
2022年も産業廃棄物処理業者に関連がある法改正がありました。
ここでは2022年上期に施行または制定された主な法改正について説明します。
プラスチック資源循環促進法の施行
「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が2022年4月1日に施行されました。
詳細については下記サイトにてご確認下さい。
・プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律に関する情報(環境省)
・プラスチックの資源循環に取り組む事例(環境省)
概要については以下のとおりです。

それぞれの役割は以下のとおりです。
事業者 | ①プラスチック使用製品設計指針に即してプラスチック使用製品を設計すること ②プラスチック使用製品の使用の合理化のために業種や業態の実態に応じて有効な取組を選択し、当該取組を行うことによりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること ③自ら製造・販売したプラスチック使用製品の自主回収・再資源化を率先して実施すること ④排出事業者としてプラスチック使用製品産業廃棄物等の排出の抑制及び再資源化等を促進すること |
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消費者 | ①プラスチック使用製品の使用の合理化によりプラスチック使用製品廃棄物の排出を抑制すること ②プラスチック使用製品廃棄物を市区町村及び事業者双方の回収ルートに適した分別をして排出すること ③認定プラスチック使用製品を使用すること |
国 | ①必要な資金の確保等の措置を講ずること ②情報の収集、整理及び活用並びに研究開発の推進及びその成果の普及等の措置を講ずること ③教育活動、広報活動等を通じた国民の理解醸成及び協力の要請等の措置を講ずること |
市区町村 | ・家庭から排出されるプラスチック使用製品廃棄物の分別収集、再商品化その他の国の施策に準じてプラスチックに係る資源循環の促進等に必要な措置を講ずること |
都道府県 | ・市区町村がその責務を十分に果たすために必要な技術的援助を与え、国の施策に準じてプラスチックに係る資源循環の促進等に必要な措置を講ずること |
具体的な動きは今後出てくると思われますが、
対象12品目(下表)の中には有料化されるものが出てくるので、買物用マイバックのように、マイストロー・マイフォークやマイブラシなどを持ち歩くようになるかもしれません。また、プラスチック製品を廃棄する際には新たな分別が必要になる可能性があります。
対象製品 | 対象業種 |
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①フォーク ②スプーン ③テーブルナイフ ④マドラー ⑤飲料用ストロー | ・各種商品小売業(無店舗のものを含む) ・飲食料品小売業(野菜・果実小売業、食肉小売業、鮮魚小売り業及び酒小売り業を除き、無店舗のものを含む) ・宿泊業 ・飲食店 ・持ち帰り・配達飲食サービス |
⑥ヘアブラシ ⑦くし ⑧かみそり ⑨シャワーキャップ ⑩歯ブラシ | ・宿泊業 |
⑪衣類用ハンガー ⑫衣類用カバー | ・各種商品小売業(無店舗のものを含む) ・洗濯業 |
廃棄物処理事業者は分別や運搬について新たなルートが出てくる(一方で既存ルートは減少する)ため、ビジネスチャンスであるとともにリスクでもあると言えるでしょう。
改正道路交通法施行規則の施行
2022年4月から、改正道路交通法施行規則が順次施行されます。
運転前後のアルコールチェックは今まで運送・輸送事業者(緑ナンバー)のみが対象でしたが、今回自社製品などを搬送のため自動車を使用する事業者(白ナンバー)まで対象が拡大されました。
【対象範囲】
乗車定員11人以上の白ナンバー車1台以上を保持 | 白ナンバー車5台以上を保持 ※原付を除くオートバイは0.5台換算 |
下記条件どちらか1つでも該当する事業所が対象となります。また、安全運転管理者の選任も必須です。
【2段階の施行】
2022年4月1日から運転前後でのアルコールチェックが必須となり、さらに10月1日からは、チェック時にアルコール検知器を使用しなくてはならなくなります。また、その確認記録も保存が義務付けられます。
警察庁は2022年9月9日に「検知器が品薄で入手困難なため、延期は賛成」などの意見があがったことから、予定していた10月から延期することを正式決定しました。検知器が市場に流通する見通しが立たないため延期する期間は未定となっています。
4月1日から | ・運転者の状態を目視等で確認することにより、運転者の酒気帯びの有無を確認すること ・酒気帯びの有無について記録し、記録を1年間保存すること |
10月1日から | ・運転者の酒気帯びの有無の確認をアルコール検知器で行うこと ・アルコール検知器を常時有効に保持すること(正常に作動し故障がない状態にしておく) |
【記録する内容】
・確認者名 | |
・運転者名 | |
・運転者の業務に係る自動車の自動車登録番号又は識別できる記号、番号等 | |
・確認の日時 | |
・確認の方法 | アルコール検知器の有無 |
対面でない場合は具体的方法 | |
・酒気帯びの有無 | |
・指示事項 | |
・その他必要な事項 |
盛土規制法の主なポイント |
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盛り土により人家に被害を及ぼしうる区域を指定、許可制に |
安全な基準に沿って盛り土工事が行われたか確認 |
土地所有者などの責任の所在の明確化 |
無許可造成や違反の際の罰則を強化 |
盛土規制法の成立
2021年7月に静岡県熱海市で発生した土石流災害を受け、違法に造成された盛り土を全国一律で規制します。宅地造成等規制法を改正し、名称を改めました。
盛土規制法では盛り土によって被害を及ぼす可能性のある区域を指定し、区域内の盛り土工事は許可が必要となります。盛り土は土地の造成だけでなく、単に不要な土を捨てる行為や一時的な堆積も対象となります。
盛り土を行う場合の安全対策も強化。国は災害防止のために必要な技術基準を設定する。盛り土工事の際には、事業者らに工事の状況を定期的に報告させ、適正な基準に沿って安全対策が行われているか確認する。
無許可造成のほか、危険な盛り土に対する改善工事などの是正措置命令に違反した場合の罰則も厳しくする。従来は法人、個人を問わず「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」だったが、個人は「3年以下の懲役または1千万円以下の罰金」に引き上げる。法人では罰金3億円以下とする。
都道府県や政令指定都市などは今後、区域の指定のため地形や地質の調査を担う。国は調査の円滑化のため、今後有識者による検討会を立ち上げ、ガイドラインを作成する。
参考:国土交通省ウェブサイト(https://www.mlit.go.jp/toshi/toshi_tobou_tk_000076.html)
参考:国土交通省 盛土規制法概要
また、国土交通省は、廃棄物処理法に違反した建設業者への監督処分基準を一部改正し、厳罰化した。
廃棄物混じり土を適正に処理せず、会社役員らが懲役刑に処せられた場合、「15日以上」の営業停止となる。 5月26日付で改正基準を施行した。
従来の基準では、役員や営業所の代表者などが懲役刑に処された場合は「7日以上」。 それ以外の場合で役職員が罰金刑などの刑に処されたときに「3日以上」の営業停止処分としていた。 厳罰化では「7日以上」を「15日以上」、「3日以上」を「7日以上」に引き上げた。
以上か土地の形質変更や土の処分についての新たな規制や厳罰化の動きになります。

改正公益通報者保護法の施行
2022年6月1日より、改正公益通報者保護法が施行され、従業員300名超の事業者には内部通報制度を整備する義務が生じております。
(従業員300名以下の事業者であっても、体制整備の努力義務が課されています。)
公益通報者保護法のそもそもの発端となったのは、2000年代初頭、食品の産地偽装問題や自動車のリコールなどの企業不祥事が相次いで発覚、企業内の問題を内部通報(あるいは告発)した人物に対し、企業が解雇や不当な配置転換などを行ってしまう事案が相次ぎました。こうした事案の防止に向け、不正を正そうとした従業員を不利益な取扱から守り、通報を促すために、2006年に公益通報者保護法が施行されています。
今回の改正のポイントとしては、以下のとおりです。
(1)公益通報者として保護される者の拡大
新たに「退職後1年以内の退職者」や「役員」が規定に追加されました。
~2022年5月末(改正前) | 2022年6月~(改正後) |
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①労働者 ②派遣労働者 ③下請事業者や他の取引事業者の労働者・派遣労働者 |
①労働者+1年以内に退職した労働者 ②派遣労働者+1年以内に終了した派遣労働者 ③下請事業者や他の取引事業者+1年以内に退職・終了した当該他の下請事業者や取引事業者の労働者・派遣労働者 ④役員+下請事業者や他の取引事業者の役員 |
(2)公益通報者としての保護の内容の拡大
事業者が公益通報によって受けた損害の賠償を請求できないことが明文化されました。
~2022年5月末(改正前) | 2022年6月~(改正後) |
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①公益通報を理由とした解雇の無効 ②公益通報を理由とした労働者派遣契約の解除の無効 ③その他交易通報を理由とした不利益な取扱いの禁止 |
①公益通報を理由とした解雇の無効 ②公益通報を理由とした労働者派遣契約の解除の無効 ③その他公益通報を理由とした不利益な取扱いの禁止 ④公益通報を理由とした役員解任の場合の損害賠償 ⑤公益通報者に対する公益通報を理由とした損害賠償請求の禁止 |
(3)公益通報対象事実の拡大
新たに「行政罰である過料の理由とされている事実」が規定に追加されました。
~2022年5月末(改正前) | 2022年6月~(改正後) |
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①刑事罰の対象となる犯罪行為の事実 | ①刑事罰の対象となる犯罪行為の事実+ 過料(行政罰)の理由となる事実 |
(4)外部通報案件の保護要件の緩和
「通報対象事実が生じるか、まさに生じようとしていると信ずるに足りる相当の理由がある場合」(真実相当性)を明確化し、新たに「財産」に対しての通報対象事実が追加されました。
~2022年5月末(改正前) | 2022年6月~(改正後) |
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通報対象事実について真実相当性があり、以下のいずれかに該当する場合 ①不利益な取扱いを受けると信じるに足りる相当の理由がある ②通報対象事実に関する証拠が隠蔽・偽造されるおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある ③生命・身体に対する危害が発生し、又はその急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある ④事業者から正当な理由なく内部通報しないことを要求された 内部通報したが、通報日から20日経過しても、正当な理由なく事業者が調査を行わない |
通報対象事実について真実相当性があり、以下のいずれかに該当する場合 ①不利益な取扱いを受けると信じるに足りる相当の理由がある ②通報対象事実に関する証拠が隠蔽・偽造されるおそれがあると信じるに足りる相当の理由がある ③事業者が通報者を特定させる事項を正当な理由なく漏らすと信じるに足りる相当の理由がある ④事業者から正当な理由なく内部通報しないことを要求された ⑤内部通報したが、通報日から20日経過しても、事業者が調査を行わない ⑥生命・身体に対する危害もしくは財産に対する回復困難または重大な損害が発生し、又はその急迫した危険があると信ずるに足りる相当の理由がある |
従業員の数が300人以下の事業者はリソースに限りもあると思われますので、努力義務を負うこととなった公益通報対応体制の整備に関して、特に対応しておくことが望ましい措置を3つほどご紹介いたします。
(1)内部通報窓口の設置
内部通報窓口をまだ設置していない事業者は、内部通報を部門横断的に受け付ける窓口を設置することが重要です。事業者は、公益通報対応体制の整備の第一歩として、業務上のレポーティングラインとは別に、事業者内部の問題を通報・相談することのできる内部通報窓口を設置することが求められています。といってもリソースの乏しい事業者であれば、監査役を通報窓口とするほか、民間の専門事業者や外部弁護士など、外部に設置することも可能とされておりますので、選択肢の一つとして検討してみるのも良いかと思います。
(2)内部規定の整備(通報対応における利益相反担当者の排除/不利益な取り扱いに関する措置)
内部通報窓口を設置するに当たって、通報の調査や是正に対応する者が、事案に関係する者であることが判明した場合に、当該者を担当から外すことのできる規定を内部規程に定めておくことが、通報者にとっての利益相反を防止する対策となります。また、当然のことながら、通報を理由とする不利益な取扱いを明確に禁止、不利益な取扱いが生じてしまった場合には、適切な救済・回復の措置や処分等の措置をとると規定することも肝要です。
(3)社内研修の実施
内部通報対応体制の実効性を高める上でも、社内研修を実施し、整備した内部通報対応体制対しての理解を深めていくことが必要です。利用者となる従業員等に対する研修では、組織にとっての内部通報の重要性や意義、通報者の保護などについて、理解度を深めることを目指すことが重要です。
パワハラ防止法の強化
2022年4月1日より、中小企業に対してもいわゆる改正「パワハラ防止法」(通称「労働施策総合推進法」とも呼ばれています。)が適用され、パワーハラスメント防止のために雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。「パワハラ防止法」に関する解説と、中小企業がとるべき取組みや措置についてご説明します。
(1)パワハラ防止法の概要
パワハラ防止法においては、「パワーハラスメント」の認定の要素として①優越的な関係、②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動であること、③従業員の就業環境を害すること、の3点を全て満たすものとなります。
そもそも優越的な関係とはどういったものでしょうか。優越と聞くと上司から部下へのイメージですが、実は必ずしも上司・部下に限ってはおりません。厚生労働省が2020年1月15日に出したパワハラ指針では、「優越的な関係を背景とした言動」について、以下のように示されています。ITリテラシーのない上司を部下が突き上げるような「逆パワハラ」にも留意が必要ということです。
優越的な関係を背景とした言動とは |
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・職務上の地位が上位の者による言動 ・同僚又は部下による言動で、当該言動を行う者が業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの ・同僚又は部下からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの |
また客観的に見て、必要かつ相当な範囲での適正な業務遂行の指示や指導については、パワハラに該当しません。
では、「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」とはどういったものか、具体例として、パワハラ指針では、以下のように示されています。
業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動とは |
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・業務上明らかに必要性のない言動 ・業務の目的を大きく逸脱した言動 ・業務を遂行するための手段として不適当な言動 ・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動 |
更にブレイクダウンしてみると、職場におけるパワハラの代表的な言動の類型として、2012年1月30日に厚生労働省が公表した具体例を挙げておきます。
代表的な言動の6つの類型 | 該当すると考えられる例 |
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①身体的な攻撃 暴行・傷害 |
・殴打、足蹴りを行う。 ・相手に物を投げつける。 |
②精神的な攻撃 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言 |
・人格を否定するような言動を行う。相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を含む。 ・業務遂行に必要な以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行う。 |
③人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視 |
・1人の労働者に対して同僚が集団で無視をし、職場で孤立させる。 |
④過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害 |
・新卒採用者に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務目標を課し、達成できなかったことに対し厳しく叱責する。 |
⑤過少な要求 業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと |
・管理職を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせる。 ・気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えない |
⑥個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること |
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該労働者の了解を得ずに他の労働者に暴露する。 |
(2)中小企業がとるべき取組み、措置
厚生労働省は、パワハラ指針の中で、雇用管理上講ずべき措置の具体的な内容が、以下のように示されています。
事業主が、雇用管理上講ずべき措置(パワハラ指針) |
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①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 ②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備 ③職場におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応 ④その他①ないし③の措置と併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等) |
先ず従業員に、どのような言動がパワハラで、パワハラを行った場合にはどのようなことになるのか、理解してもらう必要があります。パワハラ指針には以下2点が義務として記載されていますので留意が必要です。
就業規則やハラスメント防止規定等で、パワハラに対して厳正な処分を行うという考えを明確化、当該情報を社内報知や社内ネットワークおよび社内研修等で周知することが考えられます。
事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発 |
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①職場におけるパワハラの内容、パワハラを行ってはならない旨の方針を明確にし、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること ②パワハラの行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則その他の職場における服装規律等を定めた文書に規定し、労働者に周知・啓発すること |
次に従業員がきちんと相談しやすい体制を整えるために、相談窓口の制度を設け、担当者を定めることが必要です。
組織のレポートラインから独立した相談窓口を設けることが望ましく、弁護士等の外部専門家を相談窓口とすることも考えられます。担当者向けに対応マニュアルを作成し、十分な体制を整えるための準備をしておくことが肝要です。
相談に応じて適切に対応するために必要な体制整備 |
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①相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること ②相談窓口担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること |
最後にパワハラに関する相談や苦情が発生した場合、被害拡大を防ぐために、迅速かつ適切な対応をすることが求められます。例えば被害者と行為者を配置転換により距離を置く、行為者の処分等、社内で適切な対応がとられたか、他の従業員から見ても適切な措置だと納得するような毅然として対応が必要となります。
職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応 |
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①パワハラ事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること ②パワハラの事実関係ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を行うとともに、行為者に対する措置を適正に行うこと ③再発防止に向けた措置を講ずること(労働者のパワハラに対する意識を啓発するための研修や講習等を行うことも含まれる) |
パワハラ防止に対する体制の構築は事業者それぞれのご事情に合わせて適切に対応する必要がありますが、パワハラ事案が発生し、措置を間違えると事業者にとって大きな損失となるリスクも高いかと思いますので、未だ体制が完全に整っていない事業者は早めの対応をお願い致します。
電子帳簿保存法改正による経理業務のデジタル化
2022年1月1日より、改正電子帳簿保存法が施行されており、経理業務でのDX化、デジタル化への対応を急がれていることと思います。特に今回の改正で「電子取引」については、データで受け取った電子データを紙に出力して保存することは認められず、電子データで保存しなければならない点に留意が必要です。
(1)電子帳簿保存法の概要
電子帳簿保存法とは、従来は紙での保存が義務付けられていた国税関係帳簿書類を電子データ化して保存するための法律です。その歴史は古く1998年に施行された法律で、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。電子帳簿保存法は、電子帳簿等保存制度・スキャナ保存制度・電子取引に係る電子データの保存制度の大きく3つに内容が分けられます。
電子データによる3種類の保存方法 |
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①電子帳簿等保存(電子的に作成した帳簿・書類をデータのまま保存) ②スキャナ保存(紙で受領・作成した書類を画像データで保存) ③電子取引(電子的に授受した取引情報をデータで保存) |
最近の商取引デジタル化によって、具体的には以下のような電子取引を実施するケースも増えており、対応が必要です。
● 取引先から郵送に代わって、請求書が電子メールにて送信されてきた
● 自社で利用しているクラウドサービスを活用して請求書を発行した
● ネット通販で購入した什器や備品の領収書をホームページからダウンロードした
● EDIを利用して取引先と商品の受発注を行っている
また、国税関係帳簿書類には取引先から受領した書類だけでなく、自社作成書類の控え等も含まれますので破棄しないよう注意が必要です。
(2)今回改正のポイント
長引くコロナ禍でのリモートワークが広がる中で、民間企業では経理業務でのデジタル化・効率化を急速に導入する機運が高まり、また政府もデジタルデータを活用して業務効率や生産性の向上、先進国として電子化を進めて国際的な競争力を向上することを背景にデジタル庁の創設や本邦内での各種規制の緩和が進んでおります。
上記背景を踏まえて、今回改正されたポイントは以下のとおりです。
変更項目 | ~2021/12 改正前 | 改正後 2022/1~ |
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①電帳法承認制度の廃止 | ・国税関係帳簿を電磁的記録により保存する場合には、事前に税務署長の承認が必要 | ・令和4年1月1日以降に保存する国税関係帳簿書類については原則申請不要 |
②国税関係書類のスキャナ保存要件の緩和 | ・3営業日以内のタイムスタンプ付与が不可欠。 | ・タイムスタンプの付与は最長2ヶ月以内に延一 |
③適正事務処理要件の廃止 | ・適正事務処理要件として定期検査、相互牽制体制構築要。 ・定期検査での原本と電子データの突合作業迄、原本破棄不可 ・相互チェックの為、事務処理担当者2名以上での対応が必要。 |
・社内整備を伴う適正事務処理要件の廃止。 ・原本は、保管義務がなくなり、破棄が可能。 ・相互けん制の廃止により、事務処理担当者は、1名で対応可。 |
④検索要件の緩和 | ・取引年月日、勘定科目、取引金額やその帳簿の種類に応じた主要な記録項目を検索条件として設定する必要あり。 | ・検索要件について、「年月日」「金額」「取引先」の3項目の記録化に簡素化。 |
⑤罰則規定の追加 | ・従前罰則規定なし | ・スキャナ保存及び電子取引データの改ざん等により不正計算がされている場合の重加算税を10%加重に賦課。 |
今回の電子帳簿保存法の改正では、上記のように電子化を進めるためのハードルが大きく下がったとはいえ、事業者のリソースの問題で、適正な業務管理、フローを定着させるには相応の負荷もあり、2年の猶予期間が設定されています。
(3)改正電子帳簿保存法の猶予期間(~2023年12月31日まで)
電子帳簿保存法対応が間に合わない中小企業などから困惑する意見が出ていたため、国税庁は「電子保存の義務化」の猶予が2年間認められる要件についてのコメントを2021年末に公表しております。適用猶予を受けるためには①「やむを得ない事情」と②「整然とした形式及び明瞭な状態で出力されたものを準備しておく」という2つの条件を満たす必要があります。
①やむを得ない事情とは、電子データを保存するためのシステムや業務フローの整備などが間に合わなかったケースで、法律の要件を満たす形で電子データを保存できる社内体制が整っていないときには、該当すると考えられています。
②国税庁は「令和5年(2023年)12月31日までの電子取引については、保存すべき電子データを書面に出力して保存し、税務調査等の際に提示又は提出ができるようにしておいていただければ差し支えありません」と猶予を認めています。税務調査時にスムーズに内容を確認できるよう、売上・仕入明細、売掛・買掛明細、固定資産台帳、給与台帳など、各種帳簿を保存、求められれば整然とプリントアウトする等で提出できる体制は必要です。
しかし、この猶予措置は2年間で終了してしまいます。2024年1月1日以降は電子データのままで保存しなければならず、紙に印刷して保存することは認められません。また2023年10月にはインボイス制度の導入が予定されており、電子帳簿保存法の対応とインボイス制度の対応が重なると負担も大きく、「2年ある」ではなく「2年しかない」という時間軸で、電子帳簿保存法への対応を急がれることをお勧めします。

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