
排出事業者の多くは、産業廃棄物の処理を収集運搬業者や処分業者へ委託します。その際は産業廃棄物処理委託契約の締結が必要です。
では排出事業者が、収集運搬業者と処分業者の三社と1枚の契約書で契約を結ぶことは可能なのでしょうか。本記事では、産業廃棄物処理の三社間契約について解説します。リスクや注意点も詳しく解説するので三社での契約をお考えの方は参考にしてみてください。
目次
産業廃棄物処理委託における三社間契約は原則として認められていない
結論から述べると、産業廃棄物処理委託における三社間契約は、原則として認められていません。全国産業資源循環連合会(全産連)は「2者契約を徹底するため」として委託契約書の手引きを作成しており、また、廃棄物処理法においても以下のように定められています。
事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については(略)産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については(略)産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。 – 廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第三章 第一節 第十二条(事業者の処理)第五項 |
上記の条文のポイントは「それぞれ委託しなければならない」です。つまり原則として、排出事業者Aが収集運搬業者Bと処分業者Cに処理を委託する場合、「AとB」および「AとC」の二社間でそれぞれに契約をしなければならない、と読み取れます。
一方で三社間契約とは、「AとBとC」という三社が、1枚の契約書によって一括契約を結ぶことを言います。
このとき起こり得るのが、排出事業者Aが、間に入った収集運搬業者Bの紹介で、よく知らない処分業者Cと安易に契約を結んでしまう、というような事態です。
もしもCが該当の処分業許可を持たない事業者だった場合、Aは無許可の事業者に処理を委託したことになり、委託基準違反により5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方の罪が科されることになります。
このような事態を防ぐためにも、相手の事業者に委託をして問題がないか、自ら確かめた上で契約をするのが安全と言えるでしょう。
参考:e-Gov法令検索.「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2023-12-10)
参考:全国産業資源循環連合会「産業廃棄物処理委託契約」(入手日付2024-02-05)

産業廃棄物処理委託契約書を1つにまとめることに違法性はない
前述したように、排出事業者が収集運搬業者と処分業者と契約する際は、それぞれの事業者と二社間契約を結ぶことが原則です。
しかし、実際のところ「契約を二社間で締結する必要がある」と廃棄物処理法に明記されているわけではなく、また「三社間契約を禁止する」という条項もありません。
そのため、委託契約書を1つにまとめること自体は違法にはなりません。
廃棄物処理法で「それぞれ」と規定しているのは、あくまで排出事業者が収集運搬業者に処理を全て丸投げしてしまい、実際に処分している業者がどこかも把握していないといった問題を是正するためと考えられます。
実際に環境省から各都道府県知事及び政令市市長あてに、下記の事項を事業者に指導するよう通知が出されており、不適正処理の防止を重視していることがわかります。
事業者が産業廃棄物の処理を処理業者に委託する場合、適切に委託されていないための不適正処理が発生していることに鑑み、処理の委託に関し、事業者に対し次の事項を指導すること。 – 環境省:平成2年04月26日 衛産31号([改定]平成10年11月13日 生衛発1631号)産業廃棄物処理対策の強化について |
産業廃棄物処理委託において三社間契約がおすすめできない理由3つ
前述のとおり、産業廃棄物の処理委託において三社間契約を結ぶこと自体に違法性はありませんが、推奨されない方法であることに変わりはありません。三社間契約がおすすめできないのは、以下の3つの理由があるためです。
- 契約内容の変更に手間がかかる
- 委託基準違反のリスクが生じる
- 行政や警察にネガティブな印象を与える可能性がある
おすすめできない3つの理由について、それぞれを詳しく見ていきましょう。
契約内容の変更に手間がかかる
三社間契約ではそれぞれ属性が異なる3つの法人が、1つの契約書で一括契約します。そのため契約書の中身、例えば収集運搬料金や処分料金などを変更する場合、三社で協議して合意する必要があります。中には変更に合意できない場合もあるでしょう。
また、途中で収集運搬業者や処分業者を変更したり追加したりする可能性がある場合には、個別の契約にしておく方が管理しやすいはずです。運用面からも基本的には二社間契約にしておくのがおすすめです。
委託基準違反のリスクが生じる
旧厚生省は平成6年2月17日衛産20号通知で、三社間契約の可否について以下のような解釈を示しています。
排出事業者が産業廃棄物処分業者Aと直接接触してAの能力等を確認することなく、産業廃棄物収集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする、いわゆる三社契約を締結することは委託基準に反すると考えるがどうか。 – 旧厚生省:平成6年2月17日 衛産20号 |
旧厚生省は「直接接触してAの能力等を確認することなく、集運搬業者Bの説明を聞いたのみで、AとBを契約相手とする」場合を委託基準違反に該当するとしています。ここでも、三社間契約を結ぶこと自体が否定されたわけではありません。
しかし大切なのは書面が1つにまとめられているか、分かれているかではなく、契約に至るまでに処分業者がどのような業者で、どのように処理しているのか、現場をしっかりと確認しておくことです。確認がきちんとできていないと判断された場合、委託基準違反に該当するリスクがあることを知っておきましょう。
行政や警察にネガティブな印象を与える可能性がある
三社間契約自体は違法とは限りませんが、行政や警察にネガティブな印象を与えてしまう可能性もあります。過去のケースでは、排出事業者が処分業者と直接会わないまま契約だけが交わされ、不法投棄の温床となっていたケースがあったためです。
もし、三社間契約を結んだ委託先が不法投棄したり、委託基準違反をした場合には「排出事業者による処分業者の確認がしっかりなされていなかったのでは」との疑いをもたれるリスクもあります。その点からも三社間契約はおすすめできません。
産業廃棄物処理委託契約を三社で締結する際の注意点
三社間契約の締結は違法ではありませんが、締結の際は以下のような点に注意が必要です。
処理業者が産業廃棄物を適正に処理する能力があるか確認する
収集運搬業者とは別の処理業者に処分を委託する際は、産業廃棄物を適正に処理する能力があるかどうかを確認してください。具体的には以下のようなポイントをチェックするとよいでしょう。
- 許可証の内容確認
- 行政処分履歴の有無
- 処理フローが明確かどうか
- 処理業者の事業場の様子
- 情報公開の姿勢・状況
- 財政状況の確認
- 事業場近隣住民からの評判・地域貢献度
- 処分後にマニフェスト伝票で処分の事実を確認できるかどうか
個々の役割や処理料金を明確化する
三社間契約を締結する場合は、それぞれの委託先に丸投げ状態になっていないことが大切です。
排出事業者は複数の収集運搬業者や、処分業者の許可内容、事業範囲などを把握した上で、役割分担や料金を明確化しておかなければなりません。
どの処理業者にどこまで収集運搬・処分してもらうか、委託の範囲を決めて、それを契約書にも明記しておいてください。
三社間契約に関するよくある質問2つ
三社間契約をする場合によく寄せられる質問に回答します。
産業廃棄物処理委託契約書の書き方は?
委託契約書は廃棄物処理法が求める要件を満たしていれば、どのような書式を使用しても問題はありません。書き方はひな型を参考にするとよいでしょう。ここでは東京都環境局のwebページで公開されているモデルを紹介します。
参考:東京都環境局公式「委託契約書」. (入手日付2023-11-14).
産業廃棄物処理委託契約書の原則は?
排出事業者が収集運搬業者や処分業者と締結する委託契約には、5つの原則があります。
第1の原則は、二社間契約であることです。
第2の原則は書面の契約であることです。処理委託契約は書面で交わす必要があり、口頭での取り交わしは認められていません。
第3の原則は書面に廃棄物処理法で決められている法定事項を記入することです。記載すべき事項は法律で決められています(※)。
第4の原則は、委託契約書に許可証などの写しを添付することです。委託業者の許可証には有効期限があり、期限が切れていると無許可扱いになるため注意してください。
第5の原則は、排出事業者は契約が終了した後も5年間、処理委託契約書や添付書面を保管しておく義務があるということです。
(※)公益社団法人全国産業資源循環連合会「産業廃棄物処理委託契約」.(入手日付2023-12-14).
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