県をまたぐ産業廃棄物の収集運搬・処分業務に関する地方自治体の運用について

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産業廃棄物の収集運搬・処分業務を行う際に、県をまたぐ場合の運用はどのようになっているのでしょうか。産業廃棄物の処理は住民にとって身近な問題であり、できるだけ小さな行政単位で完結するのが望ましいと言えますが、同じような施設を各自治体ごとに持つのは非効率なため、分業が必要な面もあります。
今回のコラムでは産業廃棄物の県をまたいだ広域移動状況を確認した上で、地方自治体の流入抑制策や法定外目的税(産業廃棄物税)について見て行きたいと思います。

許可権者

許可権者とは、産業廃棄物に関する指導、処分、許可などを与える権限を有する自治体のことです。産業廃棄物処理(施設設置も含む)に関する許可権者は廃棄物処理法で定められており、「都道府県知事」と「政令市の市長」となっています。
政令市とは「政令指定都市」と「中核市」のことで、これらの市で産業廃棄物処理業を営む場合は、都道府県知事ではなく市長の許可を受ける必要があります。
中核市とは、政令指定都市以外で人口20万人以上の要件を満たす規模や能力などが比較的大きな都市で、事務権限を強化しできる限り住民の身近なところで行政を行なうことができるようにしたものです。最近では2021年4月に長野県松本市(136)と愛知県一宮市(137)が追加になっています。

2023年4月時点での都道府県および政令市は下表のとおり、都道府県47、政令指定都市20、中核市62、計129となっています。ちなみに各自治体の番号は許可番号の上3桁になります。

都道府県 政令指定都市 中核市
北海道 001 札幌市 051 旭川市 050
函館市 052
青森県 002 青森市 108
八戸市 122
岩手県 003 盛岡市 110
宮城県 004 仙台市 054
秋田県 005 秋田市 086
山形県 006 山形市 130
福島県 007 郡山市087
いわき市094
福島市124
茨城県 008 水戸市 134
栃木県 009 宇都宮市 084
群馬県 010 前橋市 114
高崎市 116
埼玉県 011 さいたま市 101 川越市 103
越谷市121
川口市125
千葉県 012 千葉市 055 船橋市 104
柏市111
東京都 013 八王子市 109
神奈川県 014 横浜市 056 横須賀市 058
川崎市057
相模原市098
新潟県 015 新潟市 059
富山県 016 富山市 085
石川県 017 金沢市 060
福井県 018 福井市 131
山梨県 019 甲府市 132
長野県 020 長野市 095
松本市 136
岐阜県 021 岐阜市 061
静岡県 022 静岡市 062
浜松市063
愛知県 023 名古屋市 064 豊田市 090
豊橋市096
岡崎市105
一宮市137
都道府県 政令指定都市 中核市
三重県 024
滋賀県 025 大津市 115
京都府 026 京都市 065
大阪府 027 大阪市 066 高槻市 106
東大阪市068
豊中市118
枚方市120
堺市 067 八尾市 126
寝屋川市133
吹田市135
兵庫県 028 神戸市 069 姫路市 070
西宮市099
尼崎市071
明石市127
奈良県 029 奈良市 102
和歌山県 030 和歌山市 072
鳥取県 031 鳥取市 128
島根県 032 松江市 129
岡山県 033 岡山市 083 倉敷市 100
広島県 034 広島市 073 福山市 091
呉市074
山口県 035 下関市 075
徳島県 036
香川県 037 高松市 097
愛媛県 038 松山市 089
高知県 039 高知市 092
福岡県 040 北九州市 076 久留米市 112
福岡市077
佐賀県 041
長崎県 042 長崎市 079
佐世保市 080
熊本県 043 熊本市 081
大分県 044 大分市 088
宮崎県 045 宮崎市 093
鹿児島県 046 鹿児島市 082
沖縄県 047 那覇市 119

三重県、徳島県、佐賀県については政令市が存在しないため、許可権者は都道府県知事のみになっています。政令市は今後も増えるものと思われます。
なお、広域認定制度のような一部例外はあるものの、建設業許可のように全国を対象にした大臣許可は存在しません。許可の取得にあたっては「住民同意」の運用など各許可権者の判断がかなり異なることがあります。また産業廃棄物処理業者の視点でいうと、県をまたいで広域に営業する場合、許可更新も含めてコストがかかります。


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産業廃棄物の県をまたぐ広域移動状況

2021年度の実績(大阪湾フェニックスセンターの実績除く)で産業廃棄物の広域移動の状況がどうなっているのか確認してみましょう。

広域処理ブロックの設定

ブロック名 都道府県名
北海道・東北 北海道、青森県、岩手県、宮城県、秋田県、 山形県、福島県、新潟県
関東 茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、 東京都 神奈川県
中部 富山県、石川県、福井県、山梨県、長野県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県
近畿 滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県
中国 鳥取県、島根県、岡山県、広島県、山口県
四国 徳島県、香川県、愛媛県、高知県
九州・沖縄 福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

都道府県外移動量

都道府県外移動量

2021年度に関東ブロックにおいて、排出都道府県をまたいで移動し中間処理または最終処分された産業廃棄物量は1,747万トンとなっており、全体の41.7%を占めています。そのうちブロック外へ移動したのは311万トン(17.8%)となっています。
広域処理ブロック間の移動状況は下図のとおりです。関東ブロックからの主な搬出先ブロックは「北海道・東北ブロック」「中部ブロック」「中国ブロック」となっています。逆に「北海道・東北ブロック」からの移動も多くなっています。

都道府県外移動量

関東ブロックにおける広域移動量(中間処理目的)

関東ブロックにおける広域移動量(中間処理目的)

2021年度に関東ブロックにおいて、排出都道府県をまたいで移動し中間処理された産業廃棄物量は1,633万トンとなっており、そのうちブロック外へ移動したのは227万トンと13.9%となっています。東京都において広域移動し中間処理された産業廃棄物量は803万トンと関東ブロックの半分弱となっており、そのうちブロック外へ移動したのは47万トン(5.9%)となっています。東京都で発生した産業廃棄物の多くは関東ブロック内で焼却等の中間処理が行われています。

関東ブロックにおける広域移動量(最終処分目的)

関東ブロックにおける広域移動量(最終処分目的)

2021年度に関東ブロックにおいて、排出都道府県をまたいで移動し最終処分された産業廃棄物量は115万トンとなっており、そのうちブロック外へ移動したのは85万トンと74.1%となっています。東京都において広域移動し最終処分された産業廃棄物量は21万トンと関東ブロックの18.7%となっており、そのうちブロック外へ移動したのは16万トン(72.9%)となっています。関東ブロックで発生した産業廃棄物(主に中間処理後物)の7割以上は関東ブロック外で最終処分されています。

出典:環境省「令和4年度 廃棄物の広域移動対策検討調査及び廃棄物等循環利用量実態調査報告書」

首都圏で発生した産業廃棄物は首都圏内で焼却等の中間処理を行い減量化した後に、北海道・東北・中部・中国などで最終処分されているというのが主な流れとなっていることがわかります。

都道府県等による流入抑制策

自治体によっては、区域をまたぐ形での廃棄物の流入に対して、事前に自治体との協議もしくは届け出を義務づけるなどの「流入抑制策」をとっている場合があります。流入抑制策には区域外からの流入について事前に把握したり、不法投棄等の不適正処理を防止するなどの目的があります。
2023年5月時点における都道府県等における流入抑制策の導入状況ですが、導入している自治体が79(61.2%)、導入していない自治体が50(38.8%)となっています。2015年に環境省が発表した数字から若干導入が進んでいるように思います。
産業廃棄物の流入抑制策について、地域によって正式に条例としているところもあれば指導要綱としているところもありますが、いずれも実質的な強制力はあります。その内容についても協議が必要な場合もあれば届出だけのケースもあり、例外を定めているケースもあります。実際に県をまたいで廃棄物を移動する場合は必要な手続きの有無と承認に必要な期間を確認する必要があります。

事前協議、事前届出制度の導入一覧(色つきが導入しているところ)

都道府県 政令指定都市 中核市
北海道 札幌市 旭川市
函館市
青森県 青森市
八戸市
岩手県 盛岡市
宮城県 仙台市
秋田県 秋田市
山形県 山形市
福島県 郡山市
いわき市
福島市
茨城県 水戸市
栃木県 宇都宮市
群馬県 前橋市
高崎市
埼玉県 さいたま市 川越市
越谷市
川口市
千葉県 千葉市 船橋市
柏市
東京都 八王子市
神奈川県 横浜市 横須賀市
川崎市
相模原市
都道府県 政令指定都市 中核市
新潟県 新潟市
富山県 富山市
石川県 金沢市
福井県 福井市
山梨県 甲府市
長野県 長野市
松本市
岐阜県 岐阜市
静岡県 静岡市
浜松市
愛知県 名古屋市 豊田市
豊橋市
岡崎市
一宮市
三重県
滋賀県 大津市
京都府 京都市
大阪府 大阪市 高槻市
東大阪市
豊中市
枚方市
堺市 八尾市
寝屋川市
吹田市
都道府県 政令指定都市 中核市
兵庫県 神戸市 姫路市
西宮市
尼崎市
明石市
奈良県 奈良市
和歌山県 和歌山市
鳥取県 鳥取市
島根県 松江市
岡山県 岡山市 倉敷市
広島県 広島市 福山市
呉市
山口県 下関市
徳島県
香川県 高松市
愛媛県 松山市
高知県 高知市
福岡県 北九州市 久留米市
福岡市
佐賀県
長崎県 長崎市
佐世保市
熊本県 熊本市
大分県 大分市
宮崎県 宮崎市
鹿児島県 鹿児島市
沖縄県 那覇市

出典:リーテム「県外産業廃棄物搬入の事前協議」(2023年5月30日)

※北九州市への産業廃棄物の事前届提出義務が2023年10月26日をもって廃止されました
– 北九州市「広域移動要綱は令和5年10月26日付けで廃止しました」

都道府県などによる流入抑制策の状況

出典:環境省「廃棄物処理政策に関するこれまでの施策の施行状況」

都道府県等の法定外目的税(産業廃棄物税)

2000年4月の地方分権一括法による地方税法の改正により、新たに法定外目的税が創設されて以降、2002年の三重県から2007年の愛媛県まで27都道府県と政令指定都市である北九州市において、いわゆる「産業廃棄物税」が導入されています。
2021年度の税収はあわせて約78億円となっており、その主な目的は産業廃棄物の3Rや適正処理の推進です。税収が多いのは、北九州市・北海道・広島県・岡山県・愛知県・三重県などになります。

都道府県等の法定外目的税

出典:総務省「15 法定外税の実施状況(令和4年度)」

おわりに

産業廃棄物の処理、とりわけ最終処分については地方がその機能を担っている中で、事前協議等の搬入抑制策や法定外税である産業廃棄物税が地方自治体で導入され、バランスを保っている実態があります。
事前協議等については不法投棄が問題になった過去があるのは事実ですが、適正処理が見込める優良業者には柔軟な運用を検討頂いても良いのではないでしょうか。
税制については持続可能社会に向けて「税制のグリーン化」が総合的に論じられているところだと思います。
これらの制度やその運用が時代に合わせて見直されることを期待しております。


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