、パームヤシ殻や建築廃材など燃えやすい木材は、RPF燃料(Refuse derived paper and plastics densified Fuel)として再利用されます。直訳すると「廃棄物由来の紙・プラスチックを高密度した燃料」で、マテリアルリサイクルが困難な廃棄物を原料とした新エネルギーです。
石炭などの化学燃料と比較して二酸化炭素量の排出量が少なく、コストも抑えられるとして注目を集めています。主に、セメント製造の原材料や工業用ボイラーのバイオマス燃料に用いられています。
堆肥
堆肥とは、落ち葉や動物のふん尿、食品残さなどの有機物を微生物の力で分解させ、成分が安定するまで十分に発酵させたものです。廃木材は、堆肥化によるリサイクルもでき、有機肥料や水分調整剤に活用されています。
埋め立て・焼却する
いずれの方法でもリサイクルできない廃木材は、埋め立てもしくは焼却により処分されます。
埋め立てされる際は、一般的に管理型処分場で最終処分されます。管理型処分場とは、埋め立てた廃棄物が周囲に流出しないよう厳重に管理された最終処分施設です。
焼却する際は、燃焼により発生した熱エネルギーとして回収されるケースもあります。
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