
廃掃法は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」の略称で、廃棄物処理法とも呼ばれます。廃棄物に関する法律が定められており、その内容は多岐にわたるため、難しく感じている方もいるでしょう。
本記事では、廃掃法の中から、廃棄物の処理業務に関わる方が覚えておくべき5つのポイントを分かりやすく解説します。廃掃法のポイントを押さえておきたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
廃掃法とは:廃棄物の処理及び清掃に関する法律
一般廃棄物、産業廃棄物の処理業務に関わる人が守るべき法律が、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)です。条文には法律の目的や廃棄物の定義、処理・保管方法、責任の所在や罰則などのルールが記載されており、排出事業者や収集運搬業者・処分業者はそのルールに従いながら事業を進めていかなければなりません。
廃掃法の根底に流れているのは「汚染者負担の原則(PPP:Polluter-Pays Principle)」の考え方です。汚染者負担の原則とは、汚染の原因を作ったものが環境対策の負担をすべきとする考え方で、この原則に従い排出事業者は自らコストを負担した上で廃棄物を適切に処理する必要があります。
廃掃法は、廃棄物の排出を抑制しながら、発生した廃棄物のリサイクルを進めるなど、適正な処理で人々の生活環境を守る目的から、1970年に制定されました。
その後、廃掃法はゴミの処理方法などが社会問題化する度に、法改正したり関連法規を整備したりしながら社会の変化に対応してきました。そのため今でも改正が繰り返されています。
2024年2月時点では、2023年9月に施行された省令が直近の改正です。常に新しいルールに基づいて廃棄物を処理しましょう。
廃掃法の基本をより知りたい方は「【初心者向け】廃棄物管理の担当者がまず最初に学ぶべき基礎知識」も参考にしてみてください。
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2023-12-18)

廃掃法における覚えておくべきポイント5つ
廃掃法のポイントは次の5つです。
- 産業廃棄物と一般廃棄物は分別して処理する
- 産業廃棄物は排出事業者が処理する必要がある
- 自ら処理できない場合は産業廃棄物処理業者に委託する
- 廃棄物が回収されても最終処分完了まで排出事業者に責任がある
- 廃掃法に違反すると罰則を受ける
それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。
産業廃棄物と一般廃棄物は分別して処理する
廃棄物は産業廃棄物と一般廃棄物に分類されます。事業活動によって排出したものが産業廃棄物、人々の生活で発生したものが一般廃棄物です。廃掃法ではまず20種類の産業廃棄物を定義して、それ以外の廃棄物を一般廃棄物としています。
産業廃棄物に定義されるのは、以下の20項目です。
産業廃棄物 |
---|
【あらゆる事業活動に伴うもの】 燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラス・コンクリート・陶磁器くず、鉱さい、がれき類、ばいじん 【特定の事業活動に伴うもの】 紙くず、木くず、繊維くず、動物系固形不要物、動植物性残さ、動物のふん尿、動物の死体 【上記の産業廃棄物を処分するために処理したもので、上記の産業廃棄物に該当しないもの】 コンクリート固形化物など |
上記の産業廃棄物は一般廃棄物とは区別して、廃掃法のルールに則って処理しなければなりません。
産業廃棄物は排出事業者が処理する必要がある
排出事業者は事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければなりません。これは廃掃法の第三条に規定されているもので、排出事業者処理責任と呼ばれます。
排出事業者がこの規定に従って廃棄物を自ら処理する場合は、廃掃法施行令に規定されている産業廃棄物処理基準に従い、保管・運搬・処分について法に基づく基準を遵守しなければなりません。
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」 (入手日付2023-12-18)
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令」(入手日付2024-02-05).
自ら処理できない場合は産業廃棄物処理業者に委託する
排出事業者には廃棄物の処理責任がありますが、現実的には全ての排出事業者が自ら処理できるわけではありません。
廃掃法第十二条第五項には「事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、産業廃棄物収集運搬業者、産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない(要約)」と記載があり、自ら処理を行うことができない排出事業者が、外部の収集運搬業者や処分業者へ処理を委託することが認められています。
ただし委託先は、処理を行う都道府県・政令市の許可を得ている処理業者であることが条件です。
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2023-12-18)
廃棄物が回収されても最終処分完了まで排出事業者に責任がある
前述のように、廃棄物を自ら処理できない場合は処理業者に委託することが認められていますが、処理業者に委託したからといって排出事業者としての責任がなくなるわけではありません。
処理業者に委託した場合であっても、処理責任は排出事業者にあります。廃掃法第十二条第七項でも「事業者は、産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、廃棄物の発生から最終処分が終了するまでの一連の処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない(要約)」と定めています。
最終処分が終わるまで責任をもって必要な措置を講じるために、排出事業者が発行するのがマニフェストです。排出事業者は、マニフェストによって委託した廃棄物が適正に処理されているかをチェックします。
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2023-12-18).
廃掃法に違反すると罰則を受ける
排出事業者が廃掃法に違反すると罰則を受ける場合があります。ここでは排出事業者が気を付けたい主な違反と罰則を紹介しましょう。
5年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金または併科 | |
---|---|
措置命令違反 | 生活環境上の保全のために出された措置命令に違反したとき |
委託基準違反 | 廃棄物の収集・運搬や処分を許可を持たない事業者に委託したとき |
廃棄物の投棄禁止違反 | 廃棄物をみだりに投棄したとき(未遂を含む) |
廃棄物の焼却禁止違反 | 廃棄物処理基準に適合しない施設(ドラム缶や素掘りの穴など)で、廃棄物を違法に焼却したとき(未遂を含む) |
3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金またはこの併科 | |
委託基準違反 | 廃棄物の運搬や処分、もしくは再生等に関する処理委託基準に違反したとき |
改善命令違反 | 廃棄物を適正に処理するための保管、収集運搬または処分方法の変更等に関する改善命令に違反したとき |
1年以下の懲役または100万円以下の罰金 | |
マニフェスト交付義務等違反 | 産業廃棄物の運搬や処分を他人に委託し、廃棄物を引渡す際、管理票を交付していない、記載すべき事項を記載していない、または虚偽記載して交付したとき |
マニフェスト保存義務違反 | 産業廃棄物の運搬業者や処分委託者に交付した管理票の写しを 5 年間保存しなかったとき |
勧告命令義務違反 | 産業廃棄物管理票の適正処理に関して出された勧告に係る命令に違反したとき |
6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金 | |
事業場外保管届出義務違反 | 産業廃棄物を届出していない場所で保管、または虚偽の届出により事業場外に保管したとき |
30万円以下の罰金 | |
処理責任者等設置義務違反 | 産業廃棄物の処理業務を適切に行わせるための責任者を置かなかった場合 |
報告義務違反 | 廃棄物の保管、収集、運搬もしくは処分等の廃掃法第十八条に係る報告の求めに対し、報告の拒否または虚偽の報告をしたもの |
立入検査の拒否・妨害・忌避 | 廃棄物もしくは廃棄物の疑いがあるものの保管、収集運搬、処分等に関する帳簿書類その他の物件の検査をしようとしたとき、検査を拒み、妨げ、または忌避したもの |
20万円以下の過料 | |
事業場外保管届出義務違反 | 産業廃棄物を事業場外に保管し、14日以内に届出をしなかったとき |
処理計画義務違反 | 産業廃棄物の多量排出事業者が処置計画を提出していない、または虚偽の記載をして提出したとき |
処理状況報告義務違反 | 多量排出事業者が処置状況を報告せず、または虚偽の報告をしたとき |
もし廃棄物が委託した処理業者によって不法に処理されてしまった場合、たとえ直接処理に関わっていなくても、排出事業者に責任があるとして罰則が課されるため注意しましょう。
参考:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(入手日付2023-12-18)
廃掃法のポイントに関するよくある質問
廃掃法に関してよく寄せられる質問に回答します。
廃掃法と廃棄物処理法の違いは?
「廃掃法」と「廃棄物処理法」は同じものです。正式名称は「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で、「廃掃法」も「廃棄物処理法」も正式名書の略称です。
廃掃法の施行令とは?
産業廃棄物の処理に関するルールの中心に位置するのが廃掃法です。廃掃法は国会の議決によって法律として制定されているため、効力が最も強く廃棄物に関するルールの最上位に位置します。
ただし、細かい事例まで法律で漏れなく規制するのは困難です。そのため法律を補う目的で設けられた法令が施行令(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令 )です。施行令では法律だけでは厳格に規定しきれない、詳細な部分を明確化しています。
また、より具体化した省令として施行規則(廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則)もあります。
参考:環境省「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)」(入手日付2023-12-18)
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