
産業廃棄物は、直接再生利用(リサイクル)されるものを除き、多くは焼却などの中間処理による減量化を行った後、再生利用されるか「最終処分場」にて最終処分されることになります。
最終処分される産業廃棄物の量は2021年度速報値で約870万トンとなっており、全体の排出量の2.3%にあたります。
廃棄物処理法では、最終処分は「埋立処分、海洋投入処分又は再生をいう。」としており、「再生(リサイクル)」されないものは「埋立処分」もしくは「海洋投入処分」されることになります。現在では海洋投入はかなり限定されたケースのみとなっており、ほとんどは最終処分場で埋立処分されることになります。
今回のコラムでは最終処分場の種類と、各処分場に対応する廃棄物について確認したいと思います。
最終処分場の種類
最終処分場は、処分する廃棄物によっていくつかの種類に分けられます。まず一般廃棄物の最終処分場、産業廃棄物の最終処分場があり、さらに産業廃棄物の最終処分場は「安定型最終処分場」「管理型最終処分場」「遮断型最終処分場」の3種類に分類されます。また、一般廃棄物の最終処分場は、産業廃棄物の「管理型最終処分場」の基準が適用されます。
1.安定型最終処分場
産業廃棄物のうち、安定型品目または安定5品目と呼ばれる「がれき類」「ゴムくず」「金属くず」「廃プラスチック類」「ガラスくず、コンクリートくずおよび陶磁器くず」にあたり、なおかつ有害物や有機物等が付着していないものに関しては、安定型最終処分場で埋立処分することが可能となります。
安定型最終処分場では、持ち込めるものとそうでないものを分別することが非常に重要になります。該当品目以外の産業廃棄物が混入してしまうことを防止するため、搬入される産業廃棄物には展開検査が行われ、中身を確認されます。


出典:国立環境研究所「廃棄物と最終処分場」
出典:環境省「廃棄物の種類と最終処分場の関係(概要)」
安定5品目であっても以下のものは安定型最終処分場に持ち込めないので注意が必要です。
廃プラスチック類 | 自動車等破砕物、廃プリント配線板、廃容器包装(有害物質又は食べ残しなど有機性物質が混入・付着しているもの) |
---|---|
金属くず | 自動車等破砕物、廃プリント配線板、廃容器包装(有害物質又は食べ残しなど有機性物質が混入・付着しているもの)、鉛蓄電池の電極、鉛製の管又は板 |
ガラス・陶磁器くず | 自動車等破砕物 廃容器包装(有害物質又は食べ残しなど有機性物質が混入・付着しているもの)、廃ブラウン管の側面部、廃石膏ボード |

2.管理型最終処分場
管理型最終処分場では、燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さい、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物のふん尿等のうち、有害物質の溶出濃度が判定基準に適合した産業廃棄物が埋立処分されます。基本的には安定型の処分にも遮断型の処分にも該当しない産業廃棄物が対象となります。また、一般廃棄物も同等の規格の処分場で埋立処分されます。
管理型最終処分場には、環境汚染を防ぐための十分な管理が必要となります。廃棄物の周囲への流出を防止する貯留構造物、浸出した汚水による地下水汚染を防止する遮水設備、汚水を集める集水設備、廃棄物から発生したガスを排除する設備が備えられています。


出典:国立環境研究所「廃棄物と最終処分場」
出典:環境省「廃棄物の種類と最終処分場の関係(概要)」
産業廃棄物の受入基準は「金属等を含む産業廃棄物に係る判定基準を定める省令」等をもとに各処分場が定めています。例えば大阪湾フェニックスセンターの受入基準は下表のとおりとなっています。
項目 | 判定基準値 |
---|---|
アルキル水銀化合物 | 検出されないこと |
水銀又はその化合物 | 0.005mg/L以下 |
カドミウム又はその化合物 | 0.09mg/L以下 |
鉛又はその化合物 | 0.3mg/L以下 |
六価クロム化合物 | 0.5mg/L以下 |
ヒ素又はその化合物 | 0.3mg/L以下 |
有機リン化合物 | 1mg/L以下 |
シアン化合物 | 1mg/L以下 |
ポリ塩化ビフェニール(PCB) | 0.003mg/L以下 |
トリクロロエチレン | 0.1mg/L以下 |
テトラクロロエチレン | 0.1mg/L以下 |
ジクロロメタン | 0.2mg/L以下 |
四塩化炭素 | 0.02mg/L以下 |
1.2-ジクロロエタン | 0.04mg/L以下 |
1.1-ジクロロエチレン | 1mg/L以下 |
シス-1.2-ジクロロエチレン | 0.4mg/L以下 |
1.1.1-トリクロロエタン | 3mg/L以下 |
1.1.2-トリクロロエタン | 0.06mg/L以下 |
1.3-ジクロロプロペン | 0.02mg/L以下 |
チウラム | 0.06mg/L以下 |
シマジン | 0.03mg/L以下 |
チオベンカルブ | 0.2mg/L以下 |
ベンゼン | 0.1mg/L以下 |
セレン又はその化合物 | 0.3mg/L以下 |
1.4-ジオキサン | 0.5mg/L以下 |
ダイオキシン類 | 3ng-TEQ/g以下 |
3.遮断型最終処分場
有害物質の溶出濃度が埋立判定基準に適合しない産業廃棄物は、遮断型最終処分場で埋立処分されます。廃棄物が地下水などの水分と接触するのを防止するための覆蓋を設けたり、腐蝕防止加工が施された水密性の鉄筋コンクリートで遮断することで、有害物質を自然から完全に隔離する構造となっています。
ただ、遮断型最終処分場での埋立処分はできる限り回避することが望ましいとされています。そのため、セメントでの固形化やキレート剤での処理等によって有害物質の無害化、不溶化処理を行い、判定基準を満足した産業廃棄物については、前述の「管理型最終処分場」で埋立処分されます。


出典:国立環境研究所「廃棄物と最終処分場」
出典:環境省「廃棄物の種類と最終処分場の関係(概要)」
最終処分場の設置許可件数
2021年4月1日現在において最終処分場の設置許可件数は計1,568件となっており、前年度との比較では32件の減少となっています。2021年度における最終処分場の新規設置許可件数は11件、嵩上げなどの変更許可件数は15件、廃止届出件数は28件でした。
構造的に最も堅牢で設置コストも高い遮断型は極端に少ない件数となっています。
区分 | 施設許可件数 | 2021年度分 | 2022/4/1 | 2021/4/1 | 増減 | 新規 | 変更 | 廃止 |
---|---|---|---|---|---|---|
最終処分場 | 1,568 | 1,600 | ▲32 | 11 | 15 | 28 |
・安定型 | 931 | 946 | ▲15 | 6 | 9 | 15 |
・管理型 | 615 | 631 | ▲16 | 5 | 6 | 13 |
・遮断型 | 22 | 23 | ▲1 | 0 | 0 | 0 |
新規設置許可件数の経年変化は下図のとおりで、2021年度は前年度と比べて▲8件減少となりました。平均は13~14件/年となっています。

出典:環境省「産業廃棄物処理施設の設置、産業廃棄物処理業の許可等に関する状況(令和3年度実績等)について」
埋立終了後の維持管理コスト
最終処分場は新規設置許可を取得するまでも相当の期間とコストが必要になります。また、埋立終了後も維持管理を行う必要がありコストが発生します。この維持管理コストについて、一般的な処分場である「管理型最終処分場」と「安定型最終処分場」で比較してみると以下のようになります。

出典:環境省「廃棄物処理制度専門委員会報告書(案) 参考資料」
最終処分場は新規設置許可を取得するまでに相当な期間とコストがかかります。また、埋立終了後も維持管理コストがかかるのです。そのコストは構造の違いにより、「安定型」<「管理型」<「遮断型」と極端に高くなるのです。当然このコストは処分料金に反映されることになります。
また、最終処分場の設置者が不在となり、その承継がうまくなされないと大きな問題になるため、全ての最終処分場は「維持管理積立金制度」の対象となっており、埋立期間中に維持管理積立金を積み立てています。
現在は設置許可が取り消された者又はその承継人はその維持管理を義務付けられており、承継人や行政が維持管理を行った場合も維持管理積立金を取り戻すことができることになっています。
おわりに
今回は最終処分場の種類について確認しました。最終処分場は公共施設であり貴重な共有資産であるともいえます。
有効活用を図るためにも安定型最終処分場の受入基準を満たすための分別が重要です。

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