
不用品をリサイクル会社などに売る際に気を付けたいのが「逆有償」になっていないかどうかです。逆有償とは、不用品を有償販売する際、買い取り金額より支払い金額が多くなり、結果的に有償販売にならない取引形態のことです。
本記事ではどのような場合に逆有償となるのか、事例を交えて紹介します。万が一逆有償取引となる場合、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」の対象となる可能性があります。仮に意図せず逆有償取引になった場合でも法律違反に問われる可能性があるため注意しましょう。
目次
逆有償とは?
有償取引とは、何かを販売してコストを上回る対価(利益)を得ることを指します。逆有償取引は、この有償取引の逆で「有価販売したものの対価よりも、支払う金額(コスト)が上回る取引」のことです。分かりやすくいえば「商品を売ったが赤字になった」状態で、「手元マイナス」とも呼ばれます。
コストの代表的なものとしては、運搬費が挙げられます。例えば、価値ある金属を含むスクラップを10万円で買い取ってもらったものの、運搬費として12万円の支払いが必要になった場合が逆有償取引です。
販売代金よりも運搬費が上回ってしまう逆有償取引となれば、輸送時における不用品は「廃棄物」と見なされ、法規制の対象となることがあるため、注意が必要です。
環境省の「規制改革通知に関するQ&A集」によると、逆有償取引においては「有償で譲り受ける者が占有者となるまでは、廃棄物処理法の規制を適用する必要がある(※)」とされています。
ややわかりにくい表現ですが、この条文は受け取るリサイクル業者などが「占有者となるまで」の輸送時には、廃棄物処理法の適用対象となることを意味するものです。そのため、法律の取り決めに従って扱わなければなりません。
もし逆有償取引に該当するにもかかわらず、「有償取引だから許可は不要」と考え、無許可業者に運搬を委託したりすると、法律が定める罰則の中で最も重い「5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下(法人は3億円以下)の罰金、またはこの両方」が科されます(※)。
参考:環境省「規制改革通知に関するQ&A集」(入手日付2023-10-18)
参考:e-Gov法令検索. 「廃棄物の処理および清掃に関する法律(第25条の6)」(入手日付2023-10-18)

逆有償の対応方法
廃棄物かどうかは、有償・逆有償だけでは決まりません。「総合的な判断」によって決まるものです。総合的な判断では「物の性状」「排出の状況」「経済的合理性」なども勘案して有価物か廃棄物かを判断します。
しかし、これまでの行政指導では、総合的な判断の中でも、特に逆有償取引の要素を重要視する傾向があります。
逆有償取引となる可能性がある場合には、運搬時には有価物ではなく、廃棄物として法の規定に従って扱うようにしましょう。
廃棄物であるなら、収集運搬については都道府県や政令市の許可をもった収集運搬業者に運送を委託する必要があります。また、事前に収集運搬委託契約も締結しなければなりません。
さらに、マニフェストの交付と回収も必要です。ただし収集運搬業者が持ち帰った時点で、有価物として販売可能となります。
そのため、マニフェストは最終処分完了確認をするE票まで返送を受ける必要はなく、運搬完了確認ができるB2票の返送を受け、A票とともに保管しましょう。
まとめると以下のとおりです。
- 委託する収集運搬業者には、廃棄物収集運搬業の許可が必要
- 排出事業者は、収集運搬業者と処理委託契約を締結する
- マニフェストはA票・B2票の2枚を保存する
- 処分受託者が存在しないため「処分受託者」欄に斜線を引く
前述したように廃棄物収集運搬業の許可を持たない業者に運搬を委託すると、罰則が科されるため注意が必要です。
参考:e-Gov法令検索 「廃棄物の処理および清掃に関する法律(第27条の2の1)」 (入手日付2023-10-18)
逆有償の違反事例
実際に逆有償取引が問題となった事例を紹介します。
大手鉄鋼メーカーが製鋼スラグを業者に売却する際、運搬費などの名目で売却価格を上回る代金を渡したとして、県が工場に立ち入り検査を行いました。
この鉄鋼メーカーは事実上の「引取料」として運搬費などを計上し、意図して逆有償取引をしていた疑いがあります。このケースのように意図的ではなくとも、以下のような場合は廃棄物処理法違反に該当する可能性があるため、注意してください。
受取企業に費用を支払い 、不要品を譲渡した場合
排出事業者が受取企業に費用を支払って不用品を譲渡する場合、譲渡するものは「廃棄物」となり、処理を委託したことになります。
このケースで受取企業が廃棄物処理業の許可を得ていなければ、排出事業者が無許可業者に処分を委託したことになり、法律違反に問われます。
受取企業に無償で不要品を譲渡した場合
排出事業者が不要品を無償で受取企業に引き渡した場合にも、0円での譲渡は有償売却に該当しないとして、逆有償だと判断される可能性があります。
受取企業に運搬費を支払い、運搬費が譲渡代金を超過している場合
排出事業者が受取企業に支払った運搬費が、譲渡代金より多い場合には、逆有償取引に該当する可能性があります。
逆有償取引となる場合、運搬中には廃棄物として扱うことが求められます。当然、委託する収集運搬業者は都道府県や政令市の許可を得た業者でなければなりません。
逆有償が起きるケース
逆有償取引になると廃棄物処理法の規制対象となるため注意が必要ですが、中には相場の変動や燃料価格の高騰によって、気付かないうちに手元マイナスになってしまっている場合もあります。
以下のようなケースでは意図せず、逆有償取引となる場合もあるため注意しましょう。
買取単価の変動
金属スクラップなどの買取単価は、日々相場が変動しています。かつては高く買い取ってもらっていたものでも、買取単価が安くなることで、気付かないうちに運搬費の占める割合が高くなって、手元マイナスとなっていることもあります。
逆有償取引に該当しないかどうか、相場をチェックするなどして、運搬費とのバランスを確かめておきましょう。
運搬費の値上げや運搬量の減少
ガソリン価格が高騰する時期もあります。実際に以前は1リットル100円程度だったガソリン代が2023年には180円ほどに高騰しました。
こうした燃料費の値上げや運送業界の人手不足に起因する運送料の見直しなどにより、運搬費が値上がりして、手元マイナスになる可能性もあります。運搬費についても定期的にチェックしましょう。
また、運送業界では荷物の重量オーバー(過積載)に対する取り締まりが強化されています。過積載にならないよう気を付けて、一度に運ぶ貨物の量が減ると、以前なら1台のトラックで運搬できたものが、複数台で運ぶようになり、その分運搬費も上昇します。
1回あたりの運送総量が減って、運搬回数が増えている場合も、買取価格が運搬費を下回っていないかのチェックが必要です。
逆有償に関する知識不足
最初から廃棄物の譲渡と分かっているなら、委託契約書やマニフェストの必要性を知っている担当者が処理に関わることになるはずです。廃棄物処理法に詳しい担当者なら逆有償取引を防げるでしょう。
しかし、不用品を売却する場合、廃棄物の処理に関する知識が乏しい担当者が売却に関わることがあります。
そうなると手元マイナスになっても気付きにくいため、意図せず逆有償取引をしてしまうこともあります。意図していなくても結果として逆有償になると法律の適用対象となるため気を付けましょう。
逆有償で気を付けるポイント
廃棄物の処理を担当する人が知らないところで逆有償取引が行われてしまう場合もあります。このケースで多いのは、不要物の売却担当者が「有償取引」だと思い込んでいる場合です。
有償取引であれば、法の規制もなく、契約書やマニフェストの交付も必要ありません。有償取引と思い込んで廃棄物の処理担当者を通さないで取引したときなどには、その取引が逆有償であっても気付けません。
廃棄物の処理担当者が知らないところで逆有償取引が発生するのを防ぐには、知識を各部署で共有できるような資料の配布や、社内研修の実施などによる周知を行うことが効果的です。
もし不用物の売却担当者が迷った場合には、廃棄物の処理担当者にメールやチャットツールなどで、すぐに「これは逆有償取引に該当しないか」など、相談できるような体制を構築しておきましょう。
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